◆小泉悠『オホーツク核要塞』を読む(その2)



副題

→「歴史と衛星画像で読み解くロシア極東軍事戦略」



★要旨



・ちまちまと手を動かす作業が、好きである。



・壮大な理論を紡ぎ出すより、

細かいデータや事実を拾い出しては、

表にまとめていくような営みが、

圧倒的に向くようだ。



・根がオタク気質なのだろう。



・本書では、

筆者のオタク気質を全開にしてみた。



・「オホーツク海が、ロシアの核戦略と密接な関係にある」

というのは、

長年、追い続けてきたテーマでもあるので、

割にサクっと書けるのではないか、

という思惑もあった。



・しかし、新しい本を出すたびに、

思い知らされるのは、

「サクっ」と書ける本などというものは、

存在しないということだ。



・頭の中には、モヤっとしたアイデアや知識があって、

あとは出力するだけだ、

という甘い期待をもって手を出すのだが、

実際に書き始めると、そうはいかない。



・頭の中にあるのは、未整理の、

あるいは、あいまいな情報の断片だからである。



・実際に体系立った文章にしようとすると、

それらの情報を修正し、アップデートし、

抜け落ちた未知の事実を掘り起こさなければならない。



・だから、書くことは、学ぶことに他ならない。



・本書の執筆についていえば、

その過程で新たに、

ロシア海軍の部内誌「海軍論集」の購読契約を結び、

カムチャッカ半島のルィバチー基地を撮影した、

衛星画像を購入した。



・冷戦期に書かれたものも含めて、

数多くの研究書や研究論文にもあたった。



・書くという行為は、孤独なものである。

それだけに書き手の限界や思い込みによる間違いによって、

書かれた文章には、なんらかの歪みが出る。



・海は、

国家の戦力投射能力を著しく制約する。



・敵が待ち構える、

海の向こうに兵力を送り込み、

兵站を行うのは、至難の業である。

かつて、ソ連といえども

千島列島上陸作戦くらいまでが、限度であった。



・日ソ間に、陸上国境が存在しなくなったことで、

ソ連の地上戦力に対する脅威は、

近代史上で最も低下した。



・これは、ソ連から見ても同じである。

ソ連にとっての最重要戦略正面は、

欧州であり続けてきた。



・だが、極東にも

日本という有力な軍事大国が存在したことで、

軍事力を東西に分散せざるを得ないという宿命を抱えていた。



★コメント

小泉さんの独自の視点がおもしろい。

見方を変えることで、無乾燥なデータが、

ダイヤモンドになる。