和洋折衷のデザインがされたお食事処。黒を基調にした壁と白の通路がオシャレだ。心の中はちっとも楽しくないけれど、初めて目にする豪華な雰囲気に「こんなに素敵なインテリアがあるのね」と思った。だがいつものような感動はない。

 

 

 

 

個室に通される。木目が入った低いテーブルの両脇に紺色の座布団が置かれている。靴を脱いでJ君が座る。私も靴を脱いでJ君の正面に座る。

 

 

 

 

スタッフさんからドリンクメニューを渡されたが、飲み物なんて何でもよかった。J君は生ビール。私はグラスシャンパン。味なんてどうでもいい。J君が勧めてくれたものを適当に選んだ。

 

 

 

 

 

アスカの心の中)

(飲み物代はいつも私が払うのよね・・・)

 

 

 

 

支払いには慣れているのだが、メニューを眺めるJ君の顔を見るとこんな考えが浮かんできた。夕食代金を含めて宿泊の費用は事前にクレジットカードで決済している。だが飲み物代は毎回後払いだ。いつも数千円だが、旅館での飲み物は高額だ。支払うときに「けっこう高いのね」といつも思う。

 

 

 

 

楽しい会話をする場面で、今日は頭がボーっとしている。

 

 

 

アスカの心の中)

(仕事が10点・・・仕事が10点・・・仕事が10点・・・)

 

 

 

 


J君はいつもと変わらず楽しそうだ。

 

 

 

 

アスカの心の中)

(仕事が10点について何かを聞かなければならない・・・)

 

 

 

 

新幹線の中から今まで、ずっとこの考えが頭に浮かんでいる。

 

 

 

 

 

だがいざ何かを聞こうとしても何を聞いていいのかわからない。ずっと信じてきたことが違っていた。それだけは理解できる。それは分かるのだが、その違っていた内容があまりにも大きすぎて心の中はいっぱいいっぱいなのだ。

 

 

 

 

それでなくても普段から鈍感な私。上手に考えがまとまらない私が、突然の告白を受けて何を聞けばいいのだろう。

 

 

 

 

心が岩のように固まった。何も考えが浮かばない。心の中も頭の中も真っ白だ。

 

 

 

 

飲み物が運ばれてきて私は流れ作業のように乾杯をする。J君はニコニコしている。

 

 

 

 

 

今日の懐石料理も豪華だ。美しい前菜から始まって、メインで運ばれてきたお刺身が新鮮なのが分かった。

 

 

 

 

 

何かを聞きたかったけれど私は何も聞けなかった。ずっと前から楽しみにしていた旅行でルンルンしていた私に、予期せずJ君から事実を突きつけられて、ここで何を聞けというのか。

 

 

 

 

 

言葉が出てこない私。J君の話に適当に相槌を打った。

 

 

 

 

頭がフリーズしてよく分からない私だったが少しずつ状況が飲み込めてきた。さっきの言葉を嫌でも思い出す。

 

 

 

 

新幹線でJ君が言った言葉。「俺、完全に100%プライベートだったら、ここに来る理由が無くなる」ということ。

 

 

 

 

つまり、私の目の前にいるJ君は、今までのようにもう「両想いのJ君」ではないのだ。「アスカのことが好きなJ君」でもなければ「アスカが本気で好き」なJ君でもない。

 

 

 

 

目の前にいるJ君は今までとは別人だ。

 

 

 

 

私の目の前でおいしそうにビールを飲み、楽しそうに話し、ニコニコと懐石料理に手を付けているJ君は「100%プライベートだったらここに来る理由がないJ君」だ。

 

 

 

 

どうやってそれを受け入れろというのだろう。大好きなJ君が「仕事だからここにいるJ君」だということは分かったが、今まで両想いだった相手に対してそんなに簡単に受け入れられるだろうか。

 

 

 

私の心は氷のようだ。だがそれをJ君にバレたくはない。

 

 

 

 

J君)

「そうだ、アスカちゃん!仕事のことなんだけど」

 

 

 

 

食事の途中からJ君の本業の話になる。今までボーっとしていた私だったが「仕事」という言葉を聞いて、スイッチが勝手に切り替わる。

 

 

 

どんな状況でも仕事は仕事だ。お金を受け取っていなくても自分の仕事の成果にそのことは関係がない。それにJ君に仕事ができない女とは思われたくなかった。引き受けてからずっとそう思っている。その気持ちはそのままだ。すぐに変わるものではない。

 

 

 

 

アスカ)

「うん、仕事の話をしましょう」

 

 

 

 

ここでJ君の仕事という共通の話題があって良かった。J君の話を適当に聞き流すのも苦痛だったからだ。仕事となれば話は別だ。氷のように冷え切っていた私の心が、少しだけ温度が増した。

 

 

 

J君

「いつもアスカちゃんのお陰で助かってるよ!本当にありがとう。アスカちゃんのお陰で前よりも上手くいることがたくさんある!」

 

 

 

「アスカちゃんの能力はやっぱりすごい!尊敬する!」

 

 

 

「アスカちゃんにお願いしてよかったよ!」

 

 

 

「それであの仕事の事なんだけど・・・」

 

 

 

 

 

J君が褒めてくれるのは嬉しい。少しでも役に立っているなら私の本望だ。J君とは両想いではないという気持ちでぐちゃぐちゃだが、それとは別に「仕事専用で使っている脳」が勝手に動いてくれて助かった。

 

 

 

 

私の頭は仕事モードでJ君の受け答えをしている。「恋愛用の脳」は死んでいてフリーズしたままだが、仕事用の脳はちゃんと動いてくれている。

 

 

 

 

J君)

「アスカちゃん、本当にありがとう!!」

 

 

 

アスカ)

「うん・・・・」

 

 

 

 

J君)

「これからもアスカちゃんを頼りにしてるから!」

 

 

 

 

アスカ)

「・・・・・・・」

 

 

 

 

J君の「これから」という言葉を聞いて、勝手に作動してくれていた仕事脳から恋愛脳にまたスイッチが切り替わる。

 

 

 

 

アスカの心の中)

(「これから」って、これからも仕事を一緒にするの・・・?)

 

 

 

(これから・・・・・私達はどうなるの・・・・?)

 

 

 

 

J君)

「今日もアスカちゃんと仕事の話ができて良かった!」

 

 

 

「また仕事のことを連絡するからね」

 

 

 

 

J君を見ていると、J君は私に対して今までも、そしてこれからも何も変らないようだ。

 

 

 

 

アスカ)

「うん・・・・」

 

 

 

 

よく分からないまま、やはり適当に返事をした。

 

 

 

 

 

食事の最後にご飯とお味噌汁が運ばれてきた。全く食べる気にならない。J君に今の気持ちを気づかれたくないので、右手にお箸をもって仕方なくお味噌汁だけ口をつけた。

 

 

 

 

普段なら夕食の時間は大好きなJ君と久しぶりにいちゃいちゃできる期待感で胸がいっぱいになる。キスしたい。抱きしめてもらいたい。いっぱいくっつきたい。J君と一緒に気持ち良くなりたい。そんな高揚感が胸から溢れ、ワクワクしながら食べるご飯は格別だ。しかもドキドキしていることはJ君にバレないように秘密のまま。これから一緒にお風呂にも入れるかと思うと、ご飯の味も飲み物も何倍もおいしい味がする。

 

 

 

 

 

でも今日は違った。とにかく頭が働かない。

 

 

 

J君)

「そろそろ部屋に帰ろうか」

 

 

 

アスカ)

「うん・・・」

 

 

 

二人でご馳走様をして、靴を履く。ボーっとしたまま。身体にも力が入らない。夢を見ているかのよう。せっかく高級旅館で過ごしているのに現実味がない。楽しくもない。

 

 

 

 

食事処を後にしながら、普段と何も変わらないJ君の姿を目にして、頭がぼーっとしている私にぼんやりと疑問が湧いた。

 

 

 

 

 

アスカの心の中)

(そういえば・・・・)

 

 

 

 

(これからお部屋に帰って露天風呂に入るのよね・・・)

 

 

 

 

(お風呂に入ってから)

 

 

 

 

(今日もJ君はいつものようにイチャイチャするつもりなのかしら?)

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

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