R6技術士試験解答例 選択Ⅱ-2-1[重要給水施設管路の耐震化](R70203更新) | 技術士を目指す人の会

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令和6年度 上下水道部門Ⅱ-2-1【重要給水施設管路の耐震化】

【問題】

Ⅱ-2-1 近年、我が国では大規模地震により水道施設が甚大な被害を受け、広範囲・長期間に及ぶ断水が生じており、このため、震災時の給水が特に医療機関、避難所等の重要給水施設に供給する管路の耐震化が急務となっている。あなたが、重要給水施設に供給する管路の耐震化に係る事業計画を策定・推進する業務の担当責任者として業務を進めるに当たり、以下の内容について詳述せよ。

(1)調査・検討すべき事項とその内容について記述せよ。

(2)業務を進める手順を示し、それぞれの項目において留意すべき点、工夫すべき点を述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

 

【解答例】

1 重要給水施設管路の耐震化計画の調査・検討事項

(1)基本情報に関する調査

①水道施設(管路の口径、管種、継手、布設位置、延長、布設年度等)、②想定地震(震源、震度、加速度、液状化危険度等)、③重要給水施設(避難所、医療機関、市役所の種別、場所、収用人員等)、④水道経営(財政状況等)に関する情報を収集する。

(2) 重要給水施設管路の耐震化計画に関する検討

①アセットマネジメント(施設整備費、維持管理費、確保できる財源等)、②耐震化計画の事業量(年度毎の管路布設延長、事業費等)について検討を行う。

 

2 耐震化計画の策定業務の手順と留意点・工夫点

(1)業務手順

 重要給水施設管路の耐震化計画の策定業務は、①基本情報の調査、②重要給水施設管路の設定、③耐震性の評価、④耐震化目標の設定、⑤耐震化方法の決定、⑥耐震化計画の策定・推進の手順で実施する。

(2)業務の留意点・工夫点

 基本情報の調査は、管種、継手、位置等が不明な場合、必要に応じて現地で試掘調査を行う。

 重要給水施設管路の設定は、災害対応における給水の必要性を考慮し、避難所、医療機関、防災拠点、福祉施設等の中から適切な重要給水施設を選定する。重要給水施設管路は、水源から重要給水施設までの一連の管路を耐震化することに留意して選定する。配水本管から重要給水施設までの配水支管ルートが複数存在する場合、マッピングシステムを利用して耐震管以外の管路延長が最も短いルートを選定する。

 耐震性の評価は、重要給水施設管路毎に耐震管、非耐震管の延長を把握し、耐震化率を算定する。水管橋等については、管本体だけではなく上部工、支承部、下部工等についても耐震性の評価を行う。

 耐震化目標の設定は、計画期間を10年程度に設定した上で、最終年度の耐震化率を目標値とする。

 耐震化方法の決定において、管種・継手は、軽量化の必要性、施工性、経済性等を踏まえて選定する。水管橋等は、橋台付近の埋設管に伸縮継手を設ける。

 耐震化計画の策定・推進は、重要給水施設管路の「重要度」(重要給水施設の種別、給水量、断水復旧の優先度、管路機能等)と「耐震性」(管路の耐震性、老朽度等、地盤の液状化リスク等)を勘案し、耐震化の優先順位を見極める。計画期間内で耐震化する重要給水施設管路の路線を選定し、事業量の平準化等を考慮して耐震化計画を策定する。計画実行の際は、進捗状況を踏まえ、適宜見直しを行う必要がある。

 

3 関係者との調整方策

関係者間で対面協議、リモート会議、メール審議を実施する。業務に対する要求事項、実運用後の留意事項等について、明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。
 

【出題された背景や狙い・解答に繋がるポイント】

令和6年1能登半島地震では、石川県北部等が地盤崩壊、津波、液状化に見舞われ、水道施設において甚大な被害が発生しました。水道事業体は、浄水場や導水・送水・配水本管等の急所施設の耐震化を進めるとともに、避難所や医療機関等への重要施設管路を耐震化することの重要性を再認識することになりました。このことが、当該テーマの出題された背景になっていると思われます。

重要給水施設管路については、平成29年度に「重要給水施設管路の耐震化計画策定の手引き」が公表されています。この手引きの内容を踏まえて計画策定の手順を説明することが解答を作成する際のポイントになります。

 

【当該テーマについて上記以外で勉強するべき事柄】

水道施設の耐震化に関する試験問題は、平成28年度に震災対策の基本的な考え方、令和4年度に耐震化計画の調査・検討事項及び留意点等を問うものが出題されています。耐震化について勉強する場合は、これらの内容を整理しておけば良いでしょう。また、令和6年能登半島地震の被害状況と対応方法を踏まえ、日本水道協会が「地震等緊急時対応の手引き」の改訂を行っています。改訂作業は令和7年3月に完了する予定で、震災対策について勉強する際は、改訂後の手引きの内容をチェックしておくべきです。

上水道及び工業用水道の選択科目Ⅱ-2は、計画策定に関する問題が出題される傾向があります。これまでに水道施設の耐震化計画や更新計画に関する問題が出題されていますが、事業継続計画(BCP)と漏水調査計画については、一度も出題されていません。このため、今後の試験対策としては、これら計画の調査・検討事項及び留意点等について内容を整理しておくと良いでしょう。

 

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