◆春日太一『鬼才・五社英雄の生涯』を読み解く
★要旨
・五社英雄。
フジテレビのディレクターとして、
1963年の『三匹の侍』で
「刀と刀の合わさる効果音」を開発して、
草創期のテレビ時代劇に革命的な旋風を巻き起こした。
・1980年に、
銃刀法違反で逮捕され、
一度は表舞台から姿を消す。
・しかし、1982年の
映画『鬼龍院花子の生涯』で復活。
以降は、女優たちの濃厚な濡れ場や、
ヌードに彩られた極彩色の映画を連発して
低迷する日本映画界を牽引した、
稀代の演出家である。
・五社は作品を通してだけでなく、
常日頃から、
いかに周囲の人間を楽しませるか。
そのことだけを考えてきた。
・そのため彼は、
自らの人生をも脚色していたのだ。
・これは、
そんな「全身エンターテイナー」とも言える男の、
虚実ハッタリ入り混じった生涯の物語である。
・五社英雄が撮ってきたテレビドラマ・映画には、
一貫した大きな特徴がある。
それは、主人公が
一人残らずアウトローであるということだ。
・彼らは、理想論をふりかざしたり、
自らの手で体制をくつがえそうとは、
決してしない。
ひたすらアウトローの世界の日陰に蠢き、
そして体制に
悔し紛れのように、唾を吐きかけ続ける。
・「アクション映画を貫いているのは、滅びの美学なんだ」(五社英雄)
・戦後、米軍の基地売店で
アルバイトをするようになった五社は、
その金で明治大学商学部へと進学した。
基地の軍用品を
銀座の闇市に横流ししてまで、入学金を稼いだ。
・『鬼龍院花子の生涯』以降の五社作品では、
人気女優たちが
惜しげもなく大胆なヌードを披露し、
妖艶な濡れ場を繰り広げている。
・女優を脱がすために
五社に何か特別な秘訣があったわけではない。
演じやすい環境を作っていく中で、
女優たちは五社に惚れ抜き、
身も心も任せ切っていた。
・「僕が描きたいのは、裸じゃなくて、裸を通して人間の毒を描きたいんです」
(五社英雄)
・筆者は、大学院時代、
エリートでもインテリでもない、
どこまでも泥臭く感情豊かな言葉を
明け透けに語る五社に、心惹かれていった。
そして、
彼の言葉を集めるだけ集めてみよう。
そう思い立った。
★コメント
やはり、昭和の破天荒な男たちは、おもしろい。
少しでも真似できるところは真似して、
追いつきたい。