- ゴールデンスランバー (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
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首相暗殺事件の濡れ衣を着せられた主人公の逃走劇。随分とスケールの大きな物語になっている。
最後に全ての事実が明らかにされるといったスッキリ感はないが、仮に、複雑な背景がありそうな首相暗殺事件の真相を説明して物語を完結させようとすれば、何か非現実的なもの、子供じみたものになってしまうし、かといって読者を煙に巻くようなストレスのたまる終わり方でもないので、そのあたりの頃合いが絶妙といえよう。
伊坂作品は、他に「重力ピエロ」と「グラスホッパー」ぐらいしか読んだことがないが、権威や権力に対する反感・嫌悪感が根底にあるようだ。しかも、この作品では、主人公がドンキホーテよろしく権威や権力に真っ向勝負するのではない。
主人公の親友の言葉 「おまえは逃げるしかねえってことだ。いいか、青柳、逃げろよ。無様な姿を晒してもいいから、とにかく逃げて、生きろ。人間、生きててなんぼだ」
また、主人公の父親はテレビに向かって言う。「雅春、ちゃっちゃと逃げろ」
正々堂々と闘って玉砕する美学もあるが、格好よくはなくても、弱いものが強いものに対抗するため、時には逃げて生き抜くのもアリかなと思う。