「発達障がい食環境支援士」という認定講座がオンラインと全国のカルチャースクールで始まります。脳機能と食事が密接な関係にあることを知っていただくために過去のブログを編集してお届けします。
A君は高校1年生ですが、ちょっと変わった食べ方をすることから噂になってしまいました。ちょっと変わった食べ方とは、「白いもの以外一切食べられない」ことです。
白いものだけなので、パンでも、白いフワフワの部分だけしか食べられません。そのおかげで友達と出かけるといった、高校生なら当たり前の生活ができません。
14歳のB君は、フライドポテトしか食べれません。2歳の時から12年間、朝、昼、晩と3食全てフライドポテトだけを食べて生きてきました。その結果、B君は肥満気味なのに栄養障害を起こし、骨粗鬆症と心疾患の診断を受けました。
このような限られたものしか食べられない症状は「回避・制限型拒食症(ARFID)」と呼ばれる発達障害で脳が作る摂食障害です。
「親が悪い、甘やかしすぎだ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが絶対にそうではありません。食べようとしても食べられないのです。A君にとって「食べても安全な食べ物」は白い物だけ、B君にとってフライドポテトだけなのです。それ以外のものを口に入れると死んでしまうと思うくらいの恐怖を持っているのです。
ARFIDは比較的新しい病気なので、診断が出ない子供もいます。C子さんの場合、高校2年生になって初めて自分がARFIDであると知りました。
C子さんは、7歳ごろから食べる量が少なく痩せ細って小さいため、周りの人からは拒食症だと言われていましたが本人は納得できませんでした。というのは、食べることに興味がないのではなく、朝起きると突然、安全だった食べ物が危険過ぎて食べられないことが度重なり起っていたからです。彼女は進行性のARFIDだったのです。
摂食障害者の64%が発達障害を持ち、そのうち41%が強迫神経症(OCD)であるというデータもあるように、発達障害を持つ人が摂食障害を持つ傾向があることはよく知られています。
例えば、同じ食べ物でも盛り付けが変わったり、違う皿で出てくると食べられない子供がいます。緑色の食べ物は全くダメなどの色で区別したり、あるタイプの食感は受け付けない人もいれば、臭覚が異常に発達しているために、食べられるものが少ない人もいます。
逆に食品が原因で自閉症や多動症の症状が出ることもあります。例えば、小麦製品を排除してグルテン摂取を完全にやめる、乳製品を排除してカゼインの摂取を完全にやめることで症状が改善したという報告もあります。
脳と腸の間には、Gut-Brain Axisというコミュニケーションシステムがあり、代謝物や神経伝達物を使って直接影響し合うことがわかっています。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供が胃腸障害、アレルギー、偏食を多発することから、腸内環境が脳に影響を与えるのか?あるいは脳内の神経伝達物質が腸内環境を乱すのかが研究されてきました。
その結果、社会性を司る部分の脳は腸内環境の影響を受けやすいこと、ASDの子供の腸内では、微生物の多様性が減り、ある種のビフィズス菌やプレボテラ属菌が減少することがわかりました。
まだ臨床試験の段階ですが、「便微生物移植」でASDの症状を緩和する治験結果が報告されました。
便微生物移植というとまるで糞便をそのまま移植するように聞こえますがそうではありません。この治験では、健常者の糞便を処理して作った「飲める腸内微生物のカクテル」が作られました。18名の胃腸障害を持つASDの子供はまず最初の2週間、抗生物質で自分の腸内微生物を一掃してから、腸内微生物のカクテル飲み物に混ぜて、あるいは浣腸で毎日7−8週間摂取しました(治験詳細はこちら)。カクテル終了から10週間後、胃腸障害が80%減少、行動障害も47%減少していることが確認され、2年後の観察でもその状態が維持されていました。さらに微生物の多様性が改善され、ビフィズス菌やプレボテラ属菌の増加が見られました。
このように「食べること」と発達障がいは密接な関係にあります。また、健常児でも「食べること」で発達障がいのような問題行動が出ることがあります。「発達障がい食環境支援士」認定講座を受講していただけるともっと詳しく学べますよ。