R6-技術士予想問題の解答[Q12 水質管理(アンモニア・藻類)] | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

Q12 水質管理(アンモニア・藻類) 1800字

表流水を水源とする凝集沈殿ろ過の浄水場において、原水中に相当量のアンモニア態窒素、藍藻類、珪藻類が含まれている。①当該浄水場で想定される技術的課題とその観点を3つ以上抽出し、②最重要と考える課題を1つ挙げ、それに対する複数の解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策を述べよ。

 

 

【解答例】

1 表流水を水源とする浄水場の課題

(1)残留塩素濃度低下への対応

原水中のアンモニア態窒素等が増加することにより、塩素の消毒効果が減少し、浄水中の残留塩素濃度が低下する。給水栓において残留塩素を確保するため、浄水場等の水道施設において対策を実施することが課題になる。

(2)かび臭物質への対応

原水中の藍藻類、珪藻類(これ以降「藻類」と言う)が増加することにより、ジェオスミン等のかび臭物質が発生する。こうした物質は、通常の凝集沈澱処理では除去できない。このため、高度浄水処理を実施することが課題になる。

(3)凝集沈澱ろ過障害への対応

原水中の藻類が増加し、これが浄水場に流入した場合、凝集沈澱池で処理できなかった藻類がろ過池に流入する。これによりろ過層が閉塞する。急速ろ過の場合、微差なものは砂層を通過する可能性がある。このため、藻類を除去することが課題になる。

 

2 最重要課題と解決策

上述の課題のうち、残留塩素濃度の低下は、恒常的に発生する可能性があり、水道水の安全性を損なうことに直結する。このことから、これを最重要と位置づけ、以下に解決策を示す。

(1)適切な塩素注入

ろ過池の二次側等に残留塩素濃度計を設置し、塩素注入の自動制御を行う。原水水質の変動により急激に残留塩素濃度が低下した場合、手動で塩素注入量を増加する必要がある。前塩素注入を採用している場合、トリハロメタンが増加する可能性があるため、適宜、中塩素注入や後塩素注入に変更する。 

また、給水栓において残留塩素濃度を確保するとともに、給水区域内の残留塩素濃度の均一化を図るため、配水池やポンプ所に塩素注入設備を設置し、追加塩素注入を行う。

(2)取水のピークカット

取水場にアンモニア計を設置し、常時監視を行う。原水中のアンモニア態窒素は、河川の樋門の開閉により増減する傾向がある。このため、アンモニア態窒素が増加する時間帯、取水を停止し、浄水場における塩素消費を抑制する。

(3)生物処理によるアンモニア態窒素の除去

塩素消費の原因となるアンモニア態窒素を除去するため、生物処理を導入する。

生物処理としては、生物接触ろ過方式、浸漬ろ床方式がある。生物接触ろ過方式は、比較的遅い流速で砂層等をろ過する下向流方式と、比較的速い流速で粒状活性炭をろ過する上向流方式があり、敷地面積等を考慮して適切な方式を採用する。浸漬ろ床方式は、処理時間として1~3時間が必要になる点に留意して施設整備を行う。

(4)取・浄水場の統廃合

水源水質が著しく悪化している場合、更新時期の到来等に併せて取・浄水場の統廃合を行う。水需要予測を行い、統合後の取・浄水場の能力及び水利権で安定給水を行うことができることを確認する。その上で、配水系統間を結ぶ連絡管を整備し、水源水質が悪化している取・浄水場を廃止する。

また、浄水場の統廃合を進めるに当たっては、広域連携についても検討する必要がある。

 

3 解決策により生じるリスクとその対策

解決策を実施した場合でも、水源における水質汚染リスクは多種多様であり、その全てを解消することは極めて困難である。このため、水源の異なる浄水場間を結ぶ相互連絡管等を整備し、非常時におけるバックアップ体制を確保する必要がある。

解決策を実施した後、急激な人口流出等の想定外の事象により、事業運営が困難になる可能性がある。このため、一連の解決策をPDCAサイクルにより継続的に改善し、潜在的なリスクを予見した上で適切な予防策を実施する必要がある。

また、解決策に携わる技術者の不正や法令違反により、公衆の安全や健康が損なわれる可能性がある。このため、倫理研修等を実施し、組織内で技術者倫理を周知徹底する必要がある。

 

【解答のポイント】

原水中にアンモニア態窒素や藻類が含まれていると、浄水場において①残留塩素濃度低下、②かび臭物質増加、③凝集沈澱ろ過障害が問題になります。まずは、このことを示す必要があります。

この解答例では、①残留塩素濃度低下をチョイスして、対策を列記しました。残留塩素濃度低下は、アンモニア態窒素、藻類のどちらでも巻き起こす可能性のある共通のリスクだからです。

②かび臭物質増加は、藻類によるリスクです。これをチョイスするなら、活性炭処理やオゾン処理の導入、凝集沈澱処理の適正化等について説明する必要があります。

③凝集沈澱ろ過障害は、藻類によるリスクです。これをチョイスするなら、高束繊維ろ過の導入、前塩素処理、凝集処理の適正化、傾斜板の設置、ろ過洗浄の適正化等について説明する必要があります。

 

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