読書雑記 -32ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

八日目の蝉 (中公文庫)/中央公論新社

¥620
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☆☆☆★★

不倫相手とその妻が留守にする僅かな隙に、赤ん坊を誘拐し逃亡の日々を送る主人公の希和子。

赤ん坊を連れ出すとき、希和子は思う。
『私だったら、絶対にこんなところにひとりきりにしない。私がまもる。すべてのくるしいこと、かなしいこと、さみしいこと、不安なこと、こわいこと、つらいことから、私があなたをまもる。・・・』

希和子のとった行動は決して許されることのない身勝手な犯罪行為だとしても、血のつながらない子に対しても注がれる母性の力はすごいと思う。
知の逆転 (NHK出版新書 395)/NHK出版

¥903
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☆☆☆★★

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンに対するインタビュー。

ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」は是非とも読んでみたい。

ノーム・チョムスキーの、この年齢になって、アメリカの政策への厳しい批判を続けるエネルギーに驚く。

オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトンの名前は初めて知った。トム・レイトンのビジネスの話は、6人のインタビューの中では最も面白かった。

ジェームス・ワトソンがこんな辛辣なキャラクターの持主だったとは。

第三の時効 (集英社文庫)/集英社

¥660
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☆☆☆☆☆

「警察小説の最高峰」というのも頷ける。

短編集というのはあまり好きではないのだが、本書は、すべての作品がF県警強行犯捜査係という同じ舞台において、作品ごとに異なる人物に焦点をあてる作り方をしていて、繋がりがまったくないわけではないので、大変おもしろく読めた。

原発のコスト――エネルギー転換への視点 (岩波新書)/岩波書店

¥798
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★★★☆☆

原発をどうするのか。日本のエネルギー政策はどうあるべきなのか。

日本の抱えるこの問題を原発のコストの視点からとらえている。

「原発のコスト」というと、(とりわけ原発推進論者から)「発電コスト」を中心に論じられることが多いが、本書では、「発電コスト」以外に、①事故による健康被害・環境被害、②それらの被害を補償するためのコスト、③使用済み燃料の処理・処分コスト、④立地対策のための政策コスト等についても分析し、原発は決して安くないエネルギーだとしている。

そして、コストの高い原子力発電への依存から脱するため、原子力複合体をどのように解体するか、再生可能エネルギーのコストを含む脱原発のコストはどのくらいかについて論じ、脱原発のコストよりベネフィット(便益)の方が大きく、脱原発は可能だとしている。

仕事は楽しいかね?/きこ書房

¥1,365
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★★☆☆☆

iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が本書を紹介していたので、読んでみた。

しばしば、目標を設定することやビジョンを持つことの大切さが説かれるが、
 「今日の目標は明日のマンネリ。」
になるし、
 「世の中は、きみの目標が達成されるまで、じーっと待っていたりしない」
のだから、設定すべきたった一つの目標は、
 「明日は今日と違う自分になる」
との件は印象に残った。

全体としてそれほど感銘を受ける本ではなかったが、随所に仕事をする上で参考なるようなあるいは共感できるフレーズが出てくる。

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた/講談社

¥1,260
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☆☆☆★★

山中伸弥教授のノーベル賞受賞を機に読んでみた。

山中教授はあまりにも謙虚なので、誰でも同じことができそうな錯覚に陥ってしまう。

偉大な発見・発明に人並み外れた才能や努力が必要なことは言うまでもないが、個人ではなくチームとして仕事をしなければならない研究分野では、優れた人間性が研究者に不可欠な資質であることが理解できる。

すごい実験 ― 高校生にもわかる素粒子物理の最前線/イースト・プレス
¥1,680
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 ヒッグス粒子の発見が世間をにぎわせていたので、素粒子物理学について理解したいと思い、読んでみた。

 とはいうものの、本書にはヒッグス粒子については全く言及されていないが、サブタイトルのとおり素粒子物理学の最前線について、わかりやすく説明されている。

 ミクロの世界を解明するために、巨大な施設を作り莫大な経費をかけて実験を行うそのギャップが何とも印象的である。すぐに世の中に役立つとは言えない研究に多額の税金を費やすのはいかがなものかという意見もあろうが、人類の知的好奇心を止めることはできないし、そうした営みが人類の進化を支えてきたのだろうなと思う。

 多田将さんの風貌やユーモアあふれる解説もおもしろい。



ゴールデンスランバー (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
¥900
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 首相暗殺事件の濡れ衣を着せられた主人公の逃走劇。随分とスケールの大きな物語になっている。


 最後に全ての事実が明らかにされるといったスッキリ感はないが、仮に、複雑な背景がありそうな首相暗殺事件の真相を説明して物語を完結させようとすれば、何か非現実的なもの、子供じみたものになってしまうし、かといって読者を煙に巻くようなストレスのたまる終わり方でもないので、そのあたりの頃合いが絶妙といえよう。


 伊坂作品は、他に「重力ピエロ」と「グラスホッパー」ぐらいしか読んだことがないが、権威や権力に対する反感・嫌悪感が根底にあるようだ。しかも、この作品では、主人公がドンキホーテよろしく権威や権力に真っ向勝負するのではない。

 主人公の親友の言葉 「おまえは逃げるしかねえってことだ。いいか、青柳、逃げろよ。無様な姿を晒してもいいから、とにかく逃げて、生きろ。人間、生きててなんぼだ」

 また、主人公の父親はテレビに向かって言う。「雅春、ちゃっちゃと逃げろ」

 正々堂々と闘って玉砕する美学もあるが、格好よくはなくても、弱いものが強いものに対抗するため、時には逃げて生き抜くのもアリかなと思う。

新・細胞を読む (ブルーバックス)/山科 正平
¥1,208
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 著者は北里大学医学部教授で顕微解剖学を専門としている。本書により顕微鏡を通した多彩な細胞の姿を見ることができる。細胞の主だった構成要素やその働きを改めて勉強してみたいと思っていたところ、帯で福岡伸一が「これは至高の芸術作品である」と大絶賛していたので手に取ってみた。


 前半は、多くの細胞に見られる、細胞膜、核、ミトコンドリアといった細胞の基本的な要素の解説があり、後半は、血球、運動器官、神経、消化器官等、生物の様々な器官や組織ごとに、その活動を支えている特徴的な細胞が紹介されている。受精卵という一つの細胞が分裂を繰り返して、各器官の役割を担うために見事に分化を遂げた姿を見てとれる。


 基本的に、1つの細胞について、新書の見開きの右側に解説があり、左側に関連写真が掲載されるという体裁をとっている。細胞に対する深い知識を持たず、また、顕微鏡を通じて細胞の微細な構造を撮影することの難しさを知らないので、本書の「芸術性」までは理解できなかったが、途中のコラムには顕微鏡の技術進歩や顕微鏡で観察するための技術を解説する記述も多く、著者の職人的な思い入れが随所に感じられる。


 細胞の構成要素の形状やふるまいが豊かな表現力でもって、時にはユーモアを交えて説明されており、中学校の生物の授業どまりだった細胞についての知識が多少は深まったと思う。