最近、感動したこと
広島県福山市で、「家族関係」や「人間関係」で悩んでいる方々のカウンセリングと、子供たちの学習支援をしている『たあさん』です。(http://kazoku-to-kyouiku.com) 今年の4月、タイガー・ウッズがゴルフ界で奇跡の復活を果たしましたね。不倫や事故、病気などで試合に出場すらできない時期もありましたが、諦めずにゴルフを続けようとする強い意志と周囲のサポートが成し遂げた復活劇でした。 私自身はゴルフをしませんが、最近では感動的な出来事の1つでした。 報道によると、タイガー・ウッズは生後9か月目位から父親の指導でゴルフを始めたそうです。その後も厳しい特訓を受けて才能が開花し、ゴルフ界のスーパーヒーローになっていきました。 日本では、野球のイチロー選手やフィギュアスケートの紀平梨花選手なども小さい頃からそのスポーツを始めています。それができる家庭環境だったわけですから、かなり恵まれた環境だったと言えます。 スポーツに限らずですが、第一線で活躍している人たちは大方恵まれた環境で育ち、本人の努力と周囲のサポートによってその能力を開花させ、社会的にも認められるようになったと言っていいでしょう。 話は変わりますが、今年の東京大学の入学式で社会学者の上野千鶴子氏が祝辞を述べ、その内容が取り沙汰されました。 いろんな問題発言をしてきた人ではありますが、新聞に載っている上野氏のエッセイなどを読むと、彼女が社会の底辺で悩み苦しんでいる人たちのことを慮(おもんばか)る人だという印象を私は持っていました。そして、その印象が正しかったことを、今回の祝辞の内容を読んで確認しました。 祝辞の内容で目を引いたのは、後半の以下の部分です。「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください。あなたたちが今日『がんばったら報われる』と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持って引き上げ、やり遂げたことを評価して褒めてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われない人、がんばろうにもがんばれない人、がんばり過ぎて心と体を壊した人…たちがいます。がんばる前から、『しょせんお前なんか』『どうせ私なんて』とがんばる意欲をくじかれる人たちもいます。あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶(おとし)めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。」(ホームページ:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html より引用) 私自身、決して恵まれた環境に育ったわけではなく、家庭の収入が少なかったので高校は授業料全額免除、無利子の奨学金を借り、新聞配達をしながら学校に通って卒業しました。そして、卒業後は一旦東京の会社に就職しましたが、どうしても大学で学びたいという気持ちが湧いてきて、1年後に会社を辞め、再び新聞奨学生になって受験勉強をしました。 しかし、働きながらの受験勉強はかなりハードでした。いつも眠くて勉強した内容がなかなか定着しにくいし、何と言っても朝刊・夕刊両方の新聞配達に1日4~5時間を費やしたので、勉強時間が足りませんでした。 そして、できるだけ学費の安い私立大学を選んで受験し、何とか合格することができました。大学入学後も生活費の確保のために奨学金を借り、アルバイトをしながら大学に通いましたので、勉強する時間は思うように取れませんでした。 国公立大学に入ろうと思えば、全教科をまんべんなく学ばなくてはならず、勉強する時間の確保は必須です。ですから、上野氏が言っておられることはその通りだと思います。 恵まれた環境のおかげで東京大学に入った人たちの中には、卒業後官僚や政治家になって日本の将来を左右する立場で働く人も多くいるわけですから、社会の底辺で一所懸命に生きている人たちも幸福や生きがいを感じられるような社会作りを目指してほしいと思います。学費を払うためにがんばらなくてはならない人たちや、がんばる意欲を失っている人たちにも目を向けて、社会的弱者が救われるような仕組みを考えてほしいものです。 上野氏も言われているように、弱者を強者にするという発想ではなく、「弱者が弱者のままで尊重される」ような社会です。 最後に上野氏は「知を生み出す知をメタ知識といい、それを学生に身につけてもらうことが大学の使命です」と祝辞を結ばれていましたが、「メタ知識」とは正確には「自分の知識に関する知識」(自分が何を知っていて何を知らないかを知っていること)を意味しますから、少しニュアンスの違いがありますが、伝えたいことは伝わってきました。 そして、その勇気ある発言に感動を覚えました。