読書雑記 -30ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

出口 汪の論理的に考える技術 (ソフトバンク文庫)/ソフトバンククリエイティブ

¥699
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☆☆☆★★

 「聞く」「話す」「読む」「書く」「考える」という行為には、論理力が不可欠である。
 いくら断片的な知識をたくさん持っていても、論理力がなければ、受験勉強やビジネス、日常の円滑なコミュニケーションには役に立たない。「物事の筋道を理解したり、バラバラな知識を有機的に結び付けるときに、論理力が非常に大事」だ。
 また、論理力を鍛えれば、記憶力の向上も期待できるという。

 論理力を身に付けるには、「他者意識」を持つことが大切であると著者は力説している。
 個人と個人は「根本のところではどうやってもわかりあえない存在」であり、「お互いに分かり合えない。でも、何とか相手とコミュニケーションを取って、理解し合いたい、いい関係を築きたい、そう人間が思ったとき、論理が生まれた」のだとしている。

 著者の唱える論理の基本はいたってシンプルで、次の3つの原則からなっている。
 ①イコールの関係(自分の主張を具体例によって、証明、補強する)
 ②対立関係(対立する考え方を持ち出して、自分の主張を差別化し、際立たせる)
 ③理由づけ・因果関係
 ・理由づけ(まず自分の結論・主張を述べ、そのあとに理由づけをする)
 ・因果関係(まず具体例をあげ、そこから考えられる結論を導く)

 日常生活やビジネスにおいて、「他者意識」を持ちながら、著者の言う3つの原則に従って、聞き、話し、読み、書き、そして考えていきたいと思う。
単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)/講談社

¥1,260
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☆☆☆☆★

「進化しすぎた脳」を読んだ時ほどのワクワク感はなかったが、それでもやはり脳科学の本、池谷裕二氏の著書はおもしろい。

著者は読者に「脳は私のことを本当に理解しているのか」と問いかける。「『自分のことは自分が一番知っている」なんて思い込みは、傲慢で危険で」あり、「無意識のレベルで私たちはたくさんのことを考えたり、判断したり、決断したり、欲情を生んだりと、いろんなことをしている」という。そうした無意識の働きについて、具体的な実験の例を紹介するとともに、図表や特設Webサイトの動画を用いて読者にも体験させてくれる。

一番驚くのは、例えば我々が手を「動かそう」と意図する時には、脳は既に動かす「準備」を始めているということである。そうなると、「自由意志」というものの存在がかなり怪しくなってくる。つまりは、我々に残された自由は、自動的に脳から発生したアイデアを採用するかしないかという「自由否定」ではないかと。

また、脳の働きを説明するのに欠かせないのが、脳の「ゆらぎ」=「ノイズ」であり、それが「自由意志」の問題にも大きく関わっているという。なぜなら、脳のゆらぎ(ノイズ)には、
 ①効率よく正解に近づく(最適解への接近)
 ②弱いシグナルを増幅する(確率共振)
 ③創発のためのエネルギー源
といった役割があるからだ。

そして、脳のニューロンネットワークの「構造」に、脳のゆらぎという「ノイズ」を加えることによって、新しい「機能」が生まれる。また、逆に「機能する」ことによって、「構造を書き換える」こともあり、構造⇔機能という両方向性の作用が脳の可塑性の基盤になっていると著者は説明している。
iPS細胞とはなにか―万能細胞研究の現在 (ブルーバックス)/講談社

¥840
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☆☆☆★★

山中伸弥ストーリーに始まり、iPS細胞に関する主な研究の内容から、応用への期待と課題、iPS細胞をめぐる激しい特許争いまで、iPS細胞について、様々な側面からかなり幅広に書かれている。

意外だったのは、山中教授の活躍を見て「多くの人が、日本が世界のトップを走っている思って」いるが、日本の研究の現状は、山中教授いわく「1勝10敗」であるという。第9章の「ハーバードに見るアメリカの強さ」を読むと、幹細胞研究はアメリカが質・量ともに世界を圧倒しているようだ。

朝日新聞大阪本社科学医療グループによる取材や新聞記事をもとに書かれているので、掘り下げた記述は少ないかもしれないが、iPS細胞研究の入門書としては適しているのではないか。
警官の血〈上〉 (新潮文庫)/新潮社

¥704
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警官の血〈下〉 (新潮文庫)/新潮社

¥704
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☆☆☆☆★

恥ずかしながら本書を読むまで佐々木譲の名前もこんなおもしろい警察小説があることも知らなかった。

宝島社の「このミステリーがすごい!」(2008年度)の第1位にも輝いた本作は、文庫本の上下巻合わせて900ページを超える大作でありながら、飽きることなく一気に読める。

親子三代にわたる警官の過酷な人生が描かれる同時に、祖父、子、孫が警官として働いた、戦後の混乱期から、60・70年代の左翼運動全盛期を経て、暴力団が跋扈する現代までの時代史・警察史ともいえる作品である。

父親の背中を見ながら同じ警官の道を歩み、祖父が到達できなかった事件の真相解明を子が引き継ぎ、遂には孫の代で明らかになるという形で、三代の警官の物語が一つにつながっている。

知的にも感情的にも心を揺さぶられる作品だ。
死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日/PHP研究所

¥1,785
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☆☆☆★★

 福島第一原子力発電所の事故現場で何が起こっていたのか。
 吉田昌郎所長を始め、当直長、運転員、協力企業の社員、自衛隊員等、現場で事故対応にあたった多くの人々への取材を元に書かれたノンフィクション作品。数々の証言や臨場感あふれる描写で、よくできた小説のようにぐいぐいと引き込まれる。

 もし吉田所長がいなかったら事故はもっとひどいことになっていたのではないかと言われているが、吉田所長の豊富な知識・経験、的確な判断力、強靭な精神力、そして上に立つものが備えるべき人間性には感服する。
 SBO(全交流電源喪失)に陥った時点で、すでに吉田所長はチェルノブイリ級の事故に発展する可能性まで考えていた。そして、多くの専門家が驚くように、この早い段階で、非常用の冷却設備が長くは機能しないことを判断し、消防車の手配までおこなわせたことである。このような判断ができたのは、「何かが起こった時に“最悪の事態”を想定する習性が身についていた」からであろう。

 また、現場の奮闘とは対照的に、菅首相や官邸の介入がいかに現場の事故対応の足を引っ張ったかもよくわかる。現場で指揮すべき吉田所長が、菅首相の応対に時間を取られたり、“総理ご一行様”のために、復旧作業に欠かせない貴重な防護マスク等の装備品をどうやりくりするかに悩ませられたりするのである。

 やはり一番の見ものは、これも有名な話ではあるが、官邸の意向に従い本店から吉田所長に海水注入中止命令が下った場面だ。
 吉田所長は本店から命令が伝えられる直前に対策を打っていた。「本店から海水注入の中止の命令が来るかもしれない。その時は、本店に(テレビ会議で)聞こえるように海水注入の中止命令を俺が出す。しかし、それを聞き入れる必要なないからな。おまえたちは、そのまま海水注入をつづけろ。いいな」
 吉田所長が本店の命令に従っていたらと思うとゾッとさせられる話だ。

 現場の人間が常に死と背中合わせになりながらも、故郷を守る、日本を守るという思いや仕事に対する責任感・使命感によって、最後まであきらめずに不眠不休の活動を続ける姿には感動する。
 一方で、東電本店の無能・無責任ぶり、官邸の異常な介入や危機管理能力のなさは本当にひどい。

 筆者は、「本書は原発の是非を問うものではな」く、「原発に反対の人にも、逆に賛成の人にも、あの巨大地震と大津波の中で、『何があったのか』を是非知っていただきたい」と言っている。

 ただ、本書を読んで、事故対応に関わった多くの「人間」がどのような行動をとるかによって、事故の結果が良くも悪くもなり得たというのは十分に理解できるし、そのとおりだとも思うが、こうした当日の事故対応の問題だけにとらわれることなく、そもそも原子力発電所を存続させるべきなのか、日本のエネルギー政策はどうあるべきなのかということにもきちんと目を向けるよう注意したい。
出口 汪の論理的に話す技術 (ソフトバンク文庫)/ソフトバンククリエイティブ

¥699
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☆☆☆★★

 受験現代文のカリスマ講師・出口汪氏による論理的に話す技術を紹介した本。

 特に目新しいことが書いてあるようには思えない。だからといって、この本のことを悪く言ってるのではない。

 ハウツー本の場合、どんなにおもしろくても、実践してみて身に付かなかったら何の意味もない。逆に一見パッとしなくても、本の言うとおりにやってみて何らかの技術が向上する方がいいに決まっている。

 ゴタゴタ言ってないで、とりあえず実践あるのみ。
福島原発で何が起こったか-政府事故調技術解説- (B&Tブックス)/日刊工業新聞社

¥1,470
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☆☆☆☆★

船橋洋一の『カウントダウン・メルトダウン』を読み始めたものの、原子炉の基本的な構造や福島第一原発の施設概要がわからずに苦労していたところ、並行して読んでいた立花隆の『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』に、福島原発事故を技術面から解説した入門書として本書が紹介されていたので、早速購入した。

『東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会』(政府事故調)のメンバーであった淵上正朗と畑村洋太郎に、原子力の専門家である笠原直人を加えた3氏による共著で、中間報告と最終報告を合わせると1,500頁にも及ぶという政府事故調の報告書を一般の読者でも読めるよう平易かつコンパクトにまとている(約200頁)。

本書は5章立てになっている。第5章は「事故をより深く理解するための基礎知識」として、笠原直人東大教授が執筆している。ウラン燃料を使ってどのように発電するのかというそもそものところから、圧力容器・格納容器・冷却設備のしくみ、どのような状態になると原子炉の事故というのかといったところまでの基礎知識について、わかりやすく説明されているので、5章から読んでみるのもいいと思う。

第1章から第3章までは、建設機械や産業用ロボットを専門とする淵上氏が執筆している。第1章では、福島第一原子力発電所の施設概要や、炉心損傷の状態を把握するための水位計・圧力計データの見方、事故の経緯の概略などが記述されている。

第2章では、さらに詳しく、1号機、2号機、3号機それぞれの事故の経緯や、1号機、3号機、4号機の水素爆発の状況などが解説されている。

第3章は、政府事故調の記述範囲を超えて、重大事故の原因や炉心損傷回避のシナリオについて、いくつかの分析や意見が述べられている。

第4章では、失敗学で有名な畑村氏が執筆を担当し、「失敗学からの考察」がなされている。私の場合、技術や事故についての基本的な知識を得ることを目的としていたので、3章と4章はザッと読むにとどめた。

その他、3月11日から17日までの、注水、原子炉水位、圧力容器圧力、格納容器圧力等の状況を図示した「各号機原子炉の時系列チャート」も付いていて、事故から一週間の経過が一目でわかるようになっているのも良い。
読書脳 ぼくの深読み300冊の記録/文藝春秋

¥1,680
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☆☆☆★★

 立花隆の読書日記をまとめた本は、
 『ぼくはこんな本を読んできた 立花式読書論、読書術、書斎論』
 『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』
 『ぼくの血となり肉となった500冊 そして血にも肉にもならなかった100冊』
に次いで本書で4冊目となる(他に、佐藤優との共著『僕らの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』というのもある)。

 いつまでも衰えない関心領域の広さ、膨大な読書量には驚くばかりである。
 ベストセラーになるような本はあまり取り上げられていないが、様々な分野の本が簡潔に紹介されていて、読書欲を刺激される。

 とはいえ、立花隆のようなこれまでの読書量と豊富な知識があってこそ読了可能な本もたくさん紹介されているので、面白そうだからと言って自分の身の丈に合わない本を買ってしまわないよう注意も必要(私も今までに何度も失敗した)。

 本書は、2部構成になっていて、読書日記の他に、石田英敬(東京大学附属図書館副館長)との対談も収められている。「読書の未来」と題して、紙の本と電子書籍との共存やこれからの図書館の在り方等について語られている。