単純な脳、複雑な「私」 | 読書雑記

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単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)/講談社

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☆☆☆☆★

「進化しすぎた脳」を読んだ時ほどのワクワク感はなかったが、それでもやはり脳科学の本、池谷裕二氏の著書はおもしろい。

著者は読者に「脳は私のことを本当に理解しているのか」と問いかける。「『自分のことは自分が一番知っている」なんて思い込みは、傲慢で危険で」あり、「無意識のレベルで私たちはたくさんのことを考えたり、判断したり、決断したり、欲情を生んだりと、いろんなことをしている」という。そうした無意識の働きについて、具体的な実験の例を紹介するとともに、図表や特設Webサイトの動画を用いて読者にも体験させてくれる。

一番驚くのは、例えば我々が手を「動かそう」と意図する時には、脳は既に動かす「準備」を始めているということである。そうなると、「自由意志」というものの存在がかなり怪しくなってくる。つまりは、我々に残された自由は、自動的に脳から発生したアイデアを採用するかしないかという「自由否定」ではないかと。

また、脳の働きを説明するのに欠かせないのが、脳の「ゆらぎ」=「ノイズ」であり、それが「自由意志」の問題にも大きく関わっているという。なぜなら、脳のゆらぎ(ノイズ)には、
 ①効率よく正解に近づく(最適解への接近)
 ②弱いシグナルを増幅する(確率共振)
 ③創発のためのエネルギー源
といった役割があるからだ。

そして、脳のニューロンネットワークの「構造」に、脳のゆらぎという「ノイズ」を加えることによって、新しい「機能」が生まれる。また、逆に「機能する」ことによって、「構造を書き換える」こともあり、構造⇔機能という両方向性の作用が脳の可塑性の基盤になっていると著者は説明している。