小説老人と性 里坊さくら苑 8話 さくら初潮、大文字駅伝入賞・MKタクシー値下げの陰、失踪、自己破産、自殺続出

 和博が個人タクシーの営業が終わった午後6時過ぎに家に帰ると珍しく姉の和美の長女とその娘、つまり、和美の孫の中学生三年の真希が来ていた。それに姉の愛子でお客様は女性ばかり4人でテーブルの上にはお赤飯とデコレーションケーキにさくらが大好きな豪華版のちらし寿司が並んでいた。さくらは6年生になったばかりだが、さくらの誕生日は3月3日でもう終わっていた。和博は孫のさくらが顔を赤く染めているのと赤飯を交互にみてさくらの生理が始まったことを悟っていた。

 女5人と爺ちゃんのお祝いはいつもはさくらと二人きりの夕飯だが、今夜は飛びきり賑やかで爺ちゃんもいつもの焼酎から姉が持ってきた赤ワインを飲んでいた。祝宴が半ばになると和博の姉の和美が、
「さくら、生理の手当てなんかはこの真希になんでも聞いたらいい、この真希はおませなのか小学4年から生理が始まったベテランだから」
 と本来はこの仕事はさくらの母親がするものだが、皆んなが気を使ってくれているのがさくらには痛いほど分かっているから、さくらは、
「ありがとう~真希ちゃん、なんでも相談します」

 そこで和美が、
「さくら、あんた、まだ爺ちゃんとお風呂に入っているの!さくらはもう立派な大人よ!」
「はい、和美おばちゃん、生理中は入りません」
「いゃいゃ、さくらそうではなくて、いつも入ってはいけません」
 さくらは珍しく和美に反論をしていた、
「私は爺ちゃんをさくらのお父さんとお母さんと思っていますから爺ちゃんとお風呂に入るのはお母さんとお風呂に入っているのと同じです」
「そうなの~いゃいゃ、そうではなくお爺ちゃんも立派な男よ!さくら、それに爺ちゃんも困っているのよ!さくら」
「なんで?爺ちゃんが困っているの?」
「だって…爺ちゃん、目のやり場に困るじゃないの!さくら」
「私は爺ちゃんに4歳からお風呂に入れて貰っているからどこを見られても恥ずかしくはないよ!」
 そこで愛子が、
「まあ~さくらの気持ちも分かるので小学校生までにして中学生になればさくらのほうが恥ずかしくて爺ちゃんが一緒に入ろうと言っても断わるからそれを待ちましょう」
 とさくらに助け船を出してくれた。

 さくらは部活には陸上部とパソコン部を選んでいたが、爺ちゃんから母親の尚美もピアノ教室とバレエ教室、それに学習塾にも通っていたのでさくらも好きな教室を選べと言われていた。しかし、さくらは爺ちゃんになるべく負担をかけないように部活で放課後をすごしていた。さくらが選んだパソコン部は教師から将来パソコンをできなければ看護師など国家試験の必要な仕事には就けないと言われて入部していた。まだパソコンは家庭には普及していなくて朱雀小学校には職員室に1台、教材として1台のみでパソコン部を指導する先生でさえワープロができるという理由だけで選ばれていた。そんな環境でもさくらは本屋のパソコン本を立ち読みしながら独学で勉強して職員室のパソコンまでも動かして先生たちが反対にさくらにパソコンを教えて貰っていた。これが塾や習い事をしていればこんな時間はさくらにはなかった。

 さくらのもう一つの部活は陸上部だが、この陸上部を選んだ理由は爺ちゃんにあった。爺ちゃんは高校の陸上部で活躍した後に陸上の実業団チームのある大手の自動車会社に就職してそのチームの駅伝選手となった。爺ちゃんが酒を飲みながらさくらに自慢していたのは21歳の時に京滋読売国際駅伝で当時有名だったオリンピックメダリストの選手も参加した駅伝でアンカーとして走り8着で入賞したことだった。さくらはこの話を何回も聞いて私も陸上部に入って駅伝で入賞すれば爺ちゃんが喜ぶと思ったからだ。

 さくらは朱雀小学校の6年では一番足が早くて京都市小学校対抗大文字駅伝の中京区の予選を通過して大文字駅伝に出場することになった。この駅伝は京都市内の小学校の48校が地区予選で選ばれる駅伝になる。さくらの朱雀小学校チームは予選の成績からは20位前後の下馬評で到底入賞はど遠かったが、さくらは爺ちゃんを喜こばそうと作戦を練っていた。

 駅伝当日には爺ちゃんの応援の場所をゴールの錦林小学校手前50メートル手前にある岡崎稲荷神社の赤い鳥居前に指定していた。これはさくらがアンカーで走るコースになり下馬評の20位から8位入賞するには12~13名を抜かなければならないが、さくらはこれには自信があった。レースは男女8名で8区間で争われてさくらは7区の選手からたすきを受け取ったのは予想通り20位だった。さくらが走って来るのを待ちながら爺ちゃんは目の前を走り抜ける選手を数えていたら8番目の選手の後方からゼッケン25番のさくらが余裕の笑顔で爺ちゃんを探して目があった瞬間にさくらは前の選手を抜いて8位入賞と区間賞を爺ちゃんにプレゼントしていた。

 その夜には地元のKBS京都が大文字駅伝の録画中継していた。48チーム全員のダイジェスト版で特に8位入賞までの入賞ゴール選手の瞬間を撮っていた。さくらは笑顔のVサインで写っていた。また、明くる日の京都新聞では「大文字駅伝 川西小 初優勝」の大きな見出しの下には「アンカー12人抜きで区間賞、8位初入賞、朱雀小 里井さくら」の記事とさくらが8区で第2集団をごぼう抜きしている瞬間の写真が掲載されていた。爺ちゃんは喜んで京都新聞を30部を買って仲間の個人タクシーの運転手やなじみの乗客などに「わしの孫」やと配っていた。

 その同じ新聞の三面にはこれも大きな見出しで「個人タクシーノーブレーキでコンクリート壁に激突炎上死亡 事故か自殺か」の記事が、読むと和博と同じ個人タクシー協同組合に加盟している「大塚タクシー」だった。和博はすぐにこれは自殺と判断していたが、もう京都の個人タクシーだけでも18名の自殺者、法人タクシーの運転手もそれぐらいだか、法人タクシーの運転手は借金を踏み倒しの失踪が多くてそれは第二種免許さえあれば日本全国どこのタクシー会社の単身寮に入れるからだ。中には家賃が払えず企業内ホームレスが大流行で夜勤の後会社の風呂に入り、仮眠室で寝てまた夜勤の勤務になるが会社も知らん振りをしていた。

 この原因は1991年頃からのバブル崩壊でタクシーの売上げが減っただけではなしに94年7月からのMKタクシーの値下げとMKタクシー関連でMKタクシーを褒めたたえるニュースが連日テレビで垂れ流されて京都市民はもちろん観光客までもMKタクシーに乗るために目の色が変わるほどMKタクシーの大ブームになり個人タクシーの昼勤務は一日10時間流しても売上げは1万円程度にまで落ち込んでいた。個人タクシーはまだしも法人タクシーは40%の歩合給で時給は400円程度(当時法定最低賃金677円)年収120万円~150万円程度では家賃も払えず大手消費者金融に走るしか手はなかった。

 やがて大手消費者の利息も払えずタクシー運転手相手の悪質闇金融から借りることになるが、その先は失踪か自己破産か自殺しか道はなかった。正義感の強い里井和博はこの現実を地元の京都新聞、全国紙4社、それにNHKにも手紙で訴えたところ手紙を差し出したすべてのマスコミから返事があり記者から取材を受けていた。その中のNHKの記者は東京本局から来てくれた。その記者全員に和博の作成した個人タクシー、法人タクシーの現状をありのまま書き、また法人タクシーの給料明細や乗務時間のタコグラフなど5名分の証拠などのコピーを渡していたが、記者のすべてがすごい内容に驚いて必ず記事にすると和博に約束していたが、3ヶ月も経ったがどの新聞社もNHKも、そして新聞社系列のテレビ局も取り上げなかった。

 そこで全国紙の記者に電話するとその記者は里井の家に来てくれた。記者は社会部の小林記者で、里井に、
「里井さんの作成した訴えの裏付けをしました。まず、京都駅で客待ちしている運転手さん5名に現状を聞きました。さらに深夜祇園で客待ちしている運転手さん5名にも取材したが、これは里井さんの指摘通りで私もこの現実にショックを受けました。そして京都労働局に取材するとたしかにタクシー運転手さんが個人的にある法人タクシー会社は最低賃金と残業代の未払い、それに長時間労働勤務の訴えが今年だけで10数件あったが、すべての会社に是正勧告及び指導をして会社は訴えた運転手さんに2年間の未払い賃金として約30万円~80万円を支払い解決しているそうです」

 里井は、
「たしかに未払い賃金は貰ったが、その16名は会社からも労働組合からもいじめ抜かられて会社を辞めていますが、京都タクシー協会とタクシーの労働組合の全自労京都府本部からブラックリストを作られて京都府内のタクシー会社に面接でボイコットされてタクシー会社に最就職もできずに失踪、自己破産、自殺の道を選んだ運転手が大半になります」

 小林記者は、
「いゃ、それは私も初めて聞いたが、その京都府タクシー協会と全自労京都府本部にも裏付け取材しましたが、タクシー協会は京都のタクシーで最低賃金以下、残業代未払いのタクシー会社は1社もない、もしあるとするとその運転手が勤務中にパチンコや競輪、競馬に麻雀をしているから売上げが上がらないから当然貰う給料は最低賃金以下にはなるが、そんな運転手がタクシー会社には1人や2人はいるが、そいつらが、京都労働基準監督署に訴えただけで京都のタクシー会社のただの1社も労働基準法には違反していないといっていたが、これはどんな業界団体でもやる常套手段で私達記者はこの会社と業界団体のウソを見抜くことが仕事だと思っています」
                    (9話につづく)MKタクシー値下げの光と陰

小説老人と性 里坊さくら苑 7話 夫の浮気は妻にも責任があるというが…・さくら小学一年生に

小説老人と性 里坊さくら苑 6話 さくら大きくなったら看護師さんになって爺ちゃんのお熱を…

小説老人と性 里坊さくら苑 5話 さくら4歳で母親に捨てられる

小説老人ホーム 里坊さくら苑 4話 夜は魔物が支配している・さくらの幼少時代

小説老人ホーム 里坊さくら苑 3話 女のパンツ屋が女かぶれしたと京都経済会から批判

小説老人ホーム 里坊さくら苑 2話 さくらお年寄り専門のセックスカウンセラーに

小説 老人ホーム「里坊さくら苑」 1話 さくら老人ホーム設立アドバイザーに

「音川伊奈利」で検索
インスタグラム
@aG506vk8fvwLRYP
フェースブック(音川伊奈利)
https://m.facebook.com/inari.otokawa?locale2=ja_JP
ライン
otokawainari
無料の電子書籍(約20冊)
https://puboo.jp/users/sakura64

 

小説 トラック3姉妹・ダンプ姉ちゃん 理絵 1話 4トンダンプデビュー

 

『働く女性たち「京都タクシードライバー・さくら」 さくら個人タクシー 駆け込み寺居酒屋ポン吉43話』働く女性たち…「京都タクシードライバー・さくら」 さくら個人タクシー 駆け込み寺居酒屋ポン吉 43話元看護師で今はタクシードライバーをしている「さくら」が個人…リンクameblo.jp

この他にも短編小説13話があります。
「タクシードライバー・さくら」で検索

小説西寺物語 55話 最澄の愛妾美里が、日本初の日吉大社の女性宮司に

 

小説鯖街道①~⑤話
この小説は「小説西寺物語」の44話~48話の鯖街道の章だけを分離したものです。小説西寺物語は現在49話まで書けています。

小説鯖街道 1話 小説西寺物語 44話 空海若狭の鯖寿司を嵯峨天皇に献上へ、鯖街道①

 

☆☆☆ 音川伊奈利の無料の電子書籍・特選20冊https://puboo.jp/users/sakura64

 

★ダウンロードも完全無料

音川伊奈利 さんの公開書籍一覧|パブー|電子書籍作成・販売プラットフォーム京都の現職のタクシードライバーどす。。。京都ガイドブック「おとしよりにやさしい京都観光」…小説「タクシードライバージョッキーの竜」…新聞連載コラムなどがある~♪リンクpuboo.jp

ドキドキ「人気ブログランキング」に参加しています。このブログが少しでもおもしろければ↓の画面をポッチンして清き一票をお願いいたします。↓↓↓ドキドキ  

 

                  
                   小説家ランキングへ