■お知らせ
検査結果でわかったこと 2025年10月版
前回検査との「差が大きい順」に専門家目線で原因と対策を解説
はじめに
循環器内科の定期受診で、前回検査(7月)と今回(10月)の結果を突き合わせました。結論から言うと、脂質は大幅に改善しましたが、心不全マーカーと塩分関連の指標が悪化しています。この記事では、前回との差が大きい項目から順に、なぜそうなったのか、次回までにどう直すのかを具体的にまとめます。医療判断は主治医の指示が最優先ですが、日常で実行できる実用策を丁寧に書きました。
1 中性脂肪が大幅改善(187→62 mg/dL)
1 原因の考察
前回比で最も大きく動いたのが中性脂肪です。主な要因は次の三つが考えられます。
1 炭水化物と甘味飲料の量を見直したこと。
2 夜食や遅い時間の食事が減ったこと。
3 活動量が増えたこと。
中性脂肪は「食後高脂血症」の影響を強く受け、夜遅い食事や菓子が続くと跳ね上がります。今回の数字は極めて良好です。
2 この数値の意味
動脈硬化の中心はLDLですが、中性脂肪が高いと小型のLDLが増えてリスクが上がります。62は目標に合格です。このまま維持できれば、心血管イベントの将来リスクを着実に下げられます。
3 日常の改善点
1 主食は一食で握りこぶし一つ分を目安にして、たんぱく質と野菜を必ず添える。
2 清涼飲料と缶チューハイは「週の上限」を決める。のどが渇いたら真水かお茶にする。
3 夜は二一時までに食べ終える。どうしても遅くなる日は主食を半量に。
4 早歩き三十分相当の活動を毎日確保する。分割でも良い。
2 BNPが上昇(39.1→91.0 pg/mL)
1 原因の考察
BNPは心臓に張りが出ると上昇するホルモンです。今回の上昇の背景として、次の要素が重なった可能性があります。
1 推定食塩摂取量の増加。
2 睡眠不足や就寝前の塩分多めの食事。
3 体液バランスの乱れや飲水タイミングの偏り。
4 季節の変わり目による自律神経の乱れ。
薬の飲み忘れや飲み方の変動も要確認です。
2 この数値の意味
個人差はありますが、慢性心不全の外来では百未満を当面の安定目標に据えることが多いです。今回はその上限に接近しており、塩分と体重の管理を引き締める必要があります。
3 日常の改善点
1 体重を毎朝同じ条件で測る。三日間で一キログラム以上の増加は要注意。
2 夕方に足の甲を親指で三秒押して戻りを確認する。跡が強く残るなら塩分と飲水を見直す。
3 就寝前二時間は塩分と水分を控える。汁物とアルコールは避ける。
4 息切れ、夜間の呼吸苦、むくみの増悪があれば次回受診を待たずに連絡する。
3 血液がやや濃い(ヘマトクリット45.3→51.1 パーセント、ヘモグロビン16.1→16.3 g/dL)
1 原因の考察
利尿薬の影響、飲水のムラ、カフェインやアルコールのとり方、発汗量の増加などで血液が濃く見えることがあります。塩分が増えると喉が渇きやすくなり、反動で水分摂取が極端になるなど、体液管理が不安定になりがちです。
2 この数値の意味
心不全では「水分を取り過ぎない」と「脱水にしない」の両立が鍵です。血液が濃い方向に触れている時期は、こまめな少量補給と塩分削減で安定させます。
3 日常の改善点
1 主治医と決めた一日の総量の範囲で、午前と午後に均等配分する。
2 入浴前後と運動時は少量ずつ補給。がぶ飲みはしない。
3 カフェイン飲料は午後は控えめにする。
4 喫煙がある場合は確実に減らす。血液粘度と酸素運搬に悪影響が出る。
4 γGTPが改善(75→51 U/L)
1 原因の考察
飲酒量の見直し、脂質の改善、体重管理が効いています。肝胆道系の負担が軽くなったサインです。
2 日常の改善点
1 休肝日を週に二日。
2 濃い味のつまみを果物やナッツ、豆腐などに置換する。
3 夜は早めに切り上げ、睡眠の質を守る。
5 推定食塩摂取量が増加(7.12→10.72 g/日)
1 原因の考察
外食や総菜、麺類のスープ、漬物や佃煮、加工肉、パンの頻度が増えると、意識しなくても簡単に十グラムを超えます。濃い味に慣れると舌が求めてしまうため、二週間ほどの「慣らし期間」が必要です。
2 この数値の意味
慢性心不全の患者は六グラム未満が基本方針です。今回の増加はBNP上昇とも整合します。
3 日常の改善点
1 汁物は具を食べて汁は半分残す。
2 麺類のスープは残す。替え玉と追い飯はしない。
3 ハム、ベーコン、ソーセージ、練り物、カップ麺は週一回まで。
4 レモン、酢、こしょう、七味、ハーブ、だしの香りで満足度を上げる。
5 外食前に「薄味で」と先に伝え、タレは別添えにして自分で調整する。
6 LDLコレステロールが低下(113→103 mg/dL)
1 原因の考察
油の質を整え、揚げ物と菓子の頻度を落とせたことが寄与しています。運動の習慣化も好影響です。
2 この数値の意味
心血管リスクが高い人では百未満、場合によっては七十未満を目標にすることがあります。今回はあと一息で二桁台に到達します。
3 日常の改善点
1 調理油はオリーブ油などを少量に。揚げ物は回数を決めて守る。
2 肉は赤身と鶏むね中心にして、加工肉は控える。
3 夜の菓子は終売にする。代替としてヨーグルトや温かいお茶を用意する。
7 HDLコレステロールが上昇(46→55 mg/dL)
1 原因の考察
有酸素運動と体重管理の継続、良質な脂の摂取が効いています。
2 日常の改善点
1 一日当たり合計三十分以上の早歩き。可能なら軽い筋トレも加える。
2 魚、ナッツ、アボカドを適量で回す。
3 喫煙はある場合、段階的に削減する。
8 尿酸が低下(9.0→7.2 mg/dL)
1 原因の考察
飲酒量と甘味飲料のコントロール、内臓肉や魚卵の頻度見直しが寄与したと考えます。
2 日常の改善点
1 水分は日中に分散して口を潤す。心不全の制限の範囲で調整する。
2 ビールの量を先に決め、上限を守る。
3 夕食後の甘いデザートは週一回までにする。
9 腎機能がやや改善(eGFR 65.5→68.7、クレアチニン0.93→0.89)
1 原因の考察
脱水を避け、鎮痛薬の自己使用を抑えたことが考えられます。血圧コントロールも腎保護に直結します。
2 日常の改善点
1 鎮痛薬は医師に相談のうえで。
2 血圧は自宅でも記録し、朝晩の平均を把握する。
3 脱水と塩分過多の両極端を避ける。
10 血糖がやや上昇、HbA1cは横ばい(121→128 mg/dL、5.8→5.9 パーセント)
1 原因の考察
夜食や主食量のぶれ、間食、季節要因が考えられます。A1cはほぼ不変で、長期平均としては安定しています。
2 日常の改善点
1 食事の最初に野菜や汁物をとり、主食は最後に。
2 朝は卵、豆腐、納豆などたんぱく質を必ず一品。
3 丼物はご飯を少なめにして具を多めにする。
4 就寝直前の間食は卒業する。
11 一日のモデルプラン
朝 食パン半分に卵一個、ヨーグルト、味噌汁は具中心で汁半分。
昼 ご飯は茶碗軽め一杯、焼き魚か鶏むね、野菜の小鉢二皿。
間 お茶か水。どうしても小腹が空けば素焼きナッツ少量。
夜 ご飯は半量、野菜二皿を先に食べ、牛赤身か豆腐料理。味付けはレモンと胡椒。
運動 早歩き二十分を朝と夕で分割。
入浴 就寝一時間前に短時間。入浴前後に少量の水分補給。
睡眠 就寝二時間前から画面時間を減らし、深呼吸でスイッチオフ。
12 次回までの行動ゴール
1 塩分は6から7グラム台を目指す。汁物の汁は毎回半分残す。
2 体重、むくみ、息切れを毎日メモ。三日で一キログラム以上増えたら医師に相談。
3 BNPを100未満で安定させることを当面の目標にする。
4 LDLを90台に落とす。揚げ物は週一回までに。
5 夜は21時までに食事を終える。
6 休肝日を週二日。
7 早歩き30分相当の活動を毎日。
まとめ
今回の検査は、生活で動かせる指標がはっきり反応することを示しました。中性脂肪、LDL、HDL、尿酸、γGTPは良い方向に進み、努力の成果が数字に現れています。一方で、BNPと塩分、そして血液の濃さは注意報です。原因は明確で、対策もシンプルです。汁物は半分残す、麺のスープは飲まない、タレは別添えにして自分で量を決める。体重とむくみを毎日記録して、異変の芽を早く摘み取る。これらを一か月続けるだけで、BNPは落ち着き、推定食塩摂取量も確実に下がっていきます。
数字は裏切りません。やった分だけ、からだは応えてくれる。次回は「塩分とBNPが同時に改善」という報告ができるよう、今日からまた基本に立ち返って積み上げます。












