小説老人ホーム 里坊さくら苑 4話 夜は魔物が支配している・さくらの幼少時代

 さくらが産まれると同時に両親が離婚してさくらは母親の里井尚美の実家に母子ともに引き取られていた。実家のさくらの祖父の和博は京都市中京区で建売りの住宅を個人タクシーの営業所にして個人里井タクシーの運転手をしていた。さくらの祖母は母親の尚美が中学生の時に若い男と浮気してそれが理由で離婚していた。その中学生の尚美を男手一人で育てたのは父親の和博であった。

 そのころのタクシーは高度経済成長の真っ最中でタクシーの景気は良くて娘の尚美には何不自由なく育てて尚美が習いたいダンス教室からスケート教室まで月謝を出しても経済的には余裕があった。とはいっても尚美にすれば母親が若い男と浮気して離婚したことを許せずはずは無く父親が夜勤でタクシーに乗っている間は寂しくて夜遊びをするようになっていた。

 やがて高校進学とはなるが、遊び呆けていた尚美には公立高校どころか私学さえ難しかったが、どうにか華山高校に拾われていた。この華山高校は浄真宗の経営で校長の松島常臣も浄真宗総本山華山寺の塔頭寺院の住職になる。尚美はなんとか高校を卒業して信用金庫に就職するが、長くは続かず退職して木屋町のスナックで働いていた。そこで知り合った宅急便の運転手の拓也と同棲していたが、尚美が妊娠して二人は結婚式すらなく籍を入れて木造のアパートで暮らし長女のさくらを育てる予定だった。

 尚美が妊娠中の数カ月のうちに拓也は何回も尚美にセックスを求めてきたが、尚美は拒否していた。これは切迫流産の恐れがあるからと男性器の挿入のセックスは医師から禁止されているためだったが、若い拓也はそれが理解出来ずに尚美に何回も求めてきた。ただ、尚美も拓也が可哀そうだと思い手や口の愛撫で我慢してほしいと願うが拓也はそれでは満足せず尚美が以前働いていた木屋町のスナックに連日通うようになった。拓也は目当ての女の娘を高級寿司で有名ないろは寿司での食事後はラブホテルに誘っていた。

 ただ、この拓也の女の娘の口説き方は尚美にも経験があり、それに尚美も騙されて拓也の子供を身ごもっていた。拓也はそのころから当時テレビで派手に宣伝していた大手消費者金融に手を出して借金地獄の一丁目に入っていた。この拓也の借金を尚美は知らないまま籍を入れていたが、尚美の妊娠で尚美からセックスを拒否されたことからまた消費者金融の金を当てにして遊び始めていた。

 やがてその金融会社のカード会員も5社になりその借金の利息を返すために街金融まで手を出していた。そして長女のさくらが産まれて退院する際に病院に支払うために尚美がタンス預金をしていた30万円まで拓也が使いこんでいた。これは父親の和博に尚美が借りて支払い無事父親の個人タクシーでさくらと共に尚美の実家まで帰っていた。拓也は産まれてきた子供の性別も知らないまま、勤めていた宅急便の会社を無断欠勤した後に蒸発したが、妻である尚美に消費者金融各社の弁護士から内容証明郵便や督促状が連日届いていた。その借金の総額は490万円だったが、これは父親の和博が所属する京都個人タクシー協同組合の顧問弁護士に仲裁してもらい半額は拓也の結婚前の借金として約半額の250万円で各金融会社と和解して和博が全額支払っていた。ただ、これで拓也の借金は消えた訳ではなく拓也は消費者金融から全国手配されて暴力団系金融に捕まって山形県のダム現場のタコ部屋で働かされていると風の噂で尚美にも届いてはいたが、尚美は当然の報いと父親にもこのことを報告をしなかった。

 こうして祖父、母親、さくらとの3人家族で幸せに暮らしていたが、さくらも3歳になり保育園に母の尚美は三条商店街のスーパーにレジのパートに出るようになっていた。尚美はここで同じような境遇でバツイチで子持ちで働いていた若い女性らとすぐに友達になっていた。とはいってもそれぞれシフトがまちまちでゆっくり話そうと思えば夜しかなかった。尚美は父親のタクシーの休みの日を聞いてパート仲間と飲み会をするから夜の少しの時間さくらを見てほしいと頼んでいた。すると父の和博は、
「若い女性が夜ウロウロするとろくなことがない。この世の中は家族以外は信用ができない。それに酒が入ると人間が元々持っている悪い本性の欲望が理性や教養を消し去るから楽しくなり、酒に溺れてしまう。飲むなと言わないが、まだ理性が保てる各自の家で飲んだほうが安心だ!なんならその尚美の友達をここに招待して飲めばいい」
「なにをいっているの~お父さん~皆んな家から離れて外の空気を~吸うことでストレスが解消して明日から家事に子育て、そしてパートに精を出せるのよ~お、お父さんだって近所の居酒屋でストレスを解消しているのと同じよ~」
「わしはお前に二度と同じ過ちをしてほしくないからいっている!、夜は魔物が支配している。魔物はお前のような身体は一人前だが、頭は半人前の若い女性を狙っている。わしはタクシー運転手一筋で40年になるが、その魔物に侵された輩ばかり客にしている、その客の背後には魔物が取り憑いているのが見えるようになった。その魔物は今の尚美に取り憑いているのが、わしには見えるからだ!」
「また~そんな気色悪いことを言って、可愛い孫のお守りをするのが嫌なの~お父さん」

 尚美は父親とこういう口喧嘩を友達との飲み会の前日には必ずしていたが、結局さくらを父に任せて飲みにいっていた。さくらはこの爺ちゃんと母の会話をしょっちゅう聞いていたが、子供心にこれは爺ちゃんの方が正しいと思ってはいたが、母が飲み会の夜は大好きな爺ちゃんが遊んでくれるので母が飲み会の時はさくらも楽しい夜になっていた。

 さくらと爺ちゃんが思い切り遊んだ後は一緒にお風呂に入り、齒を磨いて爺ちゃんに絵本を読んでもらいながら寝るのが母の飲み会の夜の楽しみだった。その爺ちゃんはさくらを寝かしてから焼酎のお湯割りをテレビを観ながら3杯ほど飲むのがこれまた楽しみだった。爺ちゃんが焼酎を3杯ほどを飲み終えるころには尚美も家にいつもは帰ってきたが、今夜は12時になっても帰って来なかった。

 そのころ尚美は四条大宮の雑居ビルにあるカラオケスナックの「貴婦人」にいた。この店はスーパーの同僚の泰子の紹介で同僚との飲み会の二次会でもう5~6回来ていたが、いつもは同じメンバーの3~4名で来ていた。それが今夜はメンバーが早く帰り尚美だけで店に来ていたが、たまたま、この夜は客足が11時には切れていた。マスターは50歳の直樹で店のホステスさんは常に2名のシフトで回していたが、この好景気でスナック壌の時給も2000~2500円と跳ね上がるがそれでも木屋町や祇園ではホステスさん不足で店をやむなく閉めるスナックがあった。この貴婦人に勤めていた女子大学生や若いOLのアルバイトも木屋町や祇園のスナックにトラバーユして今夜もマスタ一人で営業していた。

 マスターは店の看板を消灯して玄関ドアを節錠してから、尚美に、
「尚ちゃん、今夜は私のおごりにするからもう少し付き合って」
 といいながらテーブル席のソファーに座れと目で合図して白のスパークワインのコルクの栓を開けていた。尚美は先にソファーに座るとマスターは尚美の左側に座ってきた。まずは乾杯となったが、尚美はこの展開にかなりの危険を感じた。とはいっても尚美も拓也と別れて3年もの禁欲生活にイライラして週一回の飲み会でストレスを発散していたが、たまには父親やさくらに八つ当たりしているほど欲求不満になっていた。

 乾杯の後にはマスターの右手が尚美の左脚の太ももに置かれた瞬間に尚美の全神経が太ももに集中しているのが自分でも分かった。その手は尚美の太ももを撫ぜたりしながらジーンズの突き当りまできた。この時に尚美は一瞬的に、マスターの手を払いのけて店をでるか?このまま身を任せるかの判断をしなければなかった。これはマスターも同じで尚美の反応を見て瞬間的に決めなければならない。

 マスターの右手は尚美の背中から前に回り右の乳首を鷲掴みしているが、それは痛くはなく身体中に性電気が走る感覚で尚美の口から思わず「フゥ~」とも「イィ~」ともとれるタメイキが漏れたことから尚美になんのためらいもなくマスターの特技の愛撫で尚美を悶えさせたり、じらしたりながら尚美が敏感に感じるスポットを探し当ててそこを攻めまくっていた。尚美は尚美で元夫の拓也と付き合っていたころラブホテルで燃えたことを思い出しながら声を遠慮なく出していた。

 尚美がふと我に返って腕時計を見ると1時半になっていた。マスターへの挨拶もそこそこに店を出た、四条大宮から家までは歩いて7分~8分ほどだが、タクシーを拾い家に帰った。家に静かに入り居間を見るとそこには父が焼酎を飲みながら怖い顔で尚美を睨んでいたが、尚美は目を合わさず風呂場でシャワーを浴びてから居間を見ると父は自分の部屋に帰っていた。尚美はさくらの可愛い寝顔を見てから自分の布団に入ったが、なぜか父の口癖だった「夜は魔物が支配している。わしはお前に二度と同じ過ちはしてほしくはない」というのが一瞬浮かんだが、すぐに深い眠りについた。
                                       (5話に続く)

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