時代は季節が移り変わり、とき

はながれてゆく。

百人一首の女流歌人の恋の歌は

凄い。なかでも和泉式部。

 

和泉式部

なかでも恋多き和泉式部の百人

一首の情熱的な歌。

あざらむ此よの外の思出に

今ひとたびのあふ事もがな

 

わたくしの命は長くはない。

この世を離れるせめてもの思い出

にひとめだけでも逢うことはこと

はかなわないでしょうか。

という意味になるが、この歌は

重病で死を前にした和泉式部。

逢瀬を重ねて来た恋人に、あの世

での思い出にあなたとひとめ逢う

ことが叶わないだろうか。と人を

介して、贈った恋の歌である。

 

 

和泉式部の百人一首

 

この歌を書いた紙(手紙)をふと、

あざらむ…の歌を想う。

和泉式部は誰に預け、貰った男性

は、このあとどうしたのだろうか

…と思う。

 

葛飾北斎『百人一首うばがゑとき』

ときは平安時から江戸時代に移る。

江戸時代には百人一首のかるたとり

があり、百人一首はよく知られてい

たようで、葛飾北斎は、この歌を題

材にして『百人一首うばがゑとき』

(和泉式部)で画を描く。

 

 

『北斎百人一首うばがゑとき』(和泉式部)

 

歌占い

夜具に身を包む病床の女性がいる。

玄関先では下女が封書を男に届け

ている。

 

 

 

下女が歌をとどけた男は、恋人で

はなく、当時は医者の役目も果た

していた夢占(うたうら)である。

男は弓を垂直に持ち、弦にゆわえ

た短冊の一片が離れるまで弦を引

く。

その短冊に病気の治療法や占いが

書かれているというわけである。

この絵は、平安朝の時期にあては

まらず。若い供の者が盆に冊子の

ようなものをのせて立ち、下女が

渡そうとしているのは、恋の返歌

でなく、歌占への代金である。

 

北斎の『うばがゑとき(和泉式部)』

「百人一首」は1235年藤原定家

によって選ばれた百人の秀歌。

「うば」は、宮廷、王朝文学とは

無縁のひと、庶民をいい、江戸時

代に置き換えて、ゑとき(絵解き)

した北斎の画(歌占)である。

あざらむ此よの外の思出に

今ひとたびのあふ事もがな

 

 

 

葛飾北斎『百人一首うばがゑとき』(和泉式部・歌占)

 

 

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