世の中は、季節の移ろいとともに、

川の流れと同じく変わってきた。

男と女の関係はどうだろう。

 

美貌の小野小町を後年、江戸時代

に「小町はバカだ」と画に描きい

れた葛飾応為がいる。

 

 

世界三大美人の小野小町

 

小野小町と葛飾応為

小野小町は、平安時代前期9世紀

頃の上流歌人で絶世の美人として

世に知られ、歌が残されている。

葛飾応為は葛飾北斎の娘で、

父・北斎は「美人画にかけては

応為にはかなわない」と彼女の

才を認め、画が残されている。

ただ、ふたりとも生没年不詳。

 

小野小町(百人一首)

女流歌人の小野小町は、六歌仙、

三十六歌仙のひとりで、百人一首

(百人秀歌)にもある。

 

 

百人一首(百人秀歌)九番(小野小町)

 

花のいろはうつりにけりな

いたづらに我身世にふる

ながめせしまに

 

花(桜)の色はあせてしまったな

あ。

こうして眺め、長雨が降る間に。

いたづらに(むなしく)、

分の身にも、世の中にもふりかか

り、ときが過ぎる。という意味に

なる。

 

美貌の小野小町には伝説がいくつ

かある。

彼女に求愛する深草少将が、小野

小町に盛んに求愛しするので、「

百夜通ったら、あなたの意のまま

になろう」と言う。それから少将

は、毎夜小町の邸に通い、最後の

雪の夜に、想いを遂げられずに息

絶える。

この伝説は、のちに世阿弥など能

作者が創作した小町伝説のひとつ

の「百夜通(ももよがい)」。

 

葛飾応為「つひの雛形」と小野小町

北斎の娘・葛飾応為が描いた絵本

『つひの雛形』にも小野小町が登

場する。

「つひ」は男女のつがいと女陰の

「つび」とを掛け、雛形(ひなが

た)は見本で、『つひの雛形』を

直訳すると、「女陰の見本帖」と

なる。応為は『つひの雛形』で、

12枚の絵を描き、その内のひとつ

第4図に小町の名が出てくる。

 

まどろむ二人。

『つひの雛形(第4図)』はまど

ろむふたり。この間の様子を猫は、

とうとうと語ったてゆく。やがて

ふたりは果て、目(ま)どろみ、

微睡(まどろ)む。

男女のそばでは猫は枕元でこれを

見ておりネズミが交尾している。

ねづみのよがりごゑ

チウ 〱 〱 〱

 

 

葛飾北斎の娘・応為の「つひの雛形」(第4図)

 

快い疲れで、まどろんでいるふたり。

その傍には団扇があり、その団扇に

は川柳が書かれている。

弁慶と小町はバカだ なあかかァ

 

弁慶は女嫌いで小野小町は男嫌い

だったことを夫は妻になあバカだ

よなと云ふ。

 

その後の小野小町。

小町は、想いを遂げずになくなった

深草の少将の霊に苦しめられる。

小町にまつわる『七小町』の中の説

話のひとつの『卒塔婆小町』を題材

とした月岡芳年の絵『卒都婆の月』

(「月百姿」)にその姿がある。

 

 

 

卒塔婆に腰をかけた白髪頭の老女が、

破れた笠を背負ったみすぼらしいが

、どことなく品がある。かつて才色

兼備を謳われた小野小町の姿である。

応為の絵のまどろむ夫婦。

あの世でなく、この浮世で今できる

とをふたりが愉しみ、まどろんで

いる浮世絵絵本。

 

 

2024.3.18

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