小説老人と性 里坊さくら苑 14話 里井さくら スーパー少女、企画力爆発、京都観光ガイドブック3冊出版

 9月20日(1999年)にNPO法人 「サービス満点・京都観光個人タクシー倶楽部」(略称・満点タクシー)が正式に発足した。それと同時に満点タクシーのホームページで秋の観光シーズン(10月、11月、12月)の予約を受け付けたが、すぐに一流ホテルと提携している大手旅行会社で約半分は押さえられていた。それから数時間で15台の予約はすべて完了になり、冬の観光(1月2月)の予約は11月1日からのお知らせと予約完了のお礼をホームページに書くのに静香は嬉しさとその反響に驚いていた。

 静香は京大法学部の学生で母親の経営する喫茶「らんらん」でランチ時に2時間ほど手伝っていたが、アルバイト料は母からは貰っていない、そこで満点タクシーにアルバイト職員として登録して月々10万円の賃金を貰うことになった。これは会員15名は必ずここでランチをするが、会員は個人のパソコンは持っていないために静香のノートパソコンで○○運転手指名の予約を知り、その予約した観光客に該当する運転手が携帯電話で予約客に連絡をして待ち合わせ場所や日時の確認をするが、その運転手への連絡や運転手を指名していない観光客への配車業務にはどうしても会には事務職員がいるからだ。

 さらに先月から満点タクシーの宣伝チラシをタクシーの乗客や観光客へ配布していたが、そのチラシの反響が予想よりあったので運転手の携帯電話にも予約がかなりあった。そのありがたい予約電話にもう秋の観光はすべて満タンと断るのも失礼だし、それにもったいないということで「私は予約があります」が、他の会員でも良かったら予約出来ますというために現在の会員が一人ずつ准会員を推薦してその15名の個人タクシー運転手に観光を手伝って貰うことになったが、その運転手への配車業務も必要になったからだ。つまり、喫茶らんらんが仮の会の事務所になり、静香が司令官&マネージャーのために毎日毎日会員30名も集まりテーブル5席、カウンター5席では誰か5名はランチの立ち食いになっていた。しかし、これが観光シーズンにもなると運転手さんすべて観光案内をするためにランチ時には誰一人も店にこないことになればそれは娘の静香の責任だから母親の愛子は静香の貰う賃金10万円の半分の5万円は私に権利があると真剣に静香に要求していた。

 一方、さくらは企画宣伝職員及びホームページ更新とこのさくらのパソコンはさくらの私物のためにそのリース料としての名目で月々2万円支給されていた。そのさくらの企画宣伝力は的を得ていて観光が比較的少ない1月、2月、6月、7月の平日には乗客と車椅子を「タクシーに乗せる講習会」や「車椅子観光体験ツアー」「障害児50人タクシー観光無料招待」などは京都福祉協議会との共催で開催した。さらに観光スポット60箇所の「バリアフリー調査」や会員のすべてが、「介護福祉士二級に挑戦の学習会」そしてインバウンド観光客が増えるのを見越して会員に「英語、中国語、韓国語の学習会」を京都市観光局との共催などを企画してはマスコミにリリースしていた。

 さらにさくらは「お年寄りにやさしい京都観光」「車椅子にやさしい京都観光」「修学旅行生にやさしい京都観光」のタイトルの京都観光ガイドブックの企画をしていた。これは会の発足当時に会のホームページに掲載する会員のプロフィールや自己紹介、それに会員が推薦する観光スポット3ヶ所の見どころを各自が書くことになったが、なにせ書くことに縁がなかった運転手にとっては苦行でしかなかった。それでもタクシー運転手のアイドル的存在の静香に叱咤激励されながらも文章を書いたのが会のチラシやホームページに紹介された感激から文章を書くことにそんなに抵抗がなくなった頃を見はらかつて会員にお年寄り、車椅子、修学旅行生にやさしい京都観光のテーマで取材と写真撮影をしてもらうといういわば会の宣伝にもなる本の企画だった。

 これには正会員も準会員もかなり協力的ですぐに各自の取材合戦が始まりその記事を持ち寄り連日編集会議の中で記事が一定数集まった時点でさくらは数社の出版社に企画書をメールで送ったが、ある出版社から出版するという連絡がありその3ヶ月後には「お年寄りにやさしい京都観光」が出版された。これがマスコミに取り上げられたことから大手書店には2列の平積みで並べられて京都ガイドブックでは1万部売れたら大ヒットだがこの本は3万部突破で点字本にもなっていた。本の記事では会員が取材した記事や写真には作者名もあるが本の表紙には「NPO法人 満点タクシー編」とあり、会員一同の協力で本を出版できた喜びを分かち合っていた。続いて「車椅子にやさしい京都観光」「修学旅行生にやさしい京都観光」も同じ流れで大ヒットしていた。そしてその印税の全額はいずれ会の事務所が必要になるので会にプールされ静香が管理してていた。

 またこの本とは別に会の大塚理事が小説「タクシードライバー・ジョッキの竜」(ユニプラン)を出版していた。この大塚は当初は自分のプロフィールも自己紹介ばかりかホームページに掲載する推薦観光スポット3ヶ所の紹介説明文を書くの苦労していたが、その静香に叱咤激励されても書けずに涙を流しながら「この年でこんな屈辱は嫌」だと会を脱退すると3回も里井理事長になだめられて会に残った過去がある。

 それが会のホームページに自分の書いた文章が掲載され感動した途端に生まれて初めて客待ちの駅で一冊100円の古本数冊の小説を読んで密かに書き方を勉強していた。そしてある日突然「そうだ~作家になろう」と決心してその宣言を喫茶「らんらん」でタクシー仲間に披露していたが、全員冷笑していた。それから一ヶ月後には原稿用紙250枚の小説を静香に読んでほしいと持ってきた。静香はその小説を読んだが書き方は雑で「箸にも棒にもかからなかった」が、タクシードライバーが悪者をやっけるという必殺仕掛け人風の小説は面白くて同じ京大の友人がアルバイトをしている出版社に持ち込んで貰った。そして運良くその小説が編集者に認められて作家デビューしていた。これも当然多くの新聞社が「65歳個人タクシードライバー・作家デビュー」の見出しで記事にしてくれた。その後、東映シネマから映画化のノミネートされる。また、産経新聞系の「大阪新聞」から週一回の連載コラムの執筆依頼がありこれも原稿締切日に追われながらも静香に指導され泣きながら書いていた。

 これらのさくらが企画した催しはこれもマスコミが丁度ホットなニュースのない時期で各社一斉に記事にしてくれた。しかも、マスコミへのリリースは満点タクシーからだけではなくて各公的機関からもあり記事の信憑性と信頼性は揺るがなくNHKも大きく取り上げてくれた。このさくらの企画力はどこからきているかの質問が満点タクシーを最初に世に出してくれた毎朝新聞の小林記者から取材されたさくらは、
「これね~MKタクシーの青木会長の自叙伝からヒントを得て青木会長を見習ったの、あの本にはなんの感動もなかったが、青木会長はタクシーにまつわるアイデアを次から次へとリリースしてマスコミのお陰でMKタクシーは成功したが、そして「タクシー運賃値下げの件」では運輸省や陸運局など公的機関と戦ったことが市民に好感を持たれた。しかし、公的機関を敵にしたのでMKタクシーは社会的には「タクシー業界の風雲児」ともてはやされてはいたがそれは決して褒め言葉ではないと私は理解したの、だから私は満点タクシーを社会的にも一流のタクシーにするためには公的機関とともにタクシー業界やタクシー運転手さんを育てて一流の職業にしたいと思ったのであんなだらしのない私の爺ちゃんを筆頭に過酷と思われる企画を運転手さんに連発したのです。それが小林さんの大きな記事になったので皆さん引くに引けなくなって私の爺ちゃんは古希になっていたが同じような年齢の皆さんとともにも成長したのですが、ある意味満点タクシーとは人間的にも満点になってほしいという意味だったのです。
                            (15話につづく)
(ちなみにこの小説を書いている私も70代で「古希からの青春」を楽しんでいます)

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