小説老人と性里坊さくら苑 7話夫の浮気は妻にも責任があるというが…・さくら小学一年生に

小説老人と性里坊さくら苑 7話夫の浮気は妻にも責任があるというが…・さくら小学一年生に

　さくらの母親が浮気相手の男性と駆け落ちしてからまだ4歳のさくらと爺ちゃんと二人きりの生活が始まって一ヶ月になるが、さくらは爺ちゃんに母親が家にいないことを聞くのは何故か?遠慮していた。ただ、爺ちゃんの姉二人が交代で昼間は毎日家にきて爺ちゃんに料理や洗濯、掃除など家事を教えている。さくらは姉の70歳の和美と気が合うようで土曜日の夜は宇治の姉の家に泊まりに行っていた。さくらと姉は年の差66歳もあるが、そこは女同士でさくらの母親の尚美のことを話合っているようで爺ちゃんもそれなりに安心していた。そしてさくらが姉の家に泊まりに行く夜は爺ちゃんも近所の居酒屋の好きなママさんに通ってそれなりの息抜きをしていた。

　和博の行きつけの居酒屋は和博より三つ上の64歳の泰子ママか一人で切り盛りしているカウンター8席のみの小さな店になる。この泰子ママは年よりは若く見える色白美人の上、料理の天才で魚の煮付けやおでんは昔風だが、客も昔人間ばかりで近所の商店主や年金暮らしの老人で平均年齢も74歳ほどで和博は若い客の筆頭だった。口の悪い京都人はこの店のことを「爺捨て山居酒屋」と揶揄するほど老人の憩いの居酒屋になっていた。

　元々この店は泰子の姉が経営していたが、姉が若年痴呆症になって老人施設に入所してからバツイチの泰子が店をついで10周年になる。和博は姉か店をやっている頃からの客で素人の泰子になにかとアドバイスしていた。和博と泰子はもうとっくに男と女の関係にはなっていたが、それは愛人でも恋人でもなく気の合う酒飲み友達になっていた。それ故、泰子とのセックスは半年に一回ほどでその時は二人とも燃えていた。

　和博はこの泰子ママに娘の尚美が男と駆け落ちしてからなにかと相談していた。泰子ママも夫の浮気で離婚しているので尚美の場合とは真逆の不倫離婚にはなる。泰子は、
「私も夫の不倫を知って逆上して相手の女性の勤務先に押しかけたり、弁護士に頼み夫と浮気相手の女性から慰謝料を取ろうと思っていたが、この二人が失踪して行方不明になってお金は取れなかった。結局残ったのは相手の三人のお子さんの不幸と私と子供二人の子育ての苦労だけだったが、もし私が夫の浮気を許していれば少なくとも五人の子供の不幸を救えたのにと今では後悔しているは、それに夫の浮気の原因は私にもあったから相手の方の旦那さんへの責任は私にもあるの」
　和博は、
「いゃいゃ、悪いのは浮気をした男と女で泰子は何も悪くはない!」

　泰子の夫は大手セメント会社の直系の生コンクリート工場のプラントのオペレーターをしていたが、生コン工場の朝は早くて出勤は早朝の6時だった。そうなると泰子は朝の5時には起きなければならない。そしてまだ小さかった子供の世話をして学校に行かせていた。泰子は専業主婦だったが、学校行事や長男の野球クラブのお手伝いに忙しく自分の時間を持てるのは子供が寝た午後の10時頃だった。泰子はこの時間からの連続テレビドラマが唯一の楽しみでこれを観てから風呂に入れば深夜12時前後になり、また朝の5時には起きなければならなかった。

　一方、夫が会社から帰って来るのは早くて午後7時にはもう酒を飲みながら野球を観たりだが、朝が早いので午後10時には風呂も入り布団に入るが、その時に夫は泰子に一緒に寝よとセックスの催促をしてくるが、泰子にすればこの時間からが楽しい時間でその催促を断っていた。そうなれば夫婦喧嘩の始まりで、
　夫は、
「わしは一緒懸命働いてお前らを食わしているのになんでやねん!そんなにテレビが大事か!」
　泰子は泰子で、
「私も一緒懸命働いているのは同じや～私の唯一の楽しみを邪魔しないで…」と無下にもセックスを拒否していた。
　そして夜中に夫がなにかで眼を覚まして隣に寝ている泰子の胸を触りに来るが、泰子は寝入りばなでその気分には到底ならずセックスをこれまた拒否していた。

　そんなことが数年続いたが、夫は会社帰りに同僚らと居酒屋で一杯飲むのが日常になってきた。そこで私は、
「お父さん、毎日毎日飲酒運転をしていたらしまいに交通事故を起こして逮捕されますょ!」
　夫は、
「いゃいゃ、まだ宵の口だから飲酒の検問はしていない、それにわしの小遣いで飲むのが何が悪い!」
　と、喧嘩ばかりしていたが、やがてその居酒屋でパートで働いてた50歳前後の既婚女性と不倫してその女性の夫が妻の不倫を発見して私の家に怒鳴り込んできて夫の不倫が発覚したの。その3日後にはこの二人は精神的に追い込まれて和博さんの奥さんや娘さんと同じで二人で駆け落ちしてしまったは…結局のところ夫は長年勤めた大手セメント会社を無断欠勤の懲戒解雇で約一千万円の退職金まで失い、不倫相手の女性は3人の子供と生き別れで誰も幸せにならないばかりか不幸ばっかしょ」

　黙って泰子の話を和博が聞いているとさらに泰子は、
「今から考えたら私がテレビばかり観ていたのがすべての原因で夫のセックスはたかが10分ほどで長くても15分、テレビを少し我慢してさっさと夫を満足させてからゆっくり観るとか、ビデオで録画して昼間に観ていれば睡眠も取れるし健康なのに私もその時は自分は絶対に正しいと信じていたが～まさか夫とのセックス拒否がこんな不幸の大量生産をするとはと毎日後悔する日々…」
　和博は、
「ま～すべての責任は泰子にないにしても夫婦でセックスの話をする機会がないから女は男の性を理解しない、男は女の性が理解できない。今後、男女同権や男女同一賃金などの女性解放運動が進めば女性は男の勝手な性的欲望から解放されるという評論家もいるが、それでは性の不一致が増えるばかり、それよりなにより結婚する前にお互いセックスのルールを決めとけば私は不毛の不倫も離婚も無くなると思っている」
「そうよね～私達は貴重な体験をしたは、でも私はこうして和博さんと知り合いになって喜んでいます。そ、そ、私たちのセックスのルールは覚えていますか?和博さん」
「そら～覚えているよ!どちらかがセックスをしたい時は合図するが、それがイエスでもノーでも心から優しくて丁寧な返事をするだろう?泰子…で、今夜はさくらもいないからどう?」
「もちのろんOkょ!和ちゃん」

　さくらの母親が失踪してからニ年が経ってさくらはピカピカの小学一年生になっていた。爺ちゃんの姉二人から贈られたランドセル姿で小学校の校門前の満開のさくらの下での記念撮影は和博も姉の和美、愛子もそれに失踪したさくらの母親の尚美もすべて同じ朱雀小学校でこの入学式の記念撮影を経験していた。古い京都の中京区の仕来りで小学校の入学式には家族はもちろん親戚縁者一同が小学校入学を祝うために家に集まってくれるが、姉の子供3人の夫婦や孫6人までの誰一人もさくらの母親である尚美の話題に気を使って触れないことが反対にお祝いに駆けつけてくれた人の涙を誘い、その涙をさくらに悟られないように苦労していた。さくらも皆んなが気を使ってくれているのを知っているのか?お母さんの事には一切触れなかった。

　さくらが小学校に入ると同時に個人里井タクシーの２年間の休業期間が満了していた。爺ちゃんは朝6時には起きてさくらとの朝ごはんを作り、さくらが学校への集団登校を見送ってからタクシーを運転していた。さくらの下校時間や学童保育の終わる時間には姉二人が交代で家にいてくれた。それから姉はさくらを連れて夕飯の買い出しや料理を一緒にしていた。爺ちゃんは午後6時には帰ってきたが、ここで姉とバトンタッチして姉らは自宅に帰っていた。この爺ちゃんの昼間勤務の売上げだが、まだまだバブル崩壊したと言われていた頃だが、さくらとの生活費には余裕があった。

　さくらとの夕食が終わると二人で後片付けしてからテレビを観たりしてからさくらと風呂に入りさくらは奥の部屋で一人で先に寝ていた。これからが爺ちゃんの時間で焼酎のお湯割りを飲むのが日課だった。それから4年が経ちさくらも5年生になっていた。さくらは素直な性格でスクスク育ち身体も女らしい丸みをおびてきた。もう5年生にもなれば生理が始まるかもと思いさくらに、
「さくらも5年生にもなったからお風呂は一人で入ったらと」爺ちゃんはやんわりいうが、さくらは、
「ダメ!爺ちゃんと入る～!」
というので姉の和美にさくらを説得するように電話をしていた。
( 8 話につづく)

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