ある幹部自衛官の退職金
何時か書こうと思っていた、自衛官の退職金に関する記事。過去の話ですし、制度も年々改正されています。特に自衛官の定年延長や若年退職者給付金の期間延長や就職援護に関する制度変更等、大きく変わろうとしています。当初、明細等を掲示しようとも思いましたが、さすがにそこまでは…ということで、途中の計算式も端折って、簡単な式と結果のみを掲載します。婚活ネタというより、今後の人生設計の参考にしたいという方向けの色合いが濃いと思います。それではさっそく見ていきましょう。退職手当基本額:21,254,359円退職手当調整額: 1,626,000円退 職 手 当 額 : 22,880,359円これが世間一般でいうところの退職金です。ここから税金が控除されます。退職手当控除なので、通常の税率より軽減されています。所 得 税 額:▲217,268円地 方 税 額:▲685,700円地方税一括徴収額:▲396,000円諸 控 除 額 合 計 :▲902,968円振込額(所謂手取額):21,977,391円何処と比較して…という考え方をする方が多いようですが、目に見えない様々な制約を含んでの額です。代表的な例としては、・独身(単身赴任)曹士は、営舎内居住義務(艦艇乗組み義務)・自由に海外旅行に行けない(海外渡航許可申請)・夏季、年末年始の休暇が世間一般と同じ時期の取得が困難な場合あり勤務や演習、訓練といったことは本業の一部ですから、その点の制約も加味しているとも言えますね。課業中(業務中)の精神的自由度は、民間企業や他公務員と比較しても低めなのかな、とも思いますが、その環境に長年身を置いていると慣れてしまいますので、明確な意識はしていませんでした。組織を離れ、他の組織に身を置くことで、よりその差異を認識した、といったところです。また、ニュースなどで報じられた際に、相対的に考えるようなことでもあり、むしろ平素からそんなことを考えていたら、とてもではありませんが勤め上げることは叶わなかった思います。目の前の任務、業務に対応するのに必死でした。退職金の使途、人によっては知識もないのに不動産投資に手を出し失敗する人がいました。現在は分かりませんが、自衛官に限らず、知識、経験もない分野に身の丈に合わない投資をする人たちがいます。例えば株式投資や投資信託について、証券会社や銀行の担当者などの口車に乗せられて投資をし、そして資金を溶かすということは、結構よく耳に、目にします。本当なのか、とフィクションの記事ではないかと思う行動を取った内容を目にします。また、定年2年後に支給された若年退職者給付金の確定申告の仕方を知らない、という者が一定数存在しています。確定申告自体、したことがないという本当に信じられない例もあるようです。この辺りは、退職前の業務管理講習等で必ず教わっているはずなのですが・・・。退職金は、家庭内というか夫婦でよく話し合わないといけませんが、それは退職時期を遡ること数年前から始めないといけません。概ね10年前、5年前が区切りもよいかと思います。始めは大枠を、徐々に細部を詰めていく感じです。必ず必要なもの、余裕があれば支出したいもの出来たらいいな・・レベルのもの、などといった感じで。多くの家庭では、住宅ローンの返済、又は住宅取得のための一部として。また子供の学費、或いは親の介護のための費用に充てるなど、様々だと思います。これらの手当てをした後で、海外旅行に行きたいとか、車を買い替えたいとかになるのではないでしょうか。そして、なお余力があれば、非公開の株を買うとか、まだ世間に公開されていない「必ず儲かるという話」に出資するとか、色々あるでしょう。この中に、自身や配偶者に対する労わりと感謝の気持ちを形にすることがあってもよいのではないかと思います。自衛官を退職後、再就職をしないものが一定数います。余裕資金があり、就労せずとも生活できるという実例、私は複数知っています。それが幸せなのか否か、私には判断できません。就労しないことで、通勤、就労による身体の運動量が低下するなどし、長期目線で見た場合、不健康になるかもしれません。或いは、不要のストレスから解放され、よりリラックスして長生きするかもしれません。見た目だけ、表層的な情報だけで他人を羨むとか、そういった次元で物事は考えない方が良いように思います。退職金を決める最大の要素、それは俸給月額です。階級によることろが大きいのですが、より分かりやすく考えるとそこにつきます。昇任による号俸の昇給幅は、自衛官俸給表をじっくりと見て下さい。例えば夫(自身)が曹の場合は、現階級(1曹なり曹長なり)の現在の俸給から考えられる、定年時期の想定俸給が退職金のベースになります。退職手当基本額=俸給月額×支給割合退職手当調整額=調整月額×月数(60月)支給割合は、ネットを調べると出てきます勤続35年以上は47.709となっています。ただし、毎年の法改正でこの率は変わることがありますので、現時点(令和7年7月)での情報となります。ちなみに、勤続年数と支給割合は以下の通り(現時点)。32年:43.8169533年:45.3235534年:46.8301535年以上:47.709試算俸給月額:400,000円勤続年数33年:400,000×45.32355=18,129,42034年:400,000×46.83015=18,732,06035年:400,000×47.709= 19,083,600こんな感じです。本記事における、計算間違いその他の誤記、誤解、認識不足等についてのご指摘は結構です。(笑)修正等はご自身で。ここ重要ですが、新隊員や練習員を経て3曹に昇任した者のうち、任期満了退職金(いわゆる満期金)を貰っていたら、その分勤続年数から控除されます。陸自の曹長、勤続36年としても、3曹承認前、満期金を1度(1任期:2年)貰っていたら、一度退職している扱いになりますので、35年-2年=33年が退職手当の対象勤続年数となります。扱いとして、退職したから満期金を貰ったという整理になります。このため、このことが頭(記憶)から欠落していると、「想定より少ない!」などと会計隊に怒鳴り込み、返り討ちにあるという情けないパターンになってしまいます。調整金は、退職前5年間の階級により支給されます。退職5年前から1尉の場合は、そのまま当てはめます。退職3年前まで1曹で、その後曹長として2年としたら、それぞれの額を計算して…といった具合で調整月額が異なります。2佐:43,350円3佐:32,500円1尉~3尉:21,700円准尉:21,700円曹長~1曹:21,700円退職者数は2佐~1曹が多いと思いますので、その辺りを私の承知している情報を記載しています。正確な情報は法令に当たってください。細部に正確でない記載などがあるかもしれませんが、この程度のことはFPにお金出したりして(無料であっても)見てもらわなくても法令に決まったことですので、法令調べたり、防衛省、人事院等のHPを調べれば分かります。自衛官でも職種によっては、人物によっては、知識不足、理解力不足などにより、「全く」知らない者がいるのが現実。また知ろうとも思わない者もいる(いた)ので、本当に恐ろしい。退職後は自分で調べ、判断し、行動しないといけません。このため上記の者のうち一定数は、既に書きましたが2回目の若退金の確定申告要領を知らないといって、ネットに相談をするという情けない行動をする者がいますね。社会常識をもっと増やさないといけないのでは、とお節介ながら思ったりもしました。最後に。この記事では意図的に触れなかった若年退職者給付金について。退職手当は労働の対価の後払い。若年退職者給付金はこれから生じるであろう、所得の減額を補うもの。(未来のお金)同じ年でかつ近い時期に支給されるので、退職手当と1回目の若年退職者給付金を合わせて「退職金」と理解している人(中の人、外の人、コンサルなど)が物凄く多いように感じますが、別ですよ。定年離婚を企図されているそこの奥様。残念ですが若年退職者給付金は共有財産にはなりません。判例で認められているのは、若年退職者給付金の給付後に婚姻生活を送っていた人との関係において、です。この件は判例が数件しかないため、今後の裁判所の判例を積み重ねているしかありませんが、原則として未来の生活保障は共有財産にはならないのが通例と私は認識しています。欲の皮を突っ張らかすのはほどほどに。ごくごく一部のこうした例外を除けば、再就職等の収入と退職金、若年退職者給付金で生活してくこととなります。令和9年以降の退職者については、若年退職者給付金の対象期間が延び、前期2回(従前の仕組み)に加え、後期2回が支給されます。若年退職者給付金の支給を受けなくても生活できるの理想ですが、現実はかなり厳しです。特に曹で退職した者は平均約95%が給付金を満額支給されています。つまりそれだけ退職後の所得が高くない、ということです。例えば、3佐で退職した者のうち、若年退職者給付金を満額支給されている割合は71%。つまり29%の者は所得が一定以上あるため若年退職者給付金を減額されたり、不支給となっています。更に1佐になると、全額支給されている割合は38%にまで低下します。※省人事局給与課作成の「第4回処遇・給与部会(令和7年5月30日)資料より。←これで検索するとPDFファイルがヒットします。階級が人格を表しているわけではありません。責任と権限を表すものが階級(階級章)です。結婚に階級は関係ありませんが、結婚生活には収入という形で多少なりとも影響があります。夫婦共働きが一般的となり始めていますが、それでも収入が大いに越したことはないかと思います。昇任試験や指揮幕僚課程受験のために勉強している際には、「未来の生活の豊かさのために奮闘している夫」に寄り添ってあげてください。←現役の自衛官妻の皆様へ。夫の出世ばかりを追い求め、鞭打つだけの方は本末転倒。飴と鞭、うまく使い分けて下さい。お分かりと思いますが男なんて単純な生き物ですから。自衛官妻候補生課程の学生諸子は、上記のことも踏まえつつも、まずは価値観の近い方と出逢うことが先決。結婚は手段であって目的ではありません。幸せな人生を過ごすために自衛官と結婚したいとお考えのはず。目的は人生の幸福。(幸せな人生)それを達成するための手段が結婚ではないですか~。長い結婚生活ですから、価値観が合わないと途中で倒産(離婚)します。企業再生できなくもありませんが、それは基本例外であり、誰もが再生できるわけではありません。その夫婦だから再生できたわけです。統計学的に排除される異常値(一部の例外)は異常値。文字数、ここまで4,400文字を超過しています。纏まりなくなってますね。何事も、身の丈に合ったものを。洋服選びだけではなく、他のことにおいても。以上