読書雑記 -31ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

夜のピクニック (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆★

世代を超えて読まれている作品というのも納得できる。でも、やはり十代、二十代の時に読んでみたかった。

朝の8時から翌朝の8時まで、80キロをひたすら歩くという高校の行事が物語の舞台。

普段の学校生活とは異なり、昼夜を問わず歩き続け、体力的にも極限状態の中では、いつもより他人に対して正直になれたり、固定観念や偏見からも自由になれたりするもの。

そんな非日常の助けを借りながら、主人公は高校生活最後の行事に『秘密の賭け』を託し、友人に対する違った見方や新たな人間関係が生まれる。

高校生たちが繰り広げる歩きながらの会話、独白、回想を中心に進む長編小説でありながら、飽きずに読ませる作家の筆力はすごい。
初陣: 隠蔽捜査3.5 (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆★

キャリア警察官僚の竜崎伸也を主人公とした隠蔽捜査シリーズ(『隠蔽捜査』『果断ー隠蔽捜査(2)』『疑心ー隠蔽捜査(3)』)からのスピンオフ作品。

竜崎の幼なじみで同期として前三作に登場する伊丹俊太郎を主人公にした短編集である。

これまでの隠蔽捜査シリーズや竜崎伸也を伊丹の目線から違った形で味わうことができ、前三作の裏話なども出て来て、シリーズのファンにはたまらない。
疑心: 隠蔽捜査3 (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆★

キャリア警察官僚の竜崎伸也を主人公にした「隠蔽捜査」シリーズの第3作。

前作に引き続き、大森署署長としての職務に精励する竜崎の姿を描く。

竜崎は来日するアメリカ大統領の警備事案に直面する。しかも、本来ならば方面本部長が務めるべき方面警備本部長に大森署署長である竜崎が任命される。

竜崎が本部長に任命された第二方面警備本部は大統領機が到着する羽田空港を管轄しており、その責任は大きい。

また、方面警備本部長の臨時の秘書官として赴任してきた美人の女性キャリアに、無駄な感情を廃し理性を重んじる竜崎がなんと恋愛感情を抱いてしまう。

この二つの大きな試練を竜崎はどうやって乗り越えるのか見ものである。
果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆★

警察庁のキャリア官僚である竜崎伸也を主人公とした「隠蔽捜査」シリーズ第2弾。

息子の麻薬使用による降格人事で、警察庁長官官房の総務課長から大森署の署長に異動になった竜崎。

これまでエリート街道を走ってきたキャリア官僚が、現場に近い警察署長という職でどのような働きぶりを見せるのか。

原理原則を大切にし、感情より理性を重んじるがあまりに警察庁では常に「変人」扱いされてきた竜崎だが、本作でもその「らしさ」を存分に発揮してくれる。

隠蔽捜査 (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆☆

警察官僚を主役にした警察小説というのが新鮮でおもしろい。

主人公の竜崎伸也は、警察庁長官官房の総務課長の職を務めるキャリア官僚だ。

『家庭のことは妻の仕事だ。私の仕事は、国家の治安を守ることだ。』
『竜崎にとって東大以外は大学ではない。』
これだけ聞くと、エリート意識剥き出しで古い考えのイヤな奴に思える。

だが、何のためにエリートとして出世したいのかについて、
『官僚の世界で出世がなぜ大切かというと、それだけ権限が増えるからだ。』と言っている。
竜崎は単に偉くなりたい、給料がたくさん欲しいといった単純な出世欲に駆られているわけではないのだ。

そして、エリートには特権とともに当然大きな義務もつきまとうことを竜崎は認識している。
『選ばれた人間だ。国をつつがなく運営して、守っていく義務を負っている。だから、いざというときは、真っ先に死ぬ覚悟をしている』

ちょっと長いが、竜崎の行動原理と組織論に関わる箇所を引用する。
『竜崎は、これまでたてまえを貫くことが本当の役人の仕事のやり方だと思ってきた。
 そして、できるかぎりそれを実行してきたつもりだ。ときにはままならないこともある。だが、大筋では貫いてきたと思う。
 たてまえを貫くいうことは、つまりは原則を重視するということだ。ケースバイケースという言葉が嫌いだった。それは、いい加減さを表現する言葉だと、竜崎は思っている。
 原則を大切にしなければ、システムは腐敗する。何が重要なのかわからないから、無能な役人は法の条文や通達の文面だけをなぞって、それを闇雲に実行しようとする。そして、前例だけを重視するようになる。いわゆるお役所仕事だ。それは、疲弊した役所のシステムだ。本当に有能な官僚を集めた、有効なシステムというのは、原則を大切にした、即応性のある、柔軟なものだというイメージがあった。』

このホンネとタテマエを使い分けない姿勢により、竜崎は職場でも家族にも常に『変人』扱いされる。

タテマエを貫く竜崎の行動が、時には滑稽に見えて笑いを誘うこともあれば、この行動原理に則って難局を乗り越えていく様が、日々ホンネとタテマエを使い分けて生きることに歯痒さを感じている読者にとって痛快で感動を与える。ここに本書の最大の魅力がある。