J君が「もっと批判してもらおう!」と言ったのだから、きっとこの大炎上は成功なのかもしれない。私にはよく分からないのだが。

 

 

 

しばらくしてから見ると、Twitterでは引用ツイートの数もいいねの数も、どんどん増えていたところから、急にパタッと静かになった。

 

 

 

掲示板では相変わらずヤングドーナツおばさんとシリウス客のことを悪く書ている人もいたが、少し前ほどではない。他のセラピストのことや過去のJ君についての言動を書いている人もいた。

 

 

 

すぐに電話してくれると思ったJ君だったが、次の話せたの3日後の夜だった。

 

 

 

 

♪♪♪♪♪♪♪

 

 

アスカ)

「もしもし!J君!やっと話せてうれしい!」

 

 

J君)

「アスカちゃん、お疲れ様~」

 

 

私はずっと気が気ではなかったのに、J君は普段通りでのんびりした声だ。

 

 

 

アスカ)

「炎上、大丈夫なの?J君のところに悪口とか届いていない?」

 

 

 

J君)

「うん、全然大丈夫だよ!そういうDMは全く届いていないよ」

 

 

 

「それにしても、やっぱり炎上したね!笑」

 

 

「大炎上じゃん!」

 

 

 

「俺、掲示板でめちゃくちゃ批判されてた笑」

 

 

 

アスカ)

「私もあんなに批判されるなんて思ってなかった。ヤングドーナツおばさんとかシリウス客とか見た?」

 

 

J君)

「うん、見たよ!笑 アスカちゃん、いっぱいかかれてたね」

 

 

 

アスカ)

「お客様に何か言われた?」

 

 

 

J君)

「うん、めちゃくちゃ言われた笑」

 

 

「誰に会っても、もうその話ばっかり笑」

 

 

 

アスカ)

「やっぱり・・・涙」

 

 

 

J君)

「それに、今いるお客様から、そういうDMばっかり届いて対応が大変になってる笑」

 

 

「みんな、ツイートや掲示板を見て俺のこと心配してくれてるから」

 

 

 

アスカ)

「DMも来るのね涙」

 

 

「みんな、何て?」

 

 

「指名を止めるって言った人、いるでしょ?涙」

 

 

 

J君)

「そんな人、いるわけないじゃん!」

 

 

「炎上したって掲示板に書かれたって、誰も俺から離れないから大丈夫だよ」

 

 

「みんな心配してくれてるだけだから」

 

 

「俺にすぐにでも会いたい、大変そうねって」

 

 

「私がJ君の話を聞くねって言ってくれる人が増えたよ!笑」

 

 

 

アスカ)

「そうなら、本当に良かった涙」

 

 

「炎上して指名が一つでも減ることになったら、私のせいですし」

 

 

 

J君)

「大丈夫!予定通り、今までのお客様からも指名の打診が増えてるよ」

 

 

 

「ただ、ヤングドーナツやシリウス客って誰なのってめちゃくちゃ聞かれる笑」

 

 

 

「もちろん、何も答えないから安心して!笑」

 

 

 

アスカ

「あ、あのヤングドーナツって、なぜその名前にしたか知っている?」

 

 

 

J君)

「もちろんだよ!笑」

 

 

「前に旅行したときに、一緒に食べた駄菓子でしょ?笑」

 

 

 

J君がちゃんと覚えていてくれることに愛情を感じる。私が聞いたことはいつもほとんどのことを覚えてくれている。やっぱり私の宝物であるヤングドーナツは、今も二人の大切な記憶なのだ。

 

 

 

アスカ)

「そうよ!覚えててくれて嬉しい笑」

 

 

 

J君)

「俺が忘れるわけないじゃん」

 

 

 

アスカ)

「そうよね!あの時の輪投げチョコと迷ったけれど、ヤングドーナツにしたの。可愛いかったでしょう?」

 

 

 

J君)

「確かに可愛いかもだけど、お客様にはヤングドーナツのこと、色々言われちゃってるけどね笑」

 

 

「まあ、炎上したからその名前もそれでよかったと俺は思っている!」

 

 

 

アスカ)

「J君が喜んでくれているなら良かった涙」

 

 

「お店の人は何か言っていた?」

 

 

 

J君)

「店長もアスカちゃんに感謝してたよ!」

 

 

「アスカちゃんのお陰でツイートが拡散されたから、お店の名前が前よりも広まって嬉しいって」

 

 

 

アスカ)

「店長さんも喜んでくれたなら本当に良かった・・・」

 

 

J君)

「店のセラピストには羨ましがられたよ」

 

 

「Jさん、やりましたね!って笑」

 

 

 

アスカ)

「やりましたねとは?」

 

 

J君)

「つまり、目立つことができて、多くの人に注目されましたね!ってこと」

 

 

「そういう機会ってなかなか難しいからね。どんなに目立ちたくてツイートを頑張っても」

 

 

「だから他のセラピストは、大炎上した俺が羨ましいんだよ」

 

 

「それに、やっぱり新しいお客様からの問い合わせ増えてるよ!!!」

 

 

 

アスカ)

「えっ?そうなの?」

 

 

 

J君)

「うん。炎上してからいきなりDMが増え続けている」

 

 

「会ってみたいですって」

 

 

「やっぱりアスカちゃんのお陰だよ!!!」

 

 

「本当にありがとう!!!」

 

 

 

アスカ)

「お問い合わせ、増えたんだ・・・」

 

 

 

私は複雑な気持ちになった。J君が注目されて、新人さんに負けないように指名が増えることは私の願いでもあった。だから本当にお問い合わせが増えたのなら、私の希望していた通りになったということだ。

 

 

 

大好きなJ君が喜んでいるのだから、そんな声を聞けて私も嬉しい。だが、問い合わせが増えるということは、新しい女性とさらに会っていくということでもある。

 

 

そう考えると、嬉しい気持ちと同時に、胸がチクッと痛む。

 

 

 

アスカ)

「それなら私も嬉しいけれど、ちょっと嫉妬しちゃうかも」

 

 

「J君が他の女性にどんどん会っていったら、J君のこと本気で好きになる人が増えるってことよね?涙」

 

 

 

J君)

「それは大丈夫だって」

 

 

「みんな、ただのお客様だから。アスカちゃんとは違うから」

 

 

 

「いつも言ってるけどたとえお客様に俺が好かれたって、俺にとって誰に会ってもただの仕事だから」

 

 

 

アスカ)

「そうだといいけど涙」

 

 

 

「でも、お問い合わせ増えたことは私も嬉しい」

 

 

 

「J君が目立つために書いた口コミだったから」

 

 

 

J君)

「今でもDMが増えてるけど、これからきっともっと増えるよ」

 

 

 

アスカ)

「え?なぜ?」

 

 

「炎上が収まってきてからも、お問い合わせ増えるの?」

 

 

 

J君)

「そう、この業界はそうなんだよ」

 

 

「一回炎上すると、それが噂になって、そこから掲示板ではしばらくはその話題が続くから」

 

 

「炎上した影響って、その渦中の時だけじゃなくてその後にしばらく続くんだよ」

 

 

「それに嘘を書き込む人もいるしね」

 

 

アスカ)

「嘘ってどういうこと?」

 

 

J君)

「そうだなぁ、ヤングドーナツさんを見たことあるよとか、Jとシリウス客が二人で歩いていたよとか笑」

 

 

 

アスカ)

「え、そんなことを書く人もいるの?全然知らないのに?」

 

 

 

J君)

「そう、引用ツイートで誰かを批判したり掲示板で悪口を書くような人は、妄想が強い人だから。みんな好き勝手書くんだよ」

 

 

 

「だから掲示板なんて見ないほうがいいし、信じなくていい。適当に書かせておけばいいんだよ」

 

 

 

アスカ)

「そうだったのね・・・」

 

 

「これからも続くのね・・・涙」

 

 

 

 

J君)

「アスカちゃんは何も心配しなくていいから。何か言われるとしたら俺だしね!笑」

 

 

 

「それに、誰に何を言われても、実際に問い合わせ増えているから俺は嬉しいよ!!!」

 

 

 

「アスカちゃん、さすがです。やっぱりアスカちゃんの才能だよね」

 

 

 

「あ、ごめん、そろそろ俺、指名入っているから、行かなくちゃ」

 

 

 

 

アスカ)

「あ、ごめんね」

 

 

「忙しい中にお電話ありがとう」

 

 

「とにかく、私は炎上がJ君の役に立てていて本当に嬉しい」

 

 

 

J君)

「うん、それは本当に俺も感謝している!」

 

 

「またゆっくり会って話そう!楽しみにしてるからね!」

 

 

 

 

 

この炎上によって、J君が注目されて話題になり、本当にお問い合わせが増えた。

 

 

 

これを私の才能と言ってくれたJ君だが、いまいちピンとこない。だが、J君が喜んでくれるならそれが私の喜びだ。

 

 

 

私には予想外の現実となったが、世界一大好きなJ君の役に立てたことが何よりの幸せだ。

 

 

 

他のセラピストが、この炎上に対してJ君を羨ましがるとはこちらも予想外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次の日の朝。もう一度、掲示板とTwitterを見る。なんとさらに増えているではないか。

 

 

 

まさに「炎上」が文字通り私の目の前で繰り広げられている。大好きなJ君のために、小さな炎だけでも点いたらいいなと考えていたが。そんな小さなものではなく、私からすれば大炎上だ。

 

 

 

見るのが怖いし、私の口コミに対する悪口ばかりで胸の痛みが増大してくる。

 

 

 

掲示板の中では、あの口コミを書いた人として、「ヤングドーナツおばさん」や「シリウス客」と呼ばれていた。

 

 

 

(掲示板より)

「Jの客って、ヤングドーナツおばさんみたいな女ばっかりなんだよwww」

 

「シリウス客って、馬鹿みたいなポエムを書いて頭いい人アピールして情けない女」

 

 

 

いたたまれなくなりスマホの画面を閉じて机の上に置いた。どうしていいのかやっぱり分からない。だがJ君の言った通り、今日も私は何もしなくていいのだろう。

 

 

 

それに炎上している内容に対して私ができることは何もない。

 

 

 

スマホを覗いていると、頭の中がまるでゲームセンターの中にいるかのように激しいBGMが鳴り響いているかのよう。頭がガンガンしてくる。重低音のダンスミュージックが私の思考をかき混ぜているような感覚。

 

 

 

スマホを手から放した途端に、いつもの通りの静寂が戻ってくる。

 

 

 

シーン。

 

 

 

部屋の中では何も起きていない。窓の外を見ると、やはりいつもと同じ景色が広がり、今日も空は青くて美しい。そこにはのんびりとした空気が穏やかに流れている。

 

 

 

木々の葉っぱがキラキラとしていて、今日もちっちゃな鳥たちが可愛い声でおしゃべりしている。

 

 

 

スマホの中で起きている炎上と、私が立っている場所の静けさのギャップに頭がクラクラしそうになる。こんなにも違うことが同時に起きていて、しかも、どちらもたった今、展開されている現実だ。

 

 

 

大炎上となってこれからどうなっていくのだろう。不安に飲み込まれそうになるが、J君は笑っていたからきっと大丈夫なのだろうと何度も自分を落ち着かせる。

 

 

 

J君はこの状況をどう思っているのだろう?LINEで聞いてみることにした。

 

 

 

アスカのLINE)

「おはよう!今日もお仕事頑張ってね」

 

 

「すごい炎上しているけど、このままでいいの?涙」

 

 

「これって、これからどうなるの?」

 

 

「私、怖いし不安なのだけど」

 

 

 

昼頃にJ君から返信が届く。

 

 

 

J君のLINE)

「アスカちゃん、お疲れさま!」

 

 

 

「やったじゃん!!さすがアスカちゃんだよ!!!」

 

 

 

「アスカちゃん、本当にありがとう!!!」

 

 

 

「放っておけばいいから。炎上しても大丈夫。書きたい人に書かせておけばいい」

 

 

「アスカちゃんに直接何か言ってくる人は誰もいない。それに言いたくてもアスカちゃんが誰かなんて誰も分からないし」

 

 

「それにそのうち収まる大丈夫だよ。気にしなくていいから」

 

 

 

アスカのLINE)

「J君に迷惑かけていないならいいけど」

 

 

「また電話できる時に電話してね(;_:)」

 

 

 

J君のLINE)

「オッケー、電話するね!」

 

 

「今、ちょっとバタバタしてるから、時間が空いたら連絡する!」

 

 

 

 

冷静になってみると、芸能人や著名な人が注目を浴びるのとは違って、口コミを書いている人が誰なのかは確かに分からない。

 

 

 

掲示板を書いている人もポストしている人も、Twitterの「マリン」がヤングドーナツとシリウス客とは分かっていない。それを考えると、また少しホッとした温かさが胸に広がっていく。

 

 


こうしてJ君が新人セラピストに勝つために、注目してほしくて書いた渾身の口コミは、結果的に本当にその通りになった。

 

 

 

しかもJ君から「さすが」「ありがとう」というメッセージも届いた。

 

 

 

私にとっての生まれて初めての大炎上は、私の予想とは大きく異なる形で起きた。

 

 

 

これがはたして良いことなのか、それとも悪いことなのか。頭の悪い私には分からない。

 

 

 

だが、J君が嫌がっていないどころか感謝までされた。


 

 

 

 

 

 

 

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電話を切ってから、頭の中がぼーっとしてしまう。J君が言っていたことが上手く整理できない。

 

 

 

ただJ君は怒っていなかった。それに何もしなくていいと言う。

 

 

 

私は掲示板には誰でも書きこめるから、書いてある批判に対して一つ一つ反論したくなってしまう。

 

 

 

「それは違う」

「そういう意味じゃない

「J君はそんな人じゃないの」

「もうこれ以上書き込むのはやめて」

 

 

 

こんな内容を書き込んだほうがいいと思っていた。反論しなければ、間違った解釈のままになる。

 

 

 

しかし今の状況をよく分かっていない私はJ君に従ったほうがいい。今の私は何も手を出すべきではない。

 

 

 

頭も心もいっぱいいっぱいだ。落ち着かない気持ちのまま、もう一度、掲示板とTwitterを開いてみる。

 

 

 

J君と話したせいか、全身の震えは収まり、少しだけさきほどよりは冷静になれている。恐怖でいっぱいの私だったか、画面の文字が少しだけ頭に入ってきた。

 

 

 

口コミのツイートがさらにいいねとリツイートが増えている。なぜこんなにどんどん多くなっていくのだろう?私にはよく分からない。

 

 

タイムラインを見ているうちに。あることに気づいた。

 

 

 

私の口コミが、他の人に引用ツイートされているのだ。初めて見る光景でびっくりする。しかも、引用ではなく、女風ユーザーと書いているアカウントにおいて、自分のツイートに私の口コミに対する意見らしき内容も書いてあった。

 

 

(引用ツイート)

「何これww 」

 

「こんなバカな口コミ書く人いるんだ」

 

「こういうのってセラピストにとってどうなの?ww」

 

「変な口コミ発見!w セラピストも大変だねwww」

 

「すごすぎ。やばい。しかもヤングドーナツwwwww」

 

 

 

(あるユーザーアカウントのツイート)

「さっき、おかしな口コミ見ちゃった。私もあういう風にならないように気をつけなくちゃ笑」

 

「なんか見ちゃったけど、あの口コミのセラピストって○○店のナンバーワンだよね?あういう客がいるわけ?w」

 

「強烈な口コミ話題になってるね。あれはやばい。どんなユーザーなんだろう?多分、おばさんだよねw」

 

「あんなこと書いて恥ずかしくないのかな。店もよくあれを投稿したな笑」

 

 

 

心臓がヒュッとなった。私の口コミに対してこんなに意見を言ってくる人がいるなんて。

 

 

 

私の口コミへの引用ツイートやツイートにもいいねが多く、このように一つの投稿が広がって、多くの人が知ることになるのだと初めて理解した。

 

 

 

やっぱり怖い。心臓が高鳴り胸が痛い。私に対して、やばい、変、おかしいといっぱい書いてある。掲示板を見ると、どんどん揶揄するような言葉が増えていく。

 

 

 

J君から相談されて、どうにかして目立ちたいと思い他のお客様とは大きく異なる口コミを書いたのだが、本当に注目されている現実を突きつけられると、どうしていいのか分からなくなる。

 

 

 

しかも、私の目立つ方法とは正反対。ひどい言葉、批判、悪口、馬鹿にする言葉ばかり。胸がキリキリして痛すぎる。

 

 

 

そしてJ君はそれに対して怒っていない。さらに批判させようとまで言ってくる。ピースの顔文字も届いた。

 

 

 

よく分からないが、本当に注目されていることだけはだんだんと分かってきた。

 

 

 

誰が書いているのかは分からない。何歳ぐらいの人でどんな仕事をしていてどこに住んでいるのかも。

 

 

 

どこでこんなひどいことを書いているのだろう。その人の自宅の部屋?それともインターネットカフェ?

 

 

 

これがSNSというものなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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自分のことが書かれていることも辛いが、J君に迷惑をかけていると思うといてもたってもいられなくなってきた。

 

 

 

だが、おかしなことが起きていることに気づいた。

 

 

 

今朝、確認したJ君のLINEには「予定通り」と書いてある。しかも、笑顔でピースまでしている。これってどういうこと?

 

 

 

掲示板には「Jに幻滅」と書いた人までいたのだから、すでに大きな迷惑をかけてしまっているはず。でも、LINEの中でJ君は笑っているし、怒った様子もない。

 

 

 

掲示板を眺め続けていた自分から意識を引き戻す。J君にすぐにでも謝らなければ。

 

 

 

 

アスカのLINE)

「J君、Twitterも掲示板も見たよ!」

 

 

「ごめんね、J君のことが悪く書かれてて(>_<)」

 

 

「口コミを削除ってできるの?すぐにでも消したほうがいいよね?どうすれば削除できる?」

 

 

 

数時間してから返信が届いた。

 

 

 

J君のLINE)

「消さなくていいしそのままで大丈夫だよ!」

 

 

 

「俺たちが思ってた通り、注目されたね(^^)」

 

 

 

J君は、やっぱり怒っていないどころか喜んでいるようにさえ見える。

 

 

 

迷惑をかけてなさそうで少しだけ安心した。だが、J君はなぜ悪く書かれているのに笑顔なのだろう。

 

 

 

私はよく分からなくなり、すぐに返信した。

 

 

 

アスカのLINE)

「大丈夫なのね?」

 

 

「でも、掲示板の書き込みもいいねも増えてるみたい」

 

 

 

「迷惑かけて本当にごめんね(;_:)」

 

 

 

「ちょっとでいいから電話で話せる?」

 

 

 

もう一度掲示板を見た。さらに書き込みが増えている。短いスパンでどんどん更新されていく。

 

 

 

[匿名掲示板より]

 

「あいつ馬鹿だよ」

 

「どういう神経してんの」

 

「オーラとかって、何?私よく分かんないんだけど」

 

「Jって恥ずかしくないのかな、あんな口コミ書かれてwww」

 

 

 

Twitterも怖々と開いてみる。

 

 

 

なんと、リツイートがさらに増えて20以上になっている。いいねも100に届きそうだ。短時間で数が変わることに驚かされる。

 

 

 

J君からすぐに返信が届いた。

 

 

 

J君のLINE)

「本業が終わって、今夜の指名前ならちょっとだけ話せるかも」

 

 

 

アスカ)

「忙しいのにありがとう」

 

 

「じゃあ、電話待ってるね」

 

 

 

その日も自分の仕事が山積みで、やらなければならないタスクに追われている。メールの対応など大変だけれど、今日は仕事があって良かった。仕事に取り組んでいる間は、少しだけ掲示板やTwitterのことを考えないでいられるから。

 

 

 

だが心臓がバクバクと高鳴り続けている。J君から緊迫した様子は少しも感じられなかったけれど、私の心の中は怖い気持ちが拭えない。

 

 

 

どうしようと思いながらも、無心でパソコンを叩き続けた。

 

 

 

夕方に、ようやくJ君からの通知音が鳴った。気持ちは恐怖でいっぱいだが、本業とセラピストの仕事の合間に、忙しくても電話してくれるJ君の優しさに幸せが溢れる。

 

 

 

 

アスカ)

「もしもし、J君!!!」

 

 

 

J君)

「アスカちゃん、お疲れ様!」

 

 

「どうしたの?」

 

 

J君はいつもと同じ声。そして私の恐怖など、全く分かっていない様子だ。

 

 

 

アスカ)

「LINEありがとう」

 

 

「予定通りって書いてくれてたけど、掲示板とTwitter見たの」

 

 

「内容がひどすぎて、怖くなって・・・」

 

 

「私、どうしたらいいの?」

 

 

「口コミは削除したほうがいいよね?」

 

 

「J君のこと悪口書いている人もいたの。見たでしょ?」

 

 

「ごめんね、私のせいで泣」

 

 

 

J君)

「全然大丈夫だよ!」

 

 

「前にも言ったけど、俺のこと何か言われても俺はノーダメージだから」

 

 

 

アスカ)

「そうなの?」

 

 

「J君のこと幻滅って書いている人もいたよ?泣」

 

 

「掲示板、J君も見たでしょ?」

 

 

J君)

「いたねぇ笑」

 

 

「俺も掲示板見たけど、あそこはみんな好き勝手書く場だから」

 

 

 

「俺のことを書かれても、俺には全く影響はない」

 

 

 

アスカ)

「ひどいこと書かれても?」

 

 

 

「これからJ君を指名しようとしていた人が、やめちゃうかもしれないよ?」

 

 

 

J君)

「それは大丈夫」

 

 

「掲示板を見たぐらいで指名を止める人は、もともと指名しようって本気で思ってないから」

 

 

「Twitterを読んでも同じ。炎上で指名をしないって決める人は、そもそも利用していない人も多いんだよ」

 

 

 

「女風を利用しないで掲示板やTwitterだけ書いている人が大半なんじゃない?」

 

 

 

「人に対して勝手に文句を言う人ほど、当事者じゃない人が多いんだよ。どの世界でも」

 

 

 

 

アスカ)

「え?そうなの?」

 

 

「掲示板って、全く関係ない人が書くことがあるの?」

 

 

 

私は、掲示板やTwitterとはそれに関係している人、お店を利用している人、そのセラピストに会っている人や会いたい人が書くものだとばかり思っていた。

 

 

 

J君)

「そうだよ!多分、利用していない人のほうが多いよ。文句を書いているのは」

 

 

 

アスカ)

「え?そうなの?」

 

 

 

「なぜ、自分は利用していないのに掲示板やTwitterを見たり書いたりするの?」

 

 

 

J君)

「うーん、俺もよく分からないけど、多分、暇なんじゃない?笑」

 

 

 

「暇すぎて、誰かに文句言って楽しんでるんだろうねきっと」

 

 

 

「俺、掲示板もTwitterも全く興味ないからよく分からないけどね」

 

 

 

「そもそも、俺は人に全く興味がない。だから誰かに何かを書かれても、『俺の何を知ってるの?』って思うだけだよ俺は」

 

 

 

「だから、アスカちゃんも気にしなくていいよ!」

 

 

 

 

アスカ)

「そうなのね?知らなかった」

 

 

「まさか、全く関係ない人が書いているなんて」

 

 

「でも、関係ある人が書いていたり、J君のことを気にしていてTwitterを見ていた人がJ君に対して悪い印象を持ったらどうすればいいの?」

 

 

 

J君)

「それでも、大丈夫だよ!」

 

 

「だって、たとえ書かれたとしても、みんな、すぐに忘れるしね笑」

 

 

 

「特にこの業界は入れ替わりも激しいし、いろんなやつが目立つし、もう昨日までのことなんてみんな忘れるって」

 

 

 

「だから、俺がたとえ集中攻撃されたって全く問題ないから大丈夫だよ。アスカちゃん、本当に気にしないで」

 

 

 

アスカ)

「そういうものなの?私、ひどいこと書かれたから傷ついてずーっと引きづってるし、これからもずっと辛いのだけど」

 

 

 

J君)

「アスカちゃんは影響受けすぎだよ。たかだか掲示板とかSNSに」

 

 

アスカ)

「・・・・・」

 

 

J君)

「でもさ、予定通り、注目されたね!」

 

 

「こうやって一時的にでも炎上すれば、みんな俺のことが気になって調べてくれるから」

 

 

「俺は、問い合わせは増えるとみてる」

 

 

 

アスカ)

「え?あんなにひどいことを書かれても、問い合わせが増えるのね?」

 

 

J君)

「そうだよ!そして指名も増えるよ、このまま炎上してくれれば」

 

 

アスカ)

「指名も増えるの?!」

 

 

 

J君)

「そう、前に言ったように、俺を気にしてくれる人が増えるから」

 

 

「そして、夜の世界では、良くも悪くも注目さえされれば、掲示板やTwitterを見た人が俺に会いたいって思ってくれる」

 

 

 

アスカ)

「ひどいこと書かれても会いたいと思われるのね?」

 

 

 

J君)

「そうだよ!」

 

 

「怖いもの見たさってやつ?笑」

 

 

 

J君が言っていることがまだ上手くつかめないのだが、それでもJ君は怒ってもいないし私が迷惑もかけていないことに安堵した。

 

 

 

むしろ指名が増えると言う。

 

 

 

J君)

「店長も喜んでたよ!あのツイートは店長が投稿したんだけど、今までの中で一番反応が多いって!」

 

 

 

「店のポストって、口コミ載せてもほとんど反応なんてないものだからね。ツイートしてもいいねがゼロのこともあるし」

 

 

 

「だからアスカちゃんの口コミが初めてこんなに注目されたって!」

 

 

 

アスカ)

「店長さんまで褒めてくれてるのね・・・」

 

 

 

「予想外すぎて追いつけないのだけれど・・・」

 

 

 

「私はこれからどうすればいいの?」

 

 

 

J君)

「アスカちゃんは何もしなくていいよ。言いたいやつには勝手に言わせておけばいい。逆に言ってもらって、どんどん炎上させよう!笑」

 

 

 

「せっかく注目されてるんだし、どんどん批判してもらおう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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受けとめていただければ幸いです。

 

 

 

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TwitterDMで皆さんの声を

お聞かせください。

 

 

 

 

昨日はついに何も起きなかった。炎上や批判はもうないのだろうと諦めていた。口コミが注目されるのはJ君とお店の期待だったけれど、一日中、あまりにも静かだったのでJ君には申し訳ない気持ちでいっぱいのまま眠りについた。

 

 

 

次の日の朝。

 

 

 

起きてすぐにスマホを開くと、珍しく朝にJ君からのLINEが届いている。普段は夜中に連絡が届くことは少ないので、目覚めと共にJ君の言葉に触れることができることが嬉しい。

 

 

 

きっと投稿した口コミを見てくれたのだろう。お礼の連絡をしてくれたのだとぼんやりした頭で思った。

 

 

 

スマホを見ると、予想外のメッセージがそこにあった。

 

 

 

J君からのLINE)

「アスカちゃん!」

 

 

「やった!」

 

 

「予定通りだね(^^)v」

 

 

 

アスカの心の中)

(ん??)

 

 

(予定通りとは?)

 

 

 

何を言っているのか一瞬分からない。はたして予定通りとは。

 

 

 

まだ起きた直後で頭がはっきりしない。

 

 

 

私が寝てから少しでも掲示板に書かれたのかなと考えた。

 

 

 

アスカの心の中)

(もしかしたら、少しでも見てくれた人がいたのかしら)

 

 

 

(そして、ほんの少しでも掲示板の書き込みが増えたのかな・・・)

 

 

 

まだ何が起きているのかよく分からない。炎上もないままだったので、私の口コミはあまり読まれなかったのだろうなと。

 

 

 

まずは起きて洗面台で顔を洗う。お気に入りのタオルで顔の水滴を丁寧に拭った。


 

 

アスカの心の中)

(よく分からないけれどTwitterや掲示板を確認してみようかな)

 

 

 

きっと少しだけ誰かが見てくれたのだろう。

 

 

 

先にTwitterを開いてみた。

 

 

 

アスカの心の中)

(えっ?!)

 

 

(これ何?!)

 

 

 

私が書いた口コミが、スクリーンショットをされている。そしてなんと、その画像がお店のアカウントでツイートされている。

 

 

 

まさか自分が書いた口コミが、ホームページそのままの画像としてTwitter上でツイートされるとは思わなかった。

 

 

 

これまでTwitterのタイムラインを眺めていると、J君のお店でも他のお店でも、お客様の口コミをツイートしているのは見たことがあった。だが、J君ではないセラピストの口コミには興味がなかった私は、気にも留めていなかった。

 

 

 

だが、そこにあるのは私の口コミだ。予想外のツイートに驚かされた。

 

 

 

しかも、10以上のリツイートがされている。いいねも50以上だ。過去に私がツイートしたときには、いいねが届いても10にも満たいものばかりだった。それからしばらく仕事の合間にツイートしていたけれどいいねも少ないし、楽しくなくなってきたので止めてしまっていた。

 

 

 

アスカの心の中)

(え?これってどういうこと?)

 

 

 

(リツイートやいいねがこんなに?)

 

 

 

もう注目されないと思っていたので、あっけにとられた。

 

 

 

アスカの心の中)

(掲示板も何か書いてあるかも・・・)

 

 

 

怖い気持ちを精一杯抑えながら、嫌いなサイトを開いてみる。

 

 

 

アスカの心の中)

(あっっ)

 

 

すぐに私のことだと書き込みが目に飛び込んだ。

 

 

 

[匿名掲示板より]

 

 

「なにあの口コミ」

 

「あれ書いた人、馬鹿じゃない?」

 

「シリウスだって。何それ」

 

「ポエマーかよ」

 

「あんなの普通書く?」

 

「きっとばばあだよ、あんなこと書くの。デブスに決まってる」

 

「意味わかんない」

 

「Jってこんな変な客がいるの?」

 

「わたしJが気になってたけど、ちょっとJに幻滅したwwwww」

 

 

 

心臓が止まりそうになった。まるで連続して弓矢が胸に向けられて、どんどん刺さっていくような感覚。

 

 

全身が冷たくなってくる。

 

 

 

読み進めていくと、夜中に書き込まれているだろう内容が沢山あった。

 

 

 

「ヤングドーナツだって、馬鹿だよこいつ」

 

「Jってこんな客いるの?」

 

「このおばさん、自分に酔ってるよね」

 

「ヤングドーナツって、もしかしてJの太客のあの人じゃない?」

 

 

 

なぜか私が誰なのかを探すような書き込みまであった。

 

 

J君が言っていた通りだ。本当に掲示板の書き込みが増えている。

 

 

 

読んでいるうちに身体が震えてきた。

 

 

 

アスカの心の中)

(なにこれ・・・)

 

 

(怖い・・・)

 

 

(こんなにいっぱい書かれてどうなっちゃうの?)

 

 

 

何に対して怖いのか自分でもよく分からない。口コミに対してひどい言葉が並んでいることが、恐ろしくてたまらなくなってきた。

 

 

 

そして、最も怖いこと。

 

 

 

なんとJ君まで悪く書かれているではないか。J君のことを気にしていた誰かが私の口コミのせいで幻滅してしまったら、J君の予約が減ってしまうかもしれない。

 

 

 

それなら、私のせいでJ君に迷惑をかけていることになる。

 

 

 

それだけは絶対に避けたい。J君にとって嫌なことが起きたら、私はどう謝ればいいのだろう。

 

 

 

掲示板を読み進めるほど、さらに身体が震えてきた。

 

 

 

「めっちゃきしょい」

 

「アホな女」

 

「ヤングドーナツって受け狙い?全然面白くないんだけど」

 

「こういう客っているよね。目立とうしてすべる女」

 

「Jってあんな接客してるわけ?」

 

「銀河とか奇跡とかww」

 

「あのおばさん、なんか勘違いしてない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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