読書雑記 -31ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

オレたちバブル入行組 (文春文庫)/文藝春秋

¥690
Amazon.co.jp

☆☆☆☆★

TBSの日曜劇場『半沢直樹』の第7回(9月1日放送)の平均視聴率は、関東地区、関西地区ともに30%台に達したそうだ。

2011年の11月~12月に放送され最高視聴率40%を記録した『家政婦のミタ』(日本テレビ)が、東日本大震災で「家族の絆」の大切さを感じていた視聴者の心に響いたと言われるように、大ヒットするテレビドラマにはその時代を支配する空気や視聴者の心理に訴えかけるものがあるのだろう。

『オレたち花のバブル組』とともに『半沢直樹』の原作である本書は、バブル絶頂期の1988年に都市銀行に入行した主人公たちの十数年後を描いている。バブル経済が崩壊し、不良債権処理に苦しんだ末、その後遺症が残る時代だ。その後、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災を経て、日本経済はさらに通弊し今に至っている。小説の舞台と今では、10年の隔たりがあるが、通じて先の見えない閉塞感が世の中を覆う同時代であると言えよう。

古色蒼然とした官僚主義や事なかれ主義、保守的で傲慢な体質が蔓延する銀行という組織の中で、したたかに逞しく生き抜く主人公・半沢直樹の姿は、読者にさぞかし痛快に映るであろう。

また、著者の池井戸潤が元銀行員とあって、リアルな迫力ある作品に仕上がっている。

さらに、この作品がいいのは、池井戸潤・文庫最新作の『民王』がきれいに優等生的にまとまっているのに対し、半沢の病的な側面まで描かれているところだ。

確かに、会社の上司、取引先、役人等、理不尽でヒドい奴がたくさん出てきて、相応の罰を受けて当然なのだが、半沢の反撃はあまりにサディスティックで徹底的なのだ。

「オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それにこたえる。だが、やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。十倍返しだ。そしてーー潰す。二度とはい上がれないように。」
民王 (文春文庫)/文藝春秋

¥651
Amazon.co.jp

☆☆☆★★

池井戸潤原作の『オレたちバブル入行
組』『オレたち花のバブル組』をドラマ化した『半沢直樹』が高視聴率を維持している。

『オレたち~』が銀行を舞台にした企業小説であるのに対し、本書は、総理大臣をはじめとする政治家や総理大臣の家族、その友人たちが登場する、『政治コメディ』だ。

田辺靖=福田康夫、安西滋=安倍晋三、武藤泰山=麻生太郎 等、実在の政治家を想起させる人物設定やエピソードも散りばめられている。

物語の大半は、皮肉やユーモアたっぷりのドタバタ劇が展開されるのだが、最後は、登場人物が正論や理想を貫き、きれいに終わる。
現実には、正論や理想を押し通そうとすることによる葛藤や苦悩があるわけで、そのあたりの描き方があっさりしすぎている気がする。
解説で言うような『有権者必読の書』というのはちょっと褒め過ぎか。

とは言え、そこそこの頁数(341頁)の割には、一気に読めて、大変楽しい作品である。
ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)/講談社

¥1,785
Amazon.co.jp

☆☆☆☆★

「在日特権を許さない市民の会」(在特会)は、在日韓国人・朝鮮人に与えられた特権を日本から無くすことを目的として設立された「右派系市民団体」だ。

ネット上の掲示板等で人種差別的・排外主義的な書き込みを繰り返すネット右翼の存在は以前から知られているが、ネットの世界から飛び出して、街頭演説やデモ行進を行う「行動する保守」として活動するのが在特会の特徴である。ネットによる簡易な登録が可能とはいえ、会員数は1万人を超え、年間1000万円もの寄付が集まるという。

「ゴキブリ朝鮮人を日本から叩き出せ!」
「シナ人を東京湾に叩き込め!」
「おい、コラ、そこの不逞朝鮮人! 日本から出て行け!」
「死ね!」
彼らは、子供のケンカ以下の聞くに耐えない罵詈雑言を叫びながら、街頭を練り歩く。
匿名が基本で相手が見えないインターネット空間は、攻撃的・暴力的な言葉で溢れているが、そうしたネット上での言語感覚が、そのまま現実の世界に持ち込まれてしまったように思える。

在特会が在日コリアンに付与された「在日特権」として指摘しているのは、
①特別永住資格
②朝鮮学校補助金交付
③生活保護優遇
④通名制度
だそうだ。
しかしながら、在特会が主張する「在日特権」なるものは、「一つひとつ事実を検証すれば、『特権』というよりは、在特会やその賛同者が従来の制度を思いっきり拡大解釈した上で、彼ら独自の見解や根拠の怪しいデータを付け加えた、いわば彼らが後から『発見』したもの」のようだ。
「真実に目覚めた」「真実を知った」など、在特会に関係する者は「真実」という言葉を好んで使うらしい。「新聞、雑誌、テレビによって隠蔽されてきた真実が、ネットの力によってはじめて世の中に知られることになった」というのである。インターネットは既存メディアよりも情報量が豊富な分、情報の確度や価値において玉石混交だ。ネットから自分たちに都合のよい情報ばかり吸収しているのだろう。

「理不尽で、荒々しい力で、彼らを駆り立ててやまないものは何なのか。彼らが口にする憎悪の源には何があるのか。いったい彼らは、かくも過激な在特会の活動のどこに魅了されているのか。」

在特会やその関係者、既存の保守運動家、在日コリアン等への1年半にわたる取材を通して、筆者はこの問いに答えようとする。

街頭で憎悪を剥き出しにして荒々しく叫ぶ在特会のメンバーを取材するために、身構えて一人ひとりに会ってみると、筆者は拍子抜けの連続だったという。とても真面目で礼義正しい人物が多いのに驚いたということだ。

在特会を至近距離から見てきた人物が言う。
「連中は社会に復讐してるんと違いますか?私が知っている限り、みんな何らかの被害者意識を抱えている。その憤りを、とりあえず在日などにぶつけているように感じるんだな」
現代社会で「うまくいかない人たち」が、本来なら自分たちが享受するはずのものを「奪われている」という喪失感、被害者意識を持っている。これが外国人嫌いと結びつくと、外国人を略奪者にたとえるシンプルな極論が一定程度の説得力を持ってしまうのではないかと筆者は分析している。

社会への不満を持つ者の馬鹿げた非常識な行動だと斬り捨てるのは簡単である。その意味である在日コリアンの次の言葉が印象的だ。
「でもね、本当に怖いのは、在特会じゃないような気もするんです。」「在特会ってわかりやすいですよね。腹も立つし、悲しくもなるんやけど、あまりにわかりやすいだけに恐怖を感じることはないんです。僕が怖いのは、その在特会をネットとかで賞賛している、僕の目に映らない人たちなんです。いっぱい、おるんやろうなあと思うと、正直つらくてしかたないんですよ」

在特会とは何かと聞かれるたびに、筆者はこう答えるという。
「あなたの隣人ですよ。
人の良いオッチャンや、優しそうなオバハンや、礼義正しい若者の心のなかに潜む小さな憎悪が、在特会をつくりあげ、そして育てている。街頭で叫んでいる連中は、その上澄みにすぎない。彼ら彼女らの足元には複雑に絡み合う憎悪の地下茎が広がっているのだ。」
安部政権のネット戦略 (創出版新書)/創出版

¥756
Amazon.co.jp

☆☆☆☆★

先の参院選では、自民党が大勝した。

本書によると、自民党のFacebookの「いいね!」の数が38,000に対し、民主党は1,800、2013年5月時点で、安倍首相のツイッターのフォロワーが35万人に対し、民主党の細野豪志幹事長は4,800人余りだったらしい。

ネットによる政治活動や選挙運動がどの程度自民党の得票につながったのかはわからないが、ネット戦略において、自民党が民主党を圧倒したことは間違いないようである。

そもそも自民党がネットに対してすごく積極的になったのは、2009年に政権を失ったことが大きいとのことである。世耕官房副長官も元NTTの広報マンだそうだ。

ネットも含めた「メディア対策はもちろんどの政党もやってきたことだが、安倍政権の場合、それがかなり戦略的、システム的に行なわれている」らしい。

また、安倍政権とネットとの関係を語る上で外せないのが、ネット右翼(いわゆるネトウヨ)の存在だ。
安倍政権の主張を強力に支持し積極的にネットに書き込むコアな人は、10万人いくかいかないくらいで、これを多いと見るか少ないと見るかは意見の分かれるところとあるが、彼らはあまりにも多数の書き込みをするため、ネット上の巨大勢力となり多大なる影響力を持つに至っているという。

しかし、安倍首相の怖いところは、Facebookで「特定のコメンテーターを名指しで批判したりしている」ところだ。民主党政権では、「それをやったら権力によるメディアへの圧力になってしまうと思って自粛して」いたのとは対照的である。

安倍首相は、ネットの軽いノリで、「改憲」や「国防軍」を主張していく。
ネットにより、政治家は自らの主張を「発信しやすく」国民はそれらを「受け取りやすく」なったのはいいが、我々の将来を決める重要な問題については、一つ一つ丁寧に議論していきたいものである。

八日目の蝉 (中公文庫)/中央公論新社

¥620
Amazon.co.jp

☆☆☆★★

不倫相手とその妻が留守にする僅かな隙に、赤ん坊を誘拐し逃亡の日々を送る主人公の希和子。

赤ん坊を連れ出すとき、希和子は思う。
『私だったら、絶対にこんなところにひとりきりにしない。私がまもる。すべてのくるしいこと、かなしいこと、さみしいこと、不安なこと、こわいこと、つらいことから、私があなたをまもる。・・・』

希和子のとった行動は決して許されることのない身勝手な犯罪行為だとしても、血のつながらない子に対しても注がれる母性の力はすごいと思う。
知の逆転 (NHK出版新書 395)/NHK出版

¥903
Amazon.co.jp

☆☆☆★★

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンに対するインタビュー。

ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」は是非とも読んでみたい。

ノーム・チョムスキーの、この年齢になって、アメリカの政策への厳しい批判を続けるエネルギーに驚く。

オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトンの名前は初めて知った。トム・レイトンのビジネスの話は、6人のインタビューの中では最も面白かった。

ジェームス・ワトソンがこんな辛辣なキャラクターの持主だったとは。

第三の時効 (集英社文庫)/集英社

¥660
Amazon.co.jp

☆☆☆☆☆

「警察小説の最高峰」というのも頷ける。

短編集というのはあまり好きではないのだが、本書は、すべての作品がF県警強行犯捜査係という同じ舞台において、作品ごとに異なる人物に焦点をあてる作り方をしていて、繋がりがまったくないわけではないので、大変おもしろく読めた。

原発のコスト――エネルギー転換への視点 (岩波新書)/岩波書店

¥798
Amazon.co.jp

★★★☆☆

原発をどうするのか。日本のエネルギー政策はどうあるべきなのか。

日本の抱えるこの問題を原発のコストの視点からとらえている。

「原発のコスト」というと、(とりわけ原発推進論者から)「発電コスト」を中心に論じられることが多いが、本書では、「発電コスト」以外に、①事故による健康被害・環境被害、②それらの被害を補償するためのコスト、③使用済み燃料の処理・処分コスト、④立地対策のための政策コスト等についても分析し、原発は決して安くないエネルギーだとしている。

そして、コストの高い原子力発電への依存から脱するため、原子力複合体をどのように解体するか、再生可能エネルギーのコストを含む脱原発のコストはどのくらいかについて論じ、脱原発のコストよりベネフィット(便益)の方が大きく、脱原発は可能だとしている。

仕事は楽しいかね?/きこ書房

¥1,365
Amazon.co.jp

★★☆☆☆

iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が本書を紹介していたので、読んでみた。

しばしば、目標を設定することやビジョンを持つことの大切さが説かれるが、
 「今日の目標は明日のマンネリ。」
になるし、
 「世の中は、きみの目標が達成されるまで、じーっと待っていたりしない」
のだから、設定すべきたった一つの目標は、
 「明日は今日と違う自分になる」
との件は印象に残った。

全体としてそれほど感銘を受ける本ではなかったが、随所に仕事をする上で参考なるようなあるいは共感できるフレーズが出てくる。