米国での心臓移植を期待する患児と家族 | 医学ニュースの深層

米国での心臓移植を期待する患児と家族

 つい先日、「拡張型心筋症」患児(生後8ヶ月)の両親が募金協力要請のために記者会見を開いた。症状は待ったなしであり、手術や渡航などには2億8千万円が必要だそうだ。
首尾よく、できる限り早く必要なお金が集まればと願う。
 数年前なら、日本から米国に心臓移植を受けにいった場合、1億2000円万~1億5000円万円くらいだったと思うが、ほぼ倍になったのか。。。
 肝臓移植を日本から米国に受けにいった場合、NYだと「4000~5000万円を準備してからね!」といわれる。直接治療費もかかるが、親が泊まるホテル代などの「間接医療費」がかなりかさむ。緊急の場合に備えて病院の近くに泊まることになることが多く、そういう地区はNYでもホテル代が高いところで、しかも「そこそこ広い部屋」が必要になるからだ。

 ところでヒトES細胞かヒトiPS細胞由来の心筋細胞移植治療は実験段階だから「直接医療費」は当面の間、無料だろう。すでにヒトES細胞由来の心筋細胞移植はフランスで2例行われ、経過観察中である。1例は原因不明の死亡という不幸な結果となったが、もう1例の患者さんは症状が改善されている(4ヶ月超経過)ようだ。なぜか日本では、この報道がされない…。

 もし、上記の患児がヒトES細胞由来の心筋細胞移植を「フランス」で受けられるなら、どうなるだろうか?この場合、まず、上記の患児のお母さんの卵子とお父さんの精子を用いて受精卵をつくり、その受精卵を使って創られたヒトES細胞を大量培養する。そして、そのヒトES細胞から心筋細胞移植を1億個以上作り、それを細胞シートにして心臓の患部に移植する(人工心臓と併用する治療法)。このようにすれば、うまくいけば、どうにか凌げるかもしれない。少なくとも心臓移植の待機時間を稼げるかもしれない。免疫抑制剤が必要なのは心臓移植と同様であるが…。こうした「選択肢」も考慮されたらいいなと思う。

 どうも、ES細胞を使うほうがiPS細胞を使うよりも良いと思われる疾患があると、世界初のヒトES細胞臨床応用をやった、ロバート・ランザ博士が日本の雑誌「ニュートン」の(昨年の今頃の)インタビューで話していた。iPS細胞もES細胞も両方必要で、状況に応じて使い分けることが重要かもしれない。

 なお、ES細胞は倫理問題が~と言う日本人は多いようだが、本当に今の日本人は、その「倫理問題」の本質を理解して反対しているのか疑問に思う今日、このごろでもある。