アライグマ対策セミナー(2019年11月21日)2-1 小山正人先生 なぜ駆除を? | IDSアライグマ・ハクビシン・スズメバチ駆除日記

IDSアライグマ・ハクビシン・スズメバチ駆除日記

ハチ・有害獣駆除担当のヴェスパ1号、アライグマ駆除担当の変人プロチョーネ1号、太ったネズミ駆除担当ムスムスクルスムスクルス初代 そして、ハクビシンのツヨシとヨワシの日常の奮闘ブログです♪
最近はツイッター中心
ツイッター https://twitter.com/cZkS6rKHLmEb5Be

前回https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12568472246.html

 セミナー開催から思えば時間も経ってきました・・・。なんだかんだで最近扱っていなかった11月のセミナーの内容に戻るとします。

 加藤先生に続いて講演頂いたのは地元埼玉の獣医で、自らアライグマの駆除を行っている小山正人先生です。下の記事にあるように東松山市の高坂どうぶつ病院をご夫婦で営んでおり、県内でも屈指の件数の傷病動物の救護を行なわれているお方です。

 

https://mainichi.jp/articles/20160530/ddl/k11/040/127000c

(有料記事なので途中までしか読めませんが・・・)

 

 このように動物を助けることに非常に熱心な方がなぜ正反対のように思えるアライグマの駆除を行うことになったかについて説明するところから始めましょう。

 

 資料の扉絵にあるように小山先生は獣医の傍ら環境保護活動にも熱心で獣医師会だけでなく埼玉県の生態系保護協会にも所属し、東松山、鳩山、滑川支部の支部長も兼任されています。さらに鳩山町の自然保護団体「はとやまフォーラム」にも協力し、地域の自然保護活動を日頃からされています。

 その目標はスライドの通りであり、持続可能で生物多様性が確保されて、人々と自然が共生できるような環境にとって、やはりアライグマは色々と問題を起こしてしまう存在と見なされているのです。その影響がはっきりと現れてきたのが鳩山町でした。

 

 小山先生が鳩山町でアライグマと初めて遭遇したのは2016年のことです。

 森の中で親子6頭に遭遇した際の映像です。真ん中に2頭、よく見ると画面左端にも1頭子供が木に登っています。

 その後も森に設置したカメラに映り続け、現地で暮らしているようでした。まあ別に、暮らすだけならいいんですが(いや、特定外来法がある限りよくないですけど)・・・問題は彼らが何を食べて暮らしているかなんですよね。

 アライグマの親子が目撃された鳩山町を始めとした埼玉県中央部、比企郡地域は自然豊かな場所であり、このように世界農業遺産になった能登半島の里山と同等の生物多様性、豊かな自然を持つとされています。それが都内からたった60kmのところにあるという点も含めて極めて希少な場所だと言えるでしょう。

 それを知ってるためか、トウキョウサンショウウオのような絶滅が危惧されている希少生物が生息するだけでなく、外部からも渡り鳥が多くやってきます。

 特にミゾゴイとサシバの2種の渡り鳥は希少で、中でもミゾゴイの関東地域での繁殖地は鳩山くらいしかないと言われています。ミゾゴイは普段はフィリピンなど東南アジアに暮らしていますが、繁殖は日本でしかせず、その数もよく希少な鳥として挙げられるヤンバルクイナより少ないと言われています。上のスライドにもありますが、世界で1000羽ほどしかいないと言われれば、その希少さが分かるかと思います。彼らの減少の理由は複雑で様々にあるとは思いますが、間違いなく直接的に誰が見ても明らかな形でかかわっているのが、鳩山町の里山で繁殖中の彼らの卵を食べるアライグマです。

※このアライグマが何かやらかしたわけではありませんが、現地のアライグマにとって里山はごちそうの並んだテーブルみたいなものかもしれません。

 

 この発表ではあまり掘り下げられませんでしたが小山先生たちが調査したところ、アライグマたちは鳥の巣がある高い木もスイスイ登って卵を食べているようです。様々な鳥が対象になっている中で、当然ミゾゴイとサシバの卵も食べられているのでしょう。さすがに自分たちの何倍もある大きさの動物に襲われてしまえば親鳥も何もできずに逃げるしかありません。

 鳥も襲われるわけですから、もっと動きの鈍いサンショウウオなんて簡単に餌になってしまいます。前回のセミナーでもあったように、アライグマは元々両生類を食べるのが得意なので両生類も鳥の巣も多い比企郡の里山は食べ物だらけということになるわけです。

 

環境保護、生物多様性、希少生物の保護のためにも、生態系を食い荒らして希少生物をさらに希少にしてしまうアライグマを駆除せざるを得ないというのが小山先生の下した判断でした。

 

 というわけで早速先生は2016年の10月から箱罠2台を使って駆除を開始し、翌年からはさらに多くの罠を用いるようになりましたが、その方法と結果については次回。