9月17日(日) 梅若能楽学院会館
能 『竹生島』
シテ(漁翁 龍神)土田英貴 ツレ(蜑女 天女)川口晃平 ワキ(大臣)村瀬慧
アイ(天女に使えるモノ)山本則重
笛:熊本俊太郎 小鼓:大倉礼士郎 大鼓:原岡一之 太鼓:金春惣右衛門
地頭:小田切康陽
狂言 『柿山伏』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(山伏)山本泰太郎 アド(柿主)山本凜太郎
仕舞 『敦盛』 髙橋栄子
『忠度』 井上貴美子
『玉鬘』 富田雅子
『鉄輪』 伶以野陽子
地頭:梅若長左衛門
(休憩)
能 『松風』・見留
シテ(松風ノ霊)山崎正道 ツレ(村雨ノ霊)山中迓晶 ワキ(旅僧)殿田謙吉
アイ(須磨の浦人)山本則孝
笛:松田弘之 小鼓:飯田清一 大鼓:柿原孝明 地頭:梅若楼雪
梅若会の定式能。
トリに『松風』が出て、現在習い中の謡『松風』が大変に難しく、その途中研鑽に参加しようと。
能『竹生島』、3回目だけど、梅若は初めて。初期に習った謡で、ほぼ記憶しているし、謡える。念のため謡本も乗っていくが、ほぼ見ない。謡は初心者向け。物語もわかりやすい、気楽な能。
極めて抽象的に感想を書くと、落語会でいう、開口一番二つ目、だ。
シテの土田さんは、まだ未完成。前シテ漁翁はともかく、後シテで下に居から立ち上がるときにフラつくし、切る面が強すぎる。龍神の冠モノ、壊れたと聞いていたが、直せたのだな。
ツレの川口さん、声や振りが大きいのは良いけど、ご自分のお声の良さに惚れ込んでいるのか、張り切って謡い上げすぎ。情感を伴った役はまだ無理かな。
ちょっとビックリは小鼓。礼士郎君が打つのだけど、最初から最後まで小鼓後見に源次郎先生がつく。源次郎先生、外に出番はないのだが、ご子息の小鼓囃子が気になったか、ずっと後見。確かに、礼士郎君、初めは掛け声がうわずっていた。途中から良くなったけど。独り立ちの前修行か。
ま、慣れた曲で、楽しかったです。欠点も見えたし。
狂言『柿山伏』、何度も。
山本東次郎家は、ホントに、キチンとお稽古してくるのだね。極近い曲でもちょっとも手を抜くとか、遊ぶとかをしない。しかも、葛桶の上に立つのは、滑りそうで大変だと思うのに。泰太郎さんきっちりと。
ここまでで、一番の出来は、狂言方。
仕舞4曲。女流のみ。これがだらけた印象。一生懸命舞っているのだけど、ご自分の発表会みたいで、見所の心は打たない。
長い。後半2曲寝てしまった。
能2番と狂言1番があるのだから、そもそも仕舞が必要か。やるとしても、曲数を半減するとか。
いよいよ『松風』。『竹生島』と比較して、早くも舞台に緊張感がある。こういうの好き。
地頭の楼雪先生の登場は、椅子が予め置かれていて、4人がかりで貴人口から運び出す感じ。腰から下がほぼ動かないか。
ドタバタして、ワキの名ノリは始まってしまうが、まあ仕方ないし、ワタクシとしてはあまり気にならない。心配にはなるけど。
途中でも、腰が痛いのか、身体を動かそうとするが1人ではできない。手伝って貰って身体の位置をずらす。大丈夫ですか、と聞かれていたようだが、大丈夫と答え、最後まで謡っていた。
地謡はどうか。楼雪先生、ご自分でも大好きな曲で、2日前の一調『三井寺』とは違って、ちゃんと謡っておられた。ややお声が小さいかも。
ただ、今回は大丈夫。隣に紀彰師が付いておられて、副地頭できっちり謡っておられた。
あの地頭だけが延ばして謡う箇所、「四方の嵐も、音添えて」の「も」を地頭だけが延ばして「お」と繋げる。格好いいとこ。ここは、紀彰先生が謡っていらしたか、楼雪先生だったか、ちょっと区別が出来なかった。
シテの山崎さん。すっかりお上手で、お稽古で紀彰先生が謡っているのとほぼ違わず、気持ち良さげに謡っていた。物着後の、中ノ舞、破ノ舞もきっちりと。
ツレの山中さん。初めて拝見した数年前は、緊張から手が震える状態だったが、何年か経て、そういう状態からは抜け出せたが、まだまだの部分もある。
気になったのは面。最初からの付け方が”照らす”方向に付けていて、しんみりした曲なのに、一人晴れがましい印象になってしまった。シテ村雨の幽霊は、”曇らす”面だったのに。後見のミスかな。
『松風』は、来年2月、国立能楽堂で紀彰師シテで公演がある。外の配役はまだ発表されていないけど、これも今から凄く楽しみ。名曲ですね。
楼雪先生の謡い。今回は、ガッカリ、悲しくなるということはなかった。ご自分でもすでに舞は出来なくなっていることは自覚しておられるが、お好きな『松風』の地謡は気持ちよかったのでしょう。
次回は、9月24日(日)の「丹波梅若能」での、番囃子『翁』。あの足腰で、南丹市まで移動できるかしらとも思ってしまうが、梅若家の発祥の地だし、孫の英寿君の舞囃子もあるし。紀彰先生は『通小町』のツレ小町の霊。
一泊していく予定です。
12月27日(水)に、御稽古会が横浜能楽堂第二舞台で行われるとの情報あり。紀彰先生の弟子達。横浜能楽堂の、改修閉館前の直前。
まだ返事をしていないが、仕舞を1曲と、紀彩の会で連吟をやりたいと思う。連吟は『松風』の前場、真ノ一声で汐汲女、シテとツレが登場してから、宿を問う語りの前迄。「汐汲み車ああ」から「汐路かンなやア」までの超難関な謡。難しいからこそトライもしたいが、お稽古で謡ったときと、今回のお能での謡と、テンポなど違うが、無理なんじゃ無いのではないか、と勝手に思う。
勿論、紀彰先生が、我々の謡を「幼稚園か小学生」と評されたのに、御稽古会でも連吟することをお許しくださるかの問題あり。まだ3ヶ月あるし。さて・・