妙なタイトルになった。
ふつうは得卦だけ観てればいいと思う。
それが基本だ。
問いを立て、筮を立てる。
卦爻辞をみて、卦の象を観て、得卦を読む。
なにか問題でも?
◆ 派生卦
そのこと自体別に問題はない。
くりかえすが、それが基本である。
問題はないが、時には之卦(伏卦)も観る。
場合によっては倒卦、裏卦を観ることもある。
これらは占って得られた卦=本卦から派生する卦である(*1)。
之卦は最も代表的かつ重要な派生卦だ。
特定の本卦から派生する之卦のバリエーションは、略筮法では6種類、中筮、本筮法では63種類、変爻なしのパターン(本卦=之卦)を勘定に入れるなら64種類になる。
占ってひとつの卦を得て、
その卦を観るのはたしかに基本ではある。
だけど、之卦にかぎらないけど、時にはあれこれ派生卦も観るということは、広げて考えれば結局、得卦以外の63卦も同時に観ているとはいえまいか。
◆ ウラナウということ
問いが立った時点では、まだ得卦は確定していない。
回答は64種類の蓋然性の海の中に遍在している。
筮竹をさばくか、サイをふるか、あるいはコインを投げた時点で、64種類の蓋然性はひとつの卦に収束、粒子化する。
一見、他とは関係なく孤立して観えるこの粒子は、もともと多重的重層的に遍くいきわたっていた存在、大げさにいえば、ぼくらがその一部でもあるこの宇宙が、その問いに答えるべく、その時、一時的に、仮に、凝集化したものともいえないだろうか。
問いに対する答えとしては、確かにその時得られた卦であり、その卦、得卦にフォーカスするべきだろう(さもなければ卦を立てる意味がない)。
だけど、そのバックグラウンドには、その得卦「以外の」63の卦があることを常に意識しておくことは、占断に深みをもたらす上でも大切なことだとも思う(*2)。
◆ さまざまな地図
とはいえ、他の63卦は「どのように」本卦の背後に存在しているのか。
言い換えると、得卦である本卦は、他の63卦といかなる関係のもとに存在しているのか。
これがはっきりしないと、ただたんに「他の63卦を意識せよ」といわれてもつかみ所のない話になってしまう。
そこで易システムでは、「マトリクス」や「テンプレート」、「ホイール」など銘打って、特定の大成卦と他の複数の大成卦の関係を示すさまざま地図のバリエーションをつくったわけだが……
どの地図もある特定の卦、たとえば占って得られた特定の大成卦と他の大成卦の関係性と、それにともなう意味を示している。
これらの地図の間に優劣はない。
「優劣はない」とはいっても、カナメになる地図はある。
易システムにおいては、ざっと次のとおり。
(1) マスターマトリクス
「乾兌離震巽坎艮坤(易数順。先天図より)」の並びで上下卦を組み合わせたマトリクス(「易システムハンドブック」で提示)。易システムにおいてもっとも基本となる地図。
【マスターマトリクス】
(2) ツイストペア・ホイール
中心から両儀、四象、八卦、純卦、先天大成卦、その他の卦の順で階層化した円形ダイヤグラム。
向かいあった卦は互いに裏卦(インバース)の関係にある(「易システムハンドブック」で提示)。
【ツイストペア・ホイール】
(3) バリアント・マトリクス
ある特定の卦を基準として、その卦から他の63卦への至りにくさ(裏をかえせば「至りやすさ」)をあらわしたマトリクス(「風と羅針盤」で提示)。
「易システムハンッドブック」では「テンプレート(*3)」というダイヤグラムを提示させていただいたが、これは(2)ツイストペア・ホイールからの派生パターンとみなすことができる。
【バリアント・マトリクス。上の絵は「88:坤為地」と「11:乾為天」間にある他の62卦の距離関係をあらわす】
各「テンプレート」におけるOD、N、Gは「ツイストペア・ホイール」におけるファミリ—で区切られた扇形部分(パイの切れ端)に相当するのである。Iは、中心をはさんでODの反対側になる。
また、「風と羅針盤」では、FO、SO、TOといったグループを提示させていただいた。
【マスターマトリクス上のFO、SO、TO】
その他は「フランクリン・マトリクス」や「結合力のマトリクス」などといった地図を「風と羅針盤」の中で提示させていただいたが、これらはどちらかといえば付随的な地図である。
◆ 地図ばっかつくって、ちゃんと使ってんの??
とせまられると、これがてんで頼りない。
正直にいうと現在のところ、
ほとんど使った実績がないのである。
なんでか、ということを自分なりに考えてみると、日常生活上のささいな問いについては、他の大成卦との関連を意識する以前に、得卦と、之卦をはじめとした、あとひとつくらいの派生卦を読むことで、充分に事足りてしまうということ、そしてたいがいは、日常生活のささいな問いにシステムを使っているという現状があるからだろう。
では、地図には意味がないのだろうか。
たしかにガイドブックだけたくさん持ってても、現地に行かなければ何の意味もない、という見解にも一理ある。
では、ホントーに、「まったく」「なーんの」意味もないのか、意義は皆無なのかといえば、それはそうでもなかろう。
回答に直接的に応用されることがなかったとしても、易卦を個々の分離されたものとしてではなく「空間的に(*4)」おさえておくことは、かならずその占断の行間を埋めることにつながる。
あ、いや、少なくともぼくはそう信じている。
だからこうして地図をつくり続けて……
いまはちょっと一段落している。
……と、ここまで書いて最後に、
現状のままではとても地図が使いやすい(参照しやすい)状態になっているとはいえないことに気づいたりもしている。
うーん、まだまだ。
なーんて言っているうちに、
あっと言う間に歳だけはとっていく。
そして、時間だけは過ぎていくんだけど。
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*1
「之卦」「倒卦」「裏卦」
之卦は変爻の陰陽を反転してできる卦。
倒卦は爻の並びを反転(リバース)してできる卦。
裏卦は各爻の陰陽を反転(インバース)してできる卦。
*2
「得卦以外の63卦」
見えないものは切り捨ててもいいのか。
CDアルバムに載った曲よりMP3にリッピングした曲の方がペラく聞こえるのは、容量を節約するために(圧縮率をあげるために)、通常人間には聞こえないであろう周波数帯域の音がカットされるからである。明示的にそこに現れていないものをカットするのは、近似として割り切って行うぶんにはいいかもしれないが、リアリティは確実に軽く、薄くなる。かくし味に塩が入っていないおしるこは間が抜けている。
*3
テンプレートにおいて、ある卦から導かれる3つの卦とは、ツイストペア・ホイールで周辺部から中心に向かって並んだ先天大成卦(N)、純卦(G)、およびホイール上で反対側にあるツイストペアのことである。
*4
「空間的把握」
ここでいう「空間」は、かさのある三次元的広がりという日常的意味もあるが、さまざまな複数の構成要素が、ある関係のもとにリンクしているその関係性のネットワークといった意味合いの方が強いかもしれない。































