半落ち | 読書雑記

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半落ち (講談社文庫)/講談社

¥637
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☆☆☆☆★

寺尾聡の主演で映画化された作品。

アルツハイマーの妻を扼殺した警察官の梶聡一郎は、自首して犯行を認めるも、殺害してから自首するまでの『空白の二日間』について口を開こうとはしない。

梶は完全に自供する(落ちる)のではなく、いわば『半落ち』の状態にあった。

確かに、殺害してから自首するまでの『空白の二日間』の行動は、警察が立件すべき『後のこと』でしかない。
『梶は既に、犯行に至る経緯も犯行時の状況も自白した。その供述内容は詳細を極め、少しの破綻もない。このまま調書を作成すれば、送検、起訴、公判のいずれの段階でも立派に通用する代物だ。』
つまりは『事件後の出来事を知るということは、事件を起こした人間の持つ物語を完結させるーといったほどの意味しか持たない』のだ。

それでもなお、梶の持つ物語を完結させたいと思う人物が次々に登場する。梶の誠実で正直な人柄、静謐な態度、澄んだ瞳を見ると、なぜ彼が事件後のことを語ろうとしないのか、みな不思議に思うのだ。

捜査官、検察官、新聞記者、弁護士、裁判官など、梶の事件に関わる人たちが、それぞれの職務上の義務や使命と、自らの好奇心・道徳感との葛藤のに悩み、時には職場の上司や組織の論理と衝突しながら、梶の真実の物語に迫ろうとする。

取調べ、送検、起訴、公判、判決と事件が進んでいく過程でのキーパーソンの名を冠した章立てになっており、各人が道半ばにして諦めざるを得なかった真実の解明を次の人にリレーしていくような巧みな構成が見事だ。