街道はときが過ぎてゆくと、時代

によってその呼び名が変わってゆ

く。

変わってゆくのは、街道沿いの街

並や寺院もそうである。

 

和泉砂川駅(JR阪和線)で下車。

駅前から信達牧野交差点で左折し

熊野街道沿いに約500mゆくと往

生院がある。

 

 

 

往生院(由緒)

往生院にゆくと、山門手前に大

きな石に寺の由緒(刻印)があ

り、以下芝野庄太郎の撰文をも

とに記す。

 

 

熊野街道沿いの往生院(大阪府泉南市信達牧野1248)

 

往生院(朝廷直轄地)

白鳳8(668)年天武天皇の勅命

で道昭が創立した。

当地は大和朝廷時代から天皇の直

轄地だった。国家鎮護のためにこ

の寺院を建立した。

 

往生院と道昭

道昭(629-700)は、朝鮮百済か

ら渡来した船氏の出身で、船舶、

海運、土木工事の担当部族として

朝廷に仕えていた。

道昭は第二次遣唐大使の隋員とし

て唐の都・長安に留学し、玄奘三

蔵について8年間勉学し、帰朝後

に飛鳥元興寺の禅院で、法相宗を

開き元祖となった。同時に日本全

国を回り、港湾を築き、川を整え

池を掘り、国土開発に尽くした。

道昭の創立したこの寺院は5丁(約

500m)四方の広大な境内をもち、

飛鳥伽藍様式の伽藍配置で信達を寺

領とした。

 

 

往生院(山号:明王山、大日寺、真言宗御室派)

 

金熊寺(信達神社)

往生院創立2年後白鳳10(670)年

に金熊寺に信達神社が創祀され、神

武天皇を祭神とした。

平安中期(荘園)

此の往生院の地は平安中期摂政・藤

原忠実の荘園となる。

藤原忠実の荘園は、その後鎌倉・南

北朝まで近衛家が統治した。

 

 

往生院(本尊:十一面観音菩薩堂、和泉西国三十三ヶ所第14番)

 

熊野信仰と信達神社御旅所

平安中期から鎌倉時代にかけて頻繁

に熊野御幸(ごこう)がおこなわれ

る。

熊野信仰は難行苦で、苦行であるか

らこそ、一切の罪業が消えるという

滅罪業になり得た。

足裏に血をにじませ、熊野三千六百

峰の果てにある熊野三山(本宮、新

宮、那智大社)を目指す。

熊野詣の大変さは、今様集「梁塵秘

抄(りょうじんひしょう)」(後白

河院の撰による)にも記される。

熊野へ参らむと思へども 徒歩(か

ち)より参れば道遠し すぐれて山

きびし 馬にて参れば苦行ならず

空より参らむ 羽賜(た)べ若王子

 

既成宗教にあきたらなくなった皇族

や貴族は、厳しい山岳信仰に現世の

救いを求める。修行すれば、生きな

がら成仏できると信じられ、「蟻の

熊野詣」とわれるほど国内に広がる。

熊野信仰が盛んになった頃に、上皇

・貴族が行列を組んで、百回に及ぶ

熊野詣をし、街道筋にあたった九十

九王子社のうち、信達の王子(一之

瀬・廐信達・長岡)を参拝し、

街道の信達宿は宿駅として繁栄する。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

 

 

信達神社御旅所跡

 

往生院から熊野街道に南にくだると

大鳥居交差点の手前に信達神社御旅

所跡がある。

 

 

信達神社御旅所跡

 

都の一行が信達神社を経て熊野に

詣でる途中での休憩・宿泊場所であ

る。

 

 

信達神社御旅所跡の石碑

 

熊野権現

この頃信仰されたのが熊野権現。

「道のほとりに飢え死ぬもの数しれず」

という地獄を見、生と死を隣り合わせに

生きる平安・鎌倉の人びとの心を動かし

、信仰された。

 

イメージ 5

 

紀州・熊野三山のひとつ、那智大社の滝

 

根来寺と足利尊氏

(信達荘寄進)

足利尊氏は、根来寺に信達荘を根

来寺へ四季大般若転読料として寄

進する。

秀吉根来寺攻め

(全焼・改宗)

秀吉の根来寺攻めで往生院は全焼

した。文禄(1592-96)の太閤検

地で寺院境内は404坪となり、浄

土宗に改宗された。

元禄4(1691)年

往生院は元禄4(1691)年に真言

宗に戻り、京都仁和寺は本山とな

った。

Enjoy往生院

(熊野街道から紀州街道)

道昭は平城京へ遷都後、飛鳥寺(

元興寺)に住み、680年に往生院

を建立する。

晩年全国を遊行し、各地で土木事付

業をおこなった。高弟に行基がい

る。

700年に72歳で没し、遺命により、

日本で初めて火葬に付された。(

「続日本紀」)

熊野街道から紀州街道

江戸時代に入り、往生院前の街道は

紀州街道と呼ばれる。

江戸時代の徳川御三家の紀州藩士が

参勤交代で、江戸と紀州を往来した

紀州街道。このとき信達の村人の邸

は約2300人を越える家臣、人足、

馬などの宿となっていた。

参勤交代の大名行列。和歌山城を出

た一行は一泊目は信達宿か貝塚の願

泉寺。

ニ泊目は、紀州藩大坂屋敷(天満橋)

、三泊目は枚方宿、以下伏見宿、大

津宿と大きな宿場に泊りながら14泊

15日で江戸入りをする。そのため千

両箱が3つ、4つ要したという。

 

 

紀州街道の宿場宿・信達(天保国郡全図・1837年)

 

 

往生院は元禄4(1691)年に真言

宗に戻り、京都仁和寺は本山とな

った。そして熊野三山を源とする

神社は全国に3千数社を数え、今

に至る。

 

 

 

 

往生院(大阪府泉南市信達牧野1248)

 

 

 

 

紀州街道の宿泊本陣(信達・貝塚)、休憩本陣(山中・大津)

 

 

 

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