千年昔の紫式部の「源氏物語」は、

江戸時代にも人気があり、現在に

も通じる男と女の物語だ。

そひとつに歌川国貞の『花鳥余情

吾妻源氏』がある。

 

歌川国貞

歌川国貞(1786-1865)は江戸

時代の浮世絵師で、のちの三代目

歌川豊国である。本名は角庄五郎

で、号は多く婦喜用又平などがあ

る。

『花鳥余情吾妻源氏』

江戸に浮世の絵に華が咲いた頃。

「浮世絵もまず巻頭は帯とかず」

と枕絵は浮世絵と同じで公然と

販売されていた。

 

 

 

吾妻源氏上巻の扉(娘盛りの女)

 

娘盛りの女を描いた大首絵の扉絵

の裏には、大開絵(女性器)が、

描かれ、さに虫眼鏡でその内側ま

で描いている。

中巻の扉の裏には無毛の少女の性

器と男根が描かれ、扉の少女が恥

ずかしそうな表情でいる理由が絵

と結びつく。

 

 

吾妻源氏中巻の扉(口元に手をやる少女)

 

『吾妻源氏』

国貞の『花鳥余情(かちょうよじ

ょう)吾妻源氏』は、略して「吾

妻源氏(あづまげんじ)」という。

 

光源氏と女三宮

「吾妻源氏」では「源氏物語」の

女三宮の猫の条を描いている。

暖簾の内の女三宮は、単衣を口に

加え、二匹の猫が交尾している様

子を見、光源氏が暖簾の外に顔を

出して眺めている。

 

 

光源氏と女三宮(「吾妻源氏」上巻)

 

「吾妻源氏(上巻第4図)」

江戸時代の庶民の長屋での夫婦な

のか、枕元の灯りが照らす光の中

に男と女がセックスを愉しむ姿を

照らしている。

 

 

 

江戸の庶民の愉しみ「吾妻源氏(上巻第4図)」

 

料亭の夏の夜。

蚊帳が巻き上げられ、敷布団の上に

花蓆(はなむしろ)が敷かれる。う

つ伏せになった女に背後から男が挑

み、女は目を開けている。

 

 

料亭の夏の夜(「吾妻源氏」上巻)

 

「吾妻源氏(上巻第5図)」

紫の法衣の高僧と十二単衣を着て

いる貴族の女性。身分の尊い者同

士の愛の交歓を描く。

 

 

 

都の身分の高い女性と高僧の戯れ(「吾妻源氏(上巻第5図)」)

 

「吾妻源氏(下巻第4図)」

江戸時代初期に刊行された「薄雪物

語」(作者不詳)を下敷きに描く。

清水寺で新妻の薄雪を見初めた園部

衛門。衛門は恋文をやりとりの末、

結ばれる。が、薄雪は、衛門の留守

中に病死、26歳でなくなる。衛門は

高野山に出家して薄雪の菩提を弔う。

この図は、衛門の侍女が、屏風の陰

で、衛門と薄雪が睦まじく行為に

およんでいう声を聴き、自慰におよ

んでいる。
 

 

 

屏風の裏で衛門と薄雪の声を聴く衛門の侍女(下巻第4図)

 

国貞は源氏物語をもとに三源氏の

作品(他2「艶紫娯拾餘」、「正

寫相生源氏」)を創る。

その枕絵のひとつが「吾妻源氏」

で、多色摺木版画の画を描いた天

保期中頃(1836-37)の歌川国

貞51、2歳頃の枕絵である。

 

歌川国貞『花鳥余情吾妻源氏』

『花鳥余情吾妻源氏』の内容は、

口絵も本文も何の関係もなく、

なかには関係のあるものもある。

この頃に柳亭種彦の草双紙『偐

紫田舎源氏』(1829-1842)

が江戸時代最大のベストセラー

であったことが背景にある。

国貞こと三代歌川豊国は、役者

絵、美人画の要素をとりいれ、

源氏絵などで時代の流行をつくる。

あらゆる絵師が枕絵を描き、また

作者のほとんどが艶本の筆をとっ

ていた時代。その後取り締まりは、

享保7(1722)年11月にはじま

り、寛政2(1790)年、天保12

(1841年)と、三度あるなか「

吾妻源氏」の作品は天保7、8(

1836-37)年に刊行され、この

規制から逃れた作品である。

「吾妻源氏」下巻(交歓のあと)

行為が終わった後の男と女。

屏風(左)に「婦喜用 又平画」

とある。

 

 

「吾妻源氏」下巻(交歓のあと)

 

 

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