読書雑記 -30ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日/PHP研究所

¥1,785
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☆☆☆★★

 福島第一原子力発電所の事故現場で何が起こっていたのか。
 吉田昌郎所長を始め、当直長、運転員、協力企業の社員、自衛隊員等、現場で事故対応にあたった多くの人々への取材を元に書かれたノンフィクション作品。数々の証言や臨場感あふれる描写で、よくできた小説のようにぐいぐいと引き込まれる。

 もし吉田所長がいなかったら事故はもっとひどいことになっていたのではないかと言われているが、吉田所長の豊富な知識・経験、的確な判断力、強靭な精神力、そして上に立つものが備えるべき人間性には感服する。
 SBO(全交流電源喪失)に陥った時点で、すでに吉田所長はチェルノブイリ級の事故に発展する可能性まで考えていた。そして、多くの専門家が驚くように、この早い段階で、非常用の冷却設備が長くは機能しないことを判断し、消防車の手配までおこなわせたことである。このような判断ができたのは、「何かが起こった時に“最悪の事態”を想定する習性が身についていた」からであろう。

 また、現場の奮闘とは対照的に、菅首相や官邸の介入がいかに現場の事故対応の足を引っ張ったかもよくわかる。現場で指揮すべき吉田所長が、菅首相の応対に時間を取られたり、“総理ご一行様”のために、復旧作業に欠かせない貴重な防護マスク等の装備品をどうやりくりするかに悩ませられたりするのである。

 やはり一番の見ものは、これも有名な話ではあるが、官邸の意向に従い本店から吉田所長に海水注入中止命令が下った場面だ。
 吉田所長は本店から命令が伝えられる直前に対策を打っていた。「本店から海水注入の中止の命令が来るかもしれない。その時は、本店に(テレビ会議で)聞こえるように海水注入の中止命令を俺が出す。しかし、それを聞き入れる必要なないからな。おまえたちは、そのまま海水注入をつづけろ。いいな」
 吉田所長が本店の命令に従っていたらと思うとゾッとさせられる話だ。

 現場の人間が常に死と背中合わせになりながらも、故郷を守る、日本を守るという思いや仕事に対する責任感・使命感によって、最後まであきらめずに不眠不休の活動を続ける姿には感動する。
 一方で、東電本店の無能・無責任ぶり、官邸の異常な介入や危機管理能力のなさは本当にひどい。

 筆者は、「本書は原発の是非を問うものではな」く、「原発に反対の人にも、逆に賛成の人にも、あの巨大地震と大津波の中で、『何があったのか』を是非知っていただきたい」と言っている。

 ただ、本書を読んで、事故対応に関わった多くの「人間」がどのような行動をとるかによって、事故の結果が良くも悪くもなり得たというのは十分に理解できるし、そのとおりだとも思うが、こうした当日の事故対応の問題だけにとらわれることなく、そもそも原子力発電所を存続させるべきなのか、日本のエネルギー政策はどうあるべきなのかということにもきちんと目を向けるよう注意したい。
出口 汪の論理的に話す技術 (ソフトバンク文庫)/ソフトバンククリエイティブ

¥699
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☆☆☆★★

 受験現代文のカリスマ講師・出口汪氏による論理的に話す技術を紹介した本。

 特に目新しいことが書いてあるようには思えない。だからといって、この本のことを悪く言ってるのではない。

 ハウツー本の場合、どんなにおもしろくても、実践してみて身に付かなかったら何の意味もない。逆に一見パッとしなくても、本の言うとおりにやってみて何らかの技術が向上する方がいいに決まっている。

 ゴタゴタ言ってないで、とりあえず実践あるのみ。
福島原発で何が起こったか-政府事故調技術解説- (B&Tブックス)/日刊工業新聞社

¥1,470
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☆☆☆☆★

船橋洋一の『カウントダウン・メルトダウン』を読み始めたものの、原子炉の基本的な構造や福島第一原発の施設概要がわからずに苦労していたところ、並行して読んでいた立花隆の『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』に、福島原発事故を技術面から解説した入門書として本書が紹介されていたので、早速購入した。

『東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会』(政府事故調)のメンバーであった淵上正朗と畑村洋太郎に、原子力の専門家である笠原直人を加えた3氏による共著で、中間報告と最終報告を合わせると1,500頁にも及ぶという政府事故調の報告書を一般の読者でも読めるよう平易かつコンパクトにまとている(約200頁)。

本書は5章立てになっている。第5章は「事故をより深く理解するための基礎知識」として、笠原直人東大教授が執筆している。ウラン燃料を使ってどのように発電するのかというそもそものところから、圧力容器・格納容器・冷却設備のしくみ、どのような状態になると原子炉の事故というのかといったところまでの基礎知識について、わかりやすく説明されているので、5章から読んでみるのもいいと思う。

第1章から第3章までは、建設機械や産業用ロボットを専門とする淵上氏が執筆している。第1章では、福島第一原子力発電所の施設概要や、炉心損傷の状態を把握するための水位計・圧力計データの見方、事故の経緯の概略などが記述されている。

第2章では、さらに詳しく、1号機、2号機、3号機それぞれの事故の経緯や、1号機、3号機、4号機の水素爆発の状況などが解説されている。

第3章は、政府事故調の記述範囲を超えて、重大事故の原因や炉心損傷回避のシナリオについて、いくつかの分析や意見が述べられている。

第4章では、失敗学で有名な畑村氏が執筆を担当し、「失敗学からの考察」がなされている。私の場合、技術や事故についての基本的な知識を得ることを目的としていたので、3章と4章はザッと読むにとどめた。

その他、3月11日から17日までの、注水、原子炉水位、圧力容器圧力、格納容器圧力等の状況を図示した「各号機原子炉の時系列チャート」も付いていて、事故から一週間の経過が一目でわかるようになっているのも良い。
読書脳 ぼくの深読み300冊の記録/文藝春秋

¥1,680
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☆☆☆★★

 立花隆の読書日記をまとめた本は、
 『ぼくはこんな本を読んできた 立花式読書論、読書術、書斎論』
 『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』
 『ぼくの血となり肉となった500冊 そして血にも肉にもならなかった100冊』
に次いで本書で4冊目となる(他に、佐藤優との共著『僕らの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』というのもある)。

 いつまでも衰えない関心領域の広さ、膨大な読書量には驚くばかりである。
 ベストセラーになるような本はあまり取り上げられていないが、様々な分野の本が簡潔に紹介されていて、読書欲を刺激される。

 とはいえ、立花隆のようなこれまでの読書量と豊富な知識があってこそ読了可能な本もたくさん紹介されているので、面白そうだからと言って自分の身の丈に合わない本を買ってしまわないよう注意も必要(私も今までに何度も失敗した)。

 本書は、2部構成になっていて、読書日記の他に、石田英敬(東京大学附属図書館副館長)との対談も収められている。「読書の未来」と題して、紙の本と電子書籍との共存やこれからの図書館の在り方等について語られている。
原発ホワイトアウト/講談社

¥1,680
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☆☆☆☆★

 本書は「現役キャリア官僚によるリアル告発ノベル」と銘打たれている。プロフィールには「東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務。」と紹介されているのみ。

 2013年の9月に出版されているので、7月21日の参院選の自民党大勝の事実を踏まえて書かれている。参院選後、衆参のねじれが解消し、原発が息を吹き返すための政治状況が整ってから、全国の原発が次々と再稼働するまでの、いわば原子力ムラの復活劇だ。

 この小説に書かれていることはどこまでが事実なのか。
 実在の人物あるいは実在の人物を想起させる人物を随所に登場させながら、保守党(=自民党)、経済産業省、日本電力連盟(=電気事業連合会)を中心とした政官財癒着の構造がリアルに描かれている。
 これらが事実と大差ないということであれば、慄然とする思いだ。

 参院選当日、保守党(=自民党)の単独過半数が見えてくると、日本電力連盟(=電気事業連合会)の常務理事が今後の課題を3つ書き留める。
 ①再稼働(追加工事の猶予期間、新崎県知事(=新潟県知事)対策)
 ②電力システム改革の阻止(発送電一貫体制、原発の堅持)
 ③世論対策(電気料金値上げの容認)

 3つの課題を課題を解決するため、電力会社の超過利潤の一部をプールして得た工作資金を武器に、あるときは検察、警察、マスコミなど、ありとあらゆる手段を使って、原子力ムラを復活させていく。
 内部告発した官僚や再稼働に反対する地元知事の逮捕などの国策捜査、原発に反対するデモの取り崩しといった場面は本当にえげつない。

 原子力規制庁の若手官僚が嘆く。
 『・・・規制当局の意識は急速にフクシマ以前に戻ってますよ・・・』
 『・・・このままなら、原発はまた、爆発します・・・』

 小説の若手官僚の告発、本書の筆者の告発のようなことが、現実に起こっていること、あるいは今後起こりうるものとして、重く受け止めなければならない。
オー!ファーザー (新潮文庫)/新潮社

¥788
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☆☆☆☆★

解説で初めて知ったのだが、この本のタイトルは、マドンナの曲のタイトルから取っているそうだ。しかも、その曲はマドンナが少女時代に父親から受けた虐待やトラウマについて歌ったものらしい。

物語は、そんな陰鬱な曲のイメージとは違って、テンポの良い笑える会話とともに、伏線となる様々な出来事が見事に一つの結末に収斂していく。

読み始めると、主人公には4人の父がいる、という突飛な設定で物語への期待感が一気に高まり、最後までその期待にきちんと応えてくれる。
人に強くなる極意 (青春新書インテリジェンス)/青春出版社

¥880
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☆☆☆★★

一般的に、よりよく生きるための生き方本や、よりうまく仕事をするためのビジネス本などは、その世界で一流の人が書いたものであり、かつ、その人の生き方や仕事ぶりに共感しているのであれば、感銘を受けることが多い。

これまでにも、藤田晋氏の『藤田晋の仕事学』『憂鬱でなければ、仕事じゃない』『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほと見ていなくはない』や、佐藤優氏の『読書の技法』『子供の教養の育て方』などを読み、参考になることが多く、読んだ後にはやる気が湧いてくるような感覚もあった。

とはいえ、当たり前と言えば当たり前のことなのだが、読むだけではだめで、実践しなければ意味がない。読んで気分は良くなるものの、自分は何も変わってないことが多いので、生き方本やビジネス本の新刊はなるべく買わずに、むしろ以前読んだ本を読み返し、実践できていないことを反省した方が身になると思っている。

でも、やはり、藤田晋氏や佐藤優氏の本はたまに買ってしまう。本書も本屋で目にして早速買ってしまった。説得力ある具体的な経験やエピソードに基づいて書かれているので、案の定、触発される。後は、実践あるのみ。
いかにして問題をとくか・実践活用編/丸善出版

¥1,470
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☆☆☆★★

ハンガリーの数学者・ポリアによる『いかにして問題をとくか』は、半世紀を超えて読み継がれる世界的なベストセラーである。数学の問題解決に留まらず、世界的なIT企業の社員教育で用いられている例もあり、ビジネスなど実社会で起きている課題の解決にも応用できる書として定評がある。

ところが、『いかにして問題をとくか』は、一般化した表現であること、やや古い文体で直訳的な翻訳の箇所もあることなどから、大変読みにくい、わかりにくいという声もある。

そこで、『いかにして問題をとくか』で述べられた、あらゆる分野の問題を解決するための一般化した発見的教授法なるものについて、「日常の生活やビジネスとはどのように結びつくのか」といった視点から、豊富な実例を交えて解説したのが、本書だ。

「算数+α」の知識レベルを前提に書かれており、説明も大変わかりやすい。このような教え方をされれば、算数や数学が楽しく学べるし、生きていく上で数学的なものの考え方が大切であることも納得できる。また、対比的にいわゆる「ゆとり教育」では十分に教えられていなかった事項について随所に取り上げられているのも興味深く読めた。

問題解決の4ステップを説明した序章のほか、第1章「帰納的な発想を用いる」、第2章「定義に帰る」等、全部で13の数学的なアプローチが各章に一つずつ具体例を挙げて解説されている。

ただ、一つ一つの具体例はわかりやすくおもしろいのだか、各アプローチの例としてはピンと来ないこともある。ひとえに、自分に「算数+α」の知識や考え方が欠如していることに起因するのだろう。著者の芳沢光雄氏は『新体系・中学数学の教科書(上・下)』なども書いているので、再度勉強してみようと思う。
オレたち花のバブル組 (文春文庫)/文藝春秋

¥690
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☆☆☆☆★

オレたちバブル入行組』の続編。

東京中央銀行がメインバンクとして200億円の融資を実行したばかりの老舗ホテルが運用失敗で120億円もの損失を出すことが明るみになった。

しかも、目前に迫った金融庁検査で、業績の悪化した老舗ホテルに対する融資に回収懸念があると判断された場合、銀行は巨額の引当金を経費として計上せねばならず、銀行の業績を直撃する痛手となる。

ホテルを再建に導き金融庁検査を乗り切る任務を遂行するババを引かされたのはまたもや半沢直樹だ。

銀行合併前の旧行ナワバリ意識、足の引っ張り合い、一筋縄ではいかない取引先の面々と、奮闘する半沢の前には、例によって次々と障害が立ちはだかる。
しかも、今回は「金融庁の嫌な奴。銀行業界の嫌われ者」である黒崎調査官が登場する。
実際の銀行もここまで競争や権力争いの激しいところなのだろうか。金融庁の検査官はこんなに傲岸不遜なんだろうか。

ともあれ、前作同様、難局を切り抜けて行く半沢の活躍は痛快で、特に黒崎調査官との対決は見ものだ。

「ほんとうのことをいうのなら今のうちだ。後からでは容赦しない」
「基本は性善説。しかし、やられたら、倍返し」
半沢節も健在である。

半沢の同期で一時は心の病から休職を余儀なくされた近藤の復活劇もグッとくる。


データでわかる2030年の日本/洋泉社

¥1,680
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☆☆☆☆★

人口の減少、少子化、高齢化、世帯構成の変化、晩婚化、貧困の拡大等々を傾向としては理解していても、具体的な数字は知らないことが多い。これらの基本的なデータを知れば、今の日本が直面している問題がより鮮明になる。ビジネスパーソンにとっては知っておくべきあるいはすぐに参照できるようにしておくべきデータばかりだ。

国勢調査や国立社会保障・人口問題研究所の統計資料等に基づき、日本の過去・現在・未来を表す主要なデータについて、「人口」「高齢化」「結婚・家族・世帯」「教育・所得・福祉・住宅」の4章に分け、グラフも交えて大変わかりやすく説明されている。

本書に載っている統計データのいくつかを紹介してみよう。

(人口)
・2010年の日本の人口は、1億2,806万人。1900年はまだ4,385万人だった。2110年には再び4,286万人まで減少すると予測されている。20世紀に100年かけて3倍に増えた人口が、21世紀の100年をかけてまた3分の1近くに減るということだ。

(高齢化)
・65歳以上の高齢者の割合が総人口の7%以上14%未満の社会を「高齢化社会」、14%以上21%未満を「高齢社会」、21%以上を「超高齢社会」と言うそうだ。1970年には高齢化率7.1%で高齢化社会だった日本は、1995年には14.6%で高齢社会、2010年には23%で超高齢社会と、ものすごい勢いで高齢化が進んでいる。これが、2030年には31.6%、2060年には39.9%と予測されている。

・人口が減り、さらには高齢化が進むと、当然ながら働く人の数も減っていく。15歳から64歳までの生産年齢人口は、明治以降1995年まで増え続けていたのが、2000年には減少に転じたということだ。1995年には8,622万人いた生産年齢人口は、2015年には7,682万人、2035年には6,343万人、2055年には4,706万人になるという。さらに、生産年齢人口に対する年少人口(0~14歳)+老年人口(65歳以上)の割合を見ると、1965年から2000年までは47~48%くらい、つまり、生産年齢人口10人でその他の5人を支える社会だった。それが、2025年を過ぎると70%を超え、2075年には100%を超える。つまりは、10人で10人を支える大変厳しい社会になる。

(結婚・家族・世帯)
・1947年から49年まで毎年約270万人が生まれ、3年間の出生者数は800万人を超えた。第1次ベビーブーム、いわゆる団塊の世代だ。団塊の世代が生まれた後に出生者数が急激に減っていくのは、1948年に優生保護法が施行され、妊娠中絶が合法化されたからだという。その後、団塊世代の女性が結婚・出産するようになり、1971年から1974年には毎年約200万人以上の子どもが生まれる(第2次ベビーブーム。団塊ジュニアの世代)。1974年以降、再び出生者数が減り始めた背景には、団塊世代の女性の出産期が過ぎたのと、1973年の第1次オイルショックによる高度経済成長の終わりが影響しているようだ。近年、出生者数は100万人台で推移しているが、あと数年で100万人を切り、2030年には75万人、2060年には48万人まで減少すると予測されている。

・出生者数が減ったのは、そもそも結婚する人が減ったからだという。加えて、結婚しても晩婚化が進んでいるということもあるだろう。25~29歳の女性のうち未婚の女性の割合は、1950年に15%だったのが、2010年には60%になっている。2010年の未婚率をさらに詳しく見ると、第2次ベビーブーム(団塊ジュニア)の世代である35~39歳の未婚率は、女性で23%、男性で36%となっている。団塊ジュニアは人口は多いが、未婚率が高く、子供をあまり産まなかったということだそうだ。

・2010年の家族構成別の世帯数は、一人暮らし世帯は1,678万世帯、夫婦と子供からなる世帯は1,447万世帯、夫婦のみの世帯は1,027万世帯、ひとり親と子供の世帯は454万世帯、その他が578万世帯となっている。

・一人暮らしというと従来は若者がするイメージで、事実、1985年の一人暮らし790万世帯のうち、20~24歳は180万世帯、25~29歳は107万世帯と、20歳台が多くを占め、85歳以上は5万世帯、65歳以上でも120万世帯程度に過ぎなかった。それが2010年には、20~24歳は166万世帯、25~29歳は168万世帯と依然として多いが、ほぼ全年齢区分で100万台を超えており、85歳以上だけでも66万世帯に増えている。さらに2035年になると、85歳以上が最も多く、211万世帯となる。今後、高齢者の一人暮らしがどんどん増えてくるということだ。

(教育・所得・福祉・住宅)
・1976年から92年までは、(毎年の19年前の)出生者数と短大・大学の学生数は比例して増えている。ところが、1993年以降、(19年前の)出生者数が減っていくにもかかわらず、学生数は増えている。しかも、短大生の数は減って、4年制大学の学生数が増えている。しかし、大学進学率が上昇したことをもって、社会の高学歴化が進み、日本の知的レベルが向上していると、単純には言えないようだ。というのも、1973年生まれを境に人口が減っていく中、進学率を一定にしていては学生数が減るばかりで大学経営が立ち行かなくなるため、あまり難しい試験はせずにどんどん学生を入学させよう、短大は4年制大学に替えて、4年間学費をもらおう、という大学側の思惑があるらしいからだ。それで、学生の質がどうなったかは目に見えている。

・1984年には8%ほどだった男性の非正規雇用の割合が、2012年には20%に、女性は29%から55%に上昇している。問題なのは、結婚する時期にある25~34歳の男性の非正規雇用の割合が15%もあり、晩婚化・少子化の一因になっているということだ。

・所得も長い間減り続けている。1996年には1世帯あたり平均661万円あった所得が、2010年には538万円まで下がっている。アベノミクスによる賃金上昇は期待できるのだろうか。

・1ヶ月平均の生活保護受給世帯は、1952年度以来、ずっと70万世帯前後で推移し、1992年度には59万世帯まで減少していたのが、バブル崩壊と高齢者の増加によって2005年度には100万世帯を超え、2010年度には141万世帯まで増加している。

・かつて、年間200万戸近くあった住宅の着工戸数は、現在は80万戸ほどであり、2030年頃には40万戸ほどに減るという予測もあるそうだ。また、1978年に268万戸だった空家の数は、2008年には757万戸になり、国土交通省の予測では、2030年には1133万戸、2050年には1549万戸と、現在の2倍以上に増える。

・「道路も橋も要介護になる」。橋は、日本中に15万7,000あるが、できてから50年以上のものの割合は2011年で9%である。これが、2031年には53%になる。1960年代、1970年代にたくさんつくられた橋が50年以上経過するからだ。


本書のデータを見れば、「2030年までの間に、われわれ日本人は、社会のさまざまな仕組み、制度を根本から変えていき、2040年からの社会に備えなければならない」ことがよくわかる。