近年アレルギーを持つ人が増加しています。その大きな理由が「清潔すぎる環境」です( Image courtesy of Shutterstock/Purino.)。

 

一生涯にわたる腸内環境の基礎は生まれてからの6ヶ月で作られ、幼児期までに「アレルギーになりやすかどうか」が決まります。そこで大きな役目を果たすのが5つのDです。

 

5つのDとは、Dirt(土)、Dogs(犬などのペット)、Detergents(洗剤、ボディーソープ、除菌スプレーなど)、vitamin D(ビタミンD)と diversity in diet(多品目の食品)です。順を追って説明しましょう。

 

Dirt&Dogs

屋外を散歩する、公園やビーチで土や砂で遊ぶ、ペットとじゃれあうことから、子どもは多彩な微生物(細菌、ウイルス、イーストなど)を消化管に取り込みます。でも心配には及びません。小腸は、「口から入ってきた外来種の菌を試して安全か危険かを学習し、将来に備える」という免疫器官としての役目があるからです。

 

子どもを取り巻く環境に存在するほとんどの微生物は、病原菌ではありません。屋外やペットから多くの菌を得て、よく学習した腸は、病原菌を排除し、食品や腸内に存在する有益な細菌は排除しない能力をつけます。

 

一方、幼い頃に土や動物に接する機会に恵まれなかった子どもの腸は、安全な食品にさえ過敏に反応して炎症を起こします。そのことが、多くの食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症の原因であると考えられています。

 

馬や牛などの家畜のいる環境で生まれ育った子どもは、ぜんそくやアレルギー疾患になりにくいことも分かっています。動物実験では、喘息症状のあるマウスに犬に繁殖するある種の乳酸菌を与えたところ、喘息の発作がおこらなくなったという報告があります。人間に関する研究では、犬と一緒に育った子どもが喘息やアレルギーになる確率は、犬のいない環境で育った子どもに比べて13%低かったという報告があります。

 

Detergents

赤ちゃんは母乳やお母さんとのふれあい、産着、兄弟、シーツなど、赤ちゃんを取り巻くあらゆるものから菌を取りこみ、お母さんから受け継いだ抗体や、母乳から得た特別なビフィズス菌の力を借りて、害のある病原菌を排除し、必要な微生物をとどめて腸内微生物の基礎作りを始めます。

 

ところが、屋内の全てが除菌されていると腸内の多様性が保てません。産着やシーツに残留する洗剤の影響で肌が乾燥し、アレルギーの原因となる物質が血管に侵入する原因になります。また、赤ちゃんの使う食器に残留する洗剤もアレルギーの原因になります。食洗機の普及によりアレルギーが増えたという報告もあります。

 

また、子供の触るもの全部を殺菌しないことも重要です。アメリカでの調査で、おしゃぶりを殺菌すると食物アレルギーの発生率が高まるという報告があります。

 

Vitamin D

ビタミンDは食物アレルギーを防ぐことが知られていますが、母乳のみで育つ乳児は深刻なビタミンD不足になりがちです。ビタミンD不足を予防する考えから、育児用ミルクにはビタミンDが含まれていています。母乳で育つ赤ちゃんは、毎日のお散歩が必須。アメリカでは生後すぐから離乳食が始まるまでは、400IU/日のビタミンDサプリメントが推奨されています。

 

Diversity in diet

食物アレルギーを防ぐためには、離乳期から様々な食品を取り入れることも重要です。特にアレルギーの原因になり得る食品、例えばナッツ類、魚介類、乳製品、卵などは様子を見ながら少しずつ食べさせることで将来のアレルギーを防ぐことができます。

 

例えば、ピーナッツの場合、少量のピーナッツパウダーを水に溶かし、その水を与えます。次の日に反応がないことが確認できれば、もう少し、量を増やして試します。そうやって徐々にピーナッツに反応しないことを確認したのちに、ピーナッツバターを少量試します。翌日まで何の反応も出なければ、量を増やし、安全であることを確認した後に、固形のピーナッツを与えます。

 

食物アレルギーは、大人になってから突然発症することもあります。次回はその驚きの原因を紹介したいと思います。