サザンオールスターズ『いとしのエリー』誕生秘話㉑ ~『ステレオ太陽族』~ | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

1979(昭和54)年にリリースされた、サザンオールスターズの3枚目のシングル、

『いとしのエリー』

は、桑田佳祐原由子のために作った曲である。

『いとしのエリー』

は、サザン史に残る名曲中の名曲だが、

当ブログでは、現在、『いとしのエリー』誕生秘話を連載している。

 

 

現在は、『いとしのエリー』誕生の「後日談」を書いているが、

前回は、1981(昭和56)年6月21日にリリースされた、サザンオールスターズの通算12枚目のシングル、

『Big Star Blues(ビッグ・スターの悲劇)』

について書いた。

この曲は、なかなか過激な歌詞の曲だが、当時は、この曲はあまり売れなかったので、世間からはあまり騒がれなかった。

という事で、今回はその続きとして、同年(1981年)にリリースされた、サザンの4枚目のアルバム、

『ステレオ太陽族』

の事を中心に描く。

それでは、『いとしのエリー』誕生秘話の「第21話」、

『ステレオ太陽族』

を、ご覧頂こう。

 

<1981(昭和56)年6月21日…アミューズが企画した映画『モーニング・ムーンは粗雑に』公開>

 

 

1981(昭和56)年5月、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

という映画の製作発表が行われた。

『モーニング・ムーンは粗雑に』

は、サザンオールスターズの所属事務所・アミューズによって製作された映画であり、

アミューズの創業者・大里洋吉の、たっての希望によって作られた映画だった。

この映画の主演は、オーディションによって選ばれた斎藤淳之介、高樹澪であり、監督は渡辺正憲が務めたが、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

は、「音楽監督」桑田佳祐が務め、映画では全編にわたって、サザンオールスターズの楽曲が使用される事となった。

この映画の製作発表には、主演の斎藤淳之介、高樹澪、渡辺正憲監督の他、サザンのメンバー達も出席した。

桑田にとって、

「音楽監督」

は、初めての試みだったが、この映画で使われるのは、全てサザンの「新曲」だった。

 

 

そして、1981(昭和56)年6月21日、サザンオールスターズの通算12枚目のシングル、

『Big Star Blues(ビッグ・スターの悲劇)』

がリリースされたのと同日、アミューズ製作の映画、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

が公開された。

この映画は、

「ヨコハマを舞台に、ふとしたことで出会った青年と女子大生の〈愛のような〉ふれあいから別れにいたる甘美で切ない24時間の行動を描く青春映画」

…という内容であり、ある青年(斎藤淳之介)女子大生(高木澪)の出逢いと別れまでの濃密な1日を描く…というものだったが、映画の出来栄え評価は賛否両論だった。

そして、「横浜」が舞台の映画という事もあり、この映画には、サザンの楽曲が大変良く合っていた。

やはり、「湘南」や「横浜」が舞台の作品には、サザンの楽曲が良く似合う…という事だけは間違いない。

 

<桑田佳祐が、『モーニング・ムーンは粗雑に』で登場した高木澪の存在感を絶賛>

 

 

 

さて、前述した通り、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

で主演した高樹澪は、オーディションによって選ばれたが、高樹澪は当時21歳で、前職は第一勧銀のOLだったという。

ちなみに、

「高樹澪」

という芸名は、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

に登場するヒロインの名前から取られた。

この高樹澪について、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

で、「音楽監督」を務めた桑田佳祐は、絶賛していた。

「素人っぽさが全然抜け切っていないが、このあたり、妙にセクシーで、透明感を感じさせる。女優としては全く未知数で、どんな色に染まって行くか、非常に楽しみなところだ…(中略)…ちょい古めで梶芽衣子、秋吉久美子、近めでは桃井かおり、原田美枝子のラインだ。世の中を斜に眺めているような、あれね…」

桑田は、このように、独特な表現で高樹澪の存在感について述べているが、桑田の見立てどおり、この後、高樹澪は大活躍して行く事となるのである。

なお、桑田は後々まで、高樹澪の事を、

「あれは、いい女だったね…」

と言っていたが、桑田は高樹澪の事をかなり気に入っていた事が伺える。

 

<1981(昭和56)年7月21日…サザンオールスターズ、4枚目のアルバム『ステレオ太陽族』リリース~前作『タイニイ・バブルス』に続き、オリコン・アルバムチャート「1位」を獲得>

 

 

1981(昭和56)年7月21日、サザンオールスターズは、4枚目のアルバム、

『ステレオ太陽族』

をリリースした。

『ステレオ太陽族』

は、前年(1980年)にリリースされた、サザンオールスターズの3枚目のアルバム、

『タイニイ・バブルス』

に続き、

「オリコン・アルバムチャート『1位』」

を獲得した。

この時期(1980~1981年)、サザンのシングルは、どれも今一つ、あまり売れていなかったが、

そのかわり、この時期(1980~1981年)にリリースされた、

『タイニイ・バブルス』(1980)、『ステレオ太陽族』(1981)

は、いずれも、オリコン・アルバムチャート「1位」を獲得した。

そして、この両アルバムは、大変素晴らしい出来栄えの作品であり、名曲の宝庫だが、

アルバムは売れているという事は、それだけ、アーティストとしてのサザンは、リスナーにはちゃんと評価されていた…という事であろう。

なお、

『ステレオ太陽族』

の収録曲については、後述する。

 

<『ステレオ太陽族』とは~かつての石原慎太郎・石原裕次郎兄弟が巻き起こした「太陽族」ブームへのオマージュが込められる?>

 

 

 

さて、1981(昭和56)年にリリースされたサザンのアルバム、

『ステレオ太陽族』

であるが、

『ステレオ太陽族』

というタイトルは、やはり、石原慎太郎・石原裕次郎兄弟へのリスペクトが込められていたのではないか…と思われる。

1956(昭和31)年、当時、一橋大学の学生だった石原慎太郎が書いた小説、

『太陽の季節』

が、芥川賞を受賞したが、石原慎太郎は当時23歳であり、これは当時としては史上最年少の芥川賞受賞だった。

これをキッカケに、

『太陽の季節』

は大ベストセラーとなり、やがて日活により、

『太陽の季節』

は映画化され、石原慎太郎の弟・石原裕次郎が、この映画でデビューした。

また、

『太陽の季節』

によって、慎太郎のように髪を短く刈った、

「慎太郎刈り」

の若者達が、アロハシャツを着て湘南の海を闊歩するという、所謂、

「太陽族」

が社会現象となった。

そして、それまではあまり人気(ひとけ)が無かった、

「湘南」

の海が、以後、人気スポットとなって行った…。

という事で、もはや当ブログではすっかりお馴染み(?)となった、石原慎太郎・石原裕次郎兄弟の登場の物語であるが、

「湘南」

の出身の桑田佳祐は、サザンの楽曲でも、「湘南」を連想させる楽曲を沢山書いている。

従って、

『ステレオ太陽族』

というタイトルも、「湘南」をメジャーな存在にした、石原慎太郎・石原裕次郎兄弟へのリスペクトが込められており、

「サザンこそ、『太陽族』の後継者である」

…と、宣言しているに等しいのではないかと、私は思う。

このアルバムのタイトルからは、そういった意図が読み取れるように思われる。

 

<1981(昭和56)年の音楽界⑤~郷ひろみ『お嫁サンバ』、河合奈保子『スマイル・フォー・ミー』、石川ひとみ『まちぶせ』、西田敏行『もしもピアノが弾けたなら』などが大ヒット>

 

 

さて、サザンのシングルがあまり売れていなかった1981(昭和56)年、

どんな曲が、ヒット・チャート戦線を賑わせていたのか、見てみる事としよう。

1981(昭和56)年5~7月にかけて、桑田佳祐と「同学年」の郷ひろみが歌った、

『お嫁サンバ』

が、「ザ・ベストテン」に8週連続でランクインし、「ザ・ベストテン」で最高「3位」にまで上昇する大ヒット曲となった。

郷ひろみは、当初、

『お嫁サンバ』

というタイトルは全く気に入っておらず、

「こんな曲が売れるわけがない」

と思っていたそうだが、意外や意外(?)、郷ひろみの歌手としてのキャリアの中でも屈指の大ヒット曲となってしまったのだから、世の中、何が起こるかわからないものである。

 

 

 

さて、1980(昭和55)年に、

「西城秀樹の妹(妹分)」

が、大々的に募集されたが、その「西城秀樹の妹(妹分)」に選ばれたのは、当時16歳の河合奈保子だった。

その後、河合奈保子は歌手としてデビューし、

翌1981(昭和56)年、河合奈保子は、

『スマイル・フォー・ミー』

という曲を大ヒットさせた。

『スマイル・フォー・ミー』は、1981(昭和56)年6~7月にかけて、「ザ・ベストテン」に7週にわたってランクインし、最高「6位」にまで上昇する大ヒットとなった。

なお、西城秀樹も、桑田佳祐とは「同学年」である。

 

 

1981(昭和56)年、石川ひとみが歌った、

『まちぶせ』

という曲が大ヒットしたが、

『まちぶせ』

は、元々、1976(昭和51)年にユーミン(荒井由実)が、三木聖子のために作った曲だったが、その時はあまり売れなかった。

しかし、その5年後の1981(昭和56)年、

『まちぶせ』

は、改めて石川ひとみに提供され、石川ひとみが歌った『まちぶせ』は、1981(昭和56)年8~10月にかけて、「ザ・ベストテン」で9週にわたってランクインし、「ザ・ベストテン」で最高「3位」にまで達する大ヒットを記録した。

なお、

『まちぶせ』

を巡る物語は、以前、このブログで詳しく書いたので、ここでは詳述しない。

 

 

この年(1981年)は、異色の歌い手が歌うヒット曲も生まれた。

『池中玄太80キロ』

という、日本テレビで放送されたドラマの主題歌として、主演の西田敏行が、

『もしもピアノが弾けたなら』

という曲を歌ったが、

『もしもピアノが弾けたなら』

は、1981(昭和56)年8~10月にかけて、「ザ・ベストテン」に8週にわたりランクインし、最高「4位」にまで達する大ヒットとなった。

『もしもピアノが弾けたなら』

を歌う西田敏行は、日本テレビのドラマ主題歌を、他局の歌番組に出て歌うという、異例の事態となったが、意外に歌が上手い西田敏行の歌声は、多くの人々の心に届いた。

 

<1981(昭和56)年の音楽界⑥~「テレビに出ないアーティスト」の松山千春『長い夜』、ユーミン(松任谷由実)『守ってあげたい』が大ヒット>

 

 

さて、1980年代初頭は、各テレビ局では歌番組が盛んだったが、

そういった歌番組に出演するのは、主にアイドル系の歌手が中心だった。

しかし、当時は、主義として、

「テレビに出ない」

という信条を持っているアーティストも居た。

松山千春も、売れっ子のアーティストではあったが、ヒット曲は多数有ったものの、松山千春は滅多にテレビには出なかった。

しかし、1978(昭和53)年に、

『季節の中で』

という曲が、「ザ・ベストテン」で「1位」を獲ると、松山千春は、

「最初で最後」

と宣言し、「ザ・ベストテン」に出演している。

そして、それから3年後の1981(昭和56)年、松山千春が歌った、

『長い夜』

が、再び「ザ・ベストテン」で「1位」を獲得する大ヒットとなった。

寺尾聰が歌った、

『ルビーの指環』

が、1981(昭和56)年4~6月にかけて、「ザ・ベストテン」で「12週連続1位」の超大ヒット曲となった…という事は、前回の記事で書いたが、1981(昭和56)年6月

『ルビーの指環』

から「1位」の座を奪還したのが、何と、松山千春が歌った、

『長い夜』

だった。

『長い夜』

は、そこから「ザ・ベストテン」で「3週連続1位」の大ヒットとなったが、何しろ、松山千春はテレビには出ない人である。

だが、「ザ・ベストテン」からの熱心なオファーにより、

『長い夜』

は、松山千春のライブのVTR映像として放送されている。

しかし、松山千春は遂に、「ザ・ベストテン」のスタジオに出て来る事は無かった。

 

 

「テレビに出ないアーティスト」

と言えば、ユーミン(松任谷由実)も、滅多にテレビには出ない人だった。

しかし、1981(昭和56)年、ユーミン(松任谷由実)は、

『守ってあげたい』

という曲を大ヒットさせた。

『守ってあげたい』

は、1981(昭和56)年8~10月にかけて、「ザ・ベストテン」で12週にわたってランクインし、最高「2位」にまで達する大ヒットとなった。

そして、ユーミン(松任谷由実)も、

「最初で最後」

と宣言した上で、「ザ・ベストテン」に、ただ一度だけ出演し、

『守ってあげたい』

をスタジオで披露している。

このように、松山千春ユーミン(松任谷由実)は、

「テレビに出る」

という事自体が大きなニュースになるぐらいの、ビッグ・アーティストだった。

 

<サザンオールスターズの4枚目のアルバム『ステレオ太陽族』の収録曲~『ステレオ太陽族』は名曲の宝庫>

 

 

さて、前述の通り、1981(昭和56)年7月21日、サザンオールスターズの4枚目のアルバム、

『ステレオ太陽族』

がリリースされたが、

『ステレオ太陽族』

の収録曲の数々は、前述の映画、

『モーニング・ムーンは粗雑に』

の挿入歌として、使用されている。

という事で、

『ステレオ太陽族』

の収録曲を、ご紹介させて頂く。

 

 

【サザンオールスターズ『ステレオ太陽族』収録曲】

①『Hello My Love』

②『My Foreplay Music』

③『素顔で踊らせて』

④『夜風のオン・ザ・ビーチ』

⑤『恋の女のストーリー』

⑥『我らパープー仲間』

⑦『ラッパとおじさん(Dear M.Y's Boogie)』

⑧『Let's Take a Chance』

⑨『ステレオ太陽族』

⑩『ムクが泣く』

⑪『朝方ムーンライト』

⑫『Big Star Blues(ビッグ・スターの悲劇)』

⑬『栞(しおり)のテーマ』

 

 

…という事であるが、

『ステレオ太陽族』

には、「全13曲」が収録されている。

そして、

『ステレオ太陽族』

に収録されている曲は、どれも素晴らしく、

『ステレオ太陽族』

は、全体的に「大人」な雰囲気が漂う素晴らしいアルバムであり、名曲の宝庫である。

まさに、

『ステレオ太陽族』

は、サザン史を代表する「名盤」と言って良い。

なお、実は桑田佳祐は、デビュー当時、所属事務所のマネージャーから、

「もう少し、メッセージのある歌詞は書けないの?『砂の上でキスをした』とか、『君の髪がどうのこうの』とか…。お前の書く詞って、『砂』と『海』しか出て来ないの?もっと、松山千春とか、ユーミンの詞を読んで、研究してみろよ…」

というような事を言われてしまったそうである。

その時は、桑田は、

「そんな事を言ったって、俺はボキャブラリーが少ないんだから、しょうがねーじゃん…」

と思ってしまったようだが、なかなかどうして、

『ステレオ太陽族』

の頃には、桑田のソング・ライティングの腕前もかなり上がり、それこそ、

「純文学」

の香りがする作品も数多い。

という事で、

『ステレオ太陽族』

に収録されている楽曲は、どれも素晴らしいのだが、その中から「厳選」して、いくつかご紹介させて頂く。

 

<『ステレオ太陽族』の収録曲①~『素顔で踊らせて』の歌詞>

 

 

 

『素顔で踊らせて』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

Seachin' for my honey 唇を奪いとるよりは

一言のため息が混じる おしゃべりでいいわ

 

※What is your name?

彼女のような(そのような)Lady Oh!

Let's talk about

胸元にはそっと指先で

 

Sittin' in the meadow 心では泣いてることも Oh!

このごろは彼女を見てると わかるようだもの

I don't know why

ためらうような(そのような)Lady Oh!

You may be right!

秘め事なら もっと大切に

 

2月26日には ささやかな二人の絆

 

☆ためらいは とうに止(や)めて 心踊らせてよ

恋すれば誰もかれも 辛いこともあるよ

素顔のままでいい

 

※くり返し

 

出来るなら思い出には 入れ込まず

真夏の予感

 

☆くり返し

 

 

…という事であるが、

『素顔で踊らせて』

は、全体として、終始、穏やかで優しい雰囲気が漂う曲である。

桑田佳祐原由子が、絶妙のハーモニーを聴かせてくれる曲であり、桑田と原の息もピッタリなのだが、

『素顔で踊らせて』

は、実は、

『いとしのエリー』

「続編」のような曲ではないか…と思えなくもない。

歌詞に出てくる、

「2月26日」

とは、桑田佳祐の誕生日だが、

「2月26日には ささやかな二人の絆」

というのは、一旦は破局の危機を迎えながら、それを乗り越えた、桑田佳祐原由子「絆」の事が歌われているのではないだろうか…。

それはともかく、

『素顔で踊らせて』

を聴くと、桑田佳祐の原由子に対する思いが伝わって来るような気がする。

そういう意味でも、『素顔で踊らせて』は素晴らしい曲である。

 

<『ステレオ太陽族』の収録曲②~『ステレオ太陽族』>

 

 

 

『ステレオ太陽族』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

誰の彼女か知らぬけど

踊る姿がいかしてる

You are an another girl.

Shyなそぶり最高

You are so beautiful

振り向いておくれな

 

髪の乱れもそのままに

誰を待つのさ何ゆえに

You are an another girl

夢を見ちゃいそうな

You are so beautiful

ステレオみたいに

 

It's up to you I'd like to full in love with you

どんな態度が君にいいのか分からないよ

Hand jive moan,

Feel me Groove,

Just an another lover.

 

 

…という事であるが、

『ステレオ太陽族』

は、アルバムの表題曲である。

そして、

『ステレオ太陽族』

は、曲の長さは1分半ぐらいしか無く、あっという間に終わってしまう。

だが、この曲で描かれている内容は、物凄く濃密である。

そして、それは恐らく、こういう内容である。

主人公の男が、ある時、ある所で、ハッとするような、

「いい女」

を見掛ける。

恐らく、何処かのディスコか何かのような場所のようだ。

しかし、その女は、どうやら誰かの「恋人」らしく、人待ち顔で誰かを待っている気配である。

「いい女だな…。でも、この子は誰かの『彼女』らしいな…」

思わず、男はその女に見惚れてしまうが、人待ち顔の「彼女」に声を掛ける事も出来ない…。

『ステレオ太陽族』

は、そんな情景と、男の一瞬の揺れ動く心情を、見事に切り取っているが、それこそ、

「これは、短編小説(※ショートショート)のような味わいが有る…」

と、私は思ったものである。

桑田佳祐は、松山千春ユーミン(松任谷由実)にも負けないぐらいの見事な作品を、しかもこんなに短い曲に凝縮して書けるものだと、私は心底、感心してしまう。

 

<『ステレオ太陽族』の収録曲③~『恋の女のストーリー』>

 

 

 

『恋の女のストーリー』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

※恋をしてる女のStory

軽やかな一人きりのWhisky

ためらいのしぐさの後で

I've been crying, Since you left me

 

彼の事を思い出せば

ため息が通り過ぎたMorning

ひそやかな秘め事でいいわ

I've been crying Oh since you left me

 

夏か来るたび 恋のバカンス

彼と逢ったその日から

どこかで抱かれることだけ

夢見てる

 

※くり返し

 

素肌を波にさらしたままで

言葉では云えぬほど

ステキなこのひと時こそ

忘れない

 

 

…という事であるが、

『恋の女のストーリー』

は、

『ステレオ太陽族』

では、勿論、桑田佳祐がメイン・ボーカルを務め、原由子が絶妙のコーラスを聴かせてくれているが、

『恋の女のストーリー』

は、高樹澪の歌手デビュー作として、高樹澪にも提供されている。

『恋の女のストーリー』

は、どうやら女性が主人公で、女性の目線で描かれた作品だが、

『ステレオ太陽族』

とは対照的に、今度は、

「女性から男性への片想い」

が描かれているようである。

いや、「片想い」なのか、それとも、かつては「恋人同士」だったが、今は去ってしまった「彼」の事を思っている女性の事を描いているのか…。

これもまた、

「サザン純文学路線」

の一つであろう。

…というわけで、こんな調子で、

『ステレオ太陽族』

について語っていると、キリが無くなるので、この辺にしておくが、桑田佳祐が、いよいよ本格的にアーティストとしての才能を開花させている事が伺える、

『ステレオ太陽族』

は、聴いて損は無いアルバムなので、是非とも、皆様もお聴き頂きたい。

 

(つづく)