聖婚のダイヤグラム | ぼくは占い師じゃない

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易経という中国の古典、ウラナイの書を使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう! というブログ……だったんですが、最近はネタ切れで迷走中。

易システム(筆者独自解釈による易)には、旅の先天図とおなじようなダイヤグラムで、もうひとつ、おそらくは大事なダイヤグラムがあります。
個人的には、錬金術と関係があると思っています。

   ☆

伝統的な易には、先天図と後天図というふたつのダイヤグラムがある。

$ぼくは占い師じゃない-先天図オリジナル
【先天図】

$ぼくは占い師じゃない-後天図オリジナル
【後天図】

先天図、後天図はともに、八卦(小成卦)と方位(時節、時刻、十二支)との対応をあらわすものだが、一般的には用いられるのは後天図の方だ。

梅花心易などでは主に先天図を用いるが、易システムでも先天図を基盤にしている。
後天図よりも先天図の方が、数理的にはととのっているようにみえるからだ。

旅の先天図では、八角形の先天図から、六角形の「旅の先天図」がつくられる様子を示した。

$ぼくは占い師じゃない-旅の先天図の生成
【先天図から旅の先天図へ】

上に示したとおり、八角形の周囲に配された八卦のうち、ふたつの卦を中心に落とし込むによって、六角形のダイヤグラムになる。
旅の先天図は、先天図の乾坤を中心に落とし込むことによってつくられる。

先天図で南北方向にある乾坤の代わりに、東西方向にある離坎を中心に落とし込むと次のようになる。

$ぼくは占い師じゃない-聖婚のダイヤグラムの生成
【先天図から聖婚のダイヤグラムへ】

この六角形のダイヤグラムをどう観たてるかは、例によって観る人の自由なのだが、易システムでは「器とその中身」としている。

ところで、ぼくの観るところ、先天図にはふたつの状態遷移の流れがある。

ひとつは八卦を3ビットのバイナリコードと観なしたときの状態遷移で、「乾兌離震巽坎艮坤」の順で循環する流れになる。これを「トロイド循環」と呼ぼう。

$ぼくは占い師じゃない-toroido
【先天図上のトロイド循環】

もうひとつの先天図上の状態遷移は、東西の離坎をとばして環状に循環する流れで、いわば八卦版の十二消長卦の流れであり、これを「リング循環」と呼ぼう。

$ぼくは占い師じゃない-リング循環
【先天図上のリング循環】

旅の先天図」はトロイド循環を踏襲する流れだが、「器とその中身」のダイヤグラムは、リング循環を踏襲する流れになる。

「器とその中身」という観方は、「リング循環する周囲=器」、「離坎=器の中身」ととらえるとそう観えるということだ。

この器をフラスコ、その中身を統合をはたすべく投入された素材と観るならば、「器とその中身」のダイヤグラムは、たちまち錬金術的色彩を帯びることになる。

十二消長卦であらわされる変化は、季節のめぐり、地上における時序、時節の変化をあらわすが、これが器である。

中身である離と坎は統合される材料だが、この材料は男性原理と女性原理、硫黄と水銀、太陽と月であり、離、坎の象意としても一致する。
そんなふうに観るなら、このダイヤグラムは「器とその中身のダイヤグラム」という、どちらかというと一般的な観方から、さらに限定された「聖婚のダイヤグラム」ともとれるのではなかろうか。

坎も離も、中心の陰または陽の爻が、上下の陽または陰の爻にはさまれた象だが、明確な「中心」つまり「精髄」を孕んだなにか……対象であると観ることもできる。

錬金術の起源は古代エジプトであるといわれているが、アラブ諸国からギリシャを経てヨーロッパに伝わったのは、かなり時代が下ってからのことで、インドや中国などの東洋でも類似の営みがおこなわれていた。
西洋から東洋に伝わったのか、同時発生的におこったことなのかははっきりしないようだ。
それはともかく、錬金術は西洋の専売特許ではなく、東洋にもあったということで、ここに易とのかかわりがある。

「東洋秘教書大全 藤巻一保、岡田明憲(学研)」には、その代表的なドキュメントのひとつとして「周易参同契」があげられているが「参同契」の解説の一節にはこんなふうにある。

「乾坤は丹(霊薬)の反応容器である鼎炉に相当し、鼎炉に入れる丹の原料が、坎離になる。すなわち、水銀と鉛である」

前述の西洋錬金術とでは、鉛と硫黄というちがいはあるが、いずれも現実の物質というよりも、象徴的意味合いともとらえることができるので、このちがいはさておき、容器とその中身のたとえは「聖婚のダイヤグラム」そのままである。

$ぼくは占い師じゃない-聖婚のダイヤグラム
【聖婚のダイヤグラム】

「聖婚のダイヤグラム」では乾坤は先天図のままで南北に位置し、「器」の要(軸)となっている。
全陽である乾から陰が長じていくプロセスは乾から右回りの灰色の矢印、全陰である坤から陽が長じていくプロセスを左向きの白い矢印で示した。

ところで、蒸留によって精髄をとりだす(丹を練る)プロセスは、錬金術においても基本だときくが、これに相当するシンボル上の操作が、大成卦の互卦をとることにあたるのではなかろうか、とも思っている。

「互卦をとる」とは、大成卦の二爻~五爻までの爻で、ひとつの大成卦をつくる……というより、「取り出す」ことで、たとえば、地風升の互卦をとると次のようになる。

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【地風升の互卦をとって帰妹になる】

すべての大成卦について互卦をとると、16種類の大成卦になる。銀河ツールでは互卦のことを「還元コドン」と呼ぶ。
64種類の大成卦は、16種類の大成卦に「還元」されるのである。

$ぼくは占い師じゃない-還元コドン
【還元コドン】

ではこの16種類の「還元コドン」をさらに「還元」するとどうなるのだろう。いわば、互卦の互卦をとるわけだ。
この場合、16種類の大成卦はさらに還元されて、乾為天、坤為地、水火既済、火水未済、の4つの大成卦になる。

これからさらに互卦をとっても(還元しても)、乾為天、坤為地はその大成卦自身になり、既済、未済は、互いが互いの互卦になって、この4つよりさらに大成卦をしぼりこむことはできなくなる。

$ぼくは占い師じゃない-stopgoka
【互卦のいきどまり】

そんなわけで、銀河ツールではこれらの大成卦を「4つの根源的な支配力」と呼ぶ。

$ぼくは占い師じゃない-根源的支配力
【4つの根源的な支配力】

この4つの「支配力」を構成するエレメントは、乾、坤、坎、離であり、それはすなわち、聖婚のダイヤグラムにおける器の軸と、器に投入され統合されるふたつの材料である。

ふたたび、先天図にもどっていうなら、この4つの八卦は四正、先天図上では東西南北に位置している。

(このあたりのことは「互卦=上下卦をつなぎとめる力」という視点で、「風と羅針盤」の中の「結合力のマトリクス」のセクションにて、ややくわしく説明させていただいたので、ご興味のある方はご参照ください)

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ずらずら書いてしまいましたが、
とどのつまり、
「おまえが勝手にそう解釈してるだけだろう」
といわれてしまえばおしまいです。
まあしかし……

個人的には、易のシンボルセットの中には、それだけではかたづけられないような、根源的なものにむかうなにかがひそんでいるような気がしてしかたがないのです。

この先、易がなにを語るかは、自分にもよくわかりません。ご興味のある方はよろしくおつきあい願えばと思います。

それではまた。