医学ニュースの深層 -12ページ目

神戸での生体肝臓移植<事案>の続報

 神戸での生体肝臓移植<事案>については、厳しい評価報告書が出された。
亡くなった患者さん4人のうち3人は救命できたかもしれず、1人は完全に移植適応外とのこと。
したがって、病院の医療体制そのものも批判されている。

 報道によれば、執刀医の田中院長は、マイクロを用いるべき肝動脈再建をルーペで行ったとか。確かに彼くらいの高い能力があればルーペでも可能なのかもしれない。ただ、高い安全性が求められる観点からすれば、批判は逃れられないだろう。少しの配慮不足が大事を招いた。

 通常ならば残念ながら助からないレベルの患者さんが、8人中、なんと7人も救命できていたわけで、彼ほどの方がなぜ?という思いである。執刀チームの他の医師たちは、彼には何もいえなかったのだろうか?報告書に対する執刀医はもちろん執刀チームの弁明を待ちたい。

 なお、日本移植研究会が今回の事案を明るみにしたわけで、まあ傍からみれば「告発」だが、
告発者たちは正義感というよりも「キング」の田中先生に対する「様々な負の感情」を抱いていそうに思うのは私だけか?

 大物の代替りの時期に決まって起こる醜い争いの犠牲者は今回の場合、患者さんであろう。



神戸での生体肝臓移植<事案>に対するマスコミ報道の拙さ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)で生体肝移植を受けた患者8人中4人が死亡した件を、通常の生体肝臓移植よりも格段に死亡率が高いから問題だとするマスコミさんへ。

 マスコミは通常の生体肝臓移植の1年生存率は約80%だと述べている。しかし、これは、いわゆる「ミラン・クライテリア」内に収まる患者さんの平均生存率の話だ。今回、田中紘一院長らが行った「他の病院で(生体肝移植を)断られ、生死のはざまで移植を求めてきた患者さん」たちとは全く条件が異なる。彼らの1年生存率は残念ながら50%にもはるか届かない。
 患者背景・条件を統一したうえで数値を比較してほしい。

 なお、たしかに今回は術後1ヶ月以内に患者8人中4人が残念ながら死亡した(=手術死亡率は50%)。しかし、ほぼ助かる見込みが無い患者さんの1年生存率が0%から50%にもなったと言い換えようか。読者諸兄は、どう思いますか?私には画期的な医療と思えるが…。
 このように数字の説明の仕方で印象がまるで異なることも、念頭に入れておいていただければ幸いである。



米国での心臓移植を期待する患児と家族

 つい先日、「拡張型心筋症」患児(生後8ヶ月)の両親が募金協力要請のために記者会見を開いた。症状は待ったなしであり、手術や渡航などには2億8千万円が必要だそうだ。
首尾よく、できる限り早く必要なお金が集まればと願う。
 数年前なら、日本から米国に心臓移植を受けにいった場合、1億2000円万~1億5000円万円くらいだったと思うが、ほぼ倍になったのか。。。
 肝臓移植を日本から米国に受けにいった場合、NYだと「4000~5000万円を準備してからね!」といわれる。直接治療費もかかるが、親が泊まるホテル代などの「間接医療費」がかなりかさむ。緊急の場合に備えて病院の近くに泊まることになることが多く、そういう地区はNYでもホテル代が高いところで、しかも「そこそこ広い部屋」が必要になるからだ。

 ところでヒトES細胞かヒトiPS細胞由来の心筋細胞移植治療は実験段階だから「直接医療費」は当面の間、無料だろう。すでにヒトES細胞由来の心筋細胞移植はフランスで2例行われ、経過観察中である。1例は原因不明の死亡という不幸な結果となったが、もう1例の患者さんは症状が改善されている(4ヶ月超経過)ようだ。なぜか日本では、この報道がされない…。

 もし、上記の患児がヒトES細胞由来の心筋細胞移植を「フランス」で受けられるなら、どうなるだろうか?この場合、まず、上記の患児のお母さんの卵子とお父さんの精子を用いて受精卵をつくり、その受精卵を使って創られたヒトES細胞を大量培養する。そして、そのヒトES細胞から心筋細胞移植を1億個以上作り、それを細胞シートにして心臓の患部に移植する(人工心臓と併用する治療法)。このようにすれば、うまくいけば、どうにか凌げるかもしれない。少なくとも心臓移植の待機時間を稼げるかもしれない。免疫抑制剤が必要なのは心臓移植と同様であるが…。こうした「選択肢」も考慮されたらいいなと思う。

 どうも、ES細胞を使うほうがiPS細胞を使うよりも良いと思われる疾患があると、世界初のヒトES細胞臨床応用をやった、ロバート・ランザ博士が日本の雑誌「ニュートン」の(昨年の今頃の)インタビューで話していた。iPS細胞もES細胞も両方必要で、状況に応じて使い分けることが重要かもしれない。

 なお、ES細胞は倫理問題が~と言う日本人は多いようだが、本当に今の日本人は、その「倫理問題」の本質を理解して反対しているのか疑問に思う今日、このごろでもある。

STAP細胞事件の小保方弁護団がNHKに抗議文について

STAP細胞事件の小保方さんと、その弁護団がNHKに抗議文を送付した。
NHKの報道内容だと小保方さんの記者会見時の発言は虚偽発言だったことになる。
この「論争」は裁判で決着をつけるといい。

もはや小保方さんを公の場、ましてや裁判に引っ張り出すのは非常に困難だった。
しかし千載一遇のチャンスが訪れた。

NHKは、この抗議文に真正面から受けて立ってほしい。
裁判あるいは国会の場で。
まずは、国会で誰でも良いから議員がNHK会長に本件の対応を質問してくれ。
その返答次第で、また大きな問題になるだろう。
あるいは国会からだけではなく、NHKは裁判所でNHKスペシャルや、その後の報道でも流せなかった「隠し玉」を披露してほしい。

裁判になれば、小保方さんにみならず、事件の黒幕である女子医大の大和氏やハーバードの小島氏を強制的に呼び出せる。真相解明についての止まっていた針が動きだす。

富士フイルムホールディングスの米国iPS細胞開発企業を買収について

 富士フイルムホールディングスは3月30日、iPS細胞の開発や製造を手がける米セルラーダイナミクス社をTOB(公開買い付け)で買収すると発表した。買収額は3億700万ドル(約360億円)らしい。
 日本万歳とは、必ずしも、いかないのがこのニュース。欧米のiPS細胞への関心(学術・ビジネス面)が、この1年くらいで、かなり低下している象徴的な出来事だ。
 欧米の企業及び研究機関は移植治療についてはすでにヒトES細胞で大きな臨床的成果をあげており、正直、ヒトiPS細胞にはあまり大きな期待をいだいていない。かなり慎重である。
 
 加えて、今回はヒトiPS細胞(患者特異的iPS細胞)利用の創薬ビジネスの可能性という面でも大手のセルラーダイナミクス社が事実上放棄したようなものだ。先方は、将来的に日本で思われているほどの高い市場性が無いから売ろうとした事実は重い。
欧米の期待度は、ヒトES細胞>ヒトiPS細胞なのかもしれない。

卵子凍結~千葉県浦安市ケースについて~

 このごろ卵子凍結の話題がiPS細胞研究の進展・STAP細胞スキャンダルと肩を並べるくらいに話題となっている。

 「千葉県浦安市が卵子凍結存に助成金」というニュースは、かなりインパクトがあったようだ。「卵子凍結を通じて女性が妊娠、出産して、将来的に浦安の人口が増えるか否か?」という社会実験でもある。

 現在、国が行っている不妊治療への助成金は42歳まで(所得制限付き)が対象で1回15万円までで、利用できる回数にも制限がある。ただ、実際、42歳で出産にいたる確率は3.7%と非常に低く、子供は増えない。ならば対象年齢を下げる(34歳まで)代わりに卵子凍結保存にかかる金額の70%を補助して子供が増えるかどうか検証しよう…ということらしい。

 また同時に、若いカップルの流入促進目的もあるのだろう。あそこは東日本大震災で液状化が進む前は、若いカップルに人気の街だった。私の知人・友人のカップルの多くは、あそこか、川崎市(神奈川)に住んでいた。中には浦安で1億円のマンション買ったのもいたが震災で悲惨な目にあった者がいる。で、震災被害で、みんな他の地域へと…。今回のプロジェクトは、その悪い流れを断ち切り、逆流させる目的もあろうかと思う。

 ちなみに市から3000万円の寄付を貰う順天堂の浦安病院には、私の教え子(医師・看護師ら)のけっこう多くが他の地域から通ってます。ただし、彼らは「卵子凍結」補助のために浦安市に根ずく気は無いようだ。



STAP細胞の悪夢の払拭なるか?:理研理事長、松本氏(前京大総長)で調整


 各紙、STAP細胞問題で辞任した「ノーベル野依氏」の後任として新しい理研理事長は前京大総長の松本氏で調整と報じている。

 彼の学問的業績は、おいとくとして、彼は恋愛経験のある奴を優先的に京大に入学させようと豪語したり、古代宇宙飛行士説等の疑似科学信じてる愉快な人だ。
なお、奈良先端科学技術大学から山中先生を笹井氏らとタッグで京大に強奪した功績で総長になれたとも噂されている。

 
 新しい理研から、早くも第2の小保方氏誕生という香ばしい香りが漂ってきそうだ。

 ノーベル物理学賞の中村教授あたりをスカウトしてきたほうが、日本のためという観点から、もっと面白かったのにとも思うが。。。

理研による小保方氏の刑事告訴見送りとSTAP細胞関連特許出願

理研による小保方氏の刑事告訴は見送られた。
理研OBの石川氏による刑事告発も、恐らく受理されないだろう。

小保方氏の退職願を受理した時点で、こうなることは予想できたので驚きはしない。
理研がここまでするのは、小保方氏の保護のためでもなんでもない。
彼らが敬愛してやまない故人の笹井氏の名誉を守るとともに、自分たちの不都合な真実を裁判などで明らかにされたくないことを基点として理研は行動しているのだ。

ところで、マスコミは「これで、STAP問題もこのままうやむやになってしまう」と報じている。
アホか!相変わらずの低脳さだ。

理研編は終わるのかもしれない。しかし、うやむやにしたくなければ、やれることはまだある。
「東京女子医大」の大和氏の記者会見による真実解明、ハーバードの調査催促(あそこで作られたSTAP細胞の正体などの調査)などだ。なぜ、マスコミは、このくらいのことができないのか?
小保方さんの再記者会見も要請しなよ。なぜ、STAP細胞はできなかったのか聞くべきだ。

ところで、STAP細胞関連特許出願について、下記の情報がある。
PCT出願の日本への国内移行の出願番号は特願2015-509109だが、日本国内の出願公開はされていない。ただし、審査書類情報は見られる。どうやら期間内に日本語の翻訳文が提出されてないようだ。
ということは、取り下げと同じことだ。

しかし、米国への国内移行(14/397,080)は、なんと、まだ放棄されていない。
すでに担当審査官がついて、審査準備が完了してしまっている。

これは、まずい。

化合物(薬)だけでヒトiPS細胞が創れた場合、(米国への)STAP細胞関連特許出願は少々邪魔になる特許出願なのだ。

まあ、あの記載の方法ではSTAP細胞は創れないことが実証されているので気にするほど痛くはないか…。

なお、米国へのSTAP細胞関連特許出願の内容が(1部でも)米国で認められ、1部でも米国特許が付与された場合(可能性は無くは無い)、小保方氏や関係者を堂々と処罰できる。…ということで、理研による小保方氏の刑事告訴の見送り自体については実は、どうでもいいのかもしれないね、日本のマスコミ諸君。



<追記>:5月14日付けで理研OBの石川氏による刑事告発は予想に反して受理された。今後、生暖かく見守ろう。一方、ハーバードのBWHにあったはずの「STAP細胞」の正体は何なのか?
ほぼ間違いなくマウスES細胞だろうが、どこから入手されたのかが?気になる。


線虫と癌の早期発見報道

 昨日から今日にかけて、線虫による癌の早期発見論文のニュースが盛んに報道されている。
まだまだ評価に足る症例数ではないのに、大げさな宣伝をするものだなと思う。
掲載誌は案の定、この種の不十分であってもマスコミ受けする論文を載せるプロスワン誌である。

 N Engl J Med、Lancetあたりに今回の論文が載らないのは、発想はよくても研究デザインが悪いからだ。一般の方々はN Engl J Med、Lancetあたりに今回のネタが掲載されたら信じてあげてください。

 なお、癌の早期発見ができても、人体のどこの部位に癌ができてるのかは「線虫検査」ではわからない。よって、今後、「線虫検査」+既存の検査との組み合わせ VS 既存の検査という厳格なランダム化比較試験をへて、今回の研究の評価が定まっていくだろう。

 今回の研究は良い方向に進むといいのだが、癌を発見する犬の例もあるし…。




続 大卒プロ野球選手の卒論(京大 VS 早稲田)

なぜかアクセス数の多い記事の追加。

ロッテの田中英祐選手の京都大学 卒業論文は「SFA(表面力測定装置)における水和構造の逆計算理論」。恐らく彼単独ではなく、彼の所属教室の教官や大学院生たちとの共著で査読つき論文として出版されるだろう。期待している。
その前に京大なら、「京大初のプロ野球選手の卒論」として記念に公開するかもしれないね。

早稲田大学では、前回記事のメジャーの青木選手以外の卒論は下記のとおり。


大石達也選手 早稲田大学卒業論文「東京六大学野球リーグ戦における自身と他投手の配球の比較」
大嶋匠選手 早稲田大学卒業論文「野球とソフトボールのバッティング比較」

そして、斎藤佑樹 早稲田大学卒業論文「スポーツの地方興行と観客動員の地域の中での経済効果について」などである。

コピペだらけかゴーストライター執筆ではないことを祈る。

なお、山口大学の教授(早稲田大学出身)が、自身の早稲田での博士学位の自主返還を求めている。
「(小保方氏・早稲田の対応のせいで)恥ずかしいから」という理由だが、自分の学部から博士課程までの人生や苦労を否定するもので、教育者としての資質を疑う。

彼には、ついでに教授職も辞めてもらいたい。