私が毎日チェックする日本の情報源、「プレジデントオンライン」で、『炭水化物を毎日食べるほうが長生きする…管理栄養士が「100歳まで歩きたいなら糖質制限はやるな」と警告するワケ』という、嘘と思い込みがてんこ盛りの記事を見つけました。

 

この記事は、管理栄養士で家政学部の教授の方の著作の一部だそうですが、どういうわけか生化学の基礎知識から逸脱しています。ざっくりと、タンパク質を気にして糖質制限をすると高齢者がフレイルになるという科学的根拠が全くない説が書かれています(本文)。たとえば「ごはんを食べないで、エネルギー源が不足した状態が続くと、せっかく食べたタンパク質が、本来のタンパク質のはたらきをしない、言わば「おばけタンパク」になってしまう(本文のまま)」という箇所がありますが、科学的知識があれば、こんなことは書けないはずです。順番に説明しましょう。

 

エネルギー源が不足することはあり得ない

人類という種が、原始時代を生き延びることができた最大の理由が「体脂肪」というエネルギー源を持つことです。

 

一般的に日本人の場合、痩せて見える人でも体重の20%以上が脂肪です。例えば体重40kgで体脂肪率が20%なら、体脂肪の重さは8kg。そのうち純粋に使える脂肪を6kgとして、脂肪は1gで9kcalのエネルギーが作れるので、単純計算だと54,000kcal、1日に2,000kcal消費するとして、27日分のエネルギー源がある、現実的にはその半分と考えても、体の中に2週間程度のエネルギー源があることになります。つまり、普通の生活をする高齢者に、エネルギー源が不足することはなく、本文にあるような『体はなにより「エネルギー源の確保」を優先』は嘘です。

 

以前のブログに、60歳の私が3日間水だけ絶食をした時の血糖値の推移などを紹介しているので、参考にしてください。

 

炭水化物は、欠乏症がない唯一の栄養素です。さらに、炭水化物は植物性の食品全てに含まれているのでご飯やパンを食べなくても不足しません。その反面、食べ過ぎたり、ご飯だけ、パンだけの食事だと食後血糖値を急上昇させて老化の原因になります。

 

⒉ 「おばけタンパク」は存在しない

タンパク質は、消化されてアミノ酸となって吸収されます。体にとってアミノ酸、特に9種類の必須アミノ酸はとても貴重なのでエネルギー源となる前に、肝臓から血中へと送り出されてしまいます。つまり、食べたタンパク質がエネルギー源になる可能性はほぼないので、「おばけタンパク」は存在しないのです。

 

また、タンパク質は1gで4kcalしかエネルギーを作れない上に酵素反応にはエネルギーが必要なため、脂肪と比較すると、エネルギー(ATP)として使うには効率が悪い栄養素です。筋肉内で不要になったアミノ酸をリサイクルといった形でエネルギーに変換することはありますが、よほどの飢餓状態にない限り、体全体のエネルギー補給のためには使われません

 

⒊ 必要なタンパク質の量は?

タンパク質の必要量は体重で決まります。一般には体重1kgあたり0.8g、消化吸収率が下がってくる高齢者は体重1kgあたり1〜1.25g 摂取が望ましいと考えられています。例えば、体重40kgなら、タンパク質の必要量は1日に40から50gです。納豆に置き換えると、1パックで8gのタンパク質として5−6パック程度、牛乳だと1.4L(200ml=7g)、たまごなら7個(M1個=7g)、鶏胸肉なら200g(100g=24g)となりますが、運動量や体調でさらに必要になることもあります。

 

卵・牛乳・肉・魚が必要な理由
動物性タンパク質の消化可能な必須アミノ酸スコアDIAAS:Digestible Indispensable Amino Acid Scoreタンパク質のクオリティーを示す数値)は1以上なので、タンパク源としてクオリティーの高い食品といえます。一方、大豆以外の植物性食品のタンパク質クオリティーはガクンと下がります。

 

この先生ならご飯でもタンパク質が摂れると反論してくるかもしれませんが、ご飯のDIAASは0.595、つまり「クオリティーの低いタンパク質」なのです。栄養計算上では一膳のご飯で8gのタンパク質ですが、実際に使えるのはその6割、4.8gだけです。もし高齢者がこの先生を信じてタンパク質を1品に減らしてご飯を食べて満腹になる生活を続けたら、確実にタンパク質が不足して、筋肉だけでなく骨密度も下がり、血管も脆くなる可能性があります

 

筋肉不足で隠れ肥満

筋肉が不足しているのは、高齢者だけではありません。ずいぶん前ですが、女子栄養大学で、標準体重の女子学生209名の筋肉と脂肪量を調べた結果、3割の学生の体脂肪が30%以上であり、平均の脂肪率も28%で筋肉量が少ない、いわゆる隠れ肥満であったという報告がありました。

 

どんなにしっかりとタンパク質を摂取していても、筋肉を使わなければ隠れ肥満におちいります。筋肉は体の中で最も燃費の悪い臓器なので、使ってないとどんどん小さくなります。逆に、負荷をかけて定期的に使えば、筋肉は死ぬまで増やすことができます。全く運動していない人なら、椅子の背もたれを使わない、電車で座らない、荷物を持って歩くなど、普段の生活にちょっと負荷をかけるだけでも効果は出ます。

 

まとめ

もしあなたが、筋肉を使わない生活で、一汁一菜のご飯中心の食事を続けていれば、筋肉は確実に減少します。ちょっと負荷のかかった生活をするように心がけ、肉や魚、あるいは卵、乳製品といった動物性タンパク質の豊富な食品を毎食食べてください。ご飯やパンは毎食食べる必要はなく、ほどほどの量をおいしく食べることが大切だと思います。

 

発達障がい食環境支援士の講師さんから、「さい帯血で発達障がいが治るの?さい帯血保管はしたほうがいい?」という質問を広告へのリンクとともに受けました。ちょっと長いので、時間のない方は太字部分だけでもお読みください。

 

さい帯とはへその緒のこと。さい帯血とは、へその緒に含まれる血液のことで、赤血球、白血球、血漿以外にも、骨髄と同様にステムセル(造血幹細胞)を含んでいます。

 

造血幹細胞は、遺伝性疾患、血液系・免疫系・神経系疾患など、さまざまな病気の治療に役立ちますが。例えば、白血病やリンパ腫などの血液の病気や骨髄移植を必要とする病気の治療に効果が認められています。アメリカでは、1996年に公的な「さい帯血バンク」が設立されて以来、3万件以上の「さい帯血移植」が行われています。

 

ただし、発達障がいや自閉症への効果は、今のところ認められていません

 

皆さんに知っていただきたいことは、 「さい帯血移植」は献血と同様に、妊婦さんから公的バンクに寄付された「献さい帯血」が利用されていることで、お金を使ってプライベートバンクに保存されたさい帯血が使われた事例は、ほぼないことです。

 

私的な保存がその子供に使われる可能性は非常に低いため、アメリカの医療機関では、兄弟姉妹に疾患があり、その治療に使われる可能性が場合にのみ、赤ちゃんのさい帯血をプライベートバンクに保存することを勧めています。というのは、せっかくお金を使っても、ほとんどのプライベートバンクのさい帯血は捨てられるからです

 

私が見たステムセル研究所の広告では、「生まれてくる赤ちゃんのために今しかできないこと」と題して、あたかも将来に向けての保険としてさい帯血保管を勧めていますが、明らかに誇大広告です。

 

プライベートバンクに保管したさい帯血は、保険にも子供へのプレゼントにもなりません。その理由を説明しましょう。

 

理由⒈ 子供が自分のさい帯血を使用できる可能性は非常に低い

その子供が遺伝病や癌の場合、全く同じ遺伝子を持ち、がん細胞が混じっている可能性のあるさい帯血は使い物にならないからです。

 

理由⒉ 量が少ない

1つのさい帯から取れる血液はとても少量なため、移植には、型が適合する複数のさい帯血を合わせて使うことが一般的です。型が適合する他人(ドナー)のさい帯血は、「公的さい帯血バンク」からを見つけます。例えば、効果が期待できると報告する脳性麻痺の臨床試験でも、ドナーのさい帯血を利用しています。

 

理由⒊ 自閉症の改善は確認されていない

広告にある「デューク大学の臨床研究で有効性が確認された」とありますが、The journal of pediatricsに発表されたこの研究グループの論文によると、有効性は認められていません。この臨床試験では、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ2〜7歳180人を使って実施、自分のさい帯血を静脈内に移植した子供(56人)と型が適合するドナーのさい帯血を移植した子供(63人)を、移植なしの61人の子供と、6か月に比較しました。その結果、「1回のさい帯血移植では、社会性も自閉症の症状も改善されなかった」と結論づけています。

 

理由⒋ 初期費用が不明

広告では、保存料のみ提示されていますが、採取にも費用がかかります。公的な「さい帯血バンク」の場合、すべて無料ですが、私的な保存には(アメリカの場合)数千ドルがかかります。

 

理由⒌ 安全性が不明

厚生労働省のサイトには、「さい帯血プライベートバンクは、公的さい帯血バンクとは異なり、厚生労働大臣の許可を得た事業者ではないため、臍帯血の調製・保存などは国が定める基準と同様に行われているとは限りません」と記載されています。そのため、一般診療では安全性が不明なため、使われることがありません

 

理由⒍ 信頼度が不明

厚生労働省のサイトによると、現在2社のプライベートバンクがあり、「これらの事業者からは届出が出ておらず、業務内容等が把握されていないことを踏まえ、ご自身で当該事業者の業務内容、契約内容、契約終了時の臍帯血の取扱い等を十分に確認するように」との記載とともに、プライベートバンクは造血幹細胞移植法の対象外、つまり経営破綻などの理由で、プライベートバンクが保管者に無断でさい帯血を販売する可能性があることも示唆しています。

 

理由⒎ プライベートバンクのメリットが低い

現在全国6カ所にある公的さい帯血バンクには、国の基準を満たした医療機関で適切に採取された約1万本のさい帯血が保管されています。さい帯血移植にはドナーとのHLA(白血球の型)の適合率は6抗原中4抗原以上が一致した方がよいといわれていますが、今のところ90%以上の患者さんが4抗原以上適合するさい帯血を見つけています。

 

さい帯血保管をお考えの方へ

世界的に見て、プライベートバンクに保管されたさい帯血は、(量、安全性、信頼性の理由から)利用される確率が非常に低いです。利用する方法は臨床試験のみです。

 

その一方で、さい帯血は様々な疾患の治療に役立つので、公的さい帯血バンクへの寄付(無料)をお勧めします。あなたのお子さんも必要となれば利用できます。

 

さらに、あなたとあなたのお子さんの造血幹細胞は50%適合しています。万が一の場合、あなたがドナーとなって血管から採集した造血幹細胞を子供に移植することができます。

 

厚生労働省や大学病院のサイトから正しい情報を得てからご判断くさいね。

 

参考にしたサイト

厚生労働省の臍帯血関連情報

デューク大学さい帯血バンクについて

クリーブランドクリニックさい帯血バンクについて

国立がんセンター造血幹細胞移植

 

食物アレルギーは「食べることで発症する」って思っていませんか?

 

実は多くの食物アレルギーは「乾燥肌によって作られる」と、ハーバード大学教授であり、食物アレルギーの専門医であるKari Nadeau は著書、『The End of Food Allergy(食物アレルギーの終焉)』の中で書いています。

 

本来皮膚は、異物から体を守る役目があるのですが、乾燥するとその機能が低下して、アレルギーの原因となる異物の侵入を許してしまいます。

 

正しい保湿で赤ちゃんを守る

特に赤ちゃんの肌は乾燥しがちなので保湿が不可欠なのですが、保湿のためのオイルやローションで、肌荒れが悪化、炎症を引き起こすことがあります

 

いわゆるベビーオイルによく使われる使われるミネラルオイルやパラベン、ワセリンなどの石油(原油)から作られる油脂は皮膚にとっては全くの異物です。これらのローション類を塗った肌には、本来なら皮膚に繁殖するはずのない細菌などの微生物の繁殖で炎症が悪化しやすくなります。そのため、保湿しているにもかかわらず肌のバリア機能が低下してアレルギーの原因となる粉塵の侵入が防げなくなります

 

赤ちゃんを乾燥肌とアレルギーから守るために最も効果的な保湿成分はセラミドです。セラミドとは、皮膚の角質層に存在する自然な潤い成分で、細胞と細胞の間にある水分を抱え込んで逃さないよう保持する働きを持つ、バリア機能の主役です。


大人も顔だけではなく全身の保湿が不可欠です。時に手荒れを放置していると、ある日突然食物アレルギーが発症することもあります。

 

漁師さんや調理師さんのように、長年素手で魚を扱う人が魚を食べて発症するアニキサスアレルギー、長年猫を飼っている人が豚肉を食べて発症する獣肉アレルギーなどがその例です。

 

肌に十分な量のセラミドがある状態だと、肌がふっくらとして乾燥しにくく、バリア機能もしっかり働いた状態になります。さらに、セラミドが十分あると、肌がふっくらとして毛穴が目立ちにくくなるというお得な効果もついてきます。

 

冬は乾燥肌の季節です。乾燥肌だけでなく、アレルギー防止のためにも、ミネラルオイル、パラベン、ワセリン不使用で、セラミドを使ったローションで、保湿に励んでください。

 

近年アレルギーを持つ人が増加しています。その大きな理由が「清潔すぎる環境」です( Image courtesy of Shutterstock/Purino.)。

 

一生涯にわたる腸内環境の基礎は生まれてからの6ヶ月で作られ、幼児期までに「アレルギーになりやすかどうか」が決まります。そこで大きな役目を果たすのが5つのDです。

 

5つのDとは、Dirt(土)、Dogs(犬などのペット)、Detergents(洗剤、ボディーソープ、除菌スプレーなど)、vitamin D(ビタミンD)と diversity in diet(多品目の食品)です。順を追って説明しましょう。

 

Dirt&Dogs

屋外を散歩する、公園やビーチで土や砂で遊ぶ、ペットとじゃれあうことから、子どもは多彩な微生物(細菌、ウイルス、イーストなど)を消化管に取り込みます。でも心配には及びません。小腸は、「口から入ってきた外来種の菌を試して安全か危険かを学習し、将来に備える」という免疫器官としての役目があるからです。

 

子どもを取り巻く環境に存在するほとんどの微生物は、病原菌ではありません。屋外やペットから多くの菌を得て、よく学習した腸は、病原菌を排除し、食品や腸内に存在する有益な細菌は排除しない能力をつけます。

 

一方、幼い頃に土や動物に接する機会に恵まれなかった子どもの腸は、安全な食品にさえ過敏に反応して炎症を起こします。そのことが、多くの食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症の原因であると考えられています。

 

馬や牛などの家畜のいる環境で生まれ育った子どもは、ぜんそくやアレルギー疾患になりにくいことも分かっています。動物実験では、喘息症状のあるマウスに犬に繁殖するある種の乳酸菌を与えたところ、喘息の発作がおこらなくなったという報告があります。人間に関する研究では、犬と一緒に育った子どもが喘息やアレルギーになる確率は、犬のいない環境で育った子どもに比べて13%低かったという報告があります。

 

Detergents

赤ちゃんは母乳やお母さんとのふれあい、産着、兄弟、シーツなど、赤ちゃんを取り巻くあらゆるものから菌を取りこみ、お母さんから受け継いだ抗体や、母乳から得た特別なビフィズス菌の力を借りて、害のある病原菌を排除し、必要な微生物をとどめて腸内微生物の基礎作りを始めます。

 

ところが、屋内の全てが除菌されていると腸内の多様性が保てません。産着やシーツに残留する洗剤の影響で肌が乾燥し、アレルギーの原因となる物質が血管に侵入する原因になります。また、赤ちゃんの使う食器に残留する洗剤もアレルギーの原因になります。食洗機の普及によりアレルギーが増えたという報告もあります。

 

また、子供の触るもの全部を殺菌しないことも重要です。アメリカでの調査で、おしゃぶりを殺菌すると食物アレルギーの発生率が高まるという報告があります。

 

Vitamin D

ビタミンDは食物アレルギーを防ぐことが知られていますが、母乳のみで育つ乳児は深刻なビタミンD不足になりがちです。ビタミンD不足を予防する考えから、育児用ミルクにはビタミンDが含まれていています。母乳で育つ赤ちゃんは、毎日のお散歩が必須。アメリカでは生後すぐから離乳食が始まるまでは、400IU/日のビタミンDサプリメントが推奨されています。

 

Diversity in diet

食物アレルギーを防ぐためには、離乳期から様々な食品を取り入れることも重要です。特にアレルギーの原因になり得る食品、例えばナッツ類、魚介類、乳製品、卵などは様子を見ながら少しずつ食べさせることで将来のアレルギーを防ぐことができます。

 

例えば、ピーナッツの場合、少量のピーナッツパウダーを水に溶かし、その水を与えます。次の日に反応がないことが確認できれば、もう少し、量を増やして試します。そうやって徐々にピーナッツに反応しないことを確認したのちに、ピーナッツバターを少量試します。翌日まで何の反応も出なければ、量を増やし、安全であることを確認した後に、固形のピーナッツを与えます。

 

食物アレルギーは、大人になってから突然発症することもあります。次回はその驚きの原因を紹介したいと思います。

woman covered in white blanket sleeping on white bed comforter

 

先月から始まった「発達障がい食環境支援士講座」という3時間の講座で、受講生さんから受けた質問の一つに「起立性調節障害」がありました。

 

起立性調節障害とは、思春期に発症しやすい病気で、午前中や起床時に頭痛・ふらつき・めまい・嘔気嘔吐・腹痛などの様々な症状が出ることから、不登校の原因の一つに数えられます。

 

問題なのは、熱が出るわけでもなく、強い咳があるわけでもないので、本人以外にその辛さが理解できないため、「怠け病」「仮病」と誤解されがちです。

 

発達障害ではないのですが、発達障害だと間違われることも多く、間違った対策が取られる可能性があるので注意が必要です。

 

起立性調節障害は、ストレスホルモン過多、血液量不足、手足の神経がうまく作動しないなどで起こる自律神経の病気で、成長期の急激な体の成長、睡眠不足、昼夜逆転の生活、食生活の乱れなどから発症しやすくなります。


その一方で、学術文献によると、発達障がい児が、起立性調節障害を含む自律神経機能障害を起こしやすいようです。

 

イギリスでも小規模な調査ですが、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されてから10年以上経つ19歳28名のうち、20人が自律神経機能障害を持ち、そのうち13名が起立性調節障害でした。


発達障がい児に起立性調節障害が多い理由には、交感神経を介した血管収縮がうまくいかないことから脳の血流が低下、日常生活に苦しさや生きずらさから生まれる慢性ストレス、睡眠リズムのコントロールが未熟(睡眠の質と長さの不足)、偏食による栄養素不足女性ホルモンの変化などが考えられます。

 

起立性調節障害を改善するには、自律神経のバランスを整え、血液量を確保することが必要です。

 

自律神経のバランスを整えるには、質の良い十分な睡眠アイソメトリックトレーニングヨガのポーズのようなものをじーっと動かずにする感じのトレーニング)が効果的です。

 

血液量を確保するには、水分(1.5−2L)、ちょっと多めの塩分(ただし一日に合計で10gまで)、ビタミンB12、鉄、タンパク質、ビタミンDの摂取が必要です。

 

特に月経があり、肉類が苦手な女子には鉄分、亜鉛、葉酸、ビタミンB12のサプリメントをお勧めします。

 

私は、遺伝学・栄養学の博士号を持つ管理栄養士です。偏食、自閉症、問題行動のある方たちとの関わった経験をもとに、誰でもできる、ちょっと意外な「脳のバランスを整える」科学的な手法をまとめて、発達障がい食環境支援士講座」という3時間の講座を作りました。

 

講座はオンライン、または全国のカルチャースクールで受講でき、「発達障がい食環境支援士」という資格が取得できます。

 

発達障がいに関わる保護者、教育関係者、あるいはご自身が発達障がいかもと思われる方に役立つ情報が学べます。興味のある方は、こちらのページをご覧ください。

どの子供でも幼い頃には誤飲の危険性があります。ところが、発達障害のある子供の場合、食べ物ではないものを無性に食べたくなる、または食べてしまう傾向が高いことがわかっています。

 

Pica(異食症)と言う病気で、目につくところに食べたいものがあれば衝動が抑えられません。

 

A君は小学校に通う自閉症の男児です。口に入るものはなんでも食べてしまうため、Picaという診断を受けました。環境変化などでストレスが溜まるとその行動がエスカレートしてしまうので、家庭でも学校でも注意が必要です。

 

Picaには氷、生のデンプン(生のジャガイモ、米など)などの比較的穏やかなものから、土、石、プラスチック、体毛、糞便など普通では絶対食べちゃいけないものまでを欲するタイプがあります。

 

発達障害がなくてもPicaが発症することがあります。それが、鉄、亜鉛、ビタミンB12、葉酸欠乏による貧血にともなうPicaです。有名な例では、鉄欠乏の妊婦さんが氷を欲しがることが知られています。

 

6407人のPicaの症状を持つ人と10,277人のそうでない一般人を比較したメタデータ解析によると、Picaだと貧血である確率が2.4倍でした。血液検査結果で見ると、ヘモグロビン値が−0.65 g/dL、ヘマトクリット値が、−1.15%、血中の亜鉛濃度が−34.3 μg/dL、一般人に比べて低いことがわかりました。

 

Picaは重金属の一種、鉛中毒でも起こります。

 

 

鉛は、塗料、電池、有鉛ガソリン、鉛合金、カーテンの重りなどに今も使われています。日本では1980年代末頃まで、水道管の給水管新規工事には鉛管も使われていました。1995年には水道給水管への鉛の使用は全面的に禁止されましたが、もしそのような水道管が今も使われていて、飲料水として利用されているなら、鉛が鉛イオンとして溶け出し、長期間飲むことで体内に鉛が蓄積され鉛中毒になる可能性があります。ある種の漢方薬が高濃度の鉛を含み、服用者が鉛中毒になった例もあります。 

 

大人に比べて子供の鉛吸収率は高く、鉛中毒と自閉症の関係も示唆されています

 

未就学児童にPicaがどのくらい起こっているかを調べたデータがあります。発達障害を持つ3−5歳の子供を、自閉症スペクトル障害(ASD、1426人)、ASDではないがASDの症状を持つ(1223人)、ASDの症状を持たない発達障害(571人)、の3つのグループに分けて、発達障害ではない同年代の子供1663人と比べた結果、Picaの発症率はそれぞれ23.2%、16.3%、4.5%、3.6%でした。これをもとに出したPicaを発症する確率は一般幼児に比べて、ASD児が8倍、ASDではないがASDの症状を持つ幼児が3.6倍、ASDの症状を持たない発達障害の幼児は1.2倍という結果になりました。

 

つまり、ASDとASDの症状を持つ発達障害児は、食べ物ではないものを食べてしまう確率が高いことが統計データで改めて示されたのです。

 

もしあなたのお子さんがこの範疇に入るなら、管理栄養士としては、鉛を含む重金属を家に置かない、とんがったもの、口に入る小さな部品、おもちゃを手の届くところに置かない、化粧品、医薬品は鍵のかかる場所で管理、など飲み込むと体に悪いものを排除する環境整備をお勧めします。

 

意外かもしれませんが、土だとか糞便を多少食べても、余程汚染された土や、感染症にかかった人の糞便でない限り大したことにはなりません(もちろん食べないほうが良いですが)。

 

 

もしあなた自身が発達障害ではないのにPicaの傾向があるなら貧血なのかもしれません。牛肉やレバーで鉄分、亜鉛、葉酸、ビタミンB12の補給をお勧めします。それでも良くならない場合は、かかりつけの医師にご相談くださいね。

 

私は、遺伝学・栄養学の専門家です。偏食、自閉症、問題行動のある方たちとの関わった経験をもとに、誰でもできる、ちょっと意外な「脳のバランスを整える」科学的な手法をまとめて、発達障がい食環境支援士講座」という3時間の講座を作りました。

 

講座はオンライン、または全国のカルチャースクールで受講でき、「発達障がい食環境支援士」という資格が取得できます。

 

発達障がいに関わる保護者、教育関係者、あるいはご自身が発達障がいかもと思われる方に役立つ情報が学べます。興味のある方は、こちらのページをご覧ください。

「何が食べたい?」と聞くと、あなたのお子さんは何と答えるでしょうか?

 

子どもたちは、カレーライス、ピザ、オムライス、焼きそば、お好み焼き、ラーメン、ナポリタンなどの、カロリーばかりで必要な栄養素を含まない、いわゆる「空っぽのカロリー」の食事が大好きです。でも毎日こんな食事だと、発達障害のリスクが上がり、長期的には認知症のリスクを抱えたまま生きることになります。

 

これまでにも発達障害児が偏食の傾向があることをお伝えしましたが、6歳までにある栄養素が不足していると、脳が未発達のまま成長してしまうことがわかっています。その中で最も不足がちな栄養素はDHAとEPAで知られる高分子オメガ3脂肪酸です。

 

脳はその50−60%が脂質でできていて、その35%がDHAとEPAでできています。人間の脳は6歳までに急速に成長ますが、その時に脳を作る原料であるDHAとEPAが不足すると脳の発育が止まってしまいます。

 

胎児期から6歳までにオメガ3脂肪酸が不足した子供は、認知機能障害、不安症、うつ病のリスクが上がると考えられています。

 

DHAとEPAは魚介類の脂に多く含まれますが、穀類、野菜、肉類には全く含まれません。ナッツやオイルもオメガ3脂肪酸はたくさん含まれますが、これらの脂肪酸は非常に低い効率(0.5-5%)でしかDHAとEPAに変換されません。つまり、炭水化物中心の食事でなくてもマクロビやベジタリアンといった、一見健康的な食事で育った子供は、DHAとEPAが確実に欠乏します。


イギリスで1990年代から行った、14,000人以上の妊婦の追跡調査の結果、妊娠中に魚介類をあまり食べないと、子供のIQ、言語力、運動能力、社会的行動力などが低下するという報告があります。

 

ADHDと診断された子供はそうでない子供に比べて魚介類の摂取量が極端に少ないといいう報告もあります。

 

魚介類は、DHAとEPAだけでなく、脳の発達に不可欠なビタミンDも豊富です。特にDHAとEPAの多い魚介類は、イワシ、鯖、ニシン、あじ、さんま、太刀魚、ぶり、あん肝、サーモン、マグロのトロ、ハマチ、カンパチ、ウニなどです。

 

乳児の場合、母乳から摂取するので、お母さんが上記の魚介類を十分に食べていると摂取できていると考えられていますが、幼児で魚介類が苦手な場合はサプリメントをお勧めします。

 

サプリの量ですが、乳児(0−1歳)だとEPAとDHAを合わせて500 mg、幼児(1−3歳)だとEPAとDHAを合わせて800 mgが目安です。

nordic naturals.comから

 

私は、遺伝学・栄養学の専門家です。偏食、自閉症、問題行動のある方たちとの関わった経験をもとに、誰でもできる、ちょっと意外な「脳のバランスを整える」科学的な手法をまとめて、「発達障がい食環境支援士講座」という3時間の講座を作りました。

 

講座はオンライン、または全国のカルチャースクールで受講でき、「発達障がい食環境支援士」という資格が取得できます。

 

発達障がいに関わる保護者、教育関係者、あるいはご自身が発達障がいかもと思われる方に役立つ情報が学べます。

 

次回の講座は11月21日です。オンライン講座なのでご自宅から受講できます。興味のある方は、こちらのページをご覧ください。

 

発達障がい食環境支援士」という認定講座がオンラインと全国のカルチャースクールで始まります。脳機能と食事が密接な関係にあることを知っていただくために過去のブログを編集してお届けします。

 

A君は高校1年生ですが、ちょっと変わった食べ方をすることから噂になってしまいました。ちょっと変わった食べ方とは、「白いもの以外一切食べられない」ことです。

 

白いものだけなので、パンでも、白いフワフワの部分だけしか食べられません。そのおかげで友達と出かけるといった、高校生なら当たり前の生活ができません。

 

14歳のB君は、フライドポテトしか食べれません。2歳の時から12年間、朝、昼、晩と3食全てフライドポテトだけを食べて生きてきました。その結果、B君は肥満気味なのに栄養障害を起こし、骨粗鬆症と心疾患の診断を受けました。

 

このような限られたものしか食べられない症状は「回避・制限型拒食症(ARFID)」と呼ばれる発達障害で脳が作る摂食障害です。

 

「親が悪い、甘やかしすぎだ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが絶対にそうではありません。食べようとしても食べられないのです。A君にとって「食べても安全な食べ物」は白い物だけ、B君にとってフライドポテトだけなのです。それ以外のものを口に入れると死んでしまうと思うくらいの恐怖を持っているのです。

 

ARFIDは比較的新しい病気なので、診断が出ない子供もいます。C子さんの場合、高校2年生になって初めて自分がARFIDであると知りました。

 

C子さんは、7歳ごろから食べる量が少なく痩せ細って小さいため、周りの人からは拒食症だと言われていましたが本人は納得できませんでした。というのは、食べることに興味がないのではなく、朝起きると突然、安全だった食べ物が危険過ぎて食べられないことが度重なり起っていたからです。彼女は進行性のARFIDだったのです。

 

摂食障害者の64%が発達障害を持ち、そのうち41%が強迫神経症(OCD)であるというデータもあるように、発達障害を持つ人が摂食障害を持つ傾向があることはよく知られています。

 

例えば、同じ食べ物でも盛り付けが変わったり、違う皿で出てくると食べられない子供がいます。緑色の食べ物は全くダメなどの色で区別したり、あるタイプの食感は受け付けない人もいれば、臭覚が異常に発達しているために、食べられるものが少ない人もいます。

 

逆に食品が原因で自閉症や多動症の症状が出ることもあります。例えば、小麦製品を排除してグルテン摂取を完全にやめる、乳製品を排除してカゼインの摂取を完全にやめることで症状が改善したという報告もあります。

 

脳と腸の間には、Gut-Brain Axisというコミュニケーションシステムがあり、代謝物や神経伝達物を使って直接影響し合うことがわかっています。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供が胃腸障害、アレルギー、偏食を多発することから、腸内環境が脳に影響を与えるのか?あるいは脳内の神経伝達物質が腸内環境を乱すのかが研究されてきました。

その結果、社会性を司る部分の脳は腸内環境の影響を受けやすいこと、ASDの子供の腸内では、微生物の多様性が減り、ある種のビフィズス菌やプレボテラ属菌が減少することがわかりました。

 

まだ臨床試験の段階ですが、「便微生物移植」でASDの症状を緩和する治験結果が報告されました。

 

便微生物移植というとまるで糞便をそのまま移植するように聞こえますがそうではありません。この治験では、健常者の糞便を処理して作った「飲める腸内微生物のカクテル」が作られました。18名の胃腸障害を持つASDの子供はまず最初の2週間、抗生物質で自分の腸内微生物を一掃してから、腸内微生物のカクテル飲み物に混ぜて、あるいは浣腸で毎日7−8週間摂取しました(治験詳細はこちら)。カクテル終了から10週間後、胃腸障害が80%減少、行動障害も47%減少していることが確認され、2年後の観察でもその状態が維持されていました。さらに微生物の多様性が改善され、ビフィズス菌やプレボテラ属菌の増加が見られました。

 

このように「食べること」と発達障がいは密接な関係にあります。また、健常児でも「食べること」で発達障がいのような問題行動が出ることがあります。「発達障がい食環境支援士」認定講座を受講していただけるともっと詳しく学べますよ。

「小中学生の8.8%に発達障がいの可能性がある」。文部科学省は2022年12月、このような調査結果を発表しました。

 

文部科学省の別の調査によると、2006年では発達障がい児の数は全国で7000に至らずだったのが、その14年後の2020年には、14年前の14倍にあたる9万人を超えたそうです。

 

どうしてそんなに増えたのか?

 

その理由に注目すると発達障害から抜け出す可能性が見えてきました。

 

発達障がいは、脳の発達に関わる生まれ持った機能障がいです。代表的に知られているものにASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障がい)がありますが、ほかにもいくつか種類があり、症状もさまざまで、爆発的に増えているとは考えられていません。
 
その一方で、生まれつきの機能障害がなくても、「あること」から脳のバランスが崩れて「発達障がいのような」行動を起こす子どもが増えていると専門家は指摘しています。

 

その「あること」とは、食・運動・睡眠です。

 

逆に言うと、食・運動・睡眠を少しずつでも改善していくと、年齢に関わらず「発達障がい」というくくりから卒業できる人が多くいるとも言えます。

 

私は、遺伝学・栄養学の専門家です。偏食、自閉症、問題行動のある方たちとの関わった経験をもとに、誰でもできる、ちょっと意外な「脳のバランスを整える」科学的な手法をこの講座にまとめました。

 

講座の時間は3時間です。オンライン、または対面講座で「発達障がい食環境支援士」という資格が取得できます。

 

発達障がいに関わる保護者、教育関係者、あるいはご自身が発達障がいかもと思われる方に役立つ情報が学べます。

 

次回の講座は11月21日です。オンライン講座なのでご自宅から受講できます。興味のある方は、こちらのページをご覧ください。

 

 

 

医学の発展とともに各国の平均寿命が長くなっている中、アメリカだけは2010年以来伸び悩んでいます。さらに近年、1−19歳の子供の死亡率が急増しています。

 

アメリカ人の平均寿命は男性が76歳、女性が81歳。日本は男性が81.47歳、女性が87.57歳ですから、数字だけを見るとアメリカの高齢者の平均余命が短いように見えますがそうではありません。

 

格差社会のアメリカでは、さまざまな理由で25−64歳の死亡率が高いため、全国平均の平均寿命が短いだけで、80ー90代でも現役で仕事をする、あるいはスポーツや趣味を楽しむ方が大勢います。

 

ところが2020年以降、乳幼児の死亡率に変化がなかったものの、1−19歳の子供の死亡率が2年間で20%も急増しました。その主な原因が銃と薬物です。

 

下のグラフAは、1ー19歳までの死亡率を男女別に表したグラフ、Bは病気ではなく、交通事故(オレンジ)、殺人(青)、自殺(緑点線)、中毒死(水色点線)別に表した線グラフとCOVID-19による死亡率を表した棒グラフです。

 

1999年から2021年までの1ー19歳の死亡率の変異を表したグラフ

The New Crisis of Increasing All-Cause Mortality in US Children and AdolescentsJAMA. Published online March 13, 2023.

 

グラフB でわかるように、1999年以来、交通事故が死因の1位でしたが、長年の努力で減少方向にあることがわかります。

 

しかし殺人、自殺、中毒死は、それぞれ69.5%、32.7%、113.5%も増えているのです。「2020年における1−19歳の死因の約50%が銃による」というショッキングな統計結果も出ています。

 

下のグラフで自動車事故(青)を銃関連死(オレンジ)が超えているのがわかります。ミシガン大学の研究によると、アメリカでは2019年だけで、1歳から19歳の、殺人、自殺、事故を含む銃に関連した死者数は4,300人、前年比で29%増加しました。同年齢層の自動車事故による死亡者数3,900人を超えて、死因第1位となったのです。

 

1999年から2021年までの1ー19歳の死因別変異

Motor vehicle crash(自動車事故) Firearm-related injury(銃関連死) Malignant neoplasm(がん) Drug overdose and poisoning(薬物中毒) Suffocation(窒息) Congenital anomalies(先天性以上) Heart disease(心臓病) Drowing(溺死) Fire or burns(焼死) Chronic respiratory disease(慢性呼吸器不全)Current Causes of Death in Children and Adolescents in the United States. N Engl J Med. 2022 May 19;386(20):1955-1956.

 

 

死因の第3位は、麻薬、覚せい剤、違法ドラッグなどの薬物による中毒死です。

 

アメリカでは16歳から運転できるのですが、運転を禁止せずに自動車事故を減らすことができています。同様に、銃や薬物による死も予防可能なはずです。

 

どこで誰の子供として生まれても、子供が大人に、大人が高齢者になれる社会になってほしいと願うばかりです。