◆菅原出『民間軍事会社。戦争サービス業』を読み解く



副題→「戦争サービス業」の変遷と現在地。



★要旨



・ロシアの「ワグネル」によって、

民間軍事会社の存在が多くの人々に認知された。

一方、民間軍事会社の歴史上、

避けて通れないのがエグゼクティブ・アウトカムズ社である。



・交戦地帯に近い「前線」と、

そこから物理的に遠く離れた「後方」という空間概念で民間軍事会社の業務を整理してみると、

民間軍事会社の主な活動は「後方」でなされることが多い。



・例えば軍事基地や政府系施設の警備、

そこに運び込まれる物資の輸送警護、

そこで働く政府の要人たちの警護、武器や装備品のメンテナンス業務や

現地の治安部隊や兵士たちの訓練といった業務も、

基本的には「後方」地域で実施される。



・自国の正規軍が十分に機能していない途上国の弱小国家や

いわゆる破綻国家の場合、

敵との直接戦闘を含めて「前線」から「後方」まですべての戦域における業務を

民間企業に委託してしまうことがある。

こうした例はとりわけアフリカの内戦においてみられる。



・アフリカの内戦において見られ、

実際に1975年から2002年にかけて起きたアンゴラ内戦や

1991年から2002年にかけてのシエラレオネの内戦において、

南アフリカの

エグゼクティブ・アウトカムズ社(EO)が内戦に参入し、

戦況に大きな影響を与えたことはよく知られている。



・EOの創設者は

南アフリカの旧アパルトヘイト体制下で

南ア国防軍第32大隊の副司令官を務めたイーベン・バロウである。



・もともと、

軍の情報機関CCBの諜報活動を行う目的で、

バロウは南アフリカの貿易会社や防衛装備品を扱う会社の社員、

すなわちビジネスマンを装って活動を行った。



・バロウはCCB内の不祥事に巻き込まれてCCBを退職し、

EOの活動に集中することになった。



・EOで初めに獲得した民間の仕事は、

ダイヤモンドの大手デビアス社向けのセキュリティ・コンサルティングの業務だった。

デビアス社の経営陣は違法なダイヤモンドの取引により

毎年数百万ドル相当の損失を抱えており、

ダイヤという高価で運びやすい「商品」の盗難に頭を悩ませていた。



・デビアス社からの依頼を受けたバロウは、

ダイヤモンドの密輸取引を行うグループにスパイを潜入させ、

そのネットワークの全体像を明らかにしたうえで警察と共に密輸グループを一網打尽にする計画を立案し、

デビアス社のセキュリティ・チームや各国の警察と組んで計画を実施した。



・これはバロウが南アフリカ軍で培った特殊偵察やCCBで培った情報収集、

秘密工作活動のスキルを、

民間企業向けに適応させて行ったサービスだと言える。



・EOに飛び込んできた次の大きな仕事は、

その後の民間軍事会社の歴史に大きな記録を残すことになる

アンゴラでの「戦闘」業務だった。



★コメント

世界の裏側は、知らないことばかりだ。

学びたい。