はてさて国立天文台三鷹キャンパスの構内であるのか、そうでないのか…。この微妙なロケーションにあるのが「三鷹市星と森と絵本の家」、こちらでございます。

 

 

訪ねたのは7月7日、つまりは七夕の日だったのですけれど、折しも開館記念日とやらではそこここに子供たち向けのイベント用に仮設テントが建てられていたり。もっとも、お昼どきという時間のせいか?来訪者は少なかったですけどね。

 

 

2009年にオープンしたようですが、まだまだ新しいと見えるこの建物、この施設が何かしら国立天文台と関係があるのか?ということが、まず気になるところですけれど、肝心なのはこのエントランス部分の奥に繋がる昔の建物の方のようですな。

 

 

中庭に面した形で、かような日本家屋が連なっている。これ、国立天文台(大正時代の建物といいますから、東京天文台時代の、か)職員用の社宅というか、寮というか、そういう建物だったのであるそうな。それを三鷹市が借り受け?居抜きで中を「絵本の展示や絵本を楽しむ場」として運営しているというのことのようで。ちなみに、この建物は「国立天文台1号官舎」という名称の下、国のではありませんが、三鷹市登録有形文化財第1号になっているそうな。

 

 

エントランスから古い建物へと導く通廊部分では「公募絵本原画展」が行われておりました。この絵本の家が「天体」や「宇宙」をテーマに描かれた絵本を公募するという企画は、今年度(2023年度)で10回目となるようですが、今回の最優秀賞作品『風のつよい日のはなし』(いのうえはるな作)の原画が展示中ということで。

 

 

 

国立天文台にゆかりあるだけに「天体」や「宇宙」をテーマに…といって、地球そのものをお寿司にしてしまおうとはなかなかに突飛ですけれど、こういうぶっ飛び方をしているのは、きっと子供たちは喜ぶんだろうなあと。

 

というところで、この回廊ギャラリーを抜けた先にいよいよ国立天文台の旧官舎が繋がっておりまして、古い和風住宅をそのままに親子と絵本の交流の場を作り出しているのでありました。

 

 

 

スペースの使い方に工夫があるばかりではなしくて、展示などもひと工夫しているようでありますね。例えばこんなふうに。

 

 

生きものの体には水が欠かせないとして、ヒト(子ども)の体の70%が水分であることを示した上で、体重15kgの子どもが1週間に摂取する水分量をあれこれの飲料で例示してあったりするという。ここでもやはり身近なところから「科学の子」に繋がる道を見せているといったところなのかもですね。

 

 

元々の間取りが書かれているレイアウト図を見ますと、女中部屋なんつうものまであって時代を感じさせるところがありますですねえ。ちなみに、こちらは図でいうと最も下にある書斎にあたる部屋になりますが、床の間の掛け軸は官舎時代からそのままのものであるのかどうか…。

 

 

掛かっていたのは軸装された浮世絵といいましょうか、むしろ瓦版のようなものですかね。タイトルには「百一年目の日蝕」と。天文台官舎らしいではありませんか。

 

 

記事には101年前の天明六年五月朔日以来の皆既日食とありますので、101年後とは1887年(明治20年)8月19日の日食を指すのでありましょう。「頗る奇異なり」と言いつつも、「一代一度の觀物と云うべし」とは、もはや日食をして天罰が下る兆しなどという考えはなくなっていたのでしょうかね。これもまた、明治なのでありましょう。

 

てな具合に館内をひと巡りした「三鷹市星と森と絵本の家」は、本来の設立趣旨とは違う興味で覗いてしまったかもしれませんですが、これはこれで古い建築物の活かし方のひとつとして、「なるほどね」と思ったものなのでありました。