◆川口マーン恵美『なぜ日本人は、一瞬でおつりの計算ができるのか』を読む
★要旨
・なぜ日本人は、一瞬でおつりの計算ができるのか。
・この疑問に一言で答えるなら、初等教育が優れているからだと言える。
日本の初等教育は素晴らしい。
これは自信を持って言える。
・すでに最初の1年間で、あんな小さな子供たちの頭の中に、
50の平仮名と、50の片仮名と、80の漢字を、
あとで取り出して使用することが可能なように整然と、
しかも無理なく詰め込んでしまうのだから、
こんなすごいことはない。
・ドイツの小学1年生は、
たった30足らずのアルファベットに1年を費やし、それでもまだ読めない子がいる。
・日本では、素晴らしい初等教育の、そのあとがうまく続いていない場合が多い。
どうも成長戦略に不備があるのではないかと、私が懸念する所以である。
・ドイツの外国語教育は、
日本の高校生ほどたくさん受験用のイディオムなどは習わないが、基本的に、使える英語を教える。
どちらがいいか、意見は分かれるところ。
・ラテン語に限っては、ドイツでは今でも、
この言葉を習ったということがエリートである暗黙の了解のようになっている。
・そういった歴史を鑑みるまでもなく、
ラテン語は今でもエリートの隠れた勲章なのだ。
だから、彼らが自分たちの教養をさりげなく示そうとするときには、
会話にチラリとラテン語の格言を織り込んだりする。
・ドイツには大学入試がない。
いわゆる高校の卒業試験がめっぽう難しくて、
それに受かれば、大学の入学資格が取れるという仕組みになっているからだ。
・つまり、高校を卒業できた者は、原則的に、大学に進学することができる。
ドイツには、新卒の一斉就職の習慣もない。
・貴族に生まれた娘たちは、ヨーロッパ中、縦横無尽に嫁がなければならない運命だった。
その彼女たちが嫁ぎ先で無事生き延び、自分の陣営を確保するには、
言葉の習得は最重要事項だった。
・18世紀のヨーロッパ貴族のオフィシャルな言葉はフランス語だったとはいえ、
たとえば陰謀に気付くには現地語が必要だったに違いない。
言葉が死活問題につながるという状況は、
もっと昔、戦争で捕虜になり、後宮に放り込まれてしまった女性、
そして、奴隷にされた人たちも同じだったはずだ。
・そういう、言葉ができるかできないかが命綱であるような状況がしばしばあったからだろう、ドイツでは今でも、言葉の持つ意味が大きい。
政治家の失言も少ない。
★コメント
やはり、諸外国との教育の違いを
知ることは大事だ。