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☆☆☆☆★
TBSの日曜劇場『半沢直樹』の第7回(9月1日放送)の平均視聴率は、関東地区、関西地区ともに30%台に達したそうだ。
2011年の11月~12月に放送され最高視聴率40%を記録した『家政婦のミタ』(日本テレビ)が、東日本大震災で「家族の絆」の大切さを感じていた視聴者の心に響いたと言われるように、大ヒットするテレビドラマにはその時代を支配する空気や視聴者の心理に訴えかけるものがあるのだろう。
『オレたち花のバブル組』とともに『半沢直樹』の原作である本書は、バブル絶頂期の1988年に都市銀行に入行した主人公たちの十数年後を描いている。バブル経済が崩壊し、不良債権処理に苦しんだ末、その後遺症が残る時代だ。その後、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災を経て、日本経済はさらに通弊し今に至っている。小説の舞台と今では、10年の隔たりがあるが、通じて先の見えない閉塞感が世の中を覆う同時代であると言えよう。
古色蒼然とした官僚主義や事なかれ主義、保守的で傲慢な体質が蔓延する銀行という組織の中で、したたかに逞しく生き抜く主人公・半沢直樹の姿は、読者にさぞかし痛快に映るであろう。
また、著者の池井戸潤が元銀行員とあって、リアルな迫力ある作品に仕上がっている。
さらに、この作品がいいのは、池井戸潤・文庫最新作の『民王』がきれいに優等生的にまとまっているのに対し、半沢の病的な側面まで描かれているところだ。
確かに、会社の上司、取引先、役人等、理不尽でヒドい奴がたくさん出てきて、相応の罰を受けて当然なのだが、半沢の反撃はあまりにサディスティックで徹底的なのだ。
「オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それにこたえる。だが、やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。十倍返しだ。そしてーー潰す。二度とはい上がれないように。」