物理ネコ教室225電気容量 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 コンデンサーの電気容量の単位ファラッドは、もちろん、イギリスの科学者マイケル・ファラデーの名前が由来。

 

 小学校しか出ていないファラデーが、ふとしたきっかけから科学の世界に目覚めた物語も感動的ですが、そのファラデーが類い希なイメージ力で電場という概念を創出したのは、物理学史上のひとつの奇跡でもあります。

 

 高校物理では電気回路の応用として扱われがちなコンデンサーですが、コンデンサーを理解する上で、ファラデーやマクスウェルが築いた電場・電位の知識は必須。

 

 入試でも、電場・電位の理解を確かめるのにもっとも相応しい題材として、コンデンサーが出題されるケースが多いですね。

 

 逆にいえば、直列や並列の合成容量の式だけ覚えていても、入試にはほとんど役に立たないということでもあります。

 

 コンデンサーがわからない人は、ほとんどの場合、その前に学習した電場・電位が分かっていない人、ということですね。

 

 では、コンデンサーの核となる、Q=CVの話に入っていきましょう。

 

 

 コンデンサーの関係Q=CVについては、電場・電位のところで学んだガウスの法則の応用例として理解できるのですが、それでは感覚的な理解にはつながりません。

 

 もう少し、イメージ的な理解が必要になります。

 

 それを紹介したのが1の内容。

 

 前回、説明した通り、2枚の極板に現れた正負の電荷の組がお互いに引きあうことで、たくさんの電気量を溜められるようにしたものが平行平板コンデンサーです。

 

 このイメージで見れば、極板間隔dが大きくなればコンデンサーの電気容量Cが小さくなり、極板面積Sが大きくなればコンデンサーの電気容量Cが大きくなるのは、わりと簡単に理解できます。

 

 これがイメージできる人は、C=比例定数×S/dという関係が予測できます。

 

 電池をコンデンサーにつないだまま、極板の間に絶縁体(つまり誘電体)を挿入すれば、絶縁体の表面に誘電分極による電荷が現れます。自由電子の移動によって表面に電荷が現れる静電誘導現象と違い、電子分布のずれによって生じる電荷は、極板の電荷より少なくなります。

 

 しかし、新しく現れた電荷が極板の電荷と引っ張り合って安定するので、電池が極板に送り込む電荷に余裕ができ、さらに極板の電荷は増えます。

 

 そうすると、挿入した絶縁体の表面に生じる電荷もまた増え・・・

 

 これを繰り返すうちに、極板に溜まる電荷は、絶縁体がないときに比べて、かなり大きくなります。

 

 しかし、極板間の電位差は電池により一定に保たれるので、極板間の電場の強さは変わりません。

 

 図の例では、極板の電荷がもとの2倍になっていますが、極板間の電気力線の数は同じですね。

 

 結局、極板に溜まる電気量は絶縁体を間に挿入することで増えることになります。電気容量=比例定数×S/dで、Sとdは変わっていないのですから、比例定数が増えたことになります。

 

 この比例定数は、絶縁体(誘電体)の誘電分極の起こり方の大小で決まりますから、誘電分極の激しさに関係した値になり、物理の専門用語では「誘電率」と呼ばれます。

 

 つまり、電気容量=物質の誘電率×S/dということですね。

 

 しかし、この関係で登場する比例定数つまり物質の誘電率には、実質的な意味がありません。真空の場合の電気容量に比べ、物質を挿入したときの電気容量が何倍大きくなっているかという比だけが、実質的な意味があります。

 

 そこで、真空の場合の誘電率と物質を挿入したときの誘電率の比こそが、コンデンサーの性能や、誘電分極の起こり方に直結した、実質的な意味を持つ量となります。

 

 この値を文字通り「比誘電率」と呼びます。

 

 記号εrのrは「比」を意味するラテン語由来の英語ratioから取られた添え字です。

 

 こちらの例題は、コンデンサーと電池の関係を確認する、代表的なものです。

 

 電池は、電池の正負の極と連結した場所の電位差を一定にする役割を持っています。ですから、電池をつないだまま、コンデンサーに何らかの変化を与えると、電位差が一定の条件で、他の物理量が変化します。

 

 ところが、回路のスイッチを切ると、今度はコンデンサーの極板の電荷が移動できなくなりますから、コンデンサーの極板の電荷量が一定となります。他の物理量は、その条件のもとで変化することになりますね。

 

 では、書き込みを見て行きましょう。

 

 ε0つまり真空の誘電率は、後で出てくる物質の誘電率εとの関係で無理矢理つけた名称と考えていただいてもいいのですが、ファラデー自身は、真空にも誘電分極が生じるはずだと考えていました。マクスウェルもファラデーの発想をいくぶんか受け継いでいるので、真空の誘電率自体に何らかの意味があるとは考えていたでしょう。

 

 実際、真空の誘電率ε0と真空の透磁率μ0をかけた量は、真空中を光が進む速さ、つまり光速と深い関わりのある量ですので、ファラデーの発想はすばらしかったといえるでしょう。

 

 最後の式を見れば、誘電体を挿入したときの電気容量が、真空の時のεr 倍になっていることが見て取れます。

 

 表を見るとわかりますが、紙をはさんだだけで、コンデンサーの電気容量は3倍程度になります。実用的なコンデンサーが、極板の間に何かをはさんで作られているのは、当然ですね。

 

 これらの例題は、コンデンサーと電場・電位の関係を確認する代表的なものですので、よく理解して、マスターしておく必要があります。

 

 回路で、電池がつながれたまま、コンデンサーの容量を変化させているのか、電池を切り離してから、コンデンサーの容量を変化させているのか・・・

 

 これが、物理条件としては、決定的に異なりますので、よく理解しておいて下さい。

 

 先ほど述べたことの繰り返しになりますが、電池をつないだままの場合は、電池の働き(電位差を一定に保つ)によって、コンデンサーの極板間の電位差は一定になります。また、電池を切り離すと、極板の電荷が移動できなくなるので、コンデンサーの電気量が一定となります。

 

 ここさえ押さえておけば、あとはコンデンサーの式Q=CVと、電場・電位の基本式を使うことで、理解できるでしょう。(理解できない場合は、電場・電位の知識が混乱していますので、電場・電位の復習をきちんとやってください)

 

 では、今回はこのへんで。

 

 

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