函館・元町散策は徒歩となるので、どこか良い位置に駐車場を見つけなければなりません。

その途中、JR函館駅側から国道279号を元町方面に車を走らせていると、十字街を少し超えた南部坂のふもとで印象的な建物を見かけました。

 

 

「函館市地域交流まちづくりセンター」(函館市末広町4-19)です。

1923(大正12)年に丸井今井呉服店函館支店として鉄筋コンクリート構造により建築されました。1930(昭和5)年に左奥の5階建を増築。1934(昭和9)年3月の大火で全焼するものの、復興改修を経て同年11月には営業を再開しています。

1969(昭和44)年までは百貨店として、1970~2002年までは市の分庁舎として使用されました。その後は外観保全と安全性確保の改修を行い、2007年から現在の目的で使用されています。

 

 

入口の外観。

中には東北以北最古のエレベーターがあります。元々は1930年にオーチス社製の最新式エレベーターが設置されましたが、上に書いた大火で全焼。現在残っているエレベーターは、火災後に新しく取り付けられた2代目だそうです。

ただし、時間がないので建物内部には入っていません。

 

駐車場は「基(もとい)坂」の中腹あたりで見つけました。

徒歩でそのまま坂の上にある元町公園に向かおうとしたところ、坂の下の方に何やら緑色のレトロ建築が見えました。急いで下りてみます。

 

 

「相馬株式会社社屋」(函館市大町9-1)。

現在も社屋として使われている為、内部は非公開です。

1863年、初代相馬哲平が箱館・弁天町に米穀商を開業したのを基とし、明治30年代には函館の経済・行政の中心が大町付近に変わってきた為、現在の位置に移転しました。しかし1907(明治40)年の大火で当時の社屋が被災し、1916(大正5)年に現在の建物が完成しました。

現在は社有不動産賃貸を主業とされているそうです。

 

 

 

建物の構造は基礎石積、木造二階建。鉄板葺の屋根と、ドーマー窓をもつルネッサンス式の商家建築です。

緑色がひときわ鮮やかですね。

 

では基坂を上っていきましょう。

 

 

基坂の上にある元町公園がすぐそこに近づいた頃、右手には「ペリー提督来航記念碑」と呼ばれるマシュー・ペリーの立像がありました。周辺はペリー広場と名付けられているようです。像は2002年のものなので新しいですね。

日米和親条約を締結したペリーは1854年5月17日、開港される箱館港を下検分する為に、5隻の艦隊を率いて来航しました。滞在中にペリーは箱館湾の海図作成の他、銀板写真術の初公開、西洋音楽の吹奏などを行い、当時の人々の驚きの様子が記録として残っているそうです。

 

 

基坂を挟んで「ペリー提督来航記念碑」とは反対側にあるのが、「旧英国領事館(開港記念館)」(函館市元町33-14)。

箱館に英国領事館が置かれたのは、1859年の事。

この建物は英国政府工務省上海工事局の設計によって1913(大正2)に竣工し、1934(昭和9)年に閉鎖されるまで使用されました。

 

 

1992年から開港記念ホール、開港の歴史を伝える展示室、カフェを設けて一般公開されています。展示室入場料金は大人300円。

しかしながら、時間の都合で入場は断念。

 

 

 

建物の周囲を反時計回りに一周だけする事にしました。

(右)庭園の向こう側に立派な日本家屋の上部が見えます。上で紹介した、相馬株式会社の創業者である明治の豪商・相馬哲平の私邸として建築された「旧相馬邸」です。

後でHPで確認したのですが、大変見応えのある建物のようでした。けれど元町散策には食事を含めて数時間しか取っていません。巡れるわけがない!残念。

 

 

裏庭から領事館の後方を見たところ。

 

 

 

正面に向かって領事館の左側面になります。

 

 

こちらは基坂から港の方を望んだところです。

 

 

 

元町公園内に入って来ました。

(左)正面の高い場所に見える「旧函館区公会堂」(函館市元町11-13)は、残念ながら保存修理工事で休館中。外観も工事用カバーで覆われています。まあ、でもこれは事前に知っていたので、諦めはついていました。

(右)本体ならこのような建物の姿が見られるはずでした。1910(明治43)年の建築で、工事費の大半が豪商・相馬哲平の寄付によるものです。画像は函館市HPより。

 

 

「函館の四天王」像で、明治期に私財をなげうって函館の都市形成に尽力した篤志家たち。

左から今井市右衛門、平田文右衛門、初代渡辺熊四郎、平塚時蔵。

初代渡辺熊四郎はシリーズ記事⑥でも書いた「湯川黒松林」の人でもあります。

 

 

元町公園内にある「旧北海道庁函館支庁庁舎」。

1909(明治42)年に建築され、1982年に修復整備されました。現在は「元町公園パンフレットブース」として使用されています。

 

 

「旧開拓使函館支庁書籍庫」です。

上の支庁庁舎に隣接しており、1880(明治13)年の建築。1907(明治40)年の大火でも類焼を免れ、庫内にあった行政資料も丈夫なレンガ壁によって守られました。

 

この記事で度々、「大火」という出来事に触れていますが、函館はしばしば大火に襲われてきた街でした。明治以降でも、焼失戸数が1000戸以上のものは10回。

特に1907(明治40)年と1934(昭和9)年の大火は被害が大きく、昭和9年の大火では死者が2000名以上になっています。

 

次に元町公園を出て、ロープウェイ山麓駅方面に向かって進みます。

 

 

うっわ~、古民家レトロなお店が2つ並んでいますよ。

右側が「茶房 菊泉」で甘味処・カフェです。

左側のミントグリーン色が「花かんろ」で、こちらも甘味処。

色々調べてみると、どちらも1921(大正10)年に建てられたらしいです。時間の都合上、立ち寄った訳ではありませんが、興味を持った人がいたなら「食べログ」へGo!

 

 

有名な「八幡坂」に出てきました。

港方面を見下ろしますが、左右双方に車が何台も駐車していてイマイチな構図になってしまいました。左側にある「ロシア極東連邦総合大学 函館校」って・・・初めて聞いたよ。

 

 

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