医学の発展とともに各国の平均寿命が長くなっている中、アメリカだけは2010年以来伸び悩んでいます。さらに近年、1−19歳の子供の死亡率が急増しています。

 

アメリカ人の平均寿命は男性が76歳、女性が81歳。日本は男性が81.47歳、女性が87.57歳ですから、数字だけを見るとアメリカの高齢者の平均余命が短いように見えますがそうではありません。

 

格差社会のアメリカでは、さまざまな理由で25−64歳の死亡率が高いため、全国平均の平均寿命が短いだけで、80ー90代でも現役で仕事をする、あるいはスポーツや趣味を楽しむ方が大勢います。

 

ところが2020年以降、乳幼児の死亡率に変化がなかったものの、1−19歳の子供の死亡率が2年間で20%も急増しました。その主な原因が銃と薬物です。

 

下のグラフAは、1ー19歳までの死亡率を男女別に表したグラフ、Bは病気ではなく、交通事故(オレンジ)、殺人(青)、自殺(緑点線)、中毒死(水色点線)別に表した線グラフとCOVID-19による死亡率を表した棒グラフです。

 

1999年から2021年までの1ー19歳の死亡率の変異を表したグラフ

The New Crisis of Increasing All-Cause Mortality in US Children and AdolescentsJAMA. Published online March 13, 2023.

 

グラフB でわかるように、1999年以来、交通事故が死因の1位でしたが、長年の努力で減少方向にあることがわかります。

 

しかし殺人、自殺、中毒死は、それぞれ69.5%、32.7%、113.5%も増えているのです。「2020年における1−19歳の死因の約50%が銃による」というショッキングな統計結果も出ています。

 

下のグラフで自動車事故(青)を銃関連死(オレンジ)が超えているのがわかります。ミシガン大学の研究によると、アメリカでは2019年だけで、1歳から19歳の、殺人、自殺、事故を含む銃に関連した死者数は4,300人、前年比で29%増加しました。同年齢層の自動車事故による死亡者数3,900人を超えて、死因第1位となったのです。

 

1999年から2021年までの1ー19歳の死因別変異

Motor vehicle crash(自動車事故) Firearm-related injury(銃関連死) Malignant neoplasm(がん) Drug overdose and poisoning(薬物中毒) Suffocation(窒息) Congenital anomalies(先天性以上) Heart disease(心臓病) Drowing(溺死) Fire or burns(焼死) Chronic respiratory disease(慢性呼吸器不全)Current Causes of Death in Children and Adolescents in the United States. N Engl J Med. 2022 May 19;386(20):1955-1956.

 

 

死因の第3位は、麻薬、覚せい剤、違法ドラッグなどの薬物による中毒死です。

 

アメリカでは16歳から運転できるのですが、運転を禁止せずに自動車事故を減らすことができています。同様に、銃や薬物による死も予防可能なはずです。

 

どこで誰の子供として生まれても、子供が大人に、大人が高齢者になれる社会になってほしいと願うばかりです。