IDSアライグマ・ハクビシン・スズメバチ駆除日記 -7ページ目

IDSアライグマ・ハクビシン・スズメバチ駆除日記

ハチ・有害獣駆除担当のヴェスパ1号、アライグマ駆除担当の変人プロチョーネ1号、太ったネズミ駆除担当ムスムスクルスムスクルス初代 そして、ハクビシンのツヨシとヨワシの日常の奮闘ブログです♪
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 プロチョーネです。あちこち梅が満開、を通り越して早くも散り始めてるような気がします。あのー・・・梅ってこんなに早くから咲いてるものでしたっけ?

曇り空背景なので見づらいですが・・・

 いや、旧暦でも桜以前の「花」といえば梅であっていつも2月には咲いてるわけですが、それにしても今年の咲きぶりは早すぎる気がします。

 異変は最近も言ってるように、動物たちの動向にも現れています。

 

 昨日のことですが、週明けは大量の捕獲で始まりました・・・。

 

 川口の面々(左からアライグマ、ハクビシン成獣、幼獣)

 

僕が行ってる自治体では2頭、川口市で3頭、越谷、富士見市で1頭で7頭もの捕獲!!ですよ。春先ならまだしも今まだ2月ですよ?間違いなくこれまでの2月にはなかった捕獲数です。

 内容もあまり統一性はありません。

 かなり肉付きのいいオスのハクビシン。4㎏を越えてました。

 こちらのアライグマはかなり痩せ細ったオス。ハクビシンと同じくあちこちうろついていたのでしょうが、体格は対照的です。

 それもそのはず。この通り、左手が先からなくなっていました・・・ゲホゲホ

 こういう個体はたまに見かけるんですが、おそらくイノシシ、シカ用のくくり罠(主に猟友会の人たちが有害獣駆除のために山に仕掛けてます)に引っかかり、無理やり逃げようとして手がちぎれたのだと思います。埼玉県北だとそんな場所が結構多いようです。

 駆除する立場からすると安易に「かわいそう」とも言えませんけど、疥癬になったタヌキと同じく、早く楽にしてあげることしかできません。(疥癬タヌキは処分できない自治体がほとんどですが・・・。)

 

 で、今日は上のハクビシンが捕まった所でアライグマの捕獲がありました。ここは荒川沿いなのでこの季節ですと移動中のオスばかりが捕まるのですが、こいつはメス。既に子供を産んでいる感じすらありました。これもまた暖冬によってアライグマの移動が速まっている証明なのかもしれません・・・。

 さらにもう1頭またハクビシンです。山の方で捕まったのですが、こちらもメスで既に出産しているような感じでした。

 

 通常ならオスしか捕まらないような場所でもメスが捕まり、性別に関係なく早くも移動しだしているのでしょうか。例年なら、2月なんて時期はせいぜい移動しているオスしか捕まらず、ハクビシンなんてそもそも捕獲も珍しかったというのに・・・。

 やはり動物たちに人間の認識は通用しないですね。状況に合わせてすぐに対応してしまうことが改めてよく分かりました。

プロチョーネでーす。今日も捕獲があって暇しませんでしたよ。

 

ミカンなき後のミカン山

 先週様子を見に行ったみかん山から2件捕獲の知らせがきました。ここは以前扱ったように(https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12541043818.html?frm=theme)、みかんが連日食い荒らされながらも全くアライグマが捕まらなかったのですが、このあたりに定着個体がいるのであれば既にミカンもなくなった2月なら捕獲の可能性があるだろうと思って先週行って様子を見に行っていたところでした。

 で、ミカンもほとんど消えたミカン園の中で捕まっていたのは・・・

 見るからに幼獣だと分かるメスでした。身長は60cm程度で体重も2㎏程度と、アライグマが独立する生後半年に達しているかすらも怪しい小ささでした。となるとこの個体が生まれたのは秋頃だったのではないでしょうかね。一般的な出産時期とは大きく遅れますがあり得なくはありません。それに当時であればこのあたりには大量のミカンオレンジオレンジオレンジがあって子育てにも適していたでしょうから・・・。

 

 もう1箇所で捕まっていたのはそれなりに大きなメス。6㎏ありましたが、やはりこの時期にしては痩せています。まだ断言はできないですが、上の個体の小ささからしたらこの2頭が親子でもおかしくはないと思いました。

 死体の写真で失礼します。このメスは現在妊娠した様子ではないですが、乳首のあるあたりの毛が薄くなっているので一度は子育てをした可能性がありますね(子供が乳首を吸った現れ)。首の毛が薄いのはおそらく、山の中でノミダニがくっついていたのを掻いていたためかと思われます。それだけこの個体がこの山で長く暮らしている証拠だと言えるかもしれません。

 この様子からも、今年この山に定着していたアライグマたちにとって秋までは食べきれないほどののミカンに恵まれてよかったでしょうが、ミカンが無くなって以降はろくな食べ物もなく厳しい暮らしを強いられていたことが伺えます。だから、これまでは捕まらなかったところ飢餓に負けてついに罠に誘われてしまったのでしょう。

 しかし、ミカンを食い荒らしていたのがこの2頭だけで終わるはずはなく、まだ数家族はアライグマがいてもおかしくないため今の内に定着している個体を捕まえてしまいたいものです。

 

 タヌキの冬事情 

 さらに別の所からは罠設置の連絡がきました。去年もタヌキに庭に糞をされていたところで、未だにそれが続いているとの事でした・・・。

 汚い絵でまた失礼しますが、この通り、タヌキは決まった所に糞をする習性があり(ため糞)、この家の庭は去年からずっとあるタヌキに目をつけられているようです。

 家の人からすると迷惑極まりないですが(これでも数日に一度掃除しているそうです)この食べ物がろくにない冬に動物は何を食べているのかが分かる機会でもあるのでしっかりと運子を観察してみましたもやもや

 

 この、大量の一見タピオカやぶどうみたいな球は触ってみたら堅い種みたいでした。

 皮が残ってるものがありましたが、見ての通り薄い皮しか見当たらず、果肉らしい部分なんて全くない何からしいです。会社の人たちといろいろ検索したりしても数珠玉とか青葛だとかジャノヒゲとかそれっぽい植物を挙げるのがせいぜいでよく分かりませんでした・・・シラー

 しかし少なくとも言えるのは、このタヌキもろくに食べ物がないためにこのような、まともに食べる箇所もない実を食べる他ない状況だということでしょう。例年ならもっと銀杏だとかキンカンだとかが混ざってるところですからね。もちろんまともに消化されてる部分は他のものを食べている結果なのでしょうが、野生動物たちの今年の冬の食糧事情が厳しいのは間違いないでしょう。この糞からも証明されました。

 

 この様子ですと今後も例年以上に捕まると思いますので備えるとします。

 プロチョーネです。先週は僕の担当してる地域での捕獲がなかったので暇だったんですが、週明け早々3頭の捕獲がありました。

 それなりに太ったメスでしたが6㎏程度でした。普通のアライグマより顔が小さく丸い感じですね。

 こちらもメスでしたが4㎏台で痩せてます。

 このオスはさらに貧相です(同じく4㎏台)。みんな尻尾の毛もパサパサで栄養状態が悪いことが伺えます。おそらく暖冬の影響もあるのではないかと近頃ヴェスパさんと話していたところです。

 

暖冬の影響

 今年は個人的な体感としてはそうでもないんですが暖冬と言われて、野菜も育つのはいいものの育ちすぎて廃棄処分されるものも多く売値も安いとか言われてますよね。

 野生動物にとっても一概に暖冬が過ごしやすいとは言い難い気がしており、彼らはおそらく通常の冬(10℃以下?)であれば代謝を落として脂肪をあまり消耗しないように過ごしていると思われます。もちろんこれは動物たちが自分で切り替えできるわけでもなく気温や環境によって切り替わるのでしょう。今年は10度を超える日も多いために代謝が普通の時期みたいに働いてしまっているのではないかと思います。えーんそのため今年の冬は例年よりも痩せている個体が多いのかもしれません。現に川口越谷などで捕まっているアライグマハクビシンも例年より痩せているそうです。

 それに・・・、暖冬だからといってアライグマハクビシンにとって狙い目の農作物である果物は埼玉県の場合、ビニールハウスの中くらいにしかないでしょうし、今そこらにある果物なんてせいぜいキンカンと、カチカチで熟してもいない夏みかんくらいでしょう。

 ミカン山に落ちていた夏みかん。これはおそらくカラスやヒヨドリたちが突いて中を食べたものだと思います。今の時期に果物を狙っているのは鳥たちばかりです。たぶん地面や木に止まってるヒヨドリ、ムクドリ、カラス、スズメは皆さんも嫌でも見てるでしょう。

 まあ、これでアライグマたちが適応力を発揮して冬野菜でも食べるようになればどうなるか分かりませんが、今のところ彼らの大半が葉物野菜を食べているわけではないみたいですね。今のところは・・・。

 

 

 今日の帰りに川島町の直売所にたくさん売っていた伊予柑を買いました。収穫期は1~3月だそうです。埼玉県のミカンなら1月には収穫を終えるのでそれ以降はアライグマにとってミカン不足になるわけですが、温暖で冬に柑橘類を収穫するところもありそうな愛媛、和歌山、静岡、千葉?などにアライグマがいる場合は食料に困ることはないかもしれませんね。

 今のところ千葉を除いてアライグマがそこまでいるような話は聞きませんが、アライグマハクビシンがらみの話はどれも「今のところ」という前提ばかりがついてしまいますね・・・。

 

前回 https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12572923760.html

 

 前回で動物救護を熱心に行っている小山先生がなぜアライグマ駆除を行っているかを扱いましたが、今回は具体的な内容に入っていきましょう。

 

 小山先生は2016年10月に箱罠2台を使って駆除を開始すると共に、翌年2月には今回小山先生の後に発表して頂いた天白牧夫氏、前回のセミナーで講演頂いた(https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12502921779.html?frm=theme)古谷益郎先生を招いてアライグマの捕獲従事者研修会を開催しました。問題意識を持っている住人が多かったようで100人を超える出席者を記録しました。

 

2017年の捕獲

 さらに3月からは箱罠を8台に増やして駆除を行ったところ・・・

 春先からメスが多く捕まり、幼獣の数は少なく、オスが年間通して捕まっていることが表から分かります。この年は年間54頭が捕獲されました。2017年までの時点での鳩山町のアライグマ捕獲数は約180頭程度なので、小山先生たちだけでほぼ3分の1を捕獲していることになります。僕たちが委託されている自治体の従事者の場合、特別多い人でも一人あたり年間20頭程度の捕獲ですのでいかに多いかが分かります。

 

2018年の捕獲

 翌年は罠を増やしたこともあって年間を通してオスメス共に捕まり、子育て中の夏に幼獣も捕まっています。この年は59頭でした。

 範囲は赤で囲った山の部分。この周辺部分(主に沢の入口)、中心部(沢沿いが中心)に4台ずつ設置したそうです。

 闇雲に広い山に罠を仕掛けても捕獲効率が悪いので、このように移動に用いる水路沿いに設置するのが基本です。もちろん山の中に何らかの形で住んでいるはずでもあるのですが、未だに僕もそんな姿を見たことないですし、そのような奥地に罠を仕掛けて見回る手間もかかりますので、住居よりも通路で捕獲をするのが効率面でも無難だと言えるでしょう

 ただ、この年の鳩山町の捕獲数は例年以上に多くなり、250頭ほどになり、県内6位ほどの数に上ったはずです。あまりにも全体数が多くなってしまったのでここでの捕獲がこの地域のアライグマの生態にどう影響を及ぼしたかは分かりにくいですが、小山先生が別にとったデータから効果が見えてきます。

 

 

小山先生の活動成果

 

 上が森の周りでの捕獲数で、下が森の内部での捕獲数ですが、見ての通り2018年度はほとんど外部で捕まっています。

 さらに捕獲を続けた2019年度には森の中での捕獲は春先のオスのみ。この時期のアライグマは性別問わず移動が多く、特にオスは他の個体より先駆けて他のアライグマがいない領域に入っていくとされていますので小山先生たちの努力によって森の内部に定着していたアライグマたちはいなくなり、よそ者のオスがたまに立ち寄ってくるだけの状態に持ち込むことができたと言えるでしょう。もちろんこの状態から罠を仕掛けずに放っておけばオスが入り、それに続いて妊娠、子供を連れたメスが侵入して滞在してしまうはずですので、定着個体がいなくなっても継続して防除を続ける必要はあります。

 当然そのためには人手もほぼ毎日罠を見回る労力も必要になります。周囲にアライグマたちが無数にいる限りキリがないわけでして、結局はこのような防除を行う地域を増やしていく必要があるのは間違いないでしょう。

 発表タイトルの通り、アライグマは必ず減らすことはできるとは思います。ただし・・・ここには多くの「ただし」がつきまとうゲホゲホわけです。

 

 

 思ったより長くなりましたので扱いきれなかった部分を次回扱います・・・。

前回https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12568472246.html

 セミナー開催から思えば時間も経ってきました・・・。なんだかんだで最近扱っていなかった11月のセミナーの内容に戻るとします。

 加藤先生に続いて講演頂いたのは地元埼玉の獣医で、自らアライグマの駆除を行っている小山正人先生です。下の記事にあるように東松山市の高坂どうぶつ病院をご夫婦で営んでおり、県内でも屈指の件数の傷病動物の救護を行なわれているお方です。

 

https://mainichi.jp/articles/20160530/ddl/k11/040/127000c

(有料記事なので途中までしか読めませんが・・・)

 

 このように動物を助けることに非常に熱心な方がなぜ正反対のように思えるアライグマの駆除を行うことになったかについて説明するところから始めましょう。

 

 資料の扉絵にあるように小山先生は獣医の傍ら環境保護活動にも熱心で獣医師会だけでなく埼玉県の生態系保護協会にも所属し、東松山、鳩山、滑川支部の支部長も兼任されています。さらに鳩山町の自然保護団体「はとやまフォーラム」にも協力し、地域の自然保護活動を日頃からされています。

 その目標はスライドの通りであり、持続可能で生物多様性が確保されて、人々と自然が共生できるような環境にとって、やはりアライグマは色々と問題を起こしてしまう存在と見なされているのです。その影響がはっきりと現れてきたのが鳩山町でした。

 

 小山先生が鳩山町でアライグマと初めて遭遇したのは2016年のことです。

 森の中で親子6頭に遭遇した際の映像です。真ん中に2頭、よく見ると画面左端にも1頭子供が木に登っています。

 その後も森に設置したカメラに映り続け、現地で暮らしているようでした。まあ別に、暮らすだけならいいんですが(いや、特定外来法がある限りよくないですけど)・・・問題は彼らが何を食べて暮らしているかなんですよね。

 アライグマの親子が目撃された鳩山町を始めとした埼玉県中央部、比企郡地域は自然豊かな場所であり、このように世界農業遺産になった能登半島の里山と同等の生物多様性、豊かな自然を持つとされています。それが都内からたった60kmのところにあるという点も含めて極めて希少な場所だと言えるでしょう。

 それを知ってるためか、トウキョウサンショウウオのような絶滅が危惧されている希少生物が生息するだけでなく、外部からも渡り鳥が多くやってきます。

 特にミゾゴイとサシバの2種の渡り鳥は希少で、中でもミゾゴイの関東地域での繁殖地は鳩山くらいしかないと言われています。ミゾゴイは普段はフィリピンなど東南アジアに暮らしていますが、繁殖は日本でしかせず、その数もよく希少な鳥として挙げられるヤンバルクイナより少ないと言われています。上のスライドにもありますが、世界で1000羽ほどしかいないと言われれば、その希少さが分かるかと思います。彼らの減少の理由は複雑で様々にあるとは思いますが、間違いなく直接的に誰が見ても明らかな形でかかわっているのが、鳩山町の里山で繁殖中の彼らの卵を食べるアライグマです。

※このアライグマが何かやらかしたわけではありませんが、現地のアライグマにとって里山はごちそうの並んだテーブルみたいなものかもしれません。

 

 この発表ではあまり掘り下げられませんでしたが小山先生たちが調査したところ、アライグマたちは鳥の巣がある高い木もスイスイ登って卵を食べているようです。様々な鳥が対象になっている中で、当然ミゾゴイとサシバの卵も食べられているのでしょう。さすがに自分たちの何倍もある大きさの動物に襲われてしまえば親鳥も何もできずに逃げるしかありません。

 鳥も襲われるわけですから、もっと動きの鈍いサンショウウオなんて簡単に餌になってしまいます。前回のセミナーでもあったように、アライグマは元々両生類を食べるのが得意なので両生類も鳥の巣も多い比企郡の里山は食べ物だらけということになるわけです。

 

環境保護、生物多様性、希少生物の保護のためにも、生態系を食い荒らして希少生物をさらに希少にしてしまうアライグマを駆除せざるを得ないというのが小山先生の下した判断でした。

 

 というわけで早速先生は2016年の10月から箱罠2台を使って駆除を開始し、翌年からはさらに多くの罠を用いるようになりましたが、その方法と結果については次回。

 プロチョーネです。今週はいきなり事件が起こりました。

 場所は某市役所。急に役所の方から連絡があったかと思えば、市役所の建物内にアライグマが出没したとのこと。ちょうど同じ市内で巨大なアライグマの回収に向かっていたヴェヴェヴェスパさんが駆け付けて対応しました。

 写真は1階上部の窓と内側の棚か天井部分の間に入り込んだ様子。もっと写真を撮ってくれればよかったんですが、仕方ないですね。ぼけー職員の方々に追い込んでもらった末に動物捕獲用の網を役所が持っていたのでそれで捕まえたみたいです。

 この通り、上部がワイヤーで締まる強力な網でした。それはよかったのですがベスパさんは午後から健康診断だったので処分を任されたものの開け方が分からずしばらく困りましたが・・・笑

 個体としては7㎏近いオスで今の時期では珍しくない感じでしたが、もちろんこんなところにアライグマが出現したことはないために彼らがよそからやってきた懸念があります。

 

 また、もう一頭もこの市役所の近くで捕まったのですが、これがまたすごい奴でした・・・。

 小型サイズの罠に入っていましたけど狭苦しそうに入っており、罠の部品も曲げてしまい、扉部分も歪んで壊れそうだったそうです。

 

(※ 以下、動物の死体の写真がありますので苦手な方はご注意下さい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずはこのサイズ。筋肉も脂肪もしっかりついた巨大なオスでした。

 お次は体重。滅多にいない10㎏越えです。僕たちが年間数百頭捕獲する中でも10㎏を越えるアライグマはせいぜい1,2頭程度しかいませんので、相当な大物だと言っていいでしょう。餌を豊富に確保し、おそらくメスをめぐる争いにも勝ち抜いてきた強者だと思いますクマ

 ただ・・・

 

 この歯の様子を見ると人間でいう80過ぎの歯の抜けた爺さんを連想させられました。おじいちゃん よく牙が折れた個体がいますが、こいつの場合は明らかに長年の使用ですり減る、歯周病や虫歯で溶けていってます。こうなるには相当な時間がかかると思いますので、おそらくこの個体は10歳前後かそれ以上は生きていたと思います。アライグマ世界で言えばかなりの長老だと言えるでしょう。このような個体は10㎏越えと同じく滅多に見ませんが、これだけの個体が埼玉県にはあちこちに暮らしているのだと思います・・・。

 

 

 しかし、今回の件で気がかりなのは2頭が捕まった地区は今までハクビシンの捕獲はあれどアライグマの捕獲はほとんどなかったところだということです。地形としても目立った林や田畑があるわけでもなく、住宅や建物が多く並んでいるところです。あとは、せいぜい元荒川が流れている程度・・・。

 そう、元荒川です。県北から海まで流れているあの川沿いをたどって北から下ってきたと考えるのが最も妥当な経緯だと思います。この時期のオスが移動しまくることはこれまでに述べたとおりですので、川沿いに調子に乗って動いていた連中がこうしてこれまでアライグマがいなかった地域に入り込み、そこに他の個体も続いてやってくるというパターンがアライグマの生息圏の拡大を成してきたのかもしれませんね。

 当然、このような移動はアライグマの数が多いほど起こりやすいはずで、人口(アライグマ口)が多くなった地域から新天地を求めてうろつく個体の比率も増えるのだと思います。それだけアライグマの数が増え続け、順調に生息圏を拡大していると示しているのが今回の一件だと思えてなりません・・・。

 

 

 プロチョーネです。昨晩は埼玉県もあちこち雪が降ったみたいで、県北の方は昼間も雪が残っていました。

 昨日は山沿いの場所でメスを探してうろついていたらしいオスが捕まりましたが今日は何も捕獲なし。ただし、町の中央部の駅周辺から「天井裏と床下で糞をされてる」というので調査に行ってきました。すると・・・久々に強烈な現場でした。

 

 まずは床下から覗いてみました。

 柱の周りを囲むように糞が。既にカビも生えてきているので結構な時間が経っているとは思いますけど、床下の格子はどこもはまっていて入り込める様子ではありませんでした。

 となると天井の方から入って来てるのだろうと押入れの上から覗いてみました。

(暗くて画質を上げて撮影したためそのままではブログの制限に引っかかって画像を上げられず、画面直撮りしました・・・ぼけー) 

 

顔の横にさっそく糞が。ここもカビが生えて古臭そうです。ここでもう被害の確認には充分なのですが、一応業者ですから天井裏に入って調べてみることにしました。

 部屋の仕切りのあたりの壁が破壊されてるらしいのを発見。ますます動物の気配満点ですね。向こう側には行けないので間から覗いてみれば

 うげっぷうんちうんちうんち

 ・・・・・1畳分にも迫りそうな量のナニカがそこにはありました。一瞥しただけで無数の銀杏の種、柿の種と皮などが含まれてるのは分かりましたが、これだけの量の糞が積もるには何年もの間、それも複数頭のハクビシンかアライグマ(もしくは両方)が来ていたはずです。周囲に手形が見つからなかったのが不思議ですが、間違いなくハクビシンとアライグマにしかできない仕業でしょう。

 下はこんなふうになってました。これがもっと積もってしまえば天井が壊れてあの大量の糞が落ちる危険もあるでしょう。この家は寸前で糞をされるのが止まったみたいなのでよかったですが、もっと古かったり脆い家に侵入されてしまえば衛生的にも大変なことになってしまいます。こいつらの糞尿には放置されて乾燥してもなお寄生虫やウィルスが生息してる可能性がありますから。

 

 さらにはもう少し離れたところにも天井板4枚にまたがって積もった糞が。これまたすさまじい量です。幸い?この家には依頼主の方は現在住んでいないので被害はなかったわけですが、そのためにここまで侵入されて糞尿をされることに気付けなかったわけでもあります。

 まだこの家の場合は家主の方は近所に住んでいるので目が届いていますけど家主がいなくなり親族の管理が届かない家、そもそも管理すらない空き家であればもっとひどいことになっていた恐れもあります。去年の今頃も県東部の古民家の天井裏にこれ以上の量の糞が積もっていた現場を見たことがありますが、そこではアライグマが5,6頭捕まったみたいです。

 この近くもここ1,2年はほとんど捕獲もなかったのですが、この前軍鶏が殺されていた家の近くでもあるために油断はなりません。何頭ものハクビシン、アライグマが交代したり、天井裏の箇所を分け合うようにして糞尿をしにくる危険がありますからね。

 

 ともかくこうした家を久々に見て改めて思ったのは、少しでも侵入口がある家であれば連中はすかさず入り込み、その気になれば住人の知らぬうちに公衆トイレ男性トイレ女性トイレにされてしまうということ。となれば、トイレ扱いされる家がある他に巣扱いされる家だってあることでしょうから・・・アライグマハクビシン1頭あたりにつき侵入され被害に遭う家は何件にもなってしまうでしょう。染みが天井に出てしまえば、その上はもっとひどいことになってまいますしね。

 

 埼玉県の皆さん、どこかが壊れていれば家をアライグマやハクビシンのトイレや家にされてしまう危険がありますから早めに修理するなり天井裏を見るなりご注意下さい。

前回

https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12565793373.html

 

 前回はアライグマが危険な理由について扱いましたが、まずはアライグマの社会性について5月と内容が被るところもありますが、扱われました。

 5月と同じ説明ですが、「一定の社会性」というものについて補足します。アライグマにはメスはメスで近い位置に暮らし、オスはオス同士で通路や餌場、メスとの出会いの場を共有する習性があるのですが、これを「コリージョン」(小規模なネットワークの意)といい、それが本当であることはブログでも書いてきたようにあちこちでそれを証明する事例が見られます。

 この季節表ですけど、特に交尾期には12月の捕獲から思ったようにメスがいるところにはきっちりとオスが近寄ってくるところからも、彼らにはフェロモンや何かで引き寄せられる習性があるのかと思って加藤先生に質問をしてみました。

 すると「コリージョン仲間のオス同士のグループが移動経路、メスを探す通路を共有してくまなく移動してメスを探す努力をしてる」とのこと。ただし、仲良くするのはメスのところに行くまでのようで、いざメスを目前にしたオスたちの間では争いが起こることもあるらしいです。

 映像がないのが大変悔しいのですが、今月川口市でアライグマが3頭よりついていた家でメスが捕獲されたそうです。その家には監視カメラが仕掛けてあったそうで、捕まったメスのそばにずっとアライグマが1頭寄りそっていたところへまた別のアライグマがやってきたかと思えば、2頭は取っ組み合いの大喧嘩をしたそうです。この説を踏まえれば争った2頭がオスなのは予想がつきますね。去年の冬も尻の部分にひどく噛みつかれた(明らかにアライグマの仕業)オスが捕まっていましたけど、これもおそらくメスを争った際の傷なのではないかと思います。この際にも年齢や体格によって色々と違うんだと思いますが、社会性が高いアライグマも子孫を残すためには同類を押しのけてでもメスを目指すようですね。

 

 また、アライグマが別の動物に及ぼす被害も決して軽視はできません。今のところ埼玉県ではあまり騒ぎにはなっていませんが、先日アライグマの凶暴性を示す被害現場を見てきました。

 そこでは鶏の大きな品種である軍鶏が飼われているのですが、そのうちの1羽が襲われたという話でした。

 このケージが現場。周りに羽が飛び散っていますが・・・

 

 

(以下 閲覧注意)

 

 

 

 

 

 

 

 ケージの中にいた軍鶏がこの通り、首を噛み千切られ、周りの羽毛もひきちぎられる無残な姿で殺されていました。おそらく首を出していたところに噛みつかれたのだと思いますが、タヌキやキツネなどであれば顎しか使えないと思いますので、手で他の箇所も掴んだり引っ張ったりすることができるアライグマにしかできない仕業だと確信しました。

 こうした現場は未だに少ないのですが、アライグマの仕業だと思われないまま報告に上がらない場合も多いと思われますし、何より野良猫や他の野生動物などの被害であれば人々の目につかないことも多いでしょう。しかし、この調子でアライグマが増加して人々の生活圏に近い所に来るほどにペットや野良猫などがこうした目に遭う可能性が上がることは間違いないと思います。

 

 このほかにも農業被害に衛生被害、アライグマの生息圏が広がるほどに人々には無視できない危険が続々と起こることでしょう。特に全国有数のアライグマ捕獲、生息地域の埼玉県にお住いの皆さま!!

 もはや他人事ではないと思って頂ければと思います。

 

プロチョーネです。今日はまた面白い事がありました。

 

 11月にメス2頭、母親1頭が捕まってから連絡が無かった方からまた何かが来ているらしいという連絡を受けて行ってみると、これまでこの農園みたいな庭で栗、柿、銀杏と野生動物たちに食べられてきたところ、今度はニンジンが食べられているとのこと。これまでに根菜ならせいぜい芋類なら食べられてたのは聞いたことがありますが、ニンジンは初めてですので驚きでした。

 上 掘り出されて別の場所で食べられた小さい根

 下 上部だけ少し齧られたニンジン。

   この様子だとまだ大きなものは食べづらいらしい。 

 

ニンジンといっても普通の品種ではなく甘めの品種のようで、それを目ざとく見つけたアライグマが食べたものだと思われます。イノシシであればもっと荒らされているでしょうからね。詳しくはカメラを仕掛けるなりしないと分かりませんが、アライグマが野菜も食べられると認識できるようになった実例だと思うと色々と嫌な予想ができてきます。

 アライグマは雑食動物ですので、おそらく消化器の構造からヒトと同じく普通の野菜も食べることができると仮定すれば、この調子で普通のニンジン、キャベツ白菜などの葉野菜などにも手を出すようになってしまうのではないか・・・(ネギ類はヒトとサル以外は毒になるので×)。そうなればさらに農業被害額は上がってしまうでしょうし、イノシシやシカが侵入出来ないビニールハウスなどにもこっそり入り込んで被害を及ぼすような場面が増える恐れもあります。

 

 好き嫌いが無いというのはだいたい褒められた意味で見られる面ですが、特定外来種の食性だととんでもなく厄介です。