J君からのLINEはいつも嬉しいものだ。だが、通知音を聞いた瞬間、嫌な予感がした。
前回の出来事があったからだ。温泉旅行の直前に「会議が入った」というLINEが届き、待ち合わせが2時間遅くなった。
その時の記憶が蘇る。嫌な気持ちのままLINEを開く。
J君)
「アスカちゃん、ごめん!遅くなりそうで19時でもいい?(>_<)」
予想した通りだ。遅れるという連絡。しかも、今回は「会議」とか「打ち合わせ」という理由も書いていない。ただ「遅くなりそう」と書かれている。
お誕生日会の日なのに19時になってしまうなんて。ショックで落胆してしまう。
しばらく頭がボーっとしている。
しかも前回も2時間の遅れで、今回も2時間の遅れだ。同じぐらいの時間で遅れるなんて、こんな偶然があるのだろうか。一瞬「わざと遅れているの?」とよこしまな考えが湧いてきてしまう。それぐらい「前回と同じ2時間」が気になってしまう。
私は一秒でも早く会いたいのに、J君は遅れることに悲しさで胸が痛くなってくる。
だが、ぼーっとしながらも、今日のこれからのことを考えてみる。
J君は嘘をついているわけじゃなくて、本当に本業で忙しいのだろう。突発的な会議が入ることはよくあると教えてくれていたから。
それにこれから久しぶりに会えるのに、悲しい気持ちのまま過ごしたくない。せっかく会えるし、きっと今日も沢山いちゃいちゃしてくれるはずだ。特に今夜はお誕生日会なのだから、キスもハグも、いつもよりいっぱいしてくれるだろう。
これから大好きな人に会えるのに悲しくて切ないままの気持ちを引きずりたくない。だから、J君の仕事を信じることにする。
今日はJ君がホテルも食事の場所も決めてくれたし、キスやいちゃいちゃをしてもらえるのだから、時間が遅くなってもJ君の優しさに感謝しよう。
そう思って、待ち合わせが伸びた2時間分を、仕事をする時間として切り替えた。心は暗いままだが仕事は無心で行った。
19時前に到着するように、指定された駅の改札へ。
J君は、前回と同じように笑顔で現れた。少し疲れた表情だ。
J君)
「アスカちゃん、急に仕事が入っちゃってごめんね」
アスカ)
「ううん、大丈夫よ。久しぶりに会えて嬉しい!」
そういうJ君は、やはり前回と同じように、私に対して悪いと思っている態度には見えない。
「仕事が忙しいのに、終わらせて来たんだよ」という態度に見える。だけどJ君はいつもクールだから私がそう見てしまっているだけなのだろう。
暗い気持ちで駅の中を並んで歩く。
J君にとって思い出の場所であるこの駅は、よく訪れていたそうで、慣れている様子でスタスタ前を行くJ君。
大好きな人の隣で、周りを見ながらのんびりと歩きたい私は、心の中で「どうしてそんなに早く歩くのだろう」と少し悲しくなった。
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後日談です。
前回の旅行もそうでしたが、今回も直前に時間の変更をお願いされました。
基本的に、セラピストと会う時間はあらかじめ決まっているので、普通であればスタート時間が遅くなることはありません。セラピスト都合の時間変更や時間短縮になった場合は、お支払額が減ることも考えられます。
しかし、私の場合、この時期は時間の長さに関係なく定額(八万円)を支払っておりましたので、J君からすれば、時間数が少ない方がありがたかったのです。長く一緒に過ごしても、お支払いを受け取る金額が高くなるわけではないからです。
それならば、できるだけ短い時間にしたいと思ったのでしょう。それに、時間を短縮しても、私は一度も批判を言ったことがありませんでした。
J君が大好きで会えることが幸せだと思っていましたから、会えることに意識を向けて、悲しいことをできるだけ考えないようにしていました。
しかし、今の私は分かります。時間を直前に変更させられたり、日程を変更させられる客は、セラピストに舐められているのです(あえてこう断言します)。もちろん、本当に急な仕事が入ることも考えられます。その場合は、客に対して「申し訳ない」という気持ちが伝わるものですよね。
過去記事を読んでくださった方はご存知と思いますが、1年前のお誕生日会は、初めてのお誕生日にもかかわらず、なんと延期となりました。日程の変更をお願いされたのです。その時の理由は「本業の出張が入った」でした。
後から分かったことがあります。本業をしているセラピストの場合、理由は何とでも言えます。
「会議が入った」
「急な打ち合わせ」
「急に出張になった」
「上司に○○を頼まれた」
これを言われたら、優しい女性はそのまま受け入れることしかできません。特にガチ恋してしまっている場合は、「嘘をついているでしょ?」とは言えないものです。
これは後からJ君に聞いたのですが、本業を理由にしてキャンセルや日程変更をすることもあると教えてくれました。今思えばですが、後からとはいえよく私に本当のことを打ち明けてくれたものです。
私は舐められていたのだと当時は分かりませんでした。J君には「何でも許してくれる簡単な客だ」と思われていた事でしょう。
この時の私は「J君のことを理解できるのはこの私だけ」と思い込んでいました。
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(注・シングルマザーはアスカのことではありません)
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私とセラピストJ君のストーリーは
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2021年07月28日 09:12