読書雑記 -29ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

初陣: 隠蔽捜査3.5 (新潮文庫)/新潮社

¥594
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☆☆☆☆★

キャリア警察官僚の竜崎伸也を主人公とした隠蔽捜査シリーズ(『隠蔽捜査』『果断ー隠蔽捜査(2)』『疑心ー隠蔽捜査(3)』)からのスピンオフ作品。

竜崎の幼なじみで同期として前三作に登場する伊丹俊太郎を主人公にした短編集である。

これまでの隠蔽捜査シリーズや竜崎伸也を伊丹の目線から違った形で味わうことができ、前三作の裏話なども出て来て、シリーズのファンにはたまらない。
疑心: 隠蔽捜査3 (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆★

キャリア警察官僚の竜崎伸也を主人公にした「隠蔽捜査」シリーズの第3作。

前作に引き続き、大森署署長としての職務に精励する竜崎の姿を描く。

竜崎は来日するアメリカ大統領の警備事案に直面する。しかも、本来ならば方面本部長が務めるべき方面警備本部長に大森署署長である竜崎が任命される。

竜崎が本部長に任命された第二方面警備本部は大統領機が到着する羽田空港を管轄しており、その責任は大きい。

また、方面警備本部長の臨時の秘書官として赴任してきた美人の女性キャリアに、無駄な感情を廃し理性を重んじる竜崎がなんと恋愛感情を抱いてしまう。

この二つの大きな試練を竜崎はどうやって乗り越えるのか見ものである。
果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫)/新潮社

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☆☆☆☆★

警察庁のキャリア官僚である竜崎伸也を主人公とした「隠蔽捜査」シリーズ第2弾。

息子の麻薬使用による降格人事で、警察庁長官官房の総務課長から大森署の署長に異動になった竜崎。

これまでエリート街道を走ってきたキャリア官僚が、現場に近い警察署長という職でどのような働きぶりを見せるのか。

原理原則を大切にし、感情より理性を重んじるがあまりに警察庁では常に「変人」扱いされてきた竜崎だが、本作でもその「らしさ」を存分に発揮してくれる。

隠蔽捜査 (新潮文庫)/新潮社

¥680
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☆☆☆☆☆

警察官僚を主役にした警察小説というのが新鮮でおもしろい。

主人公の竜崎伸也は、警察庁長官官房の総務課長の職を務めるキャリア官僚だ。

『家庭のことは妻の仕事だ。私の仕事は、国家の治安を守ることだ。』
『竜崎にとって東大以外は大学ではない。』
これだけ聞くと、エリート意識剥き出しで古い考えのイヤな奴に思える。

だが、何のためにエリートとして出世したいのかについて、
『官僚の世界で出世がなぜ大切かというと、それだけ権限が増えるからだ。』と言っている。
竜崎は単に偉くなりたい、給料がたくさん欲しいといった単純な出世欲に駆られているわけではないのだ。

そして、エリートには特権とともに当然大きな義務もつきまとうことを竜崎は認識している。
『選ばれた人間だ。国をつつがなく運営して、守っていく義務を負っている。だから、いざというときは、真っ先に死ぬ覚悟をしている』

ちょっと長いが、竜崎の行動原理と組織論に関わる箇所を引用する。
『竜崎は、これまでたてまえを貫くことが本当の役人の仕事のやり方だと思ってきた。
 そして、できるかぎりそれを実行してきたつもりだ。ときにはままならないこともある。だが、大筋では貫いてきたと思う。
 たてまえを貫くいうことは、つまりは原則を重視するということだ。ケースバイケースという言葉が嫌いだった。それは、いい加減さを表現する言葉だと、竜崎は思っている。
 原則を大切にしなければ、システムは腐敗する。何が重要なのかわからないから、無能な役人は法の条文や通達の文面だけをなぞって、それを闇雲に実行しようとする。そして、前例だけを重視するようになる。いわゆるお役所仕事だ。それは、疲弊した役所のシステムだ。本当に有能な官僚を集めた、有効なシステムというのは、原則を大切にした、即応性のある、柔軟なものだというイメージがあった。』

このホンネとタテマエを使い分けない姿勢により、竜崎は職場でも家族にも常に『変人』扱いされる。

タテマエを貫く竜崎の行動が、時には滑稽に見えて笑いを誘うこともあれば、この行動原理に則って難局を乗り越えていく様が、日々ホンネとタテマエを使い分けて生きることに歯痒さを感じている読者にとって痛快で感動を与える。ここに本書の最大の魅力がある。

出口 汪の論理的に考える技術 (ソフトバンク文庫)/ソフトバンククリエイティブ

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☆☆☆★★

 「聞く」「話す」「読む」「書く」「考える」という行為には、論理力が不可欠である。
 いくら断片的な知識をたくさん持っていても、論理力がなければ、受験勉強やビジネス、日常の円滑なコミュニケーションには役に立たない。「物事の筋道を理解したり、バラバラな知識を有機的に結び付けるときに、論理力が非常に大事」だ。
 また、論理力を鍛えれば、記憶力の向上も期待できるという。

 論理力を身に付けるには、「他者意識」を持つことが大切であると著者は力説している。
 個人と個人は「根本のところではどうやってもわかりあえない存在」であり、「お互いに分かり合えない。でも、何とか相手とコミュニケーションを取って、理解し合いたい、いい関係を築きたい、そう人間が思ったとき、論理が生まれた」のだとしている。

 著者の唱える論理の基本はいたってシンプルで、次の3つの原則からなっている。
 ①イコールの関係(自分の主張を具体例によって、証明、補強する)
 ②対立関係(対立する考え方を持ち出して、自分の主張を差別化し、際立たせる)
 ③理由づけ・因果関係
 ・理由づけ(まず自分の結論・主張を述べ、そのあとに理由づけをする)
 ・因果関係(まず具体例をあげ、そこから考えられる結論を導く)

 日常生活やビジネスにおいて、「他者意識」を持ちながら、著者の言う3つの原則に従って、聞き、話し、読み、書き、そして考えていきたいと思う。
単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)/講談社

¥1,260
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☆☆☆☆★

「進化しすぎた脳」を読んだ時ほどのワクワク感はなかったが、それでもやはり脳科学の本、池谷裕二氏の著書はおもしろい。

著者は読者に「脳は私のことを本当に理解しているのか」と問いかける。「『自分のことは自分が一番知っている」なんて思い込みは、傲慢で危険で」あり、「無意識のレベルで私たちはたくさんのことを考えたり、判断したり、決断したり、欲情を生んだりと、いろんなことをしている」という。そうした無意識の働きについて、具体的な実験の例を紹介するとともに、図表や特設Webサイトの動画を用いて読者にも体験させてくれる。

一番驚くのは、例えば我々が手を「動かそう」と意図する時には、脳は既に動かす「準備」を始めているということである。そうなると、「自由意志」というものの存在がかなり怪しくなってくる。つまりは、我々に残された自由は、自動的に脳から発生したアイデアを採用するかしないかという「自由否定」ではないかと。

また、脳の働きを説明するのに欠かせないのが、脳の「ゆらぎ」=「ノイズ」であり、それが「自由意志」の問題にも大きく関わっているという。なぜなら、脳のゆらぎ(ノイズ)には、
 ①効率よく正解に近づく(最適解への接近)
 ②弱いシグナルを増幅する(確率共振)
 ③創発のためのエネルギー源
といった役割があるからだ。

そして、脳のニューロンネットワークの「構造」に、脳のゆらぎという「ノイズ」を加えることによって、新しい「機能」が生まれる。また、逆に「機能する」ことによって、「構造を書き換える」こともあり、構造⇔機能という両方向性の作用が脳の可塑性の基盤になっていると著者は説明している。
iPS細胞とはなにか―万能細胞研究の現在 (ブルーバックス)/講談社

¥840
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☆☆☆★★

山中伸弥ストーリーに始まり、iPS細胞に関する主な研究の内容から、応用への期待と課題、iPS細胞をめぐる激しい特許争いまで、iPS細胞について、様々な側面からかなり幅広に書かれている。

意外だったのは、山中教授の活躍を見て「多くの人が、日本が世界のトップを走っている思って」いるが、日本の研究の現状は、山中教授いわく「1勝10敗」であるという。第9章の「ハーバードに見るアメリカの強さ」を読むと、幹細胞研究はアメリカが質・量ともに世界を圧倒しているようだ。

朝日新聞大阪本社科学医療グループによる取材や新聞記事をもとに書かれているので、掘り下げた記述は少ないかもしれないが、iPS細胞研究の入門書としては適しているのではないか。
警官の血〈上〉 (新潮文庫)/新潮社

¥704
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警官の血〈下〉 (新潮文庫)/新潮社

¥704
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☆☆☆☆★

恥ずかしながら本書を読むまで佐々木譲の名前もこんなおもしろい警察小説があることも知らなかった。

宝島社の「このミステリーがすごい!」(2008年度)の第1位にも輝いた本作は、文庫本の上下巻合わせて900ページを超える大作でありながら、飽きることなく一気に読める。

親子三代にわたる警官の過酷な人生が描かれる同時に、祖父、子、孫が警官として働いた、戦後の混乱期から、60・70年代の左翼運動全盛期を経て、暴力団が跋扈する現代までの時代史・警察史ともいえる作品である。

父親の背中を見ながら同じ警官の道を歩み、祖父が到達できなかった事件の真相解明を子が引き継ぎ、遂には孫の代で明らかになるという形で、三代の警官の物語が一つにつながっている。

知的にも感情的にも心を揺さぶられる作品だ。