旅の思い出「国立民族学博物館」膨大すぎるコレクションに感動①(大阪・吹田市) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

国立民族学博物館

℡)06‐6876‐2151

 

往訪日:2023年4月8日

所在地:大阪府吹田市千里万博公園10‐1

開館時間:(水曜定休)10時~17時

入場料:(常設展示)一般580円 大学生250円

アクセス:大阪モノレール・万博記念公園駅から徒歩約5分

駐車場:あり

 

《世界に誇る民族学の殿堂》

 

ひつぞうです。太陽の塔を見学したあと、もうひとつ、生きているうちに絶対行きたい場所に向かうことにしました。国立民族学博物館(通称:民博)です。民博設立の機運は戦前の渋沢敬三(元日銀総裁で渋沢栄一の孫)の活動に端を発しますが、最後の一押しは万博開催でした。とりわけ初代館長の梅棹忠夫先生の著作(『東南アジア紀行』他)に感銘を受けた僕は、未開と云われたユーラシアやアジアの民族学的・人類学的研究の成果を、自分の眼で見たいと思ってきました。その往訪記です。

 

「サルはブラ~っと観ゆ」サル

 

★ ★ ★

 

 

民博は本館(常設)と特別展示館に分かれる。特別展も面白そうだったが、常設展示だけでも真面目に見学すると丸一日かかる。本館に直行した。

 

 

民博は建築そのものも鑑賞に値する。設計は黒川紀章。曲線と直線を自在に組み合わせた設計で、とりわけ外光を効果的に取り入れるデザインが採用されている。

 

 

中央の階段を昇ると踊場から中央パティオが見える仕掛け。

 

 

高欄には滑らかに面取りされた格子型の鋳物が嵌め込まれている。そこから見る景色は古代遺跡のようだ。

 

 

これだけの施設なのに580円。大阪の見学施設はとってもリーズナブル。なのに比較的空いている。財政面が気になるが、静かに見学したい僕には理想的。

 

「ヒツが幾ら心配してもどーにもならんよ」サル 万年金欠のくせによーゆーわ

 

クラウドとかあるじゃん。

 

 

民博の基本思想は“世界の民族文化に優劣はなく、すべて等しい価値をもつ”(HPより)である。全世界の民族を広く遍く取り上げている。これも素晴らしいことだ。

 

 

どうです。これだけの資料が展示されているのです。とてもではないが1時間そこらでは見学できない。

 

では観ていこう。まずはオセアニア!(備忘録の長短と展示量は比例しません。僕の好みの問題。)

 

=オセアニア=

 

 

チェチェメニ号 ミクロネシア連邦(サワタル島) 1970年代製作

 

航海と漁撈に利用される伝統技法で製作された舟。沖縄まで3,000㌔の航海実績を持つ優れもの。南洋諸島の人びとは、必ず人生の初めに航海技術を学ぶそうだ。

 

 

あかくみ ニュージーランド(マオリ族) 1977年収集

 

カヌーの底にたまる水を汲みだす道具。シンボリックな彫刻が眼を惹く。

 

 

カヌー船首の装飾板 トロブリアンド諸島(パプアニューギニア) 1970年代製作

 

文化人類学の草分け、マリノフスキーの研究によって一躍有名になったトロブリアンド諸島のクラの交換。そのカヌーの装飾に用いられた盤木だ。

 

 

交換の儀式で贈与されるソウラヴァムワリ

 

 

交易船はこのような装飾で海を渡る。日本や東アジアの祭りの山車にも似ていて、装飾がただの飾りではなく、呪術的あるいは厄除け的な効果を期待したものであることが推測できる。

 

 

それぞれの儀礼的財貨の移動(交易)ルートは逆回り。

 

「なんか意味あるのち?」サル

 

経済的な意味での贈与ではなくて、海を隔てた部族間の紐帯を強め、それぞれの首長の権威を保持、つまりは余計な争いを排除するための儀礼的システムだと言われるね。ちょうど大阪のおばちゃんの飴ちゃんの交換に似ている。

 

「どーいうこと?」サル

 

あれって飴そのものが美味しいからあげるというより、それを贈与することで、知らない者同士が打ち解ける効果があるでしょ。飴そのものには大した価値はないし。

 

「ふむふむ」サル よく判らんけど

 

それに伴って天然資源の交換も行われたんだよね。

 

 

19世紀末~20世紀初めに活動した英国人宣教師ジョージ・ブラウンのオセアニアコレクション。

 

 

キリスト教が浸透する前はカニバリズムの風習があったんだね。ちょっと怖い。

 

 

ティキ像 フランス領ポリネシア 1978年製作

 

「どこ、この国?」サル

 

タヒチを中心とする島嶼部の国だよ。ティキはポリネシアに浸透した部族の始祖神なんだ。ハワイのマカダミアナッツのTIKIってあるでしょ。あのパッケージには恐ろし気な木彫りがデザインされている。あれだよ。

 

「ちょっとデザイン違うにゃ」サル

 

島々で特徴があるんだ。一種のトーテム信仰だよ。

 

 

南太平洋の仮面の数々。

 

 

これはタヒチの葬送儀礼の装束だ。喪主が纏うそうだ。

 

 

祖先霊の彫像 パプアニューギニア(アベラム族) 1974年収集

 

興味深い標本だね。女性や子供が立ち入り禁止の男性集会所に置かれる祖先霊。

 

 

狼の乳房に人間の子供がすがる像はあるが、これにはどういう含意があるんだろう。

 

 

世界一巨大な貨幣だね。子供頃に持っていた世界の不思議図鑑に載っていたな。サンゴ礁の石灰石でできている。ヤップ島には石灰石は存在しない。遠く離れたパラオから海上輸送された。その稀少性から儀礼的価値の象徴になったと言われている。所有者は変わっても、場所は変わらないんだ。

 

「そりゃそうやろ」サル 重すぎるもん

 

 

モアイ像(複製) イースター島(ラパヌイ)

 

11世紀~16世紀に造られたもの。よく持ってこれたねと思ったらレプリカだった。

 

=アメリカ=

 

 

マニオクはアマゾンのキャッサバの澱粉搾りの道具。しかしね。どうやって水に晒せば毒が抜けるって判ったんだろ。そっちが不思議。

 

 

南米各地の民族衣装。標高によって気候が異なるので素材から全然違う。

 

 

アステカの暦石(複製) 16世紀初頭 メキシコ・テノチティトラン

 

 

トーテムポール カナダ

 

 

これは!濱田庄司が“負けた”と感銘して購入した木彫ではないの。

 

「そーだっけ」サル

 

一緒に観たよ。濱田庄司参考記念館で。

 

 

すごい人物だったんだね。

 

=ヨーロッパ=

 

 

越年祭 シルベスタークロイゼ

 

スイス・アッペンツェル地方で大晦日に催される祭りの装束。クロイゼとは精霊を象ったマスクのことで、三種類あるんだそうだ。

 

 

写真は《美しいクロイゼ》と呼ばれるもの。こんな重そうなものを被るってのがすごい。首を痛めそうだけど。

 

 

精巧にできている。これらで着飾った踊り子たちが、ヨーデルを歌ったり、跳ねまわったり、体を揺すって鳴り物を奏でる。日本のナマハゲと違ってとっても明るいムード。

 

 

陽気な墓 ルーマニア(サプンツァ村) 1997年収集

 

生前のユーモラスなエピソードを絵と物語で表している。墓って蒐集できるんだね。残念ながらルーマニア語は判らないので、なにが面白いのか判らんかった。ちなみに同じラテン語源なのにイタリア人もルーマニア語は全然判らんそうだ。それくらい難しい。

 

 

ギリシア正教の大主教祭服と司祭服

 

「だいぶすっ飛ばしたにゃ」サル 手抜きなんじゃね

 

でないと終わらないのよ。

 

=アフリカ=

 

 

今では洋風の服装が一般的になったが、やはりアフリカといえばプリント生地。ヨーロッパから齎されたが、独自の色彩感覚で織られている。

 

一番面白かったのはこれかな。

 

 

ニャウ・ヨレンバ ザンビア共和国 1989年収集

 

チェワの人びとは成人男性による仮面結社ニャウによる踊りで、亡くなった人と魂の交感を行う。そのクライマックスに登場するのがニャウ・ヨレンバ。ニャウ・ヨレンバは“森からやってきた野生の生き物”であり、踊り手は“死者の霊”として認識される。被り物は左からハイエナ、カモシカ、カメを象っていて、夜通し踊りは続く。熱狂が最高潮に達するとニャウ・ヨレンバはぐるぐる高速度で回転。そして女と子供は亡者を“なんてすごいひと。●●さんは最高”みたいに声をかける。やはり、伝統文化は面白い。

 

=西アジア=

 

 

トルコの絨毯、僕も買った(いや買わされた)。1992年のことだ。まだ社会人になったばかりで人を疑うことを知らなかった僕は薦められるままに購入。奥でラッピングしてくると言われて厭な予感がしたが、さすがにガイドの紹介なので悪いことはしないだろうと踏んだのだが、移動先の部屋に戻って開封してみると全然違う粗悪な品が入っていた…。それ以来、僕は商売人を信用していない。でもトルコは好きだけどね。

 

「いつも無闇に警戒しているもんにゃ」サル

 

 

ラクダの衣装。取っ手に掴まって乗るそうな。

 

「ラクダの唾って臭いんだよにゃ」サル

 

正確に云うと胃液と胃の内容物なんだよ。そりゃ臭いわ。ラクダに限らずアルパカやリャマなど同じ科の動物に共通した習性だね。絶対やだけど。

 

 

ベルベル人の居住テント

 

 

西アジアの楽器の数々。弦楽器の起源はエジプト、メソポタミアらしい。左端のウードはベリーダンスで奏でられるね。

 

 

ダンダシュのベリーダンス衣装 エジプト(カイロ) 2013年収集

 

カイロの人気ダンサー、ダンダシュ嬢の踊りを民博の研究員である西尾哲夫さんが特別の許しをえて撮影に成功した際の衣装。通常営業の時に撮影しようとして、サウジアラビア人の男に抗議されたそうな。判る。僕もマドリードの闘牛場で地元のオヤジに絡まれたし。ということで衣装まで手に入れるという研究者の熱意に脱帽。ちなみに仔細は民博のアーカイブに掲載されている。(これも面白いので是非。)

 

 

エジプトの美空ひばり、ウンム・クルスーム(1904?-1975)。頌歌、叙情歌を得意として300曲以上を歌った天才歌手。その曲はエジプトに限らず、全アラブ圏の人びとを熱狂させたそうだ。一度聴いてみたい。ということで興味が湧いたので、ネットで聴いてみたが、なんと一曲が40~60分と異様に長い。そして前奏や間奏が長い…。この独特のアラブ調、高校生の頃にラジオの電波に乗って聞いた曲を思い出した。

 

 

打楽器のルーツはアジアの銅鑼。

 

 

そしてオーボエのルーツ、チャルメラは東アジア。それが世界中に広がり、民族特有の楽器として根食いている。文化って面白い。

 

これでやっとAブロック。まだBブロック、Cブロックが残っている。備忘録ではあるけど次回に続く。

 

「なげーよ」サル

 

(つづく)

 

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