小説老人と性 里坊さくら苑 13話 NPO法人 京都観光障害者車椅子高齢者誘致及びバリアフリー化促進事業認可

 さくらの夏休みも後5日になり新聞やテレビの満点タクシーの取材はこの間にすべて終えていた。このニュースを見た全国の小学校や中学校に続々パソコン部が開設されてその数も増えてこの分野の取材がさくらの朱雀中学にも取材依頼が数社ありまだまだマスコミにホットな話題を提供していた。

 一方、京大法学部の静香は同じ法学部の仲間とともに満点タクシーの法人化の研究をしていたが、果たして満点タクシーが非営利事業かという問題に突き当っていた。ただ、このNPO法人の法制化は昨年(1998年)の12月から始まったばかりでこのNPO法人を受け付ける京都市(政令都市は市)の役人も大学の教授もそんなにこの法律を把握はしていなかった。そこでこの問題を静香はさくらに相談していた。

 さくらは連日ホームページのお問い合わせ欄に寄せられる激励や京都観光の相談などに返事を書くために毎日夜遅くまでパソコンの前に座っていた。その中で多かったのが車椅子での京都観光は出来るかという問い合わせや高齢者の夫婦二人での観光は出来るか?それに障害者でも観光が出来るかだった。これを爺ちゃんに相談したが、京都の有名観光スポットのほとんどが東山の中腹にあり、それに数十段の石段が境内アチコチにあるのが普通で車椅子や高齢者には勧めたくはないという。

 さくらは、
「爺ちゃん、それならお寺の高齢者のお防さんも数十段の階段を歩いているの?」
「いゃいゃ、お寺は貴重な文化財でお寺には必ず消防車が通れる道がある。寺の坊主や職員はその道を自動車で通り本堂や寺務所に通っている」
「それなら爺ちゃん~その防火道を使って車椅子や障害者、それに高齢者をタクシーに乗せれば誰でも簡単に観光ができるのではないの?」
「そうか~しかし、本堂や伽藍の拝観にはやはり階段があるが…?」
「それなら本堂や伽藍に上がれるスロープを付ければ誰でもご本尊を拝めるよ~爺ちゃん」
「そうか~しかし、車椅子や障害者のトイレはどないするのや~さくら」
「そんなん簡単で車椅子障害者用のトイレがあれは解決します」
「そうか~しかし、あのガメツイお寺がそんな金をだす?と思う~さくら」
「だから、満点タクシーのメンバーがお寺に交渉すればいいのよ!、爺ちゃんは理事長ょ、ガンバレ!」

 というさくらと爺ちゃんの会話を静香に紹介していたが、飲み込みの早い静香は、
「そうか~つまり、車椅子や障害者、それに高齢者を京都観光に誘致する事業、さらに京都の観光スポットのバリアフリー化促進事業のNPO法人の設立になるのネ…さくら!」
「そう、車椅子にも障害者にも高齢者にも誰にもサービス満点の接客をするのが、満点タクシーになります」
「OK、OK.、さくらこれでいこう~。それにしてもさくらは京大の法学部の教授より頭がいいよネ~アハハ」

 さくらはMKタクシーに勝とうと思えば敵を知ることが大事と夏休み中に青木会長の自叙伝2冊をネットで見つけて買っていた。その2冊を読んだ感想はそんなに感動するエピソードはなく色々生い立ちや陸運局とのバトルの苦労は書いてはあるが、青木会長の商法は新聞やテレビで報道されている「タクシー業界の風雲児」とか「MK天才商法」「青木マジック」とかはマスコミが作ったもので斬新な情報や青木会長から学ぶ物は何一つないと思った。

 つまり、MK青木商法とは近江商人の「三方良し」、ダイエー商法の「いいものを安く」で日本の商法の古典になる。これは現在あらゆる企業から街のラーメン屋さんまで実践している当たり前の消費者へのサービスでありなんら参考には当たらないことになるが、これが分からない企業はこの日本には一つもない。あるとするとそれは京都のMKタクシーを除くタクシー業界になる。

 この京都では「接客サービスが悪いタクシーの運賃は高く」て「接客サービスが良いタクシーの運賃は安い」という珍逆転現象が起っている。それでは京都市民にも観光客も愛されるはずはなく市民も観光客もMKタクシーを血眼になって探しているのが現状でこれはMKの青木会長側からすれば他のタクシー側戦略ミスの敵失でありなんら自慢することもなくこんな自叙伝を読む価値もないと中学一年生のさくらの初めての厳しい書評だった。

 さくらはその日の夕食の時にさくらが読んだ青木会長の自叙伝の感想を爺ちゃんに話しをしていた。
「そうか~さくらの目には青木会長がラーメン屋の店主程度にしか見えないのか?、わしら90%の運転手は青木会長を巨悪の偉大な人物として見てきたが…?」
「まあね~それは少し言い過ぎだけど…地域にラーメン屋が乱立してどの店も売上げが減少したのをなんとかしたいとあるラーメン屋の店主がラーメンの値段を10%下げてサービスを改善したところ売上げが上がり儲けたという話と同じと私は思っただけよ!」
「そうか~なら、他のラーメン屋も10%値下げしてサービスの改善をすればいいが、その他のラーメン屋は値段も下げずサービスの改善もしないでそのラーメン屋の悪口を言い続けているのが、我ら京都のタクシー業界だとさくらはいいたいのか?」
「まあね~それもあるけど~私が爺ちゃんや満点タクシーの会員にいいたいのはもうそんな京都のタクシー業界の顔色を見ないで理想の京都のタクシー業界とはこれだという思想を持ってほしいの、その思想が合えばMKタクシーとも共闘する柔軟性がほしいの」
「思想や志は大事だが~しかし、さくらの最後のMKとの共闘はまだ少し早いから会員には伏せておく」
「それは爺ちゃんの好きにして」

 静香はさくらからの提案の京都観光スポットバリアフリー化促進という提案があったが、このバリアフリーという言葉はまだ家の中の段差を解消する建築用語の一つでしか使われていない。それが今から10年年ほど前(1984~1988年)に道路や駅に点字タイルブロックの設置が義務付けられてから視覚障害者や高齢者の安全を守るという言葉になっていたが、まだまだ一般的には認知はされてはいなかった。

 静香と同じ京大法学部の仲間とともにもう何回も訪問している京都市の市民活動総合センターに新しく書いたNPO法人設立申請書を持って課長に面会を申し入れていた。この課長は50歳過ぎの男性でスケベーたらしい顔には全員嫌悪感を感じていたが、そこは女の知恵で5人ともミニスカートを履いて胸元が大きく開いた服装でこの課長に京都観光障害者車椅子高齢者の誘致及び観光スポットのバリアフリー化促進の意義を熱く全員で語りながらも課長の視線を胸に感じながら説明していたが、課長そのものはまだバリアフリーとは駅のプラットフォームの点字ぐらいしか知識がなく静香らに反論は出来なく申請書類の受理までこぎつけていた。その認可の返事は2ヶ月~4ヶ月以内かかるとは言ったが、静香は課長の目の前に豊満な胸がわざと見えるように、
「課長さん~お願い~一ヶ月ぐらいで認可をお願いします~」
 課長はその静香の迫力に負けて首をコクリと下げたように見えた瞬間に女子大生5人組は思わず「キャ~」と黄色い歓声を挙げていた。
 

 さくらは静香からFAXで送られてきた京都市に提出したNPO法人申請書類をさらに毎朝新聞大阪本社の小林記者に送っていた。さくらはMKの青木会長の自叙伝からは何も学ぶことはなかったが、MKタクシーが全国区的に有名になったのは青木会長が次から次へとタクシー関連のアイデアをマスコミにリリースするというしたたかさは見習う点だと悟っていた。

 そもそも京都市のタクシー台数8500台、その内MKタクシーグループは約900台、個人タクシーは約2500台あるが、爺ちゃんの個人タクシーグループの「満点タクシー」はたった5台でスタートした。これは京都のタクシー全体のわずか0、1%以下程度のタクシー台数にしかならないが、小林記者が記事にしてくれたお陰でもはやこの知名度はMKタクシーの次に有名になっていた。

 そのMKタクシーも出し続けてきたマスコミ受けするアイデアも枯れてしまったのか音無しになっていた。このさくらからのFAXを受け取った小林記者は京都支社の記者3名に応援を求めて京都の主要観光スポット60社寺に今後、車椅子や障害者、高齢者の観光客を受け入れるためのバリアフリー化の計画はあるか?、今後、車椅子障害者用のトイレの設置の計画はあるかのアンケート調査をしていたが、このアンケート調査をしているという記事がまず大きく報道された。

 さらに、これは個人タクシー運転手を祖父にもつ里井さくらさん(13歳)が、祖父が結成したNPO法人(申請中)の「満点タクシー」のホームページに車椅子、障害者、高齢者から寄せられた問い合わせが余りにも多いことからそれではこれらの人達が安心して京都観光を楽しめる環境を作るために京大法学部の有志5名がNPO法人の設立の申請をして京都市から一ヶ月程度で認可される見通しだという。

 この新聞記事を見た桝本 賴兼京都市長の談話では市民憲章に「旅行者を暖かく迎えましょう」とある通り、京都市が管理している「二条城」「平安神宮」「岡崎動物園」などは率先してバリアフリー化、車椅子障害者トイレを設置するとあった。この毎朝新聞の記事や京都市長の談話を受けて京都仏教会もバリアフリー化促進をしなければならなくなっていた。そして静香にあのスケベーたらしい課長から電話があり、一ヶ月を待たずして9月19日にNPO法人設立申請を認めるといういい知らせがあった。
                                  (14話につづく)

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