8.2 いろいろな記憶法
●目、口、耳、手を使う
多くの情報を記憶しても、それを思い出すことができなければ意味がありません。
思い出すことができたとしても、それが間違っていたのであれば意味がありません。
記憶という作業は、憶えて、思い出して、確認する必要があります。
つまり、勉強における記憶作業は、「憶える(インプット)」、「思い出す(アウトプット)」、「確認する(チェック)」という3つの作業を適切に行う必要があるわけです。
当然ですが、これら3つの作業は同時にやることはできません。
それぞれ異なる作業です。
そして、憶える(インプット)、思い出す(アウトプット)、確認する(チェック)という作業は、目、口、耳、手を使って行います。
憶える(インプット)作業は、目(見る)、耳(聞く)、手(書く)を使います。
思い出す(アウトプット)作業は、口(声に出す、頭の中でつぶやく)、手(書く)を使います。
確認する(チェック)作業は、目(見る)、耳(聴く)を使います。憶える(インプット)、思い出す(アウトプット)、確認する(チェック)は、複数の方法が存在するわけです。
このため、勉強をする際、複数の記憶法の中から一番自分に合うものを選択することが重要になります。
記憶を定着させるためには、何度も憶え直す必要があります。
「憶える(インプット)」、「思い出す(アウトプット)」、「確認する(チェック)」を繰り返し行う必要があります。自分に合っていない方法を選択すると、当然苦労することになります。
逆に、自分に合った方法を選択すれば、効率的に勉強することができるわけです。
●記憶法の種類
記憶法には、下表のようなものがあります。
一般的なものとしては、音読法、書き写し法、聴き流し法があります。
この他に、ルック・スピーク法、ルック・ライト法、ルック・ミックス法と、リッスン・スピーク法、リッスン・ライト法、リッスン・ミックス法があります。
何が自分に合っているのかは、やってみなければわかりません。
目で見るのが得意な人もいれば、耳で聞くのが得意な人もいます。
手で書かないとダメな人もいます。
このため、下表の内容を理解し、実際にやってみた上で、自分に合った方法を選択することが重要です。
●音読法
音読法は、解答を声に出して読むというものです。最もシンプルな方法です。
小学校の頃、かけ算九九を憶えた方法です。
音読法については、作家の野口悠紀雄さんが「超勉強法」のなかで紹介しています。
この書籍では、同じ教材を20回繰り返し音読することを勧めています。
目(文章を見て)、口(声に出して読む)、さらに、耳(自分の声を聴く)まで使う点で有効です。
音読法だけで、記憶することができれば、どの方法よりも短時間で記憶作業が完了するかもしれません。
また、音読という作業により、自分の書いた文章を黙読するだけでは感じ取れなかった文章の不具合を発見することができます。
音読は、文章の精査をするうえでも有効です。
どの記憶法を選択したとしても、1回くらいは音読することをお勧めします。
また、音読する場合、単に音読するのではなく、録音しておけば、後述する聴き流し法等にも利用することができます。
ただし、音読法は、思い出す(アウトプット)と確かめる(チェック)という作業がありません。
記憶力と集中力に自信がない人は、音読法のみで全ての解答を記憶するのは難しいかもしれません。
●書き写し法
書き写し法は、解答を紙に何度も書いて記憶するというものです。これもシンプルな方法です。
書き写し法は、解答全体を最初から最後まで、繰り返し書き写しても良いです。
また、解答の段落毎に繰り返し書き写すのも良いです。
書き写し法を行う場合、罫線紙や白紙等に書いてもいいですが、解答用紙(24行×25字)をコピーして、それに解答を書き込むのがおススメです。
これにより、内容を憶えるだけではなく、記述量を目と手で憶えることができます。
こうした小さな工夫により、試験本番において柔軟な対応が可能となります。
それから、書き写し法は、手に負担がかかります。
この負担を軽くするため、書き味の良い筆記用具を使うべきです。
例えば、グリップはゲル状、シャーペンを使うのであれば、柔らかい2Bの芯を使うと良いです。
●聴き流し法
聴き流し法は、解答を録音して、それを何度も聴くことにより記憶するというものです。
イヤホンを使えば、どこにいても、何かをしながらでも、憶える(インプット)ことができる点で有利です。
ただし、解答の音源があるわけではありません。
このため、録音再生装置(ICレコーダー、スマホ等)に自分の肉声を録音する必要があります。
●ルック・スピーク法
ルック・スピーク法は、原稿の一部を目で見て憶えます。
次に、憶えたことを思い出して、声に出して読み上げます。
そして、それが正しいかどうか原稿を見て確認するものです。
具体的には、下図のように、解答の一段落を憶えてから、それを口にします。
その内容が正しいかどうか解答を見てチェックします。憶えていたことが、正しければ次の段落に進み、間違っていたら、もう一度憶え直すというものです。
音読法、書き写し法、聴き流し法に比べ、時間も労力もかかりますが、憶えたことを確認の機会を確保できる点で有効です。
また、解答以外に何も準備しなくても良いので、とても手軽です。
最初の段落を記憶し終えて、次の段落を憶え終わったら、また、最初の段落まで戻って、正誤をチェックするのが良いでしょう。もちろん、これは相当な時間がかかります。
しかしながら、メリットもあります。
何度も最初から憶え直すことにより、解答の最初の部分をしっかりと憶えることができます。
試験本番では、最初さえスムーズに書き出すことができれば、芋づる式に全てを思い出すことができたりします。
このため、最初の部分を憶えることは重要なのです。
●ルック・ライト法
ルック・ライト法は、まず、原稿を目で見て憶えます。
次に、憶えたことを思い出して紙に書き出します。
次に、それが正しいかどうか原稿を見て確認するというものです。
ルック・ライト法は、憶えた内容を紙に書き込みますが、これを全て真面目にやると、原稿用紙1枚当たり20〜30分かかります。
5回復習するのであれば、1枚だけで2時間前後必要です。
これでは、時間がかかり過ぎる上に、手も疲れてしまいます。
重要なのは、思い出せるからどうか確認するために書くことです。そうなのであれば、文字は、略字でいいです。
点や棒線を書いてもいいです。
もちろん点と棒線だけでは、確認作業を行うことができなくなります。
このため、下図のように、少なくとも重要なキーワードだけは、それが何か解るようなレベルの略字にするべきです。
ポイントは、解答用紙(24行×25字)をコピーして、1マスに収まるよう、略字や棒線を書くことです。
こうすれば、確認作業が楽ですし、自らの解答がどれくらいの行数を占めるのか、目と手で憶えることができます。
それから、ルック・スピーク法とルック・ライト法を組み合わせるのも有効です。
まず、ルック・スピーク法を使って解答の内容を憶えます。
その後、ルック・ライト法で全体の無内容を確認するというのが現実的な方法が良いです。
●ルック・ミックス法
ルック・ミックス法は、ほとんどルック・ライト法と同じです。
まず、原稿を目で見て憶えます。
次に、憶えたことを思い出して紙に書き出します。
その時、内容を声に出しながら書きます。ここがポイントです。
次に、それが正しいかどうか原稿を見て確認します。
この方法は、目、手、口、耳の全てを使います。
このため、効果的に記憶を定着させることができます。
●リッスンスピーク法・リッスンライト法・リッスンミックス法
リッスン・スピーク法、リッスン・ライト法、リッスン・ミックス法は、これまで述べてきたルック・スピーク法、ルック・ライト法、ルック・ミックス法と同じコンセプトです。
要するに、憶える(インプット)と確認する(チェック)を、目で見るのではなく、耳で聴くことにより行うものです。
これらのうちリッスン・スピーク法は、歩きながらできます。
通勤時でも、散歩しながら記憶することができる点も有効です。
また、歩くことにより、足から刺激が加わり、その刺激がきかっけになって、記憶が定着することが期待できると言われています。
この方法は、僕も実践してみましたが、確かに効果的でした。
●時間と状況にあった記憶法を選択する
これまでに紹介した方法以外にも記憶法はあると思います。
重要なのは、自分に合った方法を選択することです。
目からの情報入力が向いている人、耳からの情報入力が向いている人、いろいろな人がいます。
万人に適した方法はありませんが、自分に合った方法というのが存在します。
それを選択するわけです。
それから、もう一つ重要なことがあります。
それは、一つの記憶法だけに限定するのではなく、時と場所に応じて記憶法を使い分けることです。
これまでに述べた記憶法は、時間、場所によっては、利用できないものがあります。
例えば、書き写し法は、それ相応の時間が必要ですし、交通機関で移動中は無理です。
聞き流し法は、比較的短時間でやることができますし、歩きながらでも可能です。
自らの生活スタイルを踏まえ、何をしている時、どの記憶法を行うことができるか考えて、最適な記憶法を選択することが重要です。
●解答の記憶にできるだけ早く移行する
技術士の試験は7月中旬です。
このため、1か月前に当たる6月中旬までに、記憶という作業に移行するべきです。
解答を記憶する過程で、解答を読み込みます。
解答を思い出す際は、その内容を説明することになります。
その際、必ず、意味のわかりにくいところが出てきます。これを修正することができます。
つまり、記憶という作業を通じて、解答の最終チェックを行うことができるわけです。
さらに、あるテーマに関する情報を記憶すると、そのテーマに関する関心が高くなります。
ホームページや新聞を眺めている際、そのテーマに関する記事に目がとまり、その情報を記憶することができるようになります。
これは、既存の記憶に新しい記憶がくっつくからです。
このように記憶という作業を行うことにより、解答はグレードアップし、新しい知識も身に付きます。
うしたことから、試験の1か月前になったら、解答の記憶に移行するべきです。
逆に言えば、1か月前になったら解答の記憶に移行できるよう、できるだけ早く解答を作成することが重要になります。
もちろん、こうした完全移行が無理な場合もあると思います。
その際は、解答の作成をしながら、解答を記憶するというスタイルでもよいです。
解答を記憶するという行為が重要です。
なぜなら、どれだけ数多くの解答を作成しても、頭の中に解答の記憶がなければ、試験本番で得点することができないからです。
このため、できるだけ早く、解答の記憶に着手してください。
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