オレンジ色のお花とハンドタオルの箱をそっとテーブルの上に置いた。
お誕生日会を終えて、いつものように一緒にお風呂に入る。裸のJ君と肌を重ねて温かなお湯の中で過ごせる時間が大好きだ。今夜は特にくたくたなので、長時間歩いてやっと部屋に着いた時からずっと、湯船の中でのんびり過ごしたくなっていた。
実は、今夜、J君にお願いしたいと思っていたことがある。恥ずかしいお願い事なのだが、今夜はお誕生日だから、勇気を出して言ってみようと決めていた。
約1週間前、仕事の合間にインターネットを見ていたらあるサイトが目に留まった。
「好きな人と今よりももっと盛り上がって気持ち良くなれる夜のプレイ」
というタイトルだ。
私はJ君とのいちゃいちゃタイムにいつも大満足していた。いつも気持ち良くて至福だったから不満は何もない。ハグもキスもお互いの身体に触れ合うことも、一分一秒に幸せが詰まっている。最初から最後までJ君がそばにいてくれるベッドでの時間はゾクゾクするような快楽と恍惚の連続だ。
だから今まで性的なことに対して要望はなかった。だがこの時は自分で探すべきホテルとレストランの予約がなかったので、次に会う日まで考える時間が増えていた。
そこで偶然見つけた「好きな人と盛り上がれるプレイ」を読んでみたくなったのだ。
このサイトに私は驚かされた。今までJ君としたことがないことが沢山書かれていたからだ。
ソフトSMのやり方や、イチャイチャの時に使用できる玩具の使い方も説明されていた。
私が心惹かれた項目があった。「性感帯は身体中にいくつもある」という文章だった。それまでの私は、性感帯と言えば性器辺りのことだと思い込んでいた。
だが身体のどこでも性感帯として開発できると書いてある。私には新しい発見だった。
サイトには「もっと気持ち良くなるためにお互いにいつもの性感帯以外にも色んなところを触ったり舐めたりしてみるのがよい」と書かれていた。もしJ君とそうしたら、どんな気持ちがするのだろうと想像した。
そのサイトには、具体的例が載っていた。「肘、膝、膝の裏、耳の裏、おでこ、肩、くるぶし等、普段触れないところも舐めてみると、感度が高まってもっと気持ち良くなります」と書かれている。
私は好奇心で、これをJ君とやってみたくなったのだ。J君はいつも「アスカちゃんのやりたいことが俺のやりたいこと」「アスカちゃんの願いは俺が叶えてあげたい」と言ってくれるから、このこともお願いすればきっと同意してくれるだろうと考えた。
アスカの心の中)
(お風呂から上がってベッドにいったら、サイトに書いてあったことをJ君とやってみたいな)
優しいJ君だから、私が断られるはずがない。それがたとえベッドの上であっても。
そんなことを考えながら、温かなお湯に浸かっていた。
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2021年07月28日 09:12