今日も日本庭園と客室露天風呂が付いている美しいお部屋だ。
浴衣を脱ぐ前にJ君にお金を渡す。いつもと変わらない私たちの儀式。何事もないかのように封筒を渡し、J君も普段と変わらずにクールに受け取る。
今日はカラフルな鶴が描かれている封筒を選んだ。縁起がいいイラストのはずだったが、現実的に真逆のことが起きている。
今日も8万円。頑張って働いて手にした8万円。高いのか安いのか。ここでは何も考えない。渡さなければならないことになっているので、ただ機械的に差し出した。
浴衣を脱いで裸になり二人で露天風呂に入る。相変わらず頭の中はフリーズしている。でも「何かを聞かなければ」というフレーズが何度も頭に湧いてくる。
J君)
「アスカちゃん、お風呂気持ちいいね」
「最近仕事がめちゃめちゃ忙しかったから、アスカちゃんと温泉に来ることができて生き返るよ」
「俺、ずっとアスカちゃんに会いたかったから」
アスカ)
「・・・・・・・・」
J君)
「アスカちゃんも仕事忙しそうだよね。いつも依頼がいっぱいでアスカちゃんすごいよ」
アスカ)
「・・・・・・・・」
J君)
「忙しいのに俺の仕事もしてくれて、本当に助かってるよ」
夕食の時から相変わらず普通の話をしてくるJ君。いつもと何も変わらない。温泉に浸かってリラックスしているJ君は、ホッとしたような表情をしている。
アスカ)
「あの・・・・・・」
J君)
「アスカちゃん、何?」
アスカ)
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」
J君)
「うん!何?何でも聞いて」
夕食では適当に相槌を打っていたけれど、少し冷静になった私はさっきの件について何か話さなければならないと思った。
アスカ)
「先ほどの新幹線での話だけど」
J君)
「うん」
アスカ)
「仕事が10点って言ったのは、本当なのよね?」
J君)
「そうだよ」
アスカ)
「ということは、J君は今も仕事だからここにいるのよね?」
J君)
「そうだね」
アスカ)
「・・・・・・・・」
J君は顔色一つ変えずに、普通の会話と同じトーンで答える。動揺しないJ君の表情がかえって心に突き刺さる。
アスカ)
「それを聞いてずっとショックなんだけど・・・」
J君)
「どうして?」
アスカ)
「どうしてって・・・。誰だって驚くでしょ?」
「今まで両想いって何度も言ってくれたのに、今日になって突然仕事だと言われてびっくりするのが普通でしょ?」
「悲しくてどうしていいのか分からない」
J君)
「アスカちゃんが悲しむのがなぜか分からない」
アスカ)
「え?」
J君)
「だって俺はいつも同じ気持ちだから。アスカちゃんに会いたいし、アスカちゃんといると安心するし。今日だってアスカちゃんに会いたいから仕事を急いで終わらせて来たんだ。明日も会議だけど、この時間だけはどうしても空けようと頑張った」
アスカ)
「そういう気持ちは嬉しいけど、プライベートじゃなくて仕事で来ているって受け入れられない。驚いている」
J君)
「アスカちゃんの考え方が違うんだと思う。俺はずっと俺だから。何も変わらない」
アスカ)
「何も変わらない?」
J君)
「そう。アスカちゃんのことが好きなことも、アスカちゃんが特別なことも、アスカちゃんといく旅行だけ楽しみなことも」
アスカ)
「でもそれが仕事なら、今まで両想いと言ってくれたことは嘘ってことよね?」
J君)
「嘘じゃないよ」
J君の口調が強くなる。私が怒られているようだ。
J君)
「俺は嘘をついたことは一度もない。過去も今も。アスカちゃんに対する気持ちも何も変わらない」
アスカ)
「でも、仕事が10点なら今まで言ってくれていた両想いも私が特別なことも噓でしょ?」
J君)
「嘘じゃないよ」
「俺、いつも言っているようにアスカちゃんに嘘をついたことはない」
さらに怖い口調になる。
アスカ)
「じゃあ、仕事として特別とか両想いと言ってくれていたから嘘じゃないってこと?」
J君)
「俺が仕事としてだけアスカちゃんのことを好きなら、温泉旅行に何回も来ていると思う?」
アスカ)
「・・・・・・・」
J君)
「確かに仕事でここに来ているのは本当。だけど、仕事としてだけ好きなわけじゃない」
アスカ)
「仕事としてだけじゃない?」
J君)
「人の感情は仕事とかプライベートとかはっきり分けられるものじゃない」
「だから仕事の気持ちだけで好きと言っていたわけじゃないということだよ」
アスカ)
「新幹線でJ君が言ったように、J君が好きと言えば私が楽しめるから好きと言っていたということよね?」
J君)
「そういう仕事の気持ちもあるけど、それだけじゃないってことだよ」
新幹線の中からずっと頭が働かないのだが、この言葉を聞いてさらによく分からなくなった。
アスカの心の中)
(J君は嘘をついていない)
(でも今日は仕事で来ている)
(それに私を好きなことも嘘じゃない)
(私が特別なことも嘘じゃない)
(J君は最初から同じ気持ち)
(J君は最初から何も変わらない)
(でも仕事が10点)
(プライベートではなく仕事できている)
(でも私が特別なことは本当)
本当に何を言われているのかよく分からなくなる。解釈できない。
それにJ君が厳しい目をしている。いつもならお風呂の中でかっこいいはずのJ君だが、今は横顔が怖い。私が間違っているような気持ちになってくる。
J君と会うのも今回で17回目だ。J君がこの顔をするときには私は何も言わないほうがいい。この時の私はそれを知っていた。言ったとしても私が怖い口調で言われるだけだ。怒られている気持ちになるのが辛い。頭が働かなくて何かを言う気分も失せた。
アスカ)
「そっか」
「・・・・・・・」
J君)
「そうだよ」
アスカ)
「・・・・・・・」
その後しばらく沈黙が続いた。温泉のお湯の音だけが静かな空間に響いている。お湯は温かだが心は冷えている。J君は私の隣で目を閉じて寛いでいる。
天を見上げると、今夜は雲が多くて月が見えない。
J君)
「今日も楽しかったね。ご飯もお酒も美味しかった。アスカちゃんのお陰で明日からまた仕事を頑張れそうだよ」
「そろそろ上がろうか」
J君が温泉の湯船からすくっと立ち上がる
今はもう見慣れているJ君の裸体。
今日はいつもより白くて透明な肌に見えた。
まるで作られた映像の中にいる幻の男性を見ているかのように。
___________
後日談です。
J君からの新幹線での告白を受けてから「なぜアスカはJ君と手を繋ぐのか」「なぜその場で帰らないのか」「なぜ一緒にお風呂に入る心境になれるのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。今の私もそう思います。
この時は衝撃が大きすぎて、また、あまりにも想像していないことだったので、この時はJ君の言葉を上手く飲み込めていませんでした。
J君が言った言葉の意味は分かりましたが、それをどのように理解してよいのか分からずずっと頭がぼーっとしているような感じでした。
また、この時にJ君に仕事だと言われても、私がJ君を好きという気持ちはすぐにガラッと変わるわけではありませんでした。
いつも「大好きなJ君に嫌われたくない」と考えていたので、この時も「私だけおかしな人だと思われたくない」という考えがありました。ですからJ君に対して、動揺している自分の気持ちに気づかれてはダメだと思いました。
一番は「何が起きているのか分からない」という感覚です。私がそのような気持ちでいると思って読んでいただければ幸いです。
コメントもありがとうございます。すぐにお返事できておりませんが全部読ませていただいております。
コメント欄に「セラピストと客はお風呂に一緒に入るのか?」というご質問をいただきました。
二人でお風呂の湯船につかるかどうか、もしくはシャワーを一緒に浴びるのかそれとも別々に浴びるのか。それは施術前のカウンセリングでセラピストから質問されます。
一緒に湯船につかって入浴したりシャワーを浴びたりすることが女性の希望であれば受けてもらえます。入浴やシャワーが別がいい人は、別になります。ただし、女性が入浴やシャワーを一緒にすることを希望しても、受けてくれないセラピストもいるようです。
本来であれば客の希望を受けてくれるのがセラピストのサービスなのですが、セラピストが基本サービスをしなくても他にそのセラピストを指名してくれる女性がいれば、売り上げがあるので、セラピストは自分のしたいような接客ができてしまうという現状があります。女性がお金を払ってもしたいことをしてもらえないのは、女風の大きな問題点だと私は考えます。
私の場合は、2回目からJ君と一緒に湯船で入浴することが普通になっておりました。私は大好きなJ君と一緒にお風呂に入ることがいつも楽しみでした。シャワーで一緒に身体を洗ったりする人たちもいるようですが、私たちはシャワーは別にしていました。
この回の温泉は、J君と一緒に入りたいから入るというよりも、ボーっとして何も考えられなかったため、時間が来たので流れ作業的に一緒に入っていたという感じです。
J君に私の気持ちがバレてはならないような気がしたので、いつものルーティンを崩してはならないような気持ちでした。
客がセラピストやホストを好きになるという恋愛は、一対一の恋愛や片思いとは異なる点があります。
客がセラピストやホストにガチ恋すると特殊な環境に置かれます。好きな相手が常に複数女性とデートをしたりいちゃいちゃしていること、セラピストの出勤スケジュールやランキングを見ることができてしまうため日常的に嫉妬心が辛すぎること、他の女性の口コミやホストラブ(匿名掲示板)が読めてしまうこと、セラピストのHPやツイートを通して会っていない時のセラピストの情報が入ってくること、人によっては被り客(同じセラピストやホストを指名している女性)のツイートが読めてしまうこと等です。
冷静に考えますと、当時の私は思考回路がおかしくなっていました。自分の仕事が忙しかったお陰でギリギリの正常を保てていましたが、J君とのことになると金銭感覚も普通の思考も狂っていたように思います。
ガチ恋してセラピストにのめり込んでしまいますと、子供の学費のために長年貯めていた貯金を使い切ってしまったり、セラピストへのお小遣いとして月に100万円以上渡していたり、指名1回で50万円以上のコース料を支払えてしまったり。お金が無いのにクレジットカードで借金状態で月に何度も指名したり。普段ならありえないようなことをしていたと後から気づく女性も大勢います。うつ病になってしまったり、心療内科に通うことになった方もいます。
また最近問題になっているのは、セラピストに会いたくて大金を稼ぐために、主婦や学生、または昼職だった女性が風俗で働き始めることです。私へのDMでも「セラピストに会うためにお金を稼ぎたくて風俗で働き始めました」という女性から何通もメッセージが届いております。
ホストクラブでは前々から風俗で働く女性の問題がよく取り上げられています。女性が風俗の仕事をして心から楽しめる場合はいいと思いますが、多くの女性はやりたくない風俗の仕事をお金のために無理に行って、身を削って心身を壊してしまっている人もいます。女性向け風俗でも、客が風俗で大金を稼いでセラピストに貢ぐことが今後ますます問題になるのではないかと私は考えております。
「この時のアスカは思考停止しておかしかった」「正常な判断ができないところに、衝撃の告白を聞いてさらに固まってしまった」ということをベースにエピソードを読んでいただけますと、当時の私のおかしな行動も理解いただけるのではないかと思っております。
コメントやアメブロメッセージに励まされております。ありがとうございます。
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ー前編ー
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(注・シングルマザーはアスカのことではありません)
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[アメトピに初めて掲載して頂きました]
[ブログを途中から読んでくださる方へ]
私とセラピストJ君のストーリーは
こちらを記事を読んでから
読んでいただけますと内容が分かりやすいです。
[このブログにつきまして]
[ガチ恋や依存的な感情でお辛い方へ]
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★アメブロメッセージ、
TwitterDMは
お返事させていただいておりますが
内容によってはお返事できないこともございます。
ご理解をよろしくお願いいたします。
★現在コメントは承認制と
させていただいております。
コメントはお返事できないこともございます。
いただきましたコメントは
皆様に許可なくこのブログで
引用させていただくことがございます。
★このブログの女性向け風俗の内容は
あくまで私の視点や
私の調べたことをもとに書いています。
特に、私アスカが感じている
風俗の危険な面にフォーカスを当てています。
すべての女風店やセラピストが
私が書いてある通りということではなく
良いセラピストもいます。
一方で、
ブログに書かせていただいているような
危険な現状もあるのだと
受けとめていただければ幸いです。
Twitterでも呟いています。
よろしければアメブロメッセージや
TwitterDMで皆さんの声を
お聞かせください。
アスカ✨女性向け風俗ユーザー@memory_asuka【女風でのガチ恋沼が辛い理由】 ・女性は本来男性を独占したい ・だが独占できないのが非常に辛い ・心が辛いからより性的快楽に依存 ・本能からの精神的苦痛が増大する ホスラブの書き込み。論理的で明確。頭で割り切れないのは本能が理… https://t.co/RLuf2fLtze
2021年07月28日 09:12