R6-技術士予想問題の解答[Q9 クリプト対策] | 技術士を目指す人の会

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Q9 クリプト対策 1200字

凝集沈澱ろ過方式を採用している既設の浄水場において、クリプトスポリジウム等対策を実施する場合に、①対策方法を2つ以上挙げて検討事項を述べた上で、②1つの対策方法について業務を進める手順と留意点、工夫点を述べ、③業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

 

【解答例・紫外線処理バージョン】

1 クリプトスポリジウム等対策の検討事項

(1)基本情報の調査

施設の形式、構造、能力、仕様、寸法、建設年度、ろ過池の洗浄方式等の情報を整理する。原水、凝集沈澱の処理水及びろ過水について、水質(水温、濁度、pH等)、水量、使用薬品の種類や注入率等のデータを収集する。

(2)浄水処理状況の調査

①薬品注入の異常(薬品の品質不良、注入不足、誤注入、原水の濁度上昇等)、②凝集処理の異常(撹拌・混合の不足等)、③沈澱処理の異常(不適切な表面負荷率、短絡流発生等)、④ろ過障害(砂層厚の減少、マッドボールの発生、負水頭ろ過等)、⑤クリプトスポリジウム等の状況(原水及び浄水における指標菌、クリプトスポリジウム等の検出状況)等について調査を行う。

(3)対策の検討

凝集沈澱ろ過方式の浄水場におけるクリプトスポリジウム等対策は、①ろ過処理の管理強化(出口濁度を0.1度以下に抑制)、②紫外線処理の導入が有効である。これら対策の効果、施工の実現性、費用等を比較検討し、有効な方法を選択する。

 

2 紫外線処理の導入手順と留意点

紫外線処理の導入は、次の(1)、(2)の手順で実施する。

(1)紫外線処理施設の仕様等の決定

紫外線処理設備は、クリプトスポリジウム等を99.9%以上不活化できるよう、ろ過水の全量に対して概ね10mJ/c㎡以上の紫外線を照射できる能力を確保する。

紫外線処理設備は、照射槽とランプで構成される。照射槽は、水流の偏りがなく、所定の滞留時間が得られる構造にする。ランプは、適正な照射強度を有し、必要な強度分布を得られるよう適切に配置する。ランプスリーブ等の表面に異物が付着しないようオンラインで洗浄できる機能を設ける。また、紫外線処理設備は、地震時の破損防止措置を講じた上で、照射槽の複数化、予備ランプの備蓄等を行う必要がある。

紫外線処理設備の付帯設備として、紫外線強度計と濁度計を設置する。紫外線が照射されていることを常時測定できるものを採用する必要がある。

(2)紫外線処理施設の設置場所の決定

紫外線処理は、ろ過処理の後段で実施する。このため、ろ過池と浄水池を結ぶ管路において、紫外線処理施設を設置する場所を選定し、スペースを確保する。当該管路に係る工事の際、必要に応じて場内配管の耐震化を図る。

 

3 関係者との調整方策

関係者間での対面協議に加え、メール審議やリモート会議を実施する。成果物への要求事項、追加・削減するべき作業等について明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。

 

【解答例・ろ過処理バージョン】

1 クリプトスポリジウム等対策の検討事項

(1)基本情報の調査

施設の形式、構造、能力、仕様、寸法、建設年度、ろ過池の洗浄方式等の情報を整理する。原水、凝集沈澱の処理水及びろ過水について、水質(水温、濁度、pH等)、水量、使用薬品の種類や注入率等のデータを収集する。

(2)浄水処理状況の調査

①薬品注入の異常(薬品の品質不良、注入不足、誤注入、原水の濁度上昇等)、②凝集処理の異常(撹拌・混合の不足等)、③沈澱処理の異常(不適切な表面負荷率、短絡流発生等)、④ろ過障害(砂層厚の減少、マッドボールの発生、負水頭ろ過等)、⑤クリプトスポリジウム等の状況(原水及び浄水における指標菌、クリプトスポリジウム等の検出状況)等について調査を行う。

(3)対策の検討

凝集沈澱ろ過方式の浄水場におけるクリプトスポリジウム等対策は、①ろ過処理の管理強化(出口濁度を0.1度以下に抑制)、②紫外線処理の導入が有効である。これら対策の効果、施工の実現性、費用等を比較検討し、有効な方法を選択する。

 

2 ろ過処理の管理強化の実施手順と留意点

ろ過処理の管理強化は、次の(1)~(3)の手順で実施する。

(1)凝集沈澱処理の適正化

凝集処理は、原水の濁度、pH、水温、アルカリ度の変化に応じて、定期的なジャーテストを実施し、凝集剤等の薬品を適正に注入する。薬品、薬品注入設備、攪拌設備等の維持管理を適切に実施する。

沈澱処理は、滞留時間、流速に留意し、十分な沈澱処理を行い、必要に応じて傾斜板等を設置する。

(2)ろ過処理の適正化

ろ過池は、適正な砂層を確保し、定期的に洗浄を行う。逆流洗浄は、適正な速度と時間を確保し、洗浄排水の最終濁度が2度以下となることを目標とする。砂層表面にマッドボールが発生する場合は表面洗浄を実施する。また、ろ過池毎に濁度監視を行い、濁度に関する記録を残す。

(3)ろ過洗浄システムの強化

ろ過水濁度の著しい上昇を回避する必要がある場合、洗浄終了時のスローダウン、ろ過再開時のスロースタートを実施する。サイホンによる自然平衡方式を採用している場合、小型の排水・流入サイホンを設置し、バルブによる流量制御方式を採用している場合、バルブの変更や制御装置の改造等を行う。

 

3 関係者との調整方策

関係者間での対面協議に加え、メール審議やリモート会議を実施する。成果物への要求事項、追加・削減するべき作業等について明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。

 

【解答のポイント】

「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」によると、レベル4の浄水場(地表水を水道の原水と、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設)は、以下のA又はBの対策を実施する必要があります。

A ろ過設備(急速・緩速・膜)を設け、ろ過水の濁度を0.1 度以下に維持する

B ろ過設備(急速・緩速・膜)を設け、ろ過水を紫外線処理する

この問題は、既存の凝集沈澱ろ過処理の浄水場なので、改めてろ過処理を新設する必要はありません。

Bを選んだ場合、「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」の中で示されている紫外線処理施設に関する内容を述べれば良いです。

Aを選んだ場合、既存の凝集沈澱ろ過を適切に管理することを示した上で、新たな対策としてスロースタート、スローダウンを実施することについて言及する必要があります。

 

【当該テーマに関連する他の問題】

・キャリーオーバー対策について実施手順と留意点

・地下水を水源とする浄水場のクリプトスポリジウム等対策と実施時の留意点

 

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