コンデンサーの研究は、ファラデーの電気力線に始まり、トムソン、マクスウェルが引き継いだ場の理論の数式化なくしては、進まなかったでしょう。こうして振り返ると、電場の理論はイギリス、アイルランド、スコットランドと、イギリス圏の研究者が深く関わっていますね。
高校で学習する平行平板コンデンサーを理解する場合も、極板間の電場を電気力線を描くことで理解するのが一番わかりやすくなります。
特に、極板間に金属や絶縁体を挿入する複雑なコンデンサーを考えるときには、式ばかり用いて計算するより、電気力線を描いてイメージ的な理解をした方が、はるかにわかりやすい。
コンデンサーについての一連のお話しもそろそろ一区切りです。
では、複雑なコンデンサーの代表的な例を、ちょっとだけ、見ておきましょう。
わりと重要な内容なのですが、補助プリントにしてあるのは、単純な理由。記入式にすると、極板間の電場・電位の図を描くのが大変で、描き間違いが生じやすいからです。
それぞれの図は、左側が通常の状態で、真ん中の図は挿入した物体を右へ寄せた場合、右側がそれをどういうコンデンサーに当たるのかという説明図です。
授業では、左側と真ん中の図の、さらに中間的な図を幾つか連続的に描きながら、電位のグラフがどう変化していくかを示します。
こうすることで、無理なく、極板間の電場・電位がどうなっているのかを理解できるんですね。
参考書などには、よく、「導体を挿入した場合は、導体の厚さ分だけ極板間隔が狭くなったコンデンサーと考える」「絶縁体を挿入した場合は直列コンデンサーとして考える」など、結果だけがテクニックとして書いてあります。でも、その理由が分からなければ、結果だけ覚えても意味がありませんね。
極板の電荷と電気力線を書き込むことで、どのように理解すればいいのかがわかるのですから、これらの内容は結果だけ教えるのではなく、どうしてその用に考えるのかという考え方を教えるべきでしょう。
3枚板のコンデンサーは、実用的に古くから用いられている、複数極板コンデンサーのもっとも簡単な場合です。並列コンデンサーをより少ない数の極板で作り出す工夫です。材料費が浮くし、装置の占める体積も減りますね。
図を見れば容易にわかるように、真ん中の極板が2枚分の極板の役割をしていますが、きちんと電気力線を描いて理解しないと、真ん中の極板の電荷が他の極板の2倍の量であることを見逃してしまいます。
ただ、3枚板のコンデンサーは、知識として知っているか知っていないかで大きな差の出る内容ですので、全員が受験するセンター試験のような共通試験に出題するのは考え物ですね。
かつて、センター試験が共通一次試験と呼ばれていた頃には、この3枚板コンデンサーが平気で出題されていました。困ったものです(笑)・・・
摩擦電気からコンデンサーまでで、静電場に関連する物理現象は一通り終了となります。
次は、電荷の移動を伴う物理現象、つまり、電流が関わる現象です。
電流が登場すると、電場の現象だけでは済まなくなります。
磁場が登場するからです。
電気ではなく、電気と磁気、すなわち電磁気の研究は、やはりマクスウェルの研究により統一的に考えることができる道が開けました。
でも、当面は磁場のことは置いておいて、電流と抵抗、そして電流の生む熱エネルギーのお話しだけに絞ることにしましょう。
最後に、ちょっとだけオマケ。
プリントでは「コンデンサー」でなく「コンデンサ」となっていますが、これは表記上の問題。以前、「コンピューター」「コンデンサー」など、語尾の伸びるカタカナを英語発音の通りに語尾をのばさず「コンピュータ」「コンデンサ」と表記するのが常識だった時期があり、ぼくもその影響でプリントにそういう表記を採用していました。
でも、今は昔のように語尾を延ばす表記が一般的になっているようです。
英語表記をすれば問題ないのですが、日本語の中にアルファベットを混ぜるのは読みにくいので、カタカナにしています。(別の記事で指摘したように、そもそもコンデンサーは英語ではキャパシターなので、語尾を延ばす以前の問題ですが)
では、このへんで。
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