物理ネコ教室239ホイートストン・ブリッジ〜抵抗回路の応用 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 イラストはホイートストンでなく、マクスウェルです。お間違えなく。

 

 今、ぼくたちが電気の理論をうまく扱えているのは、マクスウェルさんが考えてくれた電位がイメージしやすい概念だったからです。(といっても、始めて学ぶ人には最初につまづくところでもありますが)

 

 前回、電池や電流計を現実に近づけました。電池の電圧は電流量で変わってしまうとか、どんなにすぐれた電流計でも回路の電流を変えてしまうとか、という話でした。

 

 今回は、そういう現実を踏まえた上で、ではどうやって様々な値をより精密に測定できるかというお話です。

 

 頭は使うためにある!

 

 なんと、これらの現実的な電池や電流計の限界を逆手に取った測定方法を考えた人がいるんですね〜〜

 

 最初は、ホイートストン・ブリッジ。ホイートストンが他の人が考えた装置をさらに改良して、世に広めたので、改良したホイートストンの名前が残っています。さすがにファラデー、マクスウェルなどのキラ星のような科学者たちと比べると、知名度は低い。もともと家が音響関係で、音響の研究から物理の道へ進んだ人です。でも、後になって研究したホイートストン・ブリッジ以外の業績で名前が残っています。

 

 

 ホイートストン・ブリッジの仕組みを簡単にいうと、未知の抵抗Rxを精密に測るため、可変抵抗R3の値をいろいろ変え、図のAB間に置いた電流計の示す値が0になるようにします。このときのR3の値と、最初からわかっているR1、R2の値から、未知の抵抗Rxが簡単に、しかも精度高く測定できるのです。

 

 なんだか、不思議ですね。でも、理屈は意外に簡単です。

 

 そう、ホイートストン・ブリッジの理屈は簡単なんですが、回路図だけ見ていても、イメージがさっぱりわきません。やはり、電位に関する立体的なイメージができるかどうかが、これらの応用編でも大切なんですね。

 

 ぼくは、ストローを5本組み合わせてホイートストン・ブリッジの菱形の部分のモデルをつくり、説明に使っています。菱形を横切る架け橋に相当するストローを大きめの目玉クリップではさむと、ストローの径の方が小さいので、目玉クリップがするするとすべります。回路図のA、Bに当たるところを上げ下げして、架け橋のストローが傾くと、目玉クリップが低い方へすうーっとすべっていきます。

 

 もう、何をやるか、わかりますね。

 

 図の可変抵抗R3を変化させることで、R3の電圧降下、つまりA点とQ点の落差が変わります。R3を大きくするとこの落差が大きくなり、A点の電位は高くなります。Aの電位の方がBより高ければ、電流はAからBに向かって流れるし、Aの電位の方がBより低ければ、電流は逆向きに流れます。

 

 ストローでつくったモデル回路を見せ、AをBより高くしたり、低くしたりすると、目玉クリップが高い方から低い方へ、まるで電流のように移動します。

 

 そして、AとBの電位を同じにすると・・・

 

 AB間の電流は流れなくなります。

 

 電流計に電流が流れないので、回路の電流値は電流計があろうがなかろうが同じになります。

 さらに、AとBの電位の高さ比べをして測定する仕組みなので、使う電池の起電力や内部抵抗は問題にはなりません。

 

 逆説的ですが、電流計に電流を流さない状態で実験する、という発想が、この装置のポイントなんですね。なお、図では電流計の記号はGで、コメントは「検流計」となっています。Gは検流計の別名称「ガルバノメーター」の頭文字で、検流計は電流計の感度をすごく敏感にして、微弱な電流を測れるようにしたものです。

 

 もう一つは、ポテンショメーター。電池の起電力を精密に測定する仕組みです。

 ざっくりというと、 どんな装置か説明しておきましょうか。

 

 図のような装置で、まず起電力がよくわかっている電池E1を使い、長い抵抗線ABに接触させているスライド端子Pをスライドさせ、PC間に電流が流れないように(PC間に置いた検流計で測る)なる点P1のAからの距離L1を測ります。

 

 次に起電力が未知の電池ExをE1とつなぎ替えて同じ実験をします。PC間に電流が流れない点P2のAからの距離L2を測ると、ほぼ終わり。Ex:E1はL2:L1に等しいので、ここからExを簡単に求められます。

 

 やることは簡単ですが、それがどうしてそうなるかという理由については、これまた、立体的な電位のイメージができていないと理解が困難になります。このプリントでは、特別大サービスで、電位の立体図を添えておきました。

 

 電位は普通、一番低いところ(B点)から測るのですが、この装置では一番高いところ(A点)から下に下がるように電位を測った方が理解しやすいですね。

 

 この実験では、検流計どころか、電池E1やExにも電流が流れません。したがって、前のプリントでやった電池内部での電圧降下は生じません。

 

 よく、工夫されています。

 

 余談になりますが、ホイートストン・ブリッジもポテンショメーターも、電気回路の応用なので、本来は理系向けの筆記試験で出題される範囲です。ところが、ポテンショメーターの回路が、文系の人も受けるセンター試験で出題されたことがありました。センター試験をつくる大学の先生たちは、わりと簡単にルールを無視しますので、文系の人も油断せずにすこし余分なところまで見ておく必要がありますね。(この年、ぼくは文系の3年生を持っていましたが、ぼくはもともと大学入試センターを信用していないので、ポテンショメーターなど、必要と思われるものは授業でやっておきました。受験した生徒は余裕。備えあれば憂いなし、ですね)

 

 では、書き込みをご覧ください。

 

 基本的な理論はもう話しましたので、書き込みを順に読んでいただければ、おわかりいただけると思います。

 

 基本的な考え方はポテンショメーターもホイートストン・ブリッジも同じで、2点の電位が同じなら電流が流れない、というのをうまく使っています。

 

 ポテンショメーターの場合は、抵抗ABが一様な傾きの坂道をつくっていて、電池でA点より起電力分電位を低くしたC点と、同じ高さになるAB上のP点を見つけることで、間接的に電池の起電力を測っています。

 

 同じ実験を電池を替えて2回することで、坂道の実際の電位差を計算することなく、最初の電池と後の電池の起電力を、A点からP点までの距離Lの比較で求められます。これも、たいした工夫ですね。

 

 この二つの問題は、実際の入試問題でも、結果の式を使う問題より、結果の式を導く過程やその考え方をうまく扱った問題の方が多いので、装置の仕組みをよく理解しておきましょう。

 

 では、このへんで。

 

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